トレマ
テンプレート:特殊文字 テンプレート:ダイアクリティカルマーク トレマは、ダイアクリティカルマークの一種で、母音を表す文字の上に付される2点からなる符号「¨」のこと。ドイツ語などで用いられるウムラウトと同型の符号である。分音記号(ぶんおんきごう)、分音符号(ぶんおんふごう)、分音符(ぶんおんふ)と呼ばれることもあるが、これらはダイアクリティカルマーク全般を指すこともある。
フランス語では tréma (トレマ)、英語では diaeresis (ダイエリシス)、スペイン語では diéresis (ディエレシス)、または crema (クレマ)という。
概要
「トレマ」という語は、「穴・開き口」を意味するテンプレート:Lang-grc トレーマ に由来する。
「ディエレシス」も、「分割」を意味するテンプレート:Lang-grc ディアイレシス に由来する。
ラテン文字やギリシャ文字などのアルファベットを用いる言語のある綴りにおいて母音が連続して表記されているとき、二重母音ではなくそれぞれの母音を単音として発音する場合、もしくは黙字ではなく発音する場合に付される。フランス語、ギリシャ語や、フランス語から英語に借用された単語などで用いられる。
言語によっては、同一の記号がトレマとは無関係な目的で使用される。
各言語における用法
ラテン・アルファベット
- フランス語
- ë, ï, ü, ÿ が使われる。フランス語では複数の文字でひとつの音を表すダイグラフを多用するが、トレマを使った場合、複数の文字を切り離して別々に読むことを意味する。
- ï の例: naïf テンプレート:IPA2 ナイーフ。トレマを使わずに naif と書くと *テンプレート:IPA2 ネーフと発音することになる。
- ë の例: canoë カノエ 「カヌー」、Noël ノエル 「クリスマス」
- ü の例: capharnaüm カファルナオム 「カペナウム、雑多な物で埋まった場所」
- ÿ の例: L'Haÿ-les-Roses (ライ=レ=ローズ)など一部の固有名詞にのみあらわれ、頻度がきわめて低い。
- 注意: 1990年の新正書法では、gu の後ろに母音が置かれたとき、u を発音する場合は必ず ü と書く。したがって、従来 aiguë エギュ 「鋭い(女性形)」と書かれていた語は aigüe と書くことになった。
- スペイン語
- ü が güe, güi においてのみ使われ、それぞれ テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2 という発音を表す。
- ポルトガル語
- ブラジルのポルトガル語においては、ü が güe, güi, qüe, qüi の4つの綴りで使われ、u を発音することを示し、テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2 という発音を表す。gue, gui, que, qui ならば u は黙字で、テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2 である。ポルトガルのポルトガル語では使用されないので、注意が必要である。また、新正書法の採用により、2013年以降はブラジルでもトレマは使用されなくなる。
- カタルーニャ語・オクシタン語
- 母音字のあとの i, u が二重母音の一部でないことを示すために、ï, ü を用いる。
- ウェールズ語
- 複数の母音字が続くときに、切って読むことを示すために用いる。母音字の前の i が テンプレート:IPA2 でなくて母音の テンプレート:IPA2 であることを示すのに ï を用いる例が最も多い。例:mwnkïod (mwnki 「猿」の複数形)
- オランダ語
- ä, ë, ï, ö, ü を用いる。フランス語と同様に、複数の母音字が続く時に、それがダイグラフでないことを表すために後ろの母音字の上にトレマを加える。
- ほかに、正書法としては認められていないが、しばしば ij のかわりに ÿ あるいは y が用いられることがある。IJ を参照。
- 英語
- (主にフランス語からの)借用語に使われることがあるほか、zoölogy, coöperate, reëlect のように複数の母音字の並びがダイグラフでないことを表すために使うことがある。ただし、この用法は現在ではほとんど廃れている。固有名詞では、語末の e を発音することを表すために使われることがある(Chloë クローイー, Zoë ゾーイー, Brontë ブロンティー)。
- アイスランド語
- ö が使われる。テンプレート:IPA2 を表す。
- アルバニア語
- ë が使われる。テンプレート:IPA2 を表す。
- ルクセンブルク語
- ä, ë が使われ、それぞれ テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2 を表す。
- ドイツ語
- ä, ö, ü が使われる。ウムラウトを参照。
- ハンガリー語
- ö, ü が使われ、前舌母音 テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2 を表す。
- スロバキア語
- ä が使われ、テンプレート:IPA2 または テンプレート:IPA2 を表す。
- スウェーデン語
- ä, ö が使われ、それぞれ テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2 を表す。ドイツ語とは異なり、この2文字は独立した文字として扱われ、それぞれアルファベットの28番目と29番目に位置する。
- フィンランド語
- ä, ö が使われ、それぞれ テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2 を表す。独立した文字として扱われる。
- エストニア語
- ä, ö, ü が使われ、それぞれ テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2 を表す。独立した文字として扱われる。
- トルコ語・アゼルバイジャン語
- ö, ü が使われ、それぞれ テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2 を表す。
- トルクメン語
- ä, ö, ü が使われ、それぞれ テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2 を表す。
- 中国語
- 拼音で ü が テンプレート:IPA2 を表す。例:lǘ(驢)、nǚ(女)、lǜ(律)。なお、正書法上、音節が n または l で始まる場合以外は ü は単に u と書かれる。したがって、ǖ は音として存在はするが、n や l で始まる音節が存在しないため、実際に使われることはない。
キリル・アルファベット
ロシア語やベラルーシ語では、ё は テンプレート:IPA2 と発音する。ロシア語ではアクセントを付加せずに е と書くことが多いが、キリル文字を採用している中央アジアやシベリアの非スラブ語でも ё は使われており、その場合は е と ё を書き分けるのが普通である。
ё を除くと、以下の文字が使われる。
- ウクライナ語
- ї を使用する。テンプレート:IPA2 を表す。
- ハンティ語
- ӓ, ӛ, ӧ, ӫ, ӱ を使用する。
- ウドムルト語
- ӝ, ӟ, ӥ, ӧ, ӵ を使用する。
- キルディン・サーミ語
- ӓ, ӭ を使用する。
- 西マリ語
- ӓ, ӧ, ӱ, ӹ を使用する。
ギリシャ・アルファベット
現代ギリシャ語では、ϊ, ϋ およびそれにアクセントのついた ΐ, ΰ を使用する。現代ギリシャ語では複数字でひとつの母音を表すことがあり(例: αι は テンプレート:IPA2、ει, οι, υι は テンプレート:IPA2, ου は テンプレート:IPA2)、また υ は子音(テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2)として読まれることもあるが、トレマ(διαλυτικά ズィアリティカ)はこれらを本来の音で発音させるために用いる。
音声記号
国際音声記号では、補助記号として使われる。
- 文字の上に付して、中舌化を表す。
- 文字の下に付して、かすれ音を表す。
符号位置
記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 名称 |
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記号 | Unicode | JIS X 0213 | 文字参照 | 備考 |
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HTML実体参照では、Ë のように、& と uml; でトレマの付かない文字を囲む。