次元潜航艇

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次元潜航艇(じげんせんこうてい)は、テレビアニメ『宇宙戦艦ヤマトIII』に登場する架空の宇宙艦艇。デザイン担当は板橋克己。『宇宙戦艦ヤマト』のリメイク作である『宇宙戦艦ヤマト2199』に登場する次元潜航艦 UX-01についても、本項で解説する。

概要

諸元
全長 192m
全幅 不明
全高 不明
基準排水量 不明
主機 波動エンジン
乗員 不明
武装
  • 亜空間魚雷発射管×6門
  • 前部上甲板多連装ミサイルランチャー×2基
  • 連装砲塔×2基

ガルマン・ガミラス帝国が保有する特殊戦闘艦艇。次元断層や亜空間[1]に潜む特殊能力を付与された戦闘艦艇であり、現実世界における潜水艦に相当する。

塗装はグリーン。ガルマン艦特有の「艦底部のくびれ」の無い[2]シンプルな面構成を持ち、先端部分に開いた大きな開口部と、その周囲の鮮やかな赤色の塗りわけが特徴である。司令塔の形状は、現実世界における潜水艦を思わせる。司令塔には、レールによって前後に移動する機構が備わっている。「艇」と呼ばれるために小型と言われることもあるが、その全長は200m近くあり、決して小さくはない。

亜空間断層発振装置によって、周囲に自由に亜空間断層を発生させることが可能であり、その中に潜むことで潜水艦と同様の奇襲攻撃を仕掛けることが可能である。亜空間に潜んだ潜航艇から通常空間を視認する際には、潜望鏡を使用する。通常空間用のセンサーや目視では、亜空間から顔を出す潜望鏡を探知することしかできないが、次元潜航艇からは通常空間の艦艇は、この潜望鏡を通して丸見えなので、圧倒的に有利な戦闘を行うことができる。なお、亜空間ソナーなどの超空間探知装置を用いた探知は可能であり、波動爆雷による攻撃の影響も及ぶようである。通常空間(宇宙空間)を航行する際、現実世界の艦船が航行して波を起こすような形で、船体には通常空間と亜空間との境目である波のようなものを纏う。

主兵装は艦首の亜空間魚雷発射管6門と前部上甲板に多連装ミサイルランチャー2基[3]。その他、艦橋構造物前部には格納式で小型の砲身付連装砲塔2基がある(本編未使用)。

第14話の劇中描写で、搭載機関が波動エンジンであることが判明している。推進ノズルは2基ある。

初期案ではデスラー潜水艦と呼ばれていた。その後、多次元潜航艇に変更され、最終的には次元潜航艇となった。没になった準備稿には、板橋のほかにもとのりゆきによって描かれたものもあった。

また、本艇に関連したメカニックとして多次元潜航艇母艦と呼ばれる艦も考案され、「母艦によって運ばれる」というアイデアが存在した(艇を名乗っているのはその名残りと思われる)[4]

劇中での登場

第14話、東部方面総司令ガイデル提督の配下、ガルマンウルフの名で知られる名将、フラーケン大佐の率いる艦隊を構成する艦艇として10隻が登場。フラーケンの乗り込む潜航艇には、彼の異名と同じく「ガルマンウルフ号」の名が与えられている。他の潜航艇は「10号艦」などと番号で呼ばれている。東部方面軍総司令部に招集されたフラーケンは、ガイデルより自身の右腕としてヤマトを撃滅するよう指令を受け、出撃。ヤマト遭遇点にワープし、これを捕捉する。

次元潜航艇隊は異次元空間からの亜空間魚雷による一方的な攻撃を行い、なす術も無く多数被弾したヤマトに計画通りの第一撃を与えることに成功する。しかし、少年宇宙戦士訓練学校で亜空間戦闘を選択科目として履修していた土門竜介が、潜航艇の潜望鏡を偶然に発見する。土門の進言で潜航艇の様子を探るためにワープしたヤマトを通常空間に浮上してワープで追跡した本艦は、ワープアウト直後のみヤマトのレーダーに映ったことによって土門に敵が異次元空間に潜んで攻撃を仕掛けていることを看破される。土門の提案で、異次元攻撃に最も効果がある波動爆雷が異次元空間に潜っていた潜航艇隊に向けて放たれた結果、3号艦が被弾して通常空間に浮上したところをヤマトのショックカノンを浴びて撃沈される。

