北極点

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北極点(ほっきょくてん、テンプレート:Lang-en-short)とは、自転する天体の最端、北緯90°の地点のことである。自転軸と天体表面が交差する2点のうち1つである。以下、特に断らないかぎり地球の北極点について述べる。

北極点は、歴史時代においては北極海の氷上に位置する。

ファイル:Northpole modis big.jpg
人工衛星テラのMODISから観測した北極点

概説

天の北極

天体の座標を示す際、地球の中心を原点あるいは球中心点として理論的に「天球面」というものを考え、天体はこの天球面に位置すると考える。地球の回転軸の延長線とこの天球面の交差点が考えられ、これらを「天の北極(点)」「天の南極(点)」とも表現する。天の極の丁度上または近接した位置に明るい目印となるような星があるとき、これを天の「北極星」または「南極星」とも呼ぶ。

物理的概念と地理的概念

物理的には地球の回転主軸と地球表面との交差点であると考えられる。自転の回転主軸自体が微妙に変化することは以下に述べているが、これ以外にもプレートの移動などで地理的な位置に見かけの変化が生まれる。

北極点・南極点・赤道は地球の回転運動から物理的に決定できるが、仮にイギリスグリニッジ天文台に経線の起点を置くとしても世界の諸大陸や諸都市の座標位置は変化して行く。

さらに、天の北極も後述する歳差運動でその天球上の位置が変化する。また地球の赤道を天球に投射して定義した天の赤道も変化する。このため、現行の天体の地球から見た場合の位置を示す座標系である赤道座標系も修正が必要になってくる。

極点に関する幾つかの特徴

極点の移動

地球の回転軸は永久不変に変化しないものではない。それらは天体としての地球における物質の配置により決まっており、質量の配置が変化するとき当然回転軸も変化する(この場合の回転軸は、「慣性主軸」を意味している)。

具体的には、地球表面の温度は地質時代を通じて変動して来たことが知られており、現在より一万年前には北半球を覆う氷の層はもっと厚く領域も広大であった。このように北極および南極に近い領域に大量の氷が氷河の形で蓄積されている場合、地球全体としての回転軸は現在のものとは僅かであるが違った位置にあった。

また、地球では氷河の形成と融解の過程以外にもマントル内において物質の対流が生じている。これはプレートテクトニクス理論が述べるように地殻表面においては大陸のプレートの構成と移動・マントルへのプレートの沈下と湧出という現象となって現れる。マントル対流とプレートの運動は地球全体としての質量分布の変化をもたらし、これによっても回転軸は変動する。従って、極点の位置は変化する。

地質学的な証拠では、亜熱帯または温帯にある陸地に太古の氷河の痕跡がある。また逆に、南極大陸に温帯または亜熱帯の気候でなければ生育しない植物の化石などがある。地質学的太古においては、現在は極近くにある大陸が赤道近くにあったり、逆に赤道近くにある大陸が極近くにあった時代も存在した。

天の極点の移動

天の極点もまた、地球の回転軸の変動によって変化する。さらに大きな変動要因として、周期的な「歳差運動」がある。歳差運動とは、地球の慣性回転主軸がおよそ2万6000年ほどの周期で天球の座標に対し回転する運動である。数千年前に北極星と呼ばれていた星は、現在の北極星とは別の星である。

磁北極

地球全体として巨大な磁場が構成されており、地球は、巨大な磁石にも喩えられる。北極近くに磁石のS極があり、南極近くに磁石のN極がある。

しかし「近く」と述べたように、地球磁石における北極(これを、「磁北極」と言う)と慣性運動の回転の北極点は一致せず、1000km程度のずれがある。磁場が収束する磁北極に近い位置では、磁場は真下を向いているので方位磁石の示す方向は正確ではなくなる。

天体一般での極点

単に「北極点」といえば通常は地球の北極点を指すが、回転している天体一般について北極・南極という概念が適用可能である。自転運動をしている岩の塊程度の大きさの小惑星・地球ののような衛星内惑星水星金星)・外惑星火星木星土星など)、さらに我々の銀河系天の川銀河)を含む銀河系一般も自転運動をしているため、北極と南極あるいは北と南が定義される。

