死票
死票(しひょう、テンプレート:Lang-en-short)は、選挙において、その票を投じた有権者を代表する当選者がいない票。狭義では、選挙区における落選者への票のこと。広義では、棄権しても議席配分・当落に影響を及ぼさない票。死に票(しにひょう)ともいう。
概説
テンプレート:国際化 まず、単記非移譲式投票において、落選者へ投票した有権者は、どの当選者にも代表されない。これらの票を、狭義では死票と呼ぶ。
次に、単記非移譲式投票などを採用した全国区制・大選挙区制(中選挙区制含む)では、一人の有名候補に下位の当選者数人分もの票が集まる事があるが、その有名候補は数議席ではなく一議席しか取れないので、残りの議席分の票はあっても無くても議席配分に影響しない。
小選挙区制では死票が多くなり、大選挙区制(全国区制・中選挙区制含)や比例代表制では死票が少なくなる傾向にある。政党への単記非移譲式投票の場合、選挙区定数が同じなら、狭義の死票は大選挙区制が最も少なく、広義の死票は比例代表制が最も少ない。
一般に、死票の定義が一つ与えられると、その定義での死票を最少にする、議席配分を求める演算手順=選挙制度を、必ず一つだけ作ることが出来る。ただし、Approval votingの様に、演算量が爆発的に増える手順が死票を最小にするものの場合があり、この場合は演算量が余り増えない手順で近似する必要がある。
単記移譲式投票の様に死票になりそうな票が何度も当落線上の候補者に移譲されて生き返る制度の場合、死票の定義は困難となる。
1996年以降の衆議院議員選挙(小選挙区比例代表並立制)では、比例名簿との重複候補は復活当選となる可能性がある。比例名簿において他の重複候補と同一順位か否かに関わらず、復活当選した候補者への票は基本的に死票に該当しないとされる。しかし政党の視点から見れば、これらの票は政党議席増加に使われない点で死票に相当する(ただし、重複立候補者が全員供託金没収点以下の得票で比例議席を没収された例がある)。小選挙区で政党議席の増加に失敗して落選した者が、比例のみで立候補した者の当選枠を奪うということもあり「小選挙区当選の議員バッジは金、比例代表当選は銀、復活当選は銅」と揶揄される。
2001年以降の参議院議員選挙(非拘束名簿式比例代表制)では、落選した候補者に投じられた個人名得票は所属する政党の得票として扱われるため、死票になるとは限らない。例えば、2010年の第22回参議院議員通常選挙では、落選した候補者の個人名得票を合計するだけで、民主党、自由民主党では各1人の当選分の得票(約112万票)を上回る計算になる。
なお、落選者にとって得票数は供託金没収点の問題がある。また政党にとって得票数は政党交付金[1]にも影響する問題である。さらに次回の選挙では、有権者が戦略投票を行う際に今回の得票数を参考にするため、次回の当落に影響が及ぶ。また、1989年の千葉県知事選挙のように、現職と共産党しか有力な候補がなかったときに共産党候補が消費税導入・リクルート事件への批判票を集めて予想外の高得票をしたため中央の政局にまで影響を及ぼしたこともある。よって、落選したからといって投票の全てが無駄になるわけではなく、議席配分・当落以外で影響がある。しかし、世間は選挙直後の候補の当落のみに注目しがちであるため、これらのことは注目されないことが殆どである。
アメリカ合衆国大統領選挙では、共和党・民主党の二大政党以外の候補への投票はほとんど死票となることが確定しているといってよいが、ジョージ・ウォレス、ロス・ペローなど第三勢力の候補者が大きな注目を集めた例が過去に存在する。