第15話、ガイデルの命により潜航艇隊はヤマトを包囲しつつ、東部方面軍総司令部へおびき寄せようとする。だが、真田志郎亜空間ソナーを急遽製作して対抗してくる。フラーケンはヤマトの前方に2号艦を、同じく後方に3号艦を移動させ、亜空間ソナーにわざと探知させて撃沈させる。これは、微弱な重力波まで読み取ってしまう亜空間ソナーの裏をかき、味方を犠牲にして攻撃音に紛れて接近することで、至近距離から亜空間魚雷を大量に浴びせる戦術であった。その後、4 - 8号艦を東部方面軍総司令部のある方向へ陽動させ、ガイデルも東部方面軍総司令部を移動し、ヤマトを捕獲することに成功した。こうして、宇宙戦艦ヤマトシリーズ中、対艦隊戦闘においてヤマトが敗北を喫した唯一の艦種となった。

第16話で、ガルマン・ガミラス本星の軍事パレード式典にて1隻が超低空航行している。そのため、宇宙空間だけではなく大気圏内での運用も可能であることがうかがえる。

次元潜航艦 UX-01

諸元
艦種 次元潜航艦
全長 144m
主機
  • ゲシュ=タム機関(通常空間航行時)
  • ゲシュ=ヴァール機関(次元潜航時)
武装
  • 艦首亜空間魚雷発射管×6門
  • 艦尾亜空間魚雷発射管×2門
  • 99ミリ単装陽電子ビーム砲塔×1基(前甲板)
  • 33ミリ連装レーザー機関砲×1基(セイル後方)
  • ミサイル発射管×8門(艦首上面)
  • 空間機雷敷設装置×5基(後部甲板)

『宇宙戦艦ヤマト2199』で、ヴォルフ・フラーケンが艦長を務めるガミラス艦。デザイン担当は石津泰志。

通常空間のみならず、異次元空間への往来・航行も可能な特殊戦闘艦艇。通常空間では、他のガミラス艦と同様の波動推進「ゲシュ=タム機関」で航行するが、次元潜航時は亜空間推進「ゲシュ=ヴァール機関」に切り替えて航行する。また、異次元空間での推進エネルギー浪費を抑えるために備えられた多次元位相バラストタンクでエネルギー流出を抑えており、さらにそれを転用することで艦体の浮上や沈降を制御する。セイルには、通常空間に露出させて周囲を視認するための次元潜望鏡が備わっている。また、その後方には超空間ケーブルで繋がれた索敵プローブが備わっており、これを通常空間に露出させて次元潜望鏡と同様に周辺の様子を探ることもできる(劇中ではほとんどこちらが使用されている[5])。次元潜航時間は最高軍事機密となっており、公開されていない。

開発初期の実験段階では異次元空間からの浮上ができず、多くの試作艦が行方不明となっており、その存在を知るものからは「異次元の棺桶」と揶揄され、就役すら危ぶまれた[6]。劇中時点でも就役しているのはUX-01ただ1隻のみで、開発費が高額かつ貴重な試作兵器ということもあり総統直轄の特務艦とされている[7]

艦の形状はUボートに近く、艦首亜空間魚雷発射管の後方はガミラス艦特有の目玉似の形状となっている。艦尾上部には「ゲシュ=タム機関」の推進ノズル、艦尾下部には「ゲシュ=ヴァール機関」のスクリューが備わっている。

亜空間魚雷は通常の空間魚雷とは異なり、射出後に次元境界面を突破する必要があるため、ゲシュ=ヴァール機関を小型化した亜空間推進タービンを搭載しており[6]、異次元空間内では泡のようなものを噴出しながら移動する。次元境界面を突破して通常空間に出た後はブースターに点火して目標へ急速接近する。魚雷は普通の索敵方法では通常空間に出るまでは補足できないため、迎撃は間に合わず回避も困難だが、亜空間ソノブイで出現予想点を割り出し、そこへ向かって集中的に攻撃することでぎりぎり迎撃できる。

劇中での登場(2199)

