ドメル

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ドメルは、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』『宇宙戦艦ヤマト2199』の登場人物。声優小林修(『宇宙戦艦ヤマト』)、大塚明夫(『宇宙戦艦ヤマト2199』)。

概要

ガミラス帝国が誇る名将で、「宇宙の狼」と呼ばれている。理論派にして実行力の伴う優秀な軍人。小マゼラン方面軍作戦司令長官としてルビー戦線での功労があり、ガミラスの最高功労勲章であるデスラー勲章を何度も授与されている。自らの名を冠したドメラーズ3世に乗艦している。

濃いモミアゲと目立つ割れ顎に、筋骨隆々とした身体が特徴。服装は他のガミラス将軍と異なり、レオタードのようにピッチリした戦闘服のようなものを常時着ている。

名前の由来は、第二次世界大戦で「砂漠の狐」と称されたドイツ国防軍陸軍軍人のエルヴィン・ロンメル

宇宙戦艦ヤマト

デスラー総統へヤマト撃破を志願し、銀河系方面軍作戦司令長官[1]に任命され、バラン星基地司令官に就任。この人事により、基地司令官から副司令官に降格してドメルの副官にされたゲールは不満を抱いた。また、ドメルのゲールに対する態度もかなり横柄・傲慢であったため、ゲールの不満は蓄積・増幅され、やがてドメルは思わぬ形で報復を受けることになる。

約3千隻の艦隊を率いて異次元空間で演習を行っていた最中、マゼラニック・ストリームから異次元断層に落ち込んだヤマトと初めて相まみえた。ヤマトの実力を見抜いたその日の日記には、ヤマト遭遇を記して「侮れない」と結んでいる[2][3]。その後は、下手に攻撃を仕掛けず、ヤマトがバラン星基地の存在を知らない点を突いて、バラン星まで引きつけて確実に沈めるという方向で計画を立てる。そこに至るまでの中途で、念を入れて空間リレー衛星を使っての心理戦を仕掛けた。

バラン星にヤマトが到達した時にはバラン星を周回する人工太陽をヤマトに落とし、バラン星基地諸共ヤマトを撃滅する作戦計画を立案・遂行する。しかし、味方の犠牲をも厭わず事前に全く知らされていない作戦に驚愕したゲールによってガミラス本星に通報され、あと一歩の所でデスラーから作戦中止を命令される。ドメルの一瞬の躊躇によってできた時間的余裕によりヤマトは反転に成功し、人工太陽に波動砲を打ち込んで辛くも危機から脱した。そして、人工太陽の残骸はバラン星基地を直撃し、結局基地は失われてしまった[4]

ガミラス本星に召還されたドメルは軍法会議で基地を失った責任を問われたが反省の色も見せず、その態度がさらなる怒りを買って死刑判決を受けた。死刑執行の署名を求めるヒス副総統に対し、デスラーは「ドメル以外にヤマト撃破は不可能」と署名を拒んだ上で死刑執行命令書を破り捨て、ドメルに汚名返上の機会を与えた[5]。ドメルは勇躍し、各戦線から糾合した空母機動艦隊(旗艦ドメラーズ2世・戦闘空母1・三段空母3の計5隻)を率いて七色星団で決戦を挑むべくヤマトに挑戦状を出し、ヤマトは沖田の判断でそれを受諾した。瞬間物質移送機を使った雷爆撃と秘密兵器ドリルミサイルによって九分九厘勝利を手にしたかに見えたが、真田志郎アナライザーが逆回転させたドリルミサイルが止めを刺しに迫っていた空母4隻に命中し、全てを失う。そして、ドメルは「ドメルの滅びる時は、ヤマトも滅びる時だ」と、自らが乗るドメラーズ2世をヤマトの艦底部・第三艦橋に密着させて自爆し、壮烈な戦死を遂げた。自爆の直前には沖田十三と交信し、お互いを祖国の命運を担う戦士と認めると、ガミラスのみならず地球の未来をも願い、自爆スイッチを押している。

ヤマト乗組員が予想もしない作戦や戦術でヤマトを追い詰めるなど、戦術家としては優秀だったが、戦術的な勝利のために移住計画の重要な中継基地でもあるバラン星基地を囮に使ってヤマトごと破壊しようとする作戦は、デスラーから「浪費家」として非難された[6]。また、次元断層の戦いにおいてヤマトと対峙した際は約3千隻の大艦隊を率いており、この時はヤマトは戦力的に敵わないとして一方的に逃走を余儀なくされている。この大艦隊でヤマトとの正面決戦に挑まず、基地を犠牲にした動機は不明である[7]

