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株式会社ジャストシステム(テンプレート:Lang-en)は、徳島県徳島市川内町平石若松108番地4に本社を置くソフトウェア開発会社。通称「ジャスト」。
目次
概要・沿革
浮川和宣・初子夫妻が1979年(昭和54年)に創業した。株式会社化は1981年。
1983年(昭和58年)、PC-100対応日本語ワープロソフト「JS-WORD」を開発したことを契機に日本語ワープロソフトの開発・販売に進出し、1985年(昭和60年)には同社の看板製品となる「一太郎」を発売。以後、バージョンアップを重ねるごとに人気を高め、一太郎はDOS版日本語ワープロの代名詞的存在となった。
コンピュータ上の日本語処理について、熱心に研究に取り組んでおり、同社のかな漢字変換ソフトウェア「ATOK」は最高水準の変換精度を有する。また、日本から唯一、Unicodeコンソーシアムに参加している企業である。
XML関連技術の研究開発に積極的に取り込んでおり、複合XMLドキュメントのプラットフォーム技術xfy(エクスファイ)を製品化している。
一太郎・ATOKを核として、オフィス製品、教育市場向け製品など多種多様なソフトウェアを販売している。
Windowsがまだ普及していなかった時期に浮川和宣は「アプリケーションソフトウェアメーカーはウィンドウシステムを持つべき」との持論を展開した。それによりジャストウィンドウが開発された。MS-DOS用に作られた既存のアプリケーションソフトウェアもジャストウィンドウ専用のものに改められ、さらに他のアプリケーションソフト群も開発し、ジャストウィンドウの拡充を行った。ジャストウィンドウはWindowsが広まる以前に日本でほぼ唯一かつ最も使われたウインドウシステムとなった。しかし、独自のジャストウィンドウに対応するアプリケーションソフトの独力拡充の必要に迫られ開発資源の散漫化、Windowsの普及を背景にMicrosoftがMicrosoft Officeの販売に注力したこともあり、シェアが一気に低下してしまった。
Windows向けアプリケーション市場ではマイクロソフトの攻勢を受けて苦戦しており、日本語処理技術の蓄積を武器にニッチ市場を開拓することで事業を展開している。過去のシェアを活用して継続性が重視される法人向けに軸足を移している。2003年(平成15年)5月には、Linux向けの一太郎・ATOKを皮切りにデスクトップ製品、サーバ製品を展開することを発表した。2005年(平成17年)1月には「一太郎 for Linux」「ATOK for Linux」を発売している。
2006年(平成18年)6月、英文社名を Justsystem Corporation から JustSystems Corporation に変更。同年9月、新コーポレートシンボル「JUSTSYSTEMS.」を導入する。
2006年(平成18年)10月3日、同年11月17日に総合セキュリティソフトの「Kaspersky Internet Security 6.0」とアンチウイルスソフト「Kaspersky Anti-Virus 6.0」を発売しセキュリティソフト市場に参入すると発表。
また、東京支社には出版部がある。ユーザー向け情報誌「ジャストモアイ」を1989年から12年間[1]発行していたほか、自社製ソフトやコンピュータ関連の解説書、ビジネス書やSF小説などの各種一般書の発行を行っている。
かつてはインターネットサービスプロバイダ「JustNet」を運営しており、1996年に3月サービスを開始した。2000年(平成12年)3月にジャストシステムよりウェブオンラインネットワークスとして分社後、2001年(平成13年)9月にソニーコミュニケーションネットワーク株式会社(現・ソネットエンタテインメント、So-net)へ売却し撤退した。同社は2002年4月に吸収合併され統合された。
2009年(平成21年)4月3日、株式会社キーエンスとの資本・業務提携を発表。同年4月20日、キーエンスはジャスト発行済み株式の約44%を保有する筆頭株主になった[2][3]。またそれに伴い、同年6月には創業者の浮川和宣が会長に、浮川初子が副会長にそれぞれ退き、常務の福良伴昭が社長に昇格する人事を発表した[4]。
2009年(平成21年)10月29日、浮川和宣・初子夫妻がそれぞれ同社の代表取締役会長及び取締役副会長を辞任したと発表[5][6]。しかし、キーエンスの傘下となったことで、経営基盤が安定し、底値を付けていた株価は回復し、以後は後述する教育事業の好調などで、2012年以降4期連続最高益を更新するなど、業績が急回復している。
2011年(平成23年)になって、キーエンスとの提携を巡り、インサイダー取引が行われていた疑いが浮上。仲介したコンサルタント会社の社長らが、証券取引等監視委員会から、金融商品取引法違反容疑で強制調査を受けたことが発覚した[7]。
