エアバスA350
テンプレート:改名提案 テンプレート:Future aircraft テンプレート:Infobox 航空機 エアバスA350 (Airbus A350) は、A300・A330/A340の後継機としてエアバス社が開発を進めている次世代中型ワイドボディ旅客機。ボーイング社の787 ドリームライナーや、777-8X/-9Xに対抗するために計画されている。
2014年の運用開始が予定されている[1]。
初期の構想
エアバスは、A300やA330といった自社の旅客機の後継機種、より直接にはA330やA340の市場を大型双発機777や新型機787で席巻しつつあるライバルボーイング社の対抗機種として、新しい世代の中型双発機を開発しようとしていた。これが初期のA350型機であるが、その大まかな特徴は以下のようなものであった。
これらの特徴を持ち、「ライバル787と同等以上の性能の機体を、より安価で容易に開発する」とした初期のA350構想は、3つの派生形からなるファミリーとなる予定であった。
- A350-800 基本型。航続距離15,900km、3クラスで245座席。
- A350-900 A350-800の胴体延長型。航続距離13,900km、3クラスで285席。
- A350-1000 A350-900の胴体を更に延長した型。
エアバス社としてはA380に開発資源を集中する必要があり、全くの新規設計から始めることは困難な事情があった。開発予算は30から40億ドル程度の予定であった。 しかし、テンプレート:誰範囲、この機体に対し発注の意向を示したシンガポール航空やILFCは、より設計の詳細を詰める段階で機体設計のやり直しを要求し、テンプレート:要出典範囲、ライバル787に対して発注数で大きく水をあけられる状況であった。 この初期構想は顧客からの反応を見ながら数回の改訂が加えられている。
- 第一段階 胴体の主構造はA330と同等のアルミニウム合金、主翼は複合材主体。エンジンはRRのトレント1700あるいはGEnX。
- 第二段階 胴体の主構造材をアルミニウム・リチウム合金へ変更。
- 第三段階 胴体のフレーム構造を変更し客室内径を7.6cm(3インチ)拡大。これによりA330の胴体組み立て治具の大部分は流用不可能となった。A350-1000がラインナップに加えられたのはこの段階である。これまでのエアバス・ワイドボディ機と異なりキャビン最後尾部分の床面を完全にフラット化し同部床下にキャビン・クルーレストを配置できるようにした。
- 第四段階 機首形状をA380の空力実績を元に「頬がこけた」形状に調整しコクピット床下にコクピット・クルーレストを配置した。主翼前縁の曲線を鋭角化すること等を合わせ抵抗を削減、巡航マッハ数を0.82から0.83へ向上させた。
上記のような改訂を加え、航空機としての性能・経済性はA330に比べて大幅に改善されているにも関わらず受注は伸び悩み、製造ローンチできない状態が続いた。この段階で、予想される開発経費は概算で50億ドル強にまで増加していた。
A350XWBの登場
着々と発注を伸ばすB787に比べ受注に苦しんだA350は、2006年7月17日開催のファーンボロー航空ショーにて「エアバスA350 XWB(eXtra Wide Body)」として、完全に再設計された新たな計画として発表された。
- A300以来使用していた真円の胴体断面を捨て、新たにより太いダブルバブル断面を採用。ダブル・バブルのキャビン部分の半径は2.98mと、ロッキードL1011と等しくエコノミークラスは9列配置が可能となった。貨物室部分の半径は2.82mとこちらは従来型エアバスワイドボディ機と同じで、少しでも工作機械や治具を流用しようという意図が見受けられる。また、ダブル・バブル構造とすることで胴体下半分はLD3コンテナが二列積載できる最小限の断面に絞られており機体重量の軽減に寄与している。
- 新設計、全複合材製の高効率な主翼。主翼面積は従来A350の361m²からXWBでは443m²に拡張された。この値はボーイング777の424m²より大きい。
- ライバル787より多い座席数、大きな搭載量。胴体の拡幅により、エコノミー座席の標準配列が9列となったことでより多くの乗客を収容できるとしている。(実際には787もエコノミー座席を9列配置とすると公表しているエアラインが半分近くあり、この場合は収容力はほぼキャビン長によって決定される。ただし、A350XWBでは低運賃エアライン向けにエコノミー10列座席が提案されている)また、キャビン直径の拡大はキャビン天井裏のスペースの拡大ももたらし、コクピットクルー並びにキャビンクルーレストは天井裏に設けることが可能となった。これにより従来型エアバスワイドボディ機の様にクルーレスト設備が有償スペースを圧迫することが回避された。
- テンプレート:要出典範囲
また、この新たな計画のファミリーとしては次のものが発表された。当初最も小型の-800型が基本型と思われていたが、開発順序や派生型開発計画などから中間サイズの-900型が基本型であると考えられる。
- A350XWB-800 短胴型。3クラスで270座席。
- A350XWB-900 標準胴体長の形式。3クラスで314席。
- A350XWB-1000 A350XWB-900の胴体を延長した型。350席規模。最大離陸重量の増大に対応するため、この型は主脚が6輪式となっている。
