山下財宝
山下財宝(やましたざいほう)とは、山下奉文大将率いる日本軍によって、終戦時にフィリピンに埋められたとされる莫大な埋蔵金についての都市伝説。
伝説
フィリピンで一般的に語り継がれている伝説では、東南アジア(主にビルマ)から徴発した金塊をシンガポールからフィリピンで中継し、日本本土に海上輸送しようとしたが、潜水艦や航空機による海上輸送路への攻撃が激しくなったため、隠しておいて、終戦後に引き上げようとしたところ、関係者が戦犯として処刑されたため在処の情報が失われたとされている。
また、山下財宝は日本が19世紀から1945年までかけて世界各地から略奪した財宝の一部であると主張する人々もいるが、この話はアジアの近・現代史を背景にした作品で著名な作家のスターリング・シーグレーヴが著した“The Yamato Dynasty”や“Gold Warriors”によって広く知られるようになったフィクションである。
「金の百合(ユリ)」 ("Golden Lily") と呼ばれる架空の財宝を巡るストーリーで、終戦までにその一部が秩父宮雍仁親王の監督下でフィリピンに分散して隠されたため、一部が今なおフィリピンに取り残されたままになっているといった内容であるが、虚実入り混ぜたシーグレーヴのストーリー展開の巧みさから、本当の話だと信じる人々が続出した。
実際に、1942年の米軍降伏時、ジャングルに大量に隠匿されたニッケル・インゴットや、また、フィリピンに入植した日本人が引揚げ時に埋めた財産等が、実際に見つかることもあって、こうした伝説が真実味を持ったという説もある。
フィクションとしては、ゲーム『メダル・オブ・オナー ライジングサン』や、ニール・スティーヴンスンの小説『クリプトノミコン』、クライブ・カッスラーの小説『ドラゴンセンターを破壊せよ』の舞台ともなっている。またテーブルトークRPG『ソードワールドRPGリプレイ・アンマント財宝編』においてパロディとして使われている。
実態
上記のような都市伝説ではなく、米軍上陸を前に決戦場と位置付けられていたフィリピンで計画された、金塊による兵站維持計画に関する記述を、太平洋戦争当時大本営の情報参謀を務めた堀栄三が自身の著書に残している。
堀栄三の記述によれば、山下財宝とは、上記の伝説にあるような東南アジアから徴発した金塊などではなく、フィリピンにおけるアメリカ軍の偽造通貨による経済攪乱(テンプレート:要出典範囲)に対抗し、テンプレート:要出典範囲、日本から送られたマル福(円形の金貨に『福』の字が刻印されているため)と通称される特製の金貨だった。山下大将の前任者である黒田重徳中将が軍司令官だった1944年(昭和19年)2月に、日本本土から空輸されたという[1]。
その総数は金貨二万五千枚と言われ[1]、テンプレート:要出典範囲
2万5千枚の丸福金貨は、第14方面軍司令部のおかれたマニラに保管された。1945年(昭和20年)1月のアメリカ軍ルソン島上陸後、約1万5千枚は方面軍司令部の転進に伴ってバギオへと輸送された。その後、バギオからも撤退する際にさらに北部の山中に移送されたものと推定されるが、堀によると輸送関係者が全滅しており、詳細は明らかでない。また、バギオへ運んだ以外の約1万枚については、バギオ以外の拠点や各部隊に分配されている[1]。
終戦後、入手の経緯は不明ながら、1950年(昭和25年)に日本国内でマル福金貨1枚を換金した者が出た。当時の価格で3万円になったという[1]。テンプレート:要出典範囲
イメルダ・マルコスの主張
1992年、不正蓄財の嫌疑をかけられたフェルディナンド・マルコス元大統領夫人のイメルダ・マルコスは、夫は山下財宝を発掘して財をなしたと主張した。それによると、1945年に結婚前のフェルディナンドは金の一部を売るために渡米し、1960年代から1970年代にかけての経済困難から国を助けるために、金の販売益を国費に投入した。また、夫が残りの金をルソン島北の彼らの家の壁を含むいくつかの場所に隠したと述べている。これに対して、フィリピン政府は否定も肯定もしていない [2]。
財宝の所有者
財宝探しをめぐってのトラブルが頻発するため、2007年からフィリピン政府は山下財宝探しの規制を強化し、これまでの届け出制から許可制としたが、それと同時に発見された場合の措置についても以下のように権利の配分が取り決められた。
- 文化遺産と判断された場合→国により全て没収
- 公有地で発見された場合→政府が75%、発掘者が25%
- 私有地で発見された場合→政府が30%、発掘者と地主で70%
許可の対象となるのはフィリピン国民もしくは資金保証のある団体(外国人も可)で、発掘にあたっては地主等の事前の許可と土地保全のための保証金の供託義務も生じる。有効期限は1年だが、申請すれば1年の延長も可能である。
脚注
参考文献
- 堀栄三『大本営参謀の情報戦記 情報なき国家の悲劇』