恒星・惑星・衛星については、2つの極(自転軸と地表との交点)のうち北極星(地球の自転軸の北極側の延長)に近い方の極を北極と定めている。小惑星や彗星は、自転が右まわり(時計回り)に見える位置から見て手前が南で向こう側が北である[1]

地球の回転主軸の延長が天球と交差する点を天の北極・南極とし、赤道の投射を天の赤道として、「春分」のときの太陽の位置を経度起点としたのが「天の赤道座標系」である。それに対し、太陽の自転を元に太陽の回転主軸が北と南で天球面上で交差する点を天の北極・南極とし、太陽の赤道の投射を「天の黄道」として、同じく春分点を経度の起点とした天体座標系が「黄道座標」である。同じようにして、「銀河座標」が定義される。この場合の経度の起点は、太陽系と銀河中心を結ぶ線によって定義される。

火星・金星・月などのように、表面が岩石のような固体や水などの液体である天体では、固体(液体)表面と回転主軸の交差点が極点となる。しかし木星や土星のように、表面が気体状態で明確な天体表面というものが確定できない天体の場合、極点を明白に定義することが困難である。

このことは、銀河系や他の銀河のような無数の恒星などから構成される系についても言える。銀河などは北と南はあるが、何かの定義で導入しなければ地球上での北極や南極に対応するものはない。

到達

現在では観光船ツアーなどにより12,000人以上の人が訪れているともいわれるが、過去さまざまな探検家によって到達が試みられた。

北極点到達を目指した最初の探検隊のひとつがウィリアム・エドワード・パリー1827年の探検であり、北緯82度45分にまで達した。1876年にはイギリス海軍のアルバート・ヘイスティングス・マーカムが北緯83度20分26秒に達している。1879年から1881年にかけてはアメリカ海軍ジョージ・W・デロング率いるジャネット号が北極点を目指したが遭難し、デロング含む19名が死亡した。1893年ノルウェーフリチョフ・ナンセンフラム号で北極を目指し、北緯86度14分にまで達した。1897年にはスウェーデンサロモン・アウグスト・アンドレー気球による極点征服を目指したが、途中で不時着して死亡している。1900年にはイタリアの王族であるルイージ・アメデーオ・ディ・サヴォイア=アオスタゼムリャフランツァヨシファから北進し、彼の隊のウンベルト・カーニが北緯86度34分にまで到達した[2]

時刻

夏には太陽が常に水平面上を移動し白夜が続き、冬には極夜となる。

地球上のほとんどの場所で、現地時間は経度によって、つまり空の太陽の位置にあわせて決められる。しかしこの方法は、経度の存在しない特異点である北極点および南極点においては適用することが不可能である。さらに、北極点には南極点と違い常住人口が存在しない。そのため、北極点には特定のタイムゾーンが割り当てられていない。このような理由により、北極点訪問のときには、訪問者は任意のタイムゾーンを使用することができる。多くの場合、グリニッジ標準時または出発国のタイムゾーンを使用するのが一般的である。

気候

北極点は南極点よりもかなり温暖である。これは、南極大陸という巨大な陸塊の中心部にある南極点に比べて、北極点は熱を溜め込んでいる海の上にあり、さらに標高の高い南極点に対しほぼ0mの地点に位置しているためである。北極点での冬(1月)の気温は-43℃から-26℃間で幅があるものの、平均気温は-34℃である。6月から8月にかけての夏の気温は氷点(0℃)前後となる。これまで記録された最高気温はプラス5℃であり、-13.5℃の南極点に比べて非常に暖かい[4]

北極点の海氷は通常2mから3mの厚さであるが[5]、この厚さは天候や気候の状況によって速やかに変化する[6]。近年、北極点の海氷の厚さは減少傾向にあることが知られている[7]

脚注

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関連項目

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  1. イトカワの「北」はどちらか? - 宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所
  2. 「世界地理12 両極・海洋」p7 福井英一郎編 朝倉書店 昭和58年9月10日
  3. 「世界地理大百科事典1 国際連合」p440 2000年2月1日初版第1刷 朝倉書店
  4. "Science question of the week", Goddard Space Center
  5. Beyond "Polar Express": Fast Facts on the Real North Pole, National Geographic News
  6. テンプレート:Cite web
  7. "Arctic ice thickness drops by up to 19 per cent", Daily Telegraph, 28 October 2008