ゲール (宇宙戦艦ヤマト)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

ゲールは、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』『宇宙戦艦ヤマト2199』の登場人物。声優阪脩、『2199』では広瀬正志

宇宙戦艦ヤマト

小さな口髭をたくわえているのが特徴のガミラス軍人。

地球ガミラスイスカンダルの中間地点に浮かぶバラン星のガミラス基地司令官であったが、デスラー総統に志願して銀河系方面軍作戦司令長官[1]として赴任してきたドメル将軍の着任によって副司令官に降格される。そのため「副司令」という呼ばれ方に嫌悪感を示している。

ドメルからはパワハラに近い横柄な接し方をされており、折り合いが非常に悪い。バランまでヤマトを引きつけてから叩こうとするドメルとは対照的に、ヤマトはバラン(ガミラス本星ひいてはデスラー)から可能な限り遠いところで撃沈しようという考えを持つ[2]。しかし、そのための作戦はドメルからは尽く却下されている。

一般的な将軍の軍服が緑地に黒の6対点線、肩部に3対点線なのに対し、彼の軍服は緑地に赤の6対点線、肩部は点線が無く、『宇宙戦艦ヤマト2』以降のガミラス軍服に近い形状である。

劇中での活躍

初登場は第15話で、登場早々ドメルの着任によって副司令官に降格された上、いきなり鞭で自室の家具やコレクションを粉々に叩き壊され「趣味が悪い」と罵られる。このことからドメルに対し強い反感を抱くようになる。

次元断層での戦闘の一件の後、バラン星の原住生物バラノドンを利用して生物兵器に仕立て上げ作戦採用をドメルに具申するも、指揮権を盾に却下されてしまう。その日の夕食時に悪酔いして従兵や侍女に酒瓶を投げて八つ当たりするが、懲りずにバラノドン特攻兵器を完成させ、予行演習ではヤマトのダミーの撃破に成功。勢いをかって独断でヤマトを攻撃するが波動砲の返り討ちに逢って失敗に終わり、再びドメルから叱責される(ただし、この時のヤマトはワープ直後に波動砲を使ったために機関部が損傷して航行不能になったのでバラノドンの攻撃は無駄にはなっておらず、ドメルはヤマトを撃沈する絶好の機会をみすみす逃してしまっている)。

その後、ドメルと共に古代進真田志郎による宇宙要塞破壊の報を受けた際、喫煙中のドメルにライターを差し出すが着火に失敗し、要塞と同じく 「(ゲールも、そのライターも)役立たず」と侮蔑されている。

そして、ドメルの「ヤマトをバラン星地表までおびき寄せ、人工太陽を落下させてバラン星基地もろともヤマトを破壊する」という作戦が実行された際、ドメルから何も聞かされていなかったゲールはこの作戦をガミラス本星に密告する。そしてあと一歩というところでデスラー総統が中止命令を下したため、結果としてヤマトに波動砲による反撃の猶予を与えてしまい、ヤマトを取り逃がした上にバラン星基地は人工太陽の残骸に直撃されて失われてしまった。

この作戦失敗の責任を問われてガミラス本星に召喚されたドメルを裁く軍法会議では、ゲールは総統への忠誠心を理由に自らの密告を正当化。かつての上官の死刑判決を見るも、デスラーの決断でドメルは恩赦され、ゲールは再びドメルの副官としてヤマトとの決戦に参加させられた。

七色星団の決戦に敗れたドメルは自爆を決断するが、またしてもゲールに相談は無かった。テンプレート:要出典範囲もっとも瞬間物質輸送装置やドリルミサイルの作成中、万が一の作戦失敗の場合の方策を問うゲールに対し、ドメルは「総統への忠誠心こそが最後の武器」と答え、暗に自爆をほのめかしている。これは密告を総統への忠誠心ゆえと自己弁護したゲールへの皮肉になっている。

ゲールとドメルの対立以後、「力(特に軍事力・科学力)はあれど「人の和」の無い異星人が内ゲバの果てに、非力だがチームワークと機転があるヤマトに破れる」のはシリーズの定番となった。

対立相手のドメルが名将とされているため、対比的に無能・卑小な人物と捉えられがちだが、上述の通りバラノドン特攻隊を完成させて一時的とはいえヤマトを窮地に陥れる等、それなりの努力と実績は上げており、完全に無能というわけではない。ドメルへの反感も、ドメルのゲールに対するパワハラ同然の理不尽な接し方が根底にある。総統への密告に関しても、ドメルへの反感というよりは基地の死守のため[3]ということが主な理由であり、その後の七色星団戦における作戦内容に対しては、若干の懸念はあれど素直に感服している。

宇宙戦艦ヤマト2199

『宇宙戦艦ヤマト』(以降、「旧作」)のリメイク作品である本作では「グレムト・ゲール」というフルネームが設定されている。容貌に大きな変更はないが、年齢が地球年齢に換算して47歳と設定された。

階級は少将と設定されている。旧作と同様に銀河方面軍作戦司令長官として登場し、旧作では無かったシュルツたちと接するシーンもある。

上司にはへつらい部下には横柄に接するという、典型的な中間管理職として描写されており、シュルツからは「日和見主義者」「部下の手柄を横取りする男」と忌避されている。また、二等ガミラス人[4]であるシュルツたちを「劣等種族」と見下し、ヤマトがワープ(ガミラス側ではゲシュタムジャンプと呼ぶ)したという重要な情報を「夢物語」と一蹴するなど、旧作より傲慢になっている。また、国家元帥のゼーリックに媚を売り、銀河方面軍司令に推挙してもらった経緯があり、権力にすがる卑怯な人物にもなっている。その態度から、航宙艦隊総司令のガル・ディッツからは「もみあげゼーリックの腰巾着」と揶揄されている。

シュルツの重要な報告を一蹴したり、窮地に陥ると自分だけ助かろうとしたりなど、保身を第一に考えるため決して有能とはいえないが、友軍艦が密集隊形をとっている中へヤマトが突然現れた際には同士討ちによる友軍の被害拡大を避けるため散開するようゼーリックに進言したり[5]、ゼーリックが謀反人となると即座に射殺したりなど、咄嗟の状況における頭の回転は速い。ガミラスの戦力は全て総統のものであると考えているため、部下に無理強いをしたり、窮地で部下を見捨てたりはするものの、最初から犠牲を前提とした作戦立案はせず[6]、そういったことを推奨する者には否定的である。

デスラーに心酔しており、その忠誠心は非常に高く、ガミラス本星戦後も保身の観点から付くべき新体制側ではなく、圧倒的に不利なデスラー側に付くほどである。下品かつあからさまに媚びを売るその言動のためデスラーからは嫌われているものの、当人は気づいていない模様。反面ゼーリックに対しては崇拝や忠誠心の類はなく、保身や出世のために媚びへつらってはいるに過ぎない。また、旧作と比較するとドメルとの接点は少ない。

劇中での活躍(2199)

旧作での初登場は中盤の第15話であり、ドメルよりも後だが、本作ではシュルツ達の直属上官として第4話(名前のみなら第2話)と、かなりの序盤から登場している。

部下のシュルツが冥王星基地を失い、さらにデスラー自ら立案したグリーゼ581での攻撃をデスラーの眼前で失敗して敗死したことでゼーリックから管理責任を問われ、ついに自ら艦隊を率いて出撃する。そして次元断層に落ちこんだヤマトが友軍艦「EX178」とともに断層から脱出したところを捕捉。ディッツの娘であるメルダがまだヤマトに乗っていると知りながら攻撃を