ブックカバー
ブックカバーとは、日本では、書籍やノート等の表面を保護あるいは飾るために表紙の更に外側にかける覆いのこと[1]。英語では"dust jacket"、"book jacket"、"dust wrapper"、"dust cover"などと呼ぶ。"book cover"は表紙のことである。工場出荷時からついているものと、購入時または購入後につけられるものとがある。共につけられ二重になることもある。
工場出荷時のカバー
工場出荷時から付いているカバーで、当然、流通時や店頭陳列時にもついている。本という商品の一部である。
カバーのある本とない本
上製本(ハードカバー)では基本的にカバーが付けられるが、皮装本では手触りが損なわれるためカバーがないことも多い。雑誌は、コスト削減と製造工程の簡素化のため、カバーはない。洋書の並製本(ペーパーバック)には基本的にカバーがない。
文庫・新書などの並製本は、かつてはカバーはなかったが、一般的にはカバーと呼ばれないがグラシン製(いわゆる「蝋引き紙」)の薄い半透明のカバーが付いていた。1950年代にカッパブックスがそれぞれにデザインの異なったカバーを付けて話題となり、カバーの付いた新書が出はじめた。文庫の場合も映画化に合わせて増刷する場合などにカバーを付けるなど徐々に増えはじめ、1990年代以降は文庫・新書のカバーが一般的となった。
カバーの役割
紙のカバーをかけると外観はカバーしか見えないため、通常なら本の表紙・裏表紙・背表紙が果たす機能がカバーに求められる。カバーにはタイトル、著者、出版社、価格、バーコード、ISBN、レーティングなど、本を売る上で必要な情報が書かれる。また、購入者に訴求力のあるデザインが凝らされる。そのため装幀家にはその作品を理解した上でのカバーデザインが求められる。それに対し、本体の表紙・裏表紙・背表紙のデザインは非常に簡素になる。無地や、簡単な幾何学模様、カバーをモノクロにしたデザインなどが多い。但し、漫画単行本の場合は本体の表紙・裏表紙をあたかも中のページの一部のように扱い、書き下ろし漫画などを掲載する場合もある。
ただしこれらは紙のカバーだった場合で、透明フィルムのカバーの場合は、何もデザインされないものとその透明性を生かし本体の表紙をいかしたデザインに二分される。
本を保護する機能が求められる。既に作られた本の汚れを取る事は困難でもカバーの汚れは交換すれば良い。そのために返本されたものもカバーの交換によって本は再び新品に近いものとなり、新たに流通のサイクルにのる。また、本の価格改定時や消費税率改定の際にも、カバーの差し替えだけで対応できるよう、価格はカバーにしか書かれない。カバーのない本の場合は、箱がその役割を果たすことがある。
また、文庫本の小説などでは、映画やテレビドラマにされたときに、タイアップのためにそのときに限ってカバーを(重要な役を演ずる俳優の写真などに)差し替えて販売することもある。そのため、同じ本でも、複数のカバーが存在することも珍しくない。
購入時・購入後のカバー
本の痛みや汚れを避けるための、あるいは読んでいる本が何かを周囲に分からせないようにするためにかける。書店で購入する際に店側がかけてくれるもの、書店や文具店などで売られているものに大別出来る。
購入時のカバー
ほとんどの場合紙だが、稀に透明フィルムのカバーも存在する。一部では「書皮」という呼ばれ方もする。
その書店のオリジナルデザインのものや取次店が出しているもの、出版社が出しているもの、1990年代より広まった広告が印刷されているものなどがあり、バラエティに富んでおりブックカバーのコレクターなども存在する。ただし経費削減のため、オリジナルのブックカバーを使う本屋は少なくなっている。
書店でカバーをかけるのは日本だけの習慣である。かつては韓国でも同じ習慣があったが、1993年頃に「ゴミ減量運動」が起こり、無くなった[2]。
購入後のカバー
書店や文具店などで販売されており、布、革、プラスチックなどで出来ている事が多い。中には自作のブックカバーを用いる者もいる。書店や出版社の中には、サイトでブックカバーの画像を配布しているところもあり、そうしたブックカバーを印刷し、使用する場合もある。
出典
- ↑ 意匠分類定義カード(F3) 特許庁
- ↑ 出版ニュース社編『「カバー、おかけしますか?」‐本屋さんのブックカバー集』出版ニュース社、2004年、21頁。ISBN 4785201150