TAMA300
TAMA300(タマ300)は1995年に始まったTAMA-Projectによって研究開発された重力波望遠鏡である。設置場所の国立天文台三鷹キャンパスがある多摩地域にちなんで「TAMA」と名づけられている。「300」はレーザー干渉計の基線の長さが300メートルであることから。
概要
このプロジェクトの目的は、将来のキロメートルスケールの干渉計に必要な技術開発と、我々の銀河系を含む局所銀河群で運良く起こるイベントからの重力波を検出することである。特に、レーザー光のエネルギーを増幅するために、リサイクリングと呼ばれる技術を用いており、安定かつ単一波長のレーザー光を用いた極めて精度の高いファブリペロー型マイケルソン干渉計 (FPMI) である。
ファブリペーロー型マイケルソン干渉計は、90度(垂直)に交差する光路と、光路内に取り付けられた反射鏡からなる装置である。レーザー光源から発せられたレーザー光は、リサイクリング装置で増幅される(光源出力0.5Wから20Wまで)。このレーザー光を、光路内で往復させることで、干渉縞を得る。もしも、途中に重力波などが通過した場合には、等価原理によって重力波による空間の歪みが生じる。この空間の歪みによって、生じる光路差によって、光波にはうねりが生じる。このうねりによって、干渉縞が生じる仕組みである。光路内部は、干渉縞を得るために高度真空状態とし、センサーにおける熱雑音の影響を避けるために、低温にて運用を行う必要がある。また、干渉計の基線長の長いものほど、長い波長の干渉縞を得やすい。
低温技術
装置全体の熱雑音を抑えると同時に精度の高い干渉縞を得るため、低温技術を用いた設計がなされている。これは新規に設置された観測装置において用いられている技術で、高精度受信素子、冷却CCDや赤外線観測装置、X線、ガンマ線領域でも行われている。熱雑音による精度の低下はその装置自身が持つ温度をピークとした輻射が存在するために生じるが、この影響を限りなく少なくするための技術である。
現在
現在は文部科学省科学研究費補助金・特定領域研究によって推進されている「重力波研究の新しい展開」に基づき、東京大学宇宙線研究所の神岡実験施設内に設置した、高感度検出を目的としたLISMの実証試験が完了している。さらには、銀河系内の重力波発生イベントを観測するCLIO、および同じ原理を用いて地球の中心部にある核の動きを捉える「地球ひずみ計」のプロジェクトが進行中である。
将来
現在、LCGT計画を実施するためのTAレポートが完成し、次の段階に向けた準備が進められている。[1]
その他の重力波望遠鏡
- LCGT(日本) - レーザー干渉計の基線長は3キロメートルで計画されている。
- GEO600(イギリス・ドイツ) - レーザー干渉計の基線長が600メートルである。
- LIGO(カリフォルニア工科大学・マサチューセッツ工科大学) - レーザー干渉計の基線長が4キロメートルである。また、2箇所に設置された望遠鏡で観測を行う。
- VIRGO(フランス・イタリア) - レーザー干渉計の基線長が3キロメートルである。
- LISA (NASA・ESA) - LISAは "Laser Inferometer Space Antena" の略称であり、宇宙重力波望遠鏡(アンテナ)である。基線長は500万キロメートルを計画中。現在、国際協力によって開発が進められている。2015年に宇宙へ打ち上げられ、人工惑星軌道へ投入され観測を開始する予定。
- DECIGO (日本) - DECIGOは "Deci-hertz Interferometer Gravitational wave Observatory" の略称である。0.1Hzから10Hz程度の重力波を観測できる宇宙重力波望遠鏡で、日本におけるLCGTの次の将来計画となっている。
- ACGA(オーストラリア) - 現在、LIGOプロジェクトから指導を受けて準備中のようである。
関連項目
参考文献
外部リンク
- TAMA Project - 国立天文台重力波プロジェクト推進室
- LCGT Project - 東京大学宇宙線研究所重力波グループ。高エネルギー加速器研究機構、東京大学地震研究所、京都大学理学部地球物理学科、国立天文台、東京大学附属宇宙線観測所神岡実験推進部の共同プロジェクト
脚注
- ↑ LCGT計画とは、"Large-scale Cryogenic. Gravitational-wave Telescope"の略称であり、現在概算要求及び技術的な検討が進められている重力波望遠鏡のことである。この開発には、国立天文台を初め、東京大学宇宙線研究所や他大学、更には精密機器メーカとの協力によって推進されているプロジェクトである。現在、神岡鉱山(スーパーカミオカンデ、カムランド、CLIO等の観測機器が設置されている)の坑道内に、3Kmの干渉長を持つ真空チャンバー、20Kの低温鏡、150Wのレーザ装置からなる観測装置の設置に向けた検討が進められている。近い将来、グローバルな重力波検出のネットワークとして運用が行われる予定である。