マダラ
マダラ (真鱈、英: Pacific cod、Gadus macrocephalus)は、タラ目タラ科に属する魚類。タラ・ホンダラなどとも呼ばれる。全長1.2 m。北太平洋に広く分布する大型のタラで、重要な漁業資源となっている。
分布・生息域
黄海、日本海、東北地方以北の太平洋岸、北はベーリング海、東はカリフォルニア州まで北太平洋に広く分布する。沿岸から大陸棚斜面の底近くに生息する。夏は深場に移り、水深800mくらいの深海にも生息するが、産卵期の冬は浅場に移動してくる。地域個体群が形成される[1]が、個体群間の交流はほとんど無いとされている[2]。
形態・生態
冷水域に生息し、生息上限水温は約12℃と推定されている[3]。最大で全長120 cm体重23kg程度[4]に達し、日本に分布するタラ類3種の中では最大種である。体色は褐色で、背側にまだら模様がある。スケトウダラやコマイと同様、下顎には1本のひげがあり、背鰭3基、臀鰭2基を備える。上顎が下顎より前に出ている。また、頭身が小さく、腹部が大きく膨らむ。
肉食性で、稚魚期は主に浮遊生物のカイアシ類、十脚類幼生等を、全長45mm以上になると底生生物の端脚類や十脚類稚仔を捕食している[3]。
高緯度海域ほど成熟するまでに長い年数を必要とし、ベーリング海からカムチャッカ沖では5年 約60cm~70cm以上で有るが中緯度の東北沖やワシントン州では3年 40cm程度である[2]。北海道周辺海域での産卵期は12月-3月で、分離沈性卵を産卵する。1匹のメスの産卵数は数十万-数百万個に及び、これは魚類の中でも多い部類に入るが、成長できるのはごくわずかである。また、初回産卵魚は卵は大きさが小さく、産卵が遅れる、孵化率が低い、生存率が低いとの報告もある[2]。
稚魚は1年で全長20cmほどに成長するが、この頃までは沿岸の浅場で生活し、以後体が大きくなるにつれて深場へ移動する。
近縁種
- 大西洋マダラ
- 学名: G.morhua(Trippel,1995)、北部大西洋に分布する。
人との関わり
北海道有珠10遺跡の縄文時代晩期の層からマダラの骨が出土し、耳石の分析から冬期に接岸した個体を捕獲し食用にしていたと推定されている[5]。
日本における利用
底引き網、定置網、延縄、釣りなどで漁獲される。20世紀後半頃からは輸入ものが多く流通している。富山県[6]などでは稚魚放流により資源回復を計る活動が行われている[7]。
旬は冬。身は柔らかく脂肪の少ない白身で、ソテーやムニエル、フライなどの他、汁物や鍋料理にもよく使用される。身を干物にした「棒鱈」(ぼうだら)も様々な料理に使われる。生のものを料理する際は傷みが早いことと身が柔らかいことに注意する必要がある。
また、白子(しらこ)と呼ばれる精巣もこってりとした味で珍重され、流通する際はメスよりオスの方に高い値がつく。白子は「キク」「キクコ」などとも呼ばれるが、これは房状になった外見がキクの花に似るためである。北海道では「タチ」(マダラは真ダチ、スケソウダラは助ダチ)とも呼ばれ、新鮮なものが寿司ねたなどで生食されている。
マダラのたらこ(卵巣)はスケトウダラよりも硬いが、未熟なものは柔らかくスケトウダラよりも大型でボリュームがあるため、煮付けや焼き物、炒め煮にすると美味である。北陸地方では「真子(まこ)」と呼ばれ良く食される。
その他、マダラやスケトウダラの胃を唐辛子などの香辛料、砂糖、塩などに漬け込んだものを韓国ではチャンジャといい、コリコリとした食感を楽しむ。
陸揚げ漁港
出典
- マダラ(学名: Gadus macrocephalus ) 水産総合研究センター
脚注
- ↑ 東北地方および北海道太平洋側海域におけるマダラの系群構造 日本水産学会誌 Vol.67 (2001) No.1 P67-77
- ↑ 2.0 2.1 2.2 テンプレート:PDFlink
- ↑ 3.0 3.1 森岡泰三、 桑田博:七尾湾北湾とその沖におけるマダラ稚魚の生息上限水温と食性 日本水産学会誌 Vol.68 (2002) No.3 P345-350
- ↑ FishBase_Gadus macrocephalus
- ↑ 耳石にもとつくマダラ (Gadus macrocephalus) 漁期の研究 有珠10遺跡出土マダラ耳石について 人類學雜誌 Vol.100 (1992) No.3 P331-339
- ↑ テンプレート:PDFlink
- ↑ 種苗生産過程におけるマダラ仔稚魚の体脂肪酸組成の変化 日本水産学会誌 Vol.61 (1995) No.5 P756-761