上記の理由により、劇中に登場するのはUX-01のみである。また、本作には波動爆雷が存在しないため、亜空間潜行中は事実上無敵状態である。

第12話でエルク・ドメルに頼まれたガル・ディッツ提督が、総統府を介さずに航宙艦隊総司令の権限でドメルに貸し出す。

銀河系外縁部を航行中のヤマトを奇襲するが、星間物質が大量に漂う原始星恒星系へ逃げ込まれ、見失う。その後はしばらくの間、どちらが先に尻尾を出すか根比べを続けていたが、フラーケンの指示で星系外へデコイを射出して陽動を行い、ヤマトに亜空間ソナーを使用させてそれを逆探知することで位置を掴み、攻勢に出る。しかし、古代進が独断で発進させたコスモシーガルの存在を見逃していたため、コスモシーガルの亜空間ソノブイで索敵プローブを発見される。そのプローブをヤマトのピンポイント射撃で破壊されたことで「目」を潰されたUX-01は通常空間へ浮上するも、ヤマトはその前にワープで星系外へ逃走していた。ヤマト相手に勝利は逃したものの、敗北しなかった唯一の艦となっている。

第14話では、ミーゼラ・セレステラ宣伝情報相からの命令で作戦に必要な特殊粒子をヤマト予想進路上に散布した後、アベルト・デスラー総統からの「勅命」による任務に就くため、ドメルの指揮下を離れる。その勅命とは、ヘルム・ゼーリック総監が企む総統暗殺計画の裏をかいてデスラーを旗艦から隠密裏に脱出させることであり、後のデスラー復活劇の重要な役割を果たした。

七色星団海戦ではユリーシャ・イスカンダル拉致任務のため、FS型宙雷艇を後部甲板に乗せ、ヤマトの近辺に身を潜めていた。フォムト・バーガー率いるスヌーカ隊の爆撃によってヤマトのレーダーが破壊されたのを見計らい浮上して宙雷艇を切り離し、ヤマトに接舷させた。ユリーシャ(実際にはユリーシャと誤認された森雪)拉致に成功したノラン・オシェットを乗せてヤマトから離れた宙雷艇を回収し、惑星レプタポーダに向かう。雪はそこで迎えの船に乗艦させられるはずだったが、囚人たちの反乱が発生したため、雪とノランを再度収容してガミラスに向かった。

その後、ガル・ディッツが各方面軍に出していた召還命令を無視したグレムト・ゲールの前に現れ、逮捕命令が出ている事を通告する。ゲールの反撃をものともせずにこれを雷撃し、結果としてかつては狩りの獲物としたヤマトを助ける形となった。しかしこの際、必要以上に浮上した事から攻撃を受け、ゲシュ=ヴァール機関が一時不調になったが、新入りの機関士の的確な処置で事なきを得ている。ゲールの艦を撃沈した後に帰投しているため、その後は不明。

脚注

  1. 亜空間とは、通常空間に隣接する互いに感知できない並行宇宙のようなもので、異次元空洞のようにバイパスとしては使えず、潜航艇もワープ時には通常空間に出る必要がある。
  2. 「くびれ」に似た形状の部分は艦尾底部に存在する。
  3. 位置設定のみである。設定では前部上甲板の一部がハッチとなっており、ウィングボディ方式のように開く(同方式は上に向かって開くが、次元潜行艇の場合は側面に向かって開くため、厳密に言えばウィングボディとは言えない)ことしか明確になっておらず、ハッチ内部の詳細設定は公表されていない。また、劇中での使用描写も無い。
  4. デスラー潜水艦、もとのりゆき画、多次元潜航艇母艦などの設定画は「ロマンアルバムエクセレント54 ‘宇宙戦艦ヤマトPERFECT MANUAL2’」のP104、P183に掲載。
  5. 明言されていないために不明だが、劇中での様子から、ケーブルで繋がっている索敵プローブの方がより深い深度で使用できることがうかがえる。第25話では次元潜望鏡の方が劇中初めて使用されている。
  6. 6.0 6.1 「1/1000Scale 大ガミラス帝国航宙艦隊 ガミラス艦セット3」の解説より。
  7. 電撃ホビー2013年2月号での説明より。

参考文献

  • 「ロマンアルバムエクセレント54 ‘宇宙戦艦ヤマトPERFECT MANUAL2’」(徳間書店・1983)
  • 「ロマン宇宙戦記二十五年の歩み‘宇宙戦艦ヤマト画報’」(竹書房・2001)

関連項目

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