銭形平次 捕物控
『銭形平次捕物控』(ぜにがたへいじ とりものひかえ)は、野村胡堂による小説、またこの小説を基にした映画、テレビ時代劇、舞台作品。翻案作品ではタイトルを単に『銭形平次』とするものもある。
神田明神下に住む岡っ引の平次(通称 銭形平次)が、子分の八五郎(通称:ガラッ八)と共に卓越した推理力と寛永通宝による「投げ銭」を駆使し、事件を鮮やかに解決していく。岡本綺堂『半七捕物帳』と共に最も有名な捕物帳であり、代表的な時代劇作品の一つでもある。
作品の舞台が江戸時代のいつ頃かははっきりしない。原作の最初の頃は寛永期(1624年 - 1645年、江戸初期)を舞台にしていたが、第30話から文化文政期(1804年 - 1830年、江戸後期)に移っている[1]。
平次は架空の人物であるが、小説の設定から神田明神境内に銭形平次の碑が建立されており、銭形平次の顔出し看板も設置されている。
小説
1931年、文藝春秋発行の「文藝春秋オール讀物号」創刊号に銭形平次を主人公にした「金色の処女」が掲載された。これが『銭形平次捕物控』の第1作目となり、以降第二次世界大戦を挟んで1957年までの26年間、長編・短編あわせて383編が発表された。
作者の野村胡堂は、文藝春秋から「岡本綺堂の半七捕物帳のようなものを」と依頼され、構想を練った。そのとき、たまたま建設現場で見かけた錢高組の看板と社章から「銭形」の名前と投げ銭を思いついたという。また、『水滸伝』に登場する没羽箭張清が投石を得意にしていたというエピソードも、投げ銭のヒントとなったという[2]。
嶋中書店から「嶋中文庫 銭形平次捕物控シリーズ」が刊行されていた。同社の廃業により一時新品での入手が出来なかったが、現在ではゴマブックスが電子書籍版を配信している。
『銭形平次捕物控傑作選』(全3巻文春文庫)が刊行された。司馬遼太郎が「街道をゆく」で銭形平次の魅力を「叙述がすずやかで、すだれごしに上等な夏の料理をたべているような気がした」と書いている[3]。
映画
『銭形平次』の連載が始まった1931年に、関操主演で早くも映画化されている。その後も数多くの映画が作成され、嵐寛寿郎、二代目市川猿之助、長谷川一夫らが平次を演じている。
なかでも長谷川一夫主演作品は人気が高く、シリーズ化され、1949年から1961年までの間に全18本(第1作が新東宝、2作目以降は大映)が公開された。
長谷川一夫主演シリーズ
- 『銭形平次捕物控 平次八百八町』(1949年)
- 『銭形平次』(1951年)
- 『銭形平次捕物控 恋文道中』(1951年)
- 『銭形平次捕物控 地獄の門』(1952年)
- 『銭形平次捕物控 からくり屋敷』(1953年)
- 『銭形平次捕物控 金色の狼』(1953年)
- 『銭形平次捕物控 幽霊大名』(1954年)
- 『銭形平次捕物控 どくろ駕籠』(1955年)
- 『銭形平次捕物控 死美人風呂』(1956年)
- 『銭形平次捕物控 人肌蜘蛛』(1956年)
- 『銭形平次捕物控 まだら蛇』(1957年)
- 『銭形平次捕物控 女狐屋敷』(1957年)
- 『銭形平次捕物控 八人の花嫁』(1958年)
- 『銭形平次捕物控 鬼火燈篭』(1958年)
- 『銭形平次捕物控 雪女の足跡』(1958年)
- 『銭形平次捕物控 美人蜘蛛』(1960年)
- 『銭形平次捕物控 夜のえんま帳』(1961年)
- 『銭形平次捕物控 美人鮫』(1961年)
ラジオ浪曲
国友忠により、文化放送で連続放送された銭形平次は月~土の週6ベルトで放送は5年を超え、今でも最長記録とされる。同様にラジオ東京(現在のTBSラジオ)でも国友の口演で放送された。
テレビ時代劇
テレビ時代劇も多数制作されており、若山富三郎、安井昌二、大川橋蔵、風間杜夫、北大路欣也、村上弘明らが平次役を演じている。
タイトル | 主演 | 開始年 | 終了年 | 回数 | キー局 |
---|---|---|---|---|---|
銭形平次 捕物控 | 若山富三郎 | 1958年 | 1960年 | 103 | KRテレビ |
銭形平次 捕物控 | 安井昌二 | 1962年 | 1963年 | 48 | TBS |
銭形平次 | 大川橋蔵 | 1966年 | 1984年 | 888 | フジテレビ |
銭形平次 | 風間杜夫 | 1987年 | 1987年 | 37+3 | 日本テレビ |
銭形平次 | 北大路欣也 | 1991年 | 1998年 | 88 | フジテレビ |
銭形平次 | 村上弘明 | 2004年4月 | 2004年7月 | 11 | テレビ朝日 |
2005年7月 | 2005年9月 | 9 |
平次を題材にした作品
- ルパン三世シリーズ - 登場人物のひとり銭形警部は、銭形平次の子孫とされている。
- 『からくり剣豪伝ムサシロード』 - 銭形平次をモチーフにした「ゼニガタン」というロボットが登場する。
- 『もーれつア太郎』(赤塚不二夫) - 主人公・ア太郎の子分として「でこっ八」というキャラクターが登場する。
- 『B型平次捕物控』(いしいひさいち、ISBN 4-488-02372-X) - 銭形平次のパロディ4コマ漫画。
- パチンコ機種「CR新銭形くん」
- 観音寺競輪場および香川県観音寺市のマスコットキャラクター「銭形くん」
- 『金田一少年の事件簿』 - テレビドラマ版のみ、私立探偵の「銭形ケンタロウ」という人物が登場する。
- 『階段野郎』、『時間エージェント』(モンキー・パンチ) - 共に銭形平次本人が登場。
- 『ファイナルファンタジー』シリーズ - ジョブ「侍」が「ぜになげ」のアビリティを使用可能。『FFVI』では「平次の十手」というアイテムが存在する。
- パチンコ機種「CRびっくりぱちんこ銭形平次withチームZ」
その他多数
参考
- ↑ メディアファクトリー『時代劇解体新書!』
- ↑ 株式会社 銭高組「『銭形平次』誕生秘話」
- ↑ 「余録」毎日新聞2014年7月15日。