2013年(平成25年)8月8日より、本社機能を東京に移転。ただし、登記上の本店所在地は引き続き徳島 [8]。
2014年(平成26年)2月27日より、株式の上場市場をJASDAQから東証1部へ変更した[9]。
2014年(平成26年)3月21日より、2013年度入社の新卒有志により労働組合発足テンプレート:要出典。
2014年(平成26年)7月10日、ベネッセコーポレーションから漏れた顧客情報を利用していたと報道された(ベネッセ個人情報流出事件)[10]。
教育事業
ジャストシステムは、法人向けでは官公庁や教育施設などに強みを持っている。
2001年からは教育事業に参入し注力しており、数多くの教育、学習支援ソフトを開発してきた。その販路とノウハウを生かし、2012年11月より小学生向けタブレット通信教育システム「スマイルゼミ」を発表し、通信教育業界に参入[11]。タブレットを使用した学習システムという斬新さや時代の先見性などにより、会員数は順調に増加。後にベネッセ、学研などの同業他社が追随している。
2013年11月には中学生向け講座も発表し[12]、12月に受講開始した。
会社の現況
2014年3月31日現在[13]。
株式等の状況
- 発行済株式総数 - 6,422万4,800株
大株主
株主名 | 株数(千株) | 議決権比率(%) |
---|---|---|
株式会社キーエンス | 28,234 | 43.96 |
日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口) | 1,814 | 2.82 |
浮川初子 | 1,587 | 2.47 |
浮川和宣 | 1,269 | 1.97 |
福良伴昭 | 1,100 | 1.71 |
バンクオブニューヨーク メロン エスエー エヌブイ フォー ビーエヌワイ ジーシーエム クライアント アカウント イー エルエス シービー(常任代理人三井住友銀行) |
804 | 1.25 |
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 708 | 1.10 |
資産管理サービス信託銀行(年金信託口) | 675 | 1.05 |
ビ-エヌワイエム エスエ-エヌブイ ビ-エヌワイエム クライアント アカウント エムピ-シ-エス ジヤパン(常任代理人三菱東京UFJ銀行) |
600 | 0.93 |
BNP-PARIBAS SECURITIES SERVICES FRANKFURT BRANCH/JASDEC/GERMAN RESIDENTS-AIFM(常任代理人香港上海銀行東京支店) |
600 | 0.93 |
子会社
会社名 | 資本金 | 議決権比率(%) | 事業内容 |
---|---|---|---|
Justsystem Canada Inc. | 10百万カナダドル | 100.0 | 「XMetaL」製品等の開発・販売及びそれに付随する各種サービス提供 |
主要な製品
- JUST Suite - オフィススイート(これまでにもJustsystem Office、一太郎Officeが存在した)
- 解決!まるっと復元 - ファイル復元ソフト
- 楽々はがき - はがき作成ソフト
- 大地 - DTPシステム
- シルエット - グラフィックソフト
- ラベルマイティ - ラベル作成ソフト
- ジャストホーム - 家庭用ソフト
- Office Manager2 - グループウェア
- JOSS - グループウェア
- Concept Search - デスクトップ情報検索ソフト
- Concept Base - 自然言語検索システム
- BeatJam - 音楽ファイルの再生・管理
- MegaVi TV - テレビ番組録画・編集ソフトウエア
- xfy Enterprise Solutions - 統合XMLアプリケーション開発/実行プラットフォーム
- Trustia - テキストマイニングソフト
- InternetDisk - オンラインストレージ
- ホームページ・ビルダー V15以降
- 他社からOEM供給を受けている製品
- Kaspersky Anti-Virus / Kaspersky Internet Security - ロシアZAO Kaspersky Lab製アンチウイルスソフト/インターネットセキュリティスイート、バージョン6以降はジャストシステムが日本国内での販売・サポートを行う(Windows版Anti-Virusは2010年版で一度販売を終了したが、2011年版から販売を再開した)