また、デスラーや沖田に対して丁重に接する一方、軍法会議で反省の色を見せず、部下のゲールに横柄に接するなど、相手によって態度には明らかな差がある。さらに、バラン星の作戦を事前にデスラーへ進言せずに独断で決行するなど、部下や上官との協調性よりも、自分の判断や理念を優先させる傾向がある。ドメル以後、「人の和」を軽視して敗れるのはヤマトの敵勢力の通弊となった。

宇宙戦艦ヤマト2199

『宇宙戦艦ヤマト』(以降、「旧作」)のリメイク作品である『宇宙戦艦ヤマト2199』では、「エルク・ドメル」というフルネームが設定されている。容姿については旧作よりもふくよかな顔付きになっており、モミアゲが短くなっている。旧作における服装は、前線に赴任している時にのみであり、ガミラス星での叙勲式の際は、他のガミラス軍人と同じ軍服を着ている。

小マゼラン方面軍防衛司令官で、当初の階級は中将。年齢は地球人年齢に換算して38歳相当。直属の部隊である第6空間機甲師団(通称「ドメル軍団」)と共に小マゼランの帝国領内に侵入を繰り返すガトランティスに対する切り札として小マゼラン方面に派遣され、多大な戦果を挙げていた。 後にヤマトの出自と目的に勘付いたデスラーにより小マゼランより呼び戻され、上級大将に昇進の上でヤマト討伐の意味も込めて銀河方面作戦司令長官としてバラン星に赴任する。なお、ドメルの赴任によって副司令官に降格されたゲールに対する態度は非友好的ではあるが常識的なものとなっている。

旧作とは異なり謙虚な性格で、政治とは距離を置き、軍人としての本分を貫いている。臨機応変をモットーとし、出自よりも能力重視で、被征服民を差別しない高潔な人柄で部下からも慕われており、七色星団戦で彼が自爆を決意して部下たちに離艦を命じた際は、腹心の部下ハイデルン以下誰一人として従わず、最後までドメルと運命を共にすることを選んだ。元部下で二等臣民のシュルツ達もドメルに尊敬の念を抱いており、ドメルの臨機応変のモットーはシュルツも見習っている。ドメルも耳にしたヤマトの噂を話す際「あのシュルツも」と言っており、それなりに評価していたようである。また、敵であっても全力を尽くす相手には敬意を払うという騎士道精神の持ち主でもある。しかし、国民的人気を得ているためにゼーリック国家元帥を初めとするデスラーの側近の一部からは快く思われておらず、当人も政治に興味を示さないことから航宙艦隊総司令ガル・ディッツや軍需国防相ヴェルテ・タランからは心配されている。エリーサという妻がおり、彼女との間に死別した子供がいた事が墓前で語られている。

ドメルは中性子星カレル163においてヤマトを待ち伏せて包囲し、撃沈寸前まで追い詰めるが、時を同じくしてバラン星系でデスラー総統暗殺事件(実際には未遂。首謀者はゼーリック)が勃発、ヒス副総統より本星への出頭という最優先命令を受け、後一歩のところで撤退を余儀なくされる。その後、親衛隊長官ギムレーから総統暗殺の首謀者として告発され、ヒスを裁判長とする軍事法廷において死刑判決を下される。さらに、妻エリーサも反政府運動加担の容疑により、収容所惑星への流刑となる。

しかし、デスラーは実は生存しており、ゼーリックの反乱を鎮圧。総統暗殺の容疑が晴れて、釈放されたドメルはデスラーから直々に謝罪を受ける。その後、バラン崩壊による銀河ネットワーク網の崩壊により直属幕僚を除き十分な戦力も調達出来ない中、ヤマト討伐とユリーシャ奪取の勅命を受けて出陣する。その際、ヒスからは戦功によってエリーサも罪一等を減じられるだろう旨を告げられていた。

ヤマト討伐のためにドメルに与えられた装備と兵員は、ヒスは「精鋭」と称していたが、実際には本土防衛艦隊のほとんどはギムレーが掌握していてドメルには提供されなかった。その結果、「精鋭」ドメル艦隊の実態は「船は古く、兵は幼い」上に数まで少ない状態であったが、ヤマト討伐には試作品の物質転送機を用いた攻撃機と雷撃機による奇襲と波動砲封じを兼ねた特殊削岩弾、ユリーシャ奪取には次元潜行艦と特務潜入部隊の投入とをそれぞれ立案、さらに敵将沖田が航海の難所であり、常識人なら迂回する宙域「七色星団」をあえて通ると読み切った上で先回りし、決戦に望んだ。

