JR北海道キハ201系気動車
テンプレート:鉄道車両 キハ201系気動車(キハ201けいきどうしゃ)[1]は、北海道旅客鉄道(JR北海道)が1997年(平成9年)から運用する、通勤形気動車である。
概要
札幌都市圏の中でも最も混雑する函館本線・小樽駅 - 札幌駅間の輸送改善において、非電化区間である小樽以西からの札幌駅直通列車の混雑緩和・スピードアップを図るため、1997年3月22日のダイヤ改正から営業運転を開始した。同時期に導入された731系電車と併結し、現在日本で唯一の電車と気動車による協調運転が行われる。
車両性能は最高速度130km/h、0-60km/hの平均加速度2.2km/h/s[2]、減速度は全天候下で4.4km/h/s以上[2]と、協調運転を行う731系電車とほぼ同等であり、電化区間でも電車と同等のダイヤで走行することができる。
1996年に3両編成4本(12両)が富士重工業で製造されたが、高性能ゆえの製造コストの高さなどもあって、その後の増備はされていない。なお、2000年に登場したキハ261系気動車は、本系列を基本に設計された。
構造
車体は軽量ステンレス車体で、先頭車に搭載したジャイロセンサー(角速度センサー)のデータにより曲線を検知して、その後に各車両に搭載された車体傾斜電磁弁により、台車の外軌側の空気バネ内圧を高めることより車体傾斜させる方式の車体傾斜装置を搭載することから、車体断面は車両限界に抵触しないよう上方窄まりの台形断面となっている。その他、クラッシャブルゾーンを設け正面衝突時に衝撃吸収を図る高運転台構造、片側3箇所の片開き式客用扉(有効幅1,150mm)など、731系電車とほぼ同一の車体構造をもつ。車体の塗装もステンレス地肌の無塗装で、窓柱部のみ黒色に塗装するなど、これも731系電車と同じであるが、車体側面に萌黄色(ライトグリーン)+青色(731系は萌黄色+赤)の帯を配することで、731系電車との差別化を図っている。正面貫通扉には増解結時間短縮のため自動幌を採用、先頭の密着連結器には併結時以外にはカバーが付く。冬季対策として全6灯の前照灯(腰部の2灯はHIDランプ)、スノープラウ兼用の大型スカート、高速ワイパーを採用している。また、運転台の機器類も731系とほぼ同一であり、左手操作式ワンハンドルマスコンおよび、タッチパネル式カラー液晶ディスプレイのモニタ装置を装備する。
車内も731系電車とほぼ共通である。車内は全てロングシート(有効幅455mm/人)で、客用扉隣接の座席は跳ね上げて壁面に格納できる構造[3]である。乗降円滑化のため、従来の北海道仕様の車両にあったデッキは廃止された。これに代わる寒冷対策として、客用扉の上と横から温風を送り込み冷気を遮断するエアカーテン、遠赤外線暖房装置、ボタン開閉式の半自動ドアを装備している。
その他、ドアチャイム・自動放送装置・3色LED式車内案内表示装置[4]を装備する。中間車のキハ201形200番台に和式トイレ(循環式汚物処理装置)を設置している。
駆動機関は新潟鐵工所(現・新潟トランシス)製の定格出力450PS/2,100rpm、最大トルク160kg・mのN-DMF13HZE形ディーゼルエンジンを各車に2基搭載し、3両編成での定格出力は2,700PSに達する。液体変速機は変速1段・直結4段、パワーオン制御(自動車の半クラッチと類似の機構)を採用したDW16形である。ブレーキ機構は機関ブレーキ・排気ブレーキ併用の電気指令式空気ブレーキで、鉄道総合技術研究所(JR総研)と共同開発した「マルチモードブレーキ制御」[5]を採り入れている。基礎ブレーキ装置は両抱き式踏面ブレーキで、制輪子はJR北海道苗穂工場製の特殊鋳鉄制輪子[6]を使用しており、凍結した線路上でも最高速度から600m以内での停止が可能である。
台車は731系電車のN-DT731形と基本構造を合わせた軸梁式、ヨーダンパ付のボルスタレス台車(N-DT201形)で、床面高さを下げるため車輪の直径を小さくし、810mm径としている。車体中央寄りの車軸が駆動軸、車端寄りが従軸である。曲線通過速度向上のため、空気バネを利用した車体傾斜装置[7]を搭載し、車体を最大で2度傾斜させることができる。
ワンマン運転には対応していないため、他の気動車列車がワンマン運転を実施する函館本線小樽駅以西の区間でも車掌が乗務する。
運転台付きのキハ201形100番台・300番台、中間車のキハ201形200番台で3両の固定編成を組む。
形式 | テンプレート:TrainDirection | ||
---|---|---|---|
キハ201-300 (Mc2) |
キハ201-200 (M) |
キハ201-100 (Mc1) | |
空車重量(t)[8] | 40.0 | 38.0 | 40.0 |
定員(うち座席) | 141(50) | 153(52) | 141(50) |
731系電車との協調運転
731系電車と編成単位で連結したとき、互いの動力を協調させた運転が可能[9]である。なお、731系電車より後に導入された733系電車・735系電車との併結はできない。
731系電車との併結協調運転は、2012年10月現在のダイヤでは朝ラッシュ時の3本が該当する。
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- 左 : 協調運転運用の函館本線962M(前3両がキハ201系、後3両が731系。2009年1月26日 / 白石駅 - 苗穂駅)
- 右 : キハ201系(左)と731系(右)の連結部(2008年8月8日)
運用・現況
全車両が苗穂運転所に配置されており、以下の区間で、普通列車のほか快速「ニセコライナー」、区間快速「いしかりライナー」に用いられる。
かつては、札沼線(学園都市線)の札幌 - 北海道医療大学間においてデータイムを中心に多く運用され、一部の列車は函館本線江別方面への直通運転も行なっていたが、2012年10月27日のダイヤ改正で札沼線の列車が全て電車化されたため、札沼線での運用は消滅した。
編成番号は江別方の先頭車キハ201形100番台の車両番号に識別記号「D」を付し、「D-101」などと表記される。
3両編成が基本であるが、キハ201系同士のほか、731系電車と併結した6両編成としても運用される。 テンプレート:-
脚注
関連項目
参考文献
- 「JR北海道キハ201系通勤形気動車」『鉄道ファン』1997年5月号 通巻433号 交友社
- 「JR各社の新世代気動車の現況 JR北海道キハ201形」『鉄道ファン』2011年9月号 通巻605号 交友社
- ↑ JR北海道では公式Webサイトなど外部文書において「201系気動車」の表記を使っている。
- ↑ 2.0 2.1 『鉄道ファン』1997年5月号 P77(キハ201系主要諸元表)
- ↑ 運転台からの遠隔操作により、収納状態でロックすることも可能。
- ↑ 客用扉上部に千鳥配置。登場時は次の停車駅の表示機能のみ有していたが、2007年10月1日のダイヤ改正以降はスクロール表示となり、英文表示(駅ナンバリング)、乗車マナー啓発などの案内も行うようになった。
- ↑ 『鉄道ファン』1997年5月号 P76
- ↑ JR北海道の他の新形式車両にも装備されている。
- ↑ この装置の試験にはキハ150形気動車が使用された。
- ↑ 『鉄道ファン』2011年9月号 P92(キハ201形車両諸元表)
- ↑ このような運転方法は、1989年から1992年までの間、九州旅客鉄道(JR九州)においてキハ183系1000番台「オランダ村特急」と485系「有明」の門司港→博多(1990年からは鳥栖)間の下り列車で実施されていた。