- Agree - 韓国Haansoft製プレゼンテーションソフト「Haansoft Slide」を、一太郎のインターフェイスに変更するなどの日本語ローカライズを施した製品(JUST Suiteにもこの製品が含まれている)
- ホームページ・ビルダー - V14までは日本IBM製、V11からV14まで日本IBMとの共業販売
- JUST PDF - PDF作成・編集・データ変換ソフト(機能ごとに開発元が異なる。これまでにもJustsystem PDF Suite(イギリスGlobal Graphics製)が存在した)
- [作成・高度編集]・[作成・編集]・[作成] - ニュアンスコミュニケーションズジャパン製(JUST Suiteにも[作成・編集]の製品が含まれている)
- [データ変換] - クロスランゲージ製
- [作成・データ変換] - 作成機能(ニュアンスコミュニケーションズジャパン製)とデータ変換機能(クロスランゲージ製)のセット
- アイデアマスター - 韓国UBITIZN製発想支援ソフト「Genieware ConceptMap」をベースに日本語化した製品
- カルキングJ - シンプレックス製数式作成・計算ソフト「カルキング」の機能を限定した製品
- 速攻!全国ゼンリン地図帳 - ゼンリン製「ゼンリン電子地図帳Zi」のカスタマイズ版
- 翻訳ブレイン・翻訳ブレイン 実用翻訳 - クロスランゲージ製
- 一発!OCR Pro - パナソニック ソリューションテクノロジー製OCRソフト「読取革命」のカスタマイズ版
- くすり図鑑 - オフィス21製処方薬検索ソフト「くすり55検索」の機能を限定した製品
- 家庭の医学 わが家のお医者さん - アスク製自己診断ソフト「家庭の医学 診断事典」の機能を限定した製品
- 家庭の医学 わかる!検査結果 - アスク製検査情報検索ソフト「家庭の医学 病院で受ける検査の事典」の機能を限定した製品
- Paragon Hard Disk Manager Suite・Paragon Partition Manager - パラゴンソフトウェアグループ製
- MegaVi DV - デジタルビデオ編集ソフトウエア。DigiOn開発。
松下アイコン訴訟
テンプレート:Sister ヘルプアイコンをクリックし、続けてメニューやツールボタンをクリックするとその機能の説明が表示される「ヘルプアイコン機能」が、松下電器産業(当時)の特許の侵害でないかと提訴された。
一審
2005年2月1日、東京地方裁判所(高部眞規子裁判長)は、ジャストシステム製品一太郎・花子に組み込まれたヘルプアイコン機能が、松下電器産業(当時)の特許権を侵害するものであると認めて、同製品の製造・販売の中止と製品の廃棄を命じる判決を下した。
この特許については以下のような争点がある。
- この特許内容はもともとのWindowsに搭載されている機能ではないか。
- 特許として掲載されているが、その時点ですでに既知の技術として記載された文献が存在する(アップルコンピュータによるもの)。
- そもそも特許にならない絵柄の問題ではないのか
この特許に関して松下電器産業(当時)はライセンス契約を申し入れていたが、ジャストシステムは上記のうちWindows搭載機能であることを理由にこれを拒否している。
控訴審
ジャストシステムは2005年2月8日、この判決を不服として控訴した。控訴審は同年4月に開設された知的財産高等裁判所で行われることになり、史上初めての5人の裁判官による大合議による審理となった。
同年9月30日、知的財産高等裁判所(篠原勝美裁判長)は、松下電器産業(当時)の特許には無効理由(進歩性欠如)があるので、特許権の行使は認められないとの判断を示し[14]、ジャストシステムの逆転勝訴となった。
その後、松下電器産業(当時)は最高裁判所への上告を断念したため、ジャストシステムの勝訴が確定した。
その後
ジャストシステムは次バージョンの一太郎 2006からアイコンを別のものに変更した。なお、変更するパッチはそれ以前から公式サイトで配布されていた。
脚注
関連項目
- ソニー - 1998年(平成10年)にジャストシステムに資本参加(12億円、出資比率6.7%)。現在は出資比率を下げている。
- パナソニック
- 徳島ヴォルティス - Jリーグクラブ。当初、事務所を提供していた。
- エス・エス・ビー - ソフトウェアとしての「三四郎」の商標を持つ会社。表計算ソフトの「三四郎」は同社から商標の利用許諾を得ている。
- Just MyShop - ジャストシステムが運営するECサイト。
- デジオン - 元ジャストシステム福岡研究所が独立した企業。
- MetaMoJi - ジャストシステム創業者の浮川夫妻が役員辞任後に設立した企業。
- ベネッセ個人情報流出事件 - 2014年に発生した大規模な個人情報の流出事件。ジャストシステムはこの事件で流出した名簿を業者から入手し、顧客勧誘などに使用していた。