ディメトロドン
ディメトロドン (Dimetrodon) はペルム紀前期に現在の北アメリカに生息していた単弓類。単弓綱・盤竜目(ペリコサウルス目)・真盤竜亜目・スフェナコドン科。学名は、ラテン語で「2種類の長大な歯」の意。以前はヂメトロドン、ジメトロドンとも表記されたが、現代では廃れている。
特徴
全長1.7 - 3.5m、体型はトカゲ型だが、背に脊椎が伸びて形成される「帆」を有し、体温調節やディスプレイに用いていたと想像されている。
当時の盤竜類としては、細い体幹と尾、長い四肢を持ち、活動的な捕食者であったと考えられている。
恐竜ではない
しばしば「帆を持つ恐竜」と称されることがあるが、恐竜ではない。 ディメトロドンは生きていた時代が恐竜よりもさらに昔であり、そもそも恐竜とは主竜類のうち足を直立させ闊歩するものを指すのであり、ディメトロドンはこれに当てはまらない。
帆
ディメトロドンの最大の特徴は、伸長した脊椎の神経棘である。この棘の間には帆が張られていたと考えられている。これは、性的なディスプレイに使用されたとも言われているが、この帆には多数の血管が走り、大量の血液が供給される様になっている。その為、この帆は熱交換器としても機能していたとされる。つまり、体温が低い朝方には日光を浴びて熱を吸収し、体温が上昇しすぎた際には風に当てて身体を冷やしていたと考えられている。
1973年、英国リーディング大学のブラムウェルとフェルゲットは、ディメトロドンの体重を 250kg と仮定した際の、帆の有無による体温の変化を試算した。その結果、体温が摂氏26度から32度まで上昇するのに必要な時間は、帆の無い場合205分かかったのに対し、ある場合は80分まで短縮された。これにより、朝方体温が低く、活発に動けない獲物を容易に捕食できたと考えられている。
ちなみにスフェナコドン科のメンバーは、全体的に神経棘が伸びる傾向がある。セコドントサウルス属も帆を有し、またスフェナコドン属も、帆にまではなっていないものの、棘突起は椎体の5倍ほどまで伸びている。
現代の哺乳類との関係
ディメトロドンと現代の哺乳類は、一見した所何の関連も無さそうな生物に見える。しかし、この両者の間に共通する特徴としては、その異歯性が挙げられる。ディメトロドンは、その学名の通り、突き刺し用の犬歯及び肉を切り裂く歯という異なった用途の二種の歯を持ち、捉えた獲物を効率的に咀嚼していたと考えられている。この形質は、後に哺乳類に受け継がれるものである。
分布
主な種
- Dimetrodon limbatus.jpg
D. limbatus (Cope 1877) テキサス州で発見された種。全長2.6m。
- Dimetrodon grandis.jpg
D. grandis (Case 1907) テキサス州で発見された大型種。全長3.2m。低い頭蓋骨が特徴。
関連項目
- エダフォサウルス - ディメトロドン同様、背中に帆状の突起を持つ盤竜類。エダフォサウルス科。ただし、系統は遠い。石炭紀後期からペルム紀前期にかけて生息していた。同科のイアンタサウルスなども帆を持っていた。
- セコドントサウルス - スフェナコドン科。魚食性。同様に背中に帆を持つ。
- プラティヒストリクス - 両生綱・分椎目。背中の皮骨質の装甲板が帆状に伸長していた。ペルム紀前期に生息。
- スピノサウルス - ディメトロドン同様、背中に帆状の突起を持つ肉食爬虫類。こちらは恐竜である。白亜紀前期。
参考文献
- 金子隆一 『哺乳類型爬虫類 : ヒトの知られざる祖先』 朝日新聞社〈朝日選書〉、1998年、ISBN 4-02-259709-7。テンプレート:Paleo-stub