サッカーボール
目次
ボールに関するルール
サッカーのボールに関するルールの取り決めはLaw of the Game(日本サッカー協会では「サッカー競技規則」)の第2条「ボール」(The Ball)に定められている。
条項の内容は以下の通りである。
ボールに求められる規格
- 球形である。
- 革皮または適切な材質である。
- 外周は68-70cmとする
- 重さは試合開始時に、410-450gとする
- 空気圧は0.6-1.1気圧とする。(プロ選手での試合では0.9気圧が採用されている)[1]
試合の途中でボールが破損した場合の取り扱い
- 主審の許可なしに、試合中ボールを交換する事は出来ない。
- 主審の許可を得て試合を中断する
- 新しいボールに交換した上で、ボールが破損した位置から、ドロップボールで試合を再開する
その他FIFAによる決定事項
- 試合球は上に挙げた、ボールに求められる規格を全てクリアしていなければならない。
- 試合球には公式のFIFAの検定印が刻印されていなければならない。
例外事項
ただし、16歳未満の競技者・女子・35歳以上のカテゴリーにおいては以下を大会の競技規則で修正できる。
- 大きさ
- 重さ
- 材質
また、試合や大会によっては複数個の予備球をあらかじめ用意しておき、試合球の回収に時間が掛かる場合などに審判の明示的許可を経ずボールを交換できるようになっている(いわゆるマルチボールシステム)。ただし、予備球はいずれも上記のボールの条件を満たすものでなければならず、また全てのボールは審判の管理下にあるものとみなされる。
サッカーボールの歴史
サッカーボールの区分
- 1号球: -
- 2号球: -
- 3号球:小学校低学年以下用
- 4号球:小学生用
- 5号球:中学・高校・大学・一般用
生産
現在世界で生産される手縫いのサッカーボールの70%から80%程度が、パキスタンで製造されている。パキスタンでの製造が多い理由として、1947年までイギリスの植民地であった事。外部パネルの原料となる皮革、内部を膨らませる膀胱を供給する牛がたくさんいた事。特にヒンドゥー教国である隣のインドと比較してイスラームがマジョリティであるパキスタンでは牛の屠殺に対して抵抗が無かった事が挙げられる。サッカーの黎明期となる19世紀末まではこれらの原料をイギリスに輸送した上で、生産が行われていたが、完成品をパキスタンで作る方がコストを省けることが分かったため20世紀に入るとパキスタン、特にスィアールコート(シアルコット)地域において製造が増大した。
児童労働の排除
こうした手縫いのサッカーボールの製造は長らく家内制手工業によって支えられてきた。スィアールコートで生産されるサッカーボールは有力スポーツメーカーに納められ、世界シェアの75%を占めるほどの生産高となった。しかし、1996年のILOの調査により、スィーアールコートの約7,000人の子供が、ほとんど学校に行かないまま児童労働に従事していることが判明。事態を憂慮したFIFAは、国連児童基金(UNICEF)と同意の上1998年のワールドカップフランス大会から児童の労働によって生産された手縫いのサッカーボールを使用しない事を決定。サッカーボールの生産の場から児童労働の排除が行われるきっかけとなった[2]。
皮革
昔のサッカーボールは牛の天然革皮で作られていた。そのため、雨などで水分を吸収すると重くなった。1986年のメキシコ大会から人工皮革製のサッカーボールが使用されるようになり、天候による影響を受けにくくなった。
外部パネルの構造
創成期から1960年代までは、12枚ないしは18枚の細長い革で構成されているボール(ゲーリックフットボールのボールと同一)が一般的であった。
1960年代になると、黒塗りの五角形の革12枚と、白塗りの六角形の革20枚で構成された切頂二十面体のボールが登場した。当時、モノクロのTV放送が普及したこともあり、従来の白や茶色ではなく、見やすい白黒に色分けされたという[3]。
ワールドカップでは1970年のメキシコ大会から、この白と黒のボール「テルスター」が採用されている。これはアディダス社が大会のスポンサーとなり、モルテン社制作のOEM契約によるボールの提供を始めたのと一致する。この形状はアディダス以外のメーカーでも一般的に採用されるようになり、サッカーボールといえばこの形状を指すようになった。以来長期にわたり、表面のデザインは変更されつつも、五角形と六角形の組み合わせが採用され続けた。
2006年のドイツ大会でアディダス社が提供する「チームガイスト」はこれまでのボールの形状と全く構造を異にしている。このボールの外部パネルはプロペラ状のパネル6枚とローター状のパネル8枚の計14枚で構成されており、より真球に近い形状にするためのデザインが施されているほか、パネルの組み立ては手縫いではなく溶着技術(技術はモルテンが開発)が導入されている。
パネルの数が減るにつれ、ボールの飛び方が安定するという考察がある。パネル同士のつなぎ目の溝の長さが短くなってボールが球体に近くなること、さらに重さの偏りも減らせるということが、その理由として挙げられている。ただ、ジャブラニは2種類の形が異なるパネルの組合せであり、これが飛球時に「ブレ球」が多いとされる原因ではないかという指摘もある。ブラズーカは同じ形のパネルのみで構成されている[4]。
ICチップ内蔵サッカーボール
ゴールやラインを超えたかどうかの審判のミスを防ぐために、ICチップ内蔵サッカーボールの使用が検討されている。2005年にペルーで開催されたFIFA U-17世界選手権大会では、アディダスが開発したICチップ内蔵サッカーボールが試験的に使用されたが、誤作動が多く、2006 FIFAワールドカップドイツ大会での採用は見送られた。
公式試合球
FIFAワールドカップ
- 1970年: テルスター
- 1974年: テルスター
- 1978年: タンゴ
- 1982年: タンゴ・エスパーニャ
- 1986年: アステカ
- 1990年: エトルスコ・ユニコ
- 1994年: クエストラ
- 1998年: トリコロール
- 2002年: フィーバーノヴァ
- 2006年: チームガイスト
- 2010年: ジャブラニ
- 2014年: ブラズーカ
脚注
- ↑ マイター - 空気の入れ方
- ↑ テンプレート:Cite news
- ↑ 白黒の亀甲型のボールが一般的になったのはいつから? - 日本サッカー協会
- ↑ 読売新聞2014年2月1日夕刊8面「ふしぎ科学館」