分隊支援火器
テンプレート:Multiple image 分隊支援火器(テンプレート:Lang-en-short)もしくは軽支援火器(テンプレート:Lang-en-short)は、分隊を火力支援するために容易に携行することが可能で、小銃弾以上の銃弾を使用する機関銃である。
汎用機関銃または軽機関銃と類似もしくは重複するカテゴリだが、比較的小型軽量で1人で運用するものを差すことが多い。
概要
分隊支援火器の基本的な運用法は、行軍時の野戦において弾幕を張ることで敵歩兵に頭を上げさせない火力制圧を行なうものである。この援護射撃によって敵の攻撃行動を抑制し、味方の攻撃の自由度を確保する。また、敵の強襲に対する防御に使うこともできる。
分隊支援火器は基本的に1人で携行でき、従来の軽機関銃よりさらに軽量であるが、連続射撃性能や堅牢性では一般に劣る。汎用機関銃、または重機関銃は、その重量ゆえに攻勢に伴う移動にあまり適さず、三脚を用いて陣地の守備に用いられることが多いが、分隊支援火器は部隊移動を伴う野戦において二脚に載せて使用されることが多い。分隊支援火器は陣地防御のような用途には向かず、そのような使い方は設計・運用思想とも合わない。
いくつかの分隊支援火器、たとえばロシア(ソ連)のRPK-74やイギリスのL86は、アサルトライフルを連続射撃が行なえるように大きくしたものである。また、アサルトライフルと構造が似ているため、操作・整備技術の習得を早める効果があるとされる。おおむね、分隊支援火器は、次の3通りの基本パターンに分類できる。
- アサルトライフルからの発展型
- 専用設計型
- 最初から個人携行用の分隊支援火器(軽機関銃)として設計されているもの。ミニミ軽機関銃、ブローニング自動小銃BAR、RPD軽機関銃など。
- ストーナー・ウエポン・システム型
- 部品の組み合わせにより、アサルトライフルにも軽機関銃にもなるタイプ。XM8など。
どの形式においても、戦闘部隊への補給の単純化・効率化を考慮して、弾薬はアサルトライフルと共通のものが使用され、アサルトライフルの弾倉をそのまま装備できるものも多い。
運用思想
- 初期の分隊支援火器
- 分隊支援火器という言葉は第一次世界大戦から第二次世界大戦後しばらくまで、アメリカ軍で使用されたBARを指す言葉だった。このころのアメリカ軍は軽機関銃の配備が遅れていて、小銃と軽機関銃の中間的な能力をもつBARの火力が分隊火力の中核だった。
- アサルトライフル
- アサルトライフル時代の分隊支援火器を理解するには、アサルトライフルの運用思想を理解する必要がある。
- アサルトライフルは、通常はフルオート(連続)射撃が可能であるが、特に新兵など興奮しすぎた兵士は、戦闘においてあっという間に弾薬を使い果たしてしまう。また、フルオート射撃時にはアサルトライフルの小型軽量さが災いして反動が激しくなり、当然命中精度は低くなる。従って、多くの軍隊では一般兵士に対して、大規模な突撃または待ち伏せ攻撃以外の時には、フルオートを使用しないように教育している[1]。このような弾薬消費を抑える努力や工夫によって、兵站への負担軽減と弾薬を携行する前線兵士の疲労も同様に軽減できる。
- 分隊支援火器、軽支援火器
- しかしこの運用思想では、味方の突撃時に弾幕による制圧射撃が弱いか、または無いという問題が生じた。分隊支援火器は、この問題を解決するために、機関銃を突撃時にも携行できるようにする、という発想から生まれた。この武器の登場と、それを扱う専門の援護射撃兵の教育により、個々の兵士は弾薬を節約することができ、訓練時間を短くすることができ、かつ分隊が持つべき弾薬の重量を軽減することができた[2]。
利点
- 攻勢において弾幕による実効制圧力が増す
- 分隊支援火器の専門兵士がいれば
- 小型で持ち運びが容易な軽量の機関銃は、敵にとっては標的の特定と順位付けを行うのが難しい
- 二脚によって高精度の射撃ができる
- アサルトライフルと分隊支援火器での兵器システムの共通化
- 共通の弾薬を使用することで、兵站の負担軽減と戦場での融通が利く
- 両兵器の射撃と保守の訓練が軽減できる
- 機械としての信頼性が高まる
- 一部共通する部品については保守・修理で利便性が向上する
- 製造・取得コストの低廉化が期待できる
- 機関銃としては、使用する弾薬も含めて取得コストの低廉化が期待できる
欠点
- アサルトライフルと共通の弾薬、つまり汎用機関銃より低威力の弾薬を使用するため、射程・殺傷力が劣り、正面からの撃ち合いでは『力負け』する。
- 二脚架運用である以上、三脚架に固定された汎用機関銃と比較するとことさら命中精度に劣る。
- 従来の機関銃に比べると、強引に軽量化した分だけ構造的に無理が多く信頼性が低い。
- 従来の機関銃とまったく互換性のないパーツ・弾薬を全軍に適切に供給し続けなければならない。
- アサルトライフルと共通化された分隊支援火器の場合、「アサルトライフルに毛が生えた」程度のものにしかならず、射程・殺傷力・命中精度の不足が拡大した上に、銃身交換ができないため連射性にまで問題が生じる。
- 機関銃手ともまた異なる分隊支援火器の専門兵士を、全軍の各分隊に十分配属できるようかなり大量に育成する必要がある。
日本での運用
日本において近年まで分隊支援火器の役割を果たしていたのは62式7.62mm機関銃である。
一般に7.62mmの弾薬を使用する機関銃は汎用機関銃として運用されるが、64式7.62mm小銃と共通の弱装弾を用いるため、分隊支援火器に近い運用がなされていたのである。 89式5.56mm小銃が採用され、弾薬が5.56mmに変更されると、それに合わせてベルギー製のミニミ軽機関銃を住友重機械工業がライセンス生産し、5.56mm機関銃MINIMIとして配備され、62式機関銃との代替が進みつつある。ミニミは、アメリカ軍でほぼ同じものがM249として採用されており、もちろん弾薬も共通である。