小栗康平
小栗 康平(おぐり こうへい、1945年10月29日 - )は、群馬県前橋市出身の映画監督である。群馬県立前橋高等学校、早稲田大学第二文学部卒。
1981年に『泥の河』で映画監督デビュー。以降、ほぼ10年に1、2本のペースで作品を発表する。作品数こそ極めて少ないものの、その特異な作品世界が高く評価されている。中でも、フランスのジョルジュ・サドゥール賞を日本人として初受賞するなど、海外での評価が圧倒的に高い。
来歴
大学卒業後、まずはピンク映画の世界に飛び込んだが、ほどなく浦山桐郎の下に弟子入りする。その後、フリーの助監督として、山本迪夫、大林宣彦、篠田正浩らの助監督を務めた。この間、1973年に、特撮テレビドラマ『流星人間ゾーン』で監督を務めている。
1981年1月に、宮本輝原作の『泥の河』を監督。大阪の安治川に暮らす人々の生活を、幼い少年の視点から、白黒の画面で切なくも端整に描いた作品である。同作により、1980年代以降の日本映画の鬼才として認識されることとなる。外国語映画賞にノミネートされた第54回アカデミー賞では受賞を逃したものの、モスクワ国際映画祭では銀賞を獲った。
1984年11月には、李恢成原作の『伽倻子のために』(かやこ -)を発表。在日朝鮮人の少年の恋愛と葛藤と苦悩をリアルに描いた、青春映画である。これまでの日本映画と完全に異なり、在日の人の物語を極めて自然に描くことに成功し、賞賛された。この作品で、フランスのジョルジュ・サドゥール賞を日本人として初受賞した。
1990年4月、島尾敏雄原作の『死の棘』を発表。小説家・敏雄の不倫を知った妻が発狂すると言う私小説を映画化した、非常にショッキングなドラマである。原作者の島尾は、大島渚や篠田等からの同作の映画化の依頼を、頑なに拒否していた。ところが処女作『泥の河』を賞賛し、小栗には映画化を認めた。同年5月の第43回カンヌ国際映画祭では、グランプリと国際映画批評家連盟賞をダブル受賞した。
1996年2月、役所広司主演の『眠る男』が公開。意識不明となって延々と眠る男を巡るドラマで、群馬県が製作(全額出資)し、群馬県中之条町で撮影された異色作で、ご当地映画のパイオニアと位置付けられている。第47回ベルリン国際映画祭では芸術映画連盟賞を、第20回モントリオール世界映画祭では審査員特別大賞を受賞した。
2005年6月、『埋もれ木』を発表する。岸部一徳や浅野忠信ら、異色のキャストにより、田舎を舞台に不思議な物話が語られるファンタジー。主演の女子高生三人(夏蓮、松川リン、榎木麻衣)を一般公募で選出した。同年5月に第58回カンヌ国際映画祭の監督週間部門に出品された。
学歴
- 群馬県立前橋高等学校卒業。
- 早稲田大学第二文学部演劇専修卒業。
監督作品(映画)
監督作品(テレビ)
- 『流星人間ゾーン』1973年
脚本(テレビ)
- 『流星人間ゾーン』1973年
- 第15話「「沈没!ゴジラよ東京を救え」(監督・古澤憲吾)。共同脚本・胡桃哲。クレジットは胡桃、小栗の順。
DVD
- 『DVD-BOX 小栗康平監督作品集』販売元:松竹株式会社ビデオ事業室
- 『埋もれ木』販売元:松竹株式会社ビデオ事業室
- 『流星人間ゾーン DVD-BOX 』販売元:タキ・コーポレーション
著書
- 『哀切と痛切』径書房、1987年1月。平凡社[平凡社ライブラリー]、1996年10月。ISBN 458276164X
- 『アフリカから日本へのメッセージ』 センベーヌ・ウスマンとの共著、岩波書店〈岩波ブックレット〉、1989年。
- 『見ること、在ること』平凡社、1996年11月。ISBN 4582282334
- 『映画を見る眼』日本放送出版協会、2005年6月。ISBN 4140810513
- 『時間をほどく』朝日新聞社、2006年7月。ISBN 4022502118
2005年12月号より、グラフ文化誌『風の旅人』(ユーラシア旅行社)に「見ようとする意思」連載中。
受賞歴
- 1981年 - 『泥の河』
- 1982年 - 『泥の河』で、第5回日本アカデミー賞最優秀監督賞、優秀作品賞。
- 1984年 - 『伽倻子のために』
- ベルリン国際映画祭 国際アートシアター連盟賞。
- ジョルジュ・サドゥール賞(フランス、日本人初受賞)。
- 1990年 - 『死の棘』
- 1991年 - 『死の棘』で、第14回日本アカデミー賞優秀作品賞、優秀監督賞、優秀脚本賞。
- 1996年 - 『眠る男』
- 第47回ベルリン国際映画祭 芸術映画連盟賞。
- 第20回モントリオール世界映画祭 審査員特別大賞。
- 第38回毎日芸術賞。
- 第20回山路ふみ子文化賞。
- 第70回キネマ旬報日本映画監督賞。
- 1997年 - 『眠る男』で、第20回日本アカデミー賞優秀監督賞。
- 2006年秋の紫綬褒章を受賞。