戦局は当初ドメルの想定通りに進み、ユリーシャ奪取にも成功(実際に拉致されたのは森雪)し、勝利の目前まで迫ったが、特殊削岩弾は元々民生品を転用したものだったため簡単に内部への侵入を許し爆破直前に起爆装置を解除されてしまい、その上ダメ押しのために出撃した雷撃隊は古代と山本のコスモゼロによる手痛い反撃を受け、さらにバルグレイを撃沈して帰還して来たコスモファルコン隊の攻撃も加わり全滅してしまう。これによって航空戦力による攻撃が難しくなったドメルは、砲撃戦で直接ヤマトを沈めようと機動部隊を前進させたが、ヤマトは特殊削岩弾を逆用して、機動部隊の至近で砲撃爆破する。その爆発と混乱とヤマトの反撃の中で、ドメルは旗艦ドメラーズIII世以外の戦力を全て失ってしまった。ドメルはなおもドメラーズIII世で砲撃戦を行ったものの、沖田の戦術によってイオン乱流に誘い込まれ、ドメラーズIII世は操舵不能に陥ったまま猛砲撃を受け、撃沈寸前となる。ここに至ってドメルは敗北を悟り、ドメラーズIII世から分離させた独立戦闘指揮艦をヤマト艦底部に接舷させ、軍人としての責務を全うするため自爆を敢行、戦死した。

旧作同様、自爆の直前には沖田十三と交信し、お互いを祖国の命運を担う戦士と認め合い、ガミラスのみならず地球への栄光と祝福をも願い、自爆スイッチを押している。

後にバレラスにおいて大々的な追悼式が行われ、彼の死は国民の啓発とイスカンダルとの大統合への大義名分に利用された。ドメルは政治に関心を持っていなかったが、政治の方はドメルに関心を持ち、その生と死をいいように翻弄して利用しつくした。

その他の作品

ひおあきらの漫画版では、ロメルという名前になっている。容貌はアニメ版と大きく異なっており、比較的長い髪で顔には傷が付いているほか、サングラスをかけている。

シュルツ艦に搭乗し、艦隊を率いてヤマトを強襲。一糸乱れぬ連携でヤマトを度々追い詰めるが、キャプテンハーロックの船の妨害により、何度となく取り逃がす。その後、バラン星での戦闘において、ゲル(アニメにおけるゲール)に手柄を立てさせようとするヒスにより、ヤマト攻撃ではなく基地の防衛任務を命じられるが、これを不服としたロメルは任務を放棄して撤退。バラン星陥落後、ヒスの手回しにより責任を問われ謹慎を言い渡されるが、ヒスによるクーデターを予測しており、総統を救出。抵抗しようとするゲルとヒスを射殺する。

ガミラス本星戦では、大艦隊を指揮してヤマトに決戦を挑むが、乱入してきたキャプテンハーロックとの一騎打ちの末に戦死。ロメルの戦死により動揺した艦隊の隙をついて、ヤマトは活路を開くことになる。

注釈

テンプレート:Reflist

テンプレート:宇宙戦艦ヤマトシリーズの登場人物
  1. 劇中では「太陽系方面軍作戦司令長官」とも表現されていた。
  2. ただし次元断層での戦闘の際、逃走するヤマトはスターシャの助けを受けており、ドメルはそのことは知らずにヤマトの実力を評価している。また、それ以前にヤマトが波動エンジンの不調により逃走した際には、逃げた理由が分からず、さらにその後「次元演習をしている」と勘違いをしている。
  3. ガミラス語のタイプライターを使って日記を記している。なお、作品の製作当時は日本語ワードプロセッサが存在しない時代である。
  4. 松本零士の漫画版においては、ドメル(および艦隊戦力)不在のためにバラン基地がやむを得ず行った作戦であり、単純に人工太陽をヤマトに衝突させるものであり、基地もろとも消滅させるものではなかったが、結果としてヤマトに撃たれた人工太陽はバラン星基地に落下した。
  5. ただしそれまでの旗艦であったドメラーズ3世は取り上げられたものと思われる。
  6. 柳田理科雄は、飛車と角を捨てて玉を撃つ、決して悪くない戦法と評している。
  7. もっともドメルのみならず、その後のデスラーも圧倒的に優勢である艦隊戦力でヤマトと対決しようとせず、ガミラス本星での本土決戦という非常に犠牲の大きい戦法を採用した結果、ガミラス帝国そのものが崩壊することとなった。