オリオン大星雲
オリオン大星雲[1](オリオンだいせいうん、M42、NGC1976)はオリオン座の三ツ星の南の小三ツ星の中央にある散光星雲である。肉眼で見える星雲の中で干潟星雲(M8)と並び最も明るいものの一つである。地球から約1,600光年の距離にあり、約33光年の実直径を持つと考えられている。低倍率の双眼鏡でもはっきりと見ることができる。肉眼では通常緑がかった色に見える。
オリオン大星雲の中心部には、4重星のトラペジウム (Trapezium) を主要な構成メンバーとする、非常に若い星からなる散開星団がある。ハッブル宇宙望遠鏡などの強力な望遠鏡による観測で、オリオン大星雲の中に塵の円盤に包まれた星が多数発見されている。これらの星は周囲に惑星系が形成される非常に初期の段階にあるものと考えられている。
オリオン大星雲を最初に発見した人物については諸説あるが、1610年にフランスのニコラ=クロード・ファブリ・ド・ペーレスクが観測したのが最初であるとする説が有力である。その1年前の観測でガリレオも星雲は確認できなかったものの、多くの微光星を発見している。プトレマイオスやティコは単独の3等星としており、星雲については言及していない。バイエルもオリオン座θ星とした。1656年ホイヘンスは独立に発見し「恒星の間に一つの記述に値する現象がある。私の知るかぎり誰も今まで気づかなかったもので、実際大望遠鏡でなければ見られないものである。オリオンの剣のあたりに、3つの星が密接している。1656年焦点距離23フィートの望遠鏡でこれらを偶然観察する機会があり、悪くない条件のもとで12個見えた。そのうち3個は密接し、さらに4個がある。これらが星雲を透して輝くので、その周囲は真っ暗な空の他の部分より一層明るくみえる」とした。ホイヘンスが言う4つの星はトラペジウムであり、彼は詳細なスケッチを残した。1789年ウィリアム・ハーシェルは、口径48インチの望遠鏡を向け「ぼんやりと点のようなものや、未来の太陽を作る混沌とした物質」と記した。ロス卿は「多くの微光星が埋もれる中央の部分は眼で見ると、すごい赤色をしめしている」と記した。
M42は、θ星が照らし出された、星間物質である。
オリオン大星雲は比較的大きい星雲であるため、経験の浅い観測者にとって撮影対象にされる事が多い星雲でもある。70mmF2.8程度の望遠レンズでフィルム感度ISO800で5分間ガイド撮影を行うと比較的容易に撮影できる星雲でもある。さらに、一眼デジタルカメラで撮影をすると、フィルム撮影のような長時間露出による感度低下がないため、露出時間はさらに短くできる(長時間露出をするとノイズが目立ってくるので、短時間で切り上げコンピュータ上で合成するのも常套手段になっている)。
肉眼でも、オリオンの小三つ星の中央の近くにぼんやりとした光のシミに見える。双眼鏡では淡い光の広がりが確認できる。トラペジウムに向かう暗黒の切れ込みが確認できる。口径6cm程度の望遠鏡でも、M43と合わせて、鳥が飛んでいる形に見えてくる。トラペジウムも確認できる。口径20cmでは複雑な暗黒帯の切れ込みがよりはっきりとわかりすばらしい眺めである。この口径から次第に緑色が見え始める。天体写真では赤い色を基調に青や黄色など色々な色が混じった写真をよく見るが、通常の天体望遠鏡では光量が不足してモノクロにしか見えないのが普通である。特に赤い色 (Hα) は人間の眼に感知しにくい色である。(小口径でも低倍率で赤い色を見たとの報告もあるが、これには論議がある)口径30cmで条件がかなりよければ、トラペジウムを5つの星に見ることができる。口径40cmでは全体が緑色に見える。口径50cmではほんの少し紅い色が混じってくる。ロス卿が言うとおりかなりの大口径では全体が赤く見える。
なお、色が見えるかどうかは個人差が大きく、誰でも色が見えるわけではない。
天体写真ではHSTのものを含めて中心部分は潰れてしまっているものがほとんどである。眼視観測はこの星雲中心部の複雑な様子を明らかにできる。
ギャラリー
- Orion Nebula - Hubble 2006 mosaic 18000.jpg
ハッブル宇宙望遠鏡で撮影したオリオン大星雲
- Trapezium cluster optical and infrared comparison.jpg
トラペジウム
- M43 HST.jpg
M43拡大写真
出典
- ↑ メシエ天体ガイドM42AstroArts