この基本機種はそれぞれ航続距離8500nmi (15,800km) を計画をしていたが、設計が進むにつれ若干の変動を見ている。さらに将来構想としては以下のものも考えられている。
- A350XWB-900R A350XWB-900の航続距離延長型。想定航続距離9,500nmi (17,600km)。
- A350XWB-900F A350XWB-900の貨物型。貨物搭載量90t。
これら計画の総体、特に787より大きな機体サイズと新技術の積極採用という点から見て、787のみならず一回り大きな(そして今のところボーイングの独擅場である)777(-200・-300・-8X・-9X)の市場にも対抗できる機体を目指していることがうかがえる計画である。日本航空のように、A350を777の後継機として位置づけている航空会社も実際にある。この計画変更により胴体径が広くなるためか、後方の胴体絞り部などは従来のエアバス機のように胴体上部へ絞り上がっていく形でなく、ボーイング機などに見られる胴体中心部へ上部からも絞っていく形に変更されている。その一方で、フラップを内外二分割してドループ・エルロンと共に巡航中に独立して角度制御を行うことで揚力分布を最適化し巡航時の揚抗比を改善するなど新しい技術も取り入れられている。
787より大きな推力が要求される搭載エンジンとしては、ロールス・ロイスがトレント1700を強化し供給する覚書を締結している。ゼネラル・エレクトリックはGEnXでなく、より大きな推力を見込めるGP7200の派生型を供給する予定であった。しかしその後GE社とエアバス社の交渉は決裂しGEnX強化型あるいはGP7200派生型をA350XWBに提供する覚書は2008年10月現在結ばれていない。そのため、現時点ではA350XWBへのエンジン供給はロールス・ロイスの独占となっている。この背景にはGEがエンジン供給を独占して大きな利益を上げているボーイング777-200LR/300ER/および将来開発が予定されている同777-8X/-9XとA350XWB-900R/1000が直接競合する事になるためという事情があるためと考えられている。GEと共にエンジン・アライアンスに出資するプラット・アンド・ホイットニーはXWB向けGP7200派生型の開発に前向きな旨の表明をしているが、優先交渉権はGEnXにありGEがXWB型へのエンジン提供を最終的に見送った場合にGP7200のXWB向け提供の交渉を開始できると認めている。2009年5月にGE首脳は、「B787の飛行試験によってGEnXの燃費を含めた性能が示されれば改めてエアバスとの交渉に臨むだろう」という趣旨の発言を行った。この場合は-800および-900型向けに限ってのエンジン開発となるだろうと見られている。 また、エアバスはA350XWB-1000に搭載予定のエンジンであるロールス・ロイスTrent XWBについて、当社と共同でより性能の良いバージョンを開発し、この型に装備することを明らかにしている。
なお、同じ大型双発機であるA330とは補完関係にあるとされ、A330が中距離路線を主体とするのに対し、A350XWBは長距離/超長距離路線で真価を発揮するため、航空会社は運航する路線によって両機種を使い分けることになるという。A330は中距離機として依然人気が高く、A350XWBのローンチ後もA330の受注数を増やしている[2]。2014年7月にはA330の次世代型であるA330neoを開発することが決まった。ハワイアン航空はA350の発注を全てキャンセルしA330neoへ切り替えた。マレーシアのLCCであるエアアジアXはA350を発注しているがA330neoも発注した[3]。
このエアバスA350XWBの計画発表を受けて、シンガポール航空が2006年7月21日にA350XWB-900型20機の購入を発表した。2006年12月1日、親会社であるEADS社の役員会は本機の開発を承認した。およそ100億ユーロと見積もられる開発費分担の内訳は明らかにされなかった。
エアバス社は2007年9月に、構造並びに一部形状の変更を公表した。それによるとこれまでアルミニウム・リチウム合金製とされてきた胴体構造はカーボンファイバーのフレームリングとアルミニウム・リチウム合金のビームからなる骨組みにカーボンファイバーパネルを張り合わせた構造になり、ボーイング787とほぼ同等のカーボンファイバー使用率となった。また、機首形状が2006年のXWB型の最初のアナウンス時のデザインから変更され、A380の機首先端を切って取りつけた様な形状となっている。しかしフライトデッキはA380の液晶画面8面ではなく、より大型の液晶画面を6面用いた想像図が公開されている。 これら設計の変更に伴い胴体内寸に変更が見られる模様で、下記の仕様における胴体内径は現在エアバス社のHPの仕様表には記載がない。2009年1月14日にエアバス社はA350XWB型機の最終組み立て施設の着工記念式典を挙行し、そこで新たな外観が公表された。同社のホームページで参照できる。
2008年8月には搭載機器を含めた詳細な重量見積りの結果、-900型機で運行自重が従来予測より2.2t増大する見込みと公表されている。それと共に、-900型機の最大離陸重量は268tへと改訂された。
2008年8月12日現在、A350XWBは世界27社から452機の確定発注を受けライバルである787と同規模の受注を達成している。特に787の開発が、主翼の強度不足や試験飛行中の空中火災などで難航、納期が3年以上遅延しているため、就航予定時期等787の初期のアドバンテージはほとんど失われてしまっている。また、正式契約調印には至っていないが発注趣意書を発行されているものが106機ある。一方でGEエンジンの搭載が見送られたためにリース会社GECASの様に初期型A350計画からXWB型への契約移行を行なわず、発注を取り消されたケースもある。
2013年5月14日に飛行テスト用A350 XWB初号機(登録番号:F-WXWB)が組み立て、エアバスのデモ塗装を完了して、同年6月3日には地上でのエンジン始動を確認した。6月14日にはA350 XWB初号機がトゥールーズ=ブラニャック空港で初飛行を実施[4]し、その様子はエアバス社によってインターネット中継された[5]。
2013年10月7日に日本航空とエアバスは共同プレスリリースで、A350-900型機18機とA350-1000型機13機の確定31機、オプション25機の購入契約を締結したと発表した。初期の機体の引渡しから20年を経過し、機材更新の時期を迎えるボーイング777の後継機として、2019年より順次導入される予定[6] 。日本航空がエアバス機を発注するのは初めてのことである[7]。なおこれに先立ち日本では日本航空[8][9] と併せ全日空[10]もA350-1000に関心があるとの報道がなされていたが、全日空は2014年3月にボーイング777-9Xを発注することが決まった。
仕様
A350-800が787-9の、A350-900が777-200ER,777-8X,787-10の、A350-900Rが777-200LRの、A350-1000が777-300ER,777-9Xの競合機に当たる。
A350 | ボーイング機との比較 | |||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
-800 [11] | -900 [12] | -1000 | -900R | -900F | 787-9 | 787-10 [13] |
777-300ER[14] |
777-200LR | 777-200F | |
全長 | 60.7 m | 67.0 m | 74.0 m | 67.0 m | 67.0 m | 62.8 m | 68.9 m | 73.9 m | 63.7 m | 63.7 m |
全高 | 16.9 m | 16.9 m | 16.9 m | 16.9 m | 16.9 m | 16.5 m | 17.0 m | 18.7 m | 18.8 m | 18.6 m |
胴体幅 | 596 cm (235 in) |
596 cm | 596 cm | 596 cm | 596 cm | 574 cm (226 in) |
574 cm | 619 cm (244 in) |
619 cm | 619 cm |
キャビン幅 | 559 cm (221 in) |
559 cm | 559 cm | 559 cm | 559 cm | 546 cm (215 in) |
546 cm | 586 cm (231 in) |
586 cm | 586 cm |
乗客数 | 270(3クラス) 312(2クラス) |
314(3クラス) 366(2クラス) |
350(3クラス) 412(2クラス) |
310(3クラス) | 90 t (貨物機) |
250(3クラス) 290(2クラス) |
301(3クラス) 350(2クラス) |
365(3クラス) | 301(3クラス) | 103 t (貨物機) |
最大離陸重量 | 248 t | 268 t | 298 t | 298 t | 298 t | 247 t | 不明 | 351.534 t | 347.452 t | 347.450 t |
最大燃料 搭載量 |
129,000 L | 138,000 L | 156,000 L | 127,000 L | 不明 | 181,280 L | 202,287 L | 181,280 L | ||
就航速度 | マッハ0.85 903 km/h |
マッハ0.85 903 km/h |
マッハ0.85 903 km/h |
マッハ0.85 903 km/h |
マッハ0.85 903 km/h |
マッハ0.85 903 km/h |
マッハ0.85 903 km/h |
マッハ0.84 892 km/h |
マッハ0.84 892 km/h |
マッハ0.84 892 km/h |
エンジン 推力 |
74,000 lb ×2* | 83,000 lb ×2* | 92,000 lb ×2* | 92,000 lb ×2* | 92,000 lb ×2* | 68,000 lb ×2 | 88,200 lb ×2 | 115,300 lb ×2 | 110,000 lb ×2 | 110,000 lb ×2 |
エンジン | ロールス・ロイス トレントXWB | ロールス・ロイス トレントXWB | ロールス・ロイス トレントXWB | ロールス・ロイス トレントXWB | ロールス・ロイス トレントXWB | ロールス・ロイス トレント1000 GEnx |
ロールス・ロイス トレント1000 GEnx |
GE90-115B | GE90-110B1 | GE90-110B1 |
航続距離 | 8,300 nmi 15,400 km |
8,100 nmi 15,000 km |
8,000 nmi 14,800 km |
9,500 nmi 17,600 km |
5,000 nmi 9,250 km |
8,800 nmi 15,700 km |
不明 不明 |
7,900 nmi 14,630 km |
9,420 nmi 17,445 km |
4,990 nmi 9,065 km |
価格 | 1.89億ドル | 2.15億ドル | 2.42億ドル | 不明 | 不明 | 1.785億ドル | 不明 | 2.19億ドル | 2.37億ドル | 2.325億ドル |
*2007年10月迄の風洞試験の結果によりエンジンの離昇推力は-800で75,000lbから74,000lbへ、-900で87,000lbから83,000lbへ、-1000他で95,000lbから92,000lbへそれぞれ引き下げられた。
発注者
受注状況
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2014年4月30日時点 |
A350-800 | A350-900 | A350-1000 | 合計 |
34 | 589 | 189 | 812 |
年度別受注数と納入数
2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 | 2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 合計 | |
受注数 | 20 | 330 | 133 | 22 | 78 | -19 | ? | ? | 812 | |
納入数 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
コミットメント
日付 | 国旗 | 顧客 | 納入予定 | A350-800 | A350-900 | A350-1000 | TBD | 合計 | オプション | 報道 |
テンプレート:Dts | テンプレート:Sort flagicon | Air Caraïbes | 2017 | 3 | 3 | [58] | ||||
テンプレート:Dts | テンプレート:Sort flagicon | エミレーツ航空 | 2019 | 50 | 20 | 70 | ※2014年6月全機発注キャンセル | [59] | ||
テンプレート:Dts | テンプレート:Sort flagicon | ベトナム航空 | ? | 2 | 2 | [60] | ||||
合計 | 2 | 3 | 30 | 35 |
凡例
意味 | シンボル | 意味 | シンボル |
日付不明 | ? | 運行開始予定 | EIS |
ファームオーダー | 10 | コミットメント | 10 |
機種選定されず | 空欄 | 発注中止 | -10 |
脚注
外部リンク
テンプレート:Airbus aircraft テンプレート:Airbus A3xx timeline
テンプレート:Aviation-stub- ↑ Airbus A350 Deliveries May Slip a Few Months, EADS Says
- ↑ 月刊エアライン 2014年9月号 P28-29
- ↑ 月刊エアライン 2014年9月号 P28-29
- ↑ エアバスの次世代旅客機「A350」、初の試験飛行 AFPBBニュース(2013年6月14日)
- ↑ A350 XWB First Flight(生中継サイト) - 現在はアクセスできないが、同社YouTubeチャンネルで当日の録画映像が公開されている。
- ↑ 『JAL、エアバス社A350型機の導入を決定』2013年10月7日 日本航空株式会社、エアバス株式会社
- ↑ エアバスA300-600Rを運航していたことはあるが、これは旧日本エアシステムが発注した機材である。
- ↑ 日航、エアバス「A350」導入検討 4000億円規模 - 日本経済新聞 電子版(2013年3月24日)2013年6月7日閲覧。
- ↑ JAL、A350-1000を検討か - Flyteamニュース
- ↑ ANA chief says A350 'good candidate' to replace Boeing 777s - ロイター通信 2013年6月7日閲覧。
- ↑ Airbus goes for extra width - A350 XWB special report. Flight International
- ↑ Singapore Airlines orders 20 Airbus A350 XWB-900s and 9 Airbus A380s
- ↑ Boeing 787-10ER Technical Specification
- ↑ Boeing 777 Technical Specification. www.boeing.com
- ↑ Airbus.com: Orders and Deliveries (XLS)
- ↑ Airbus.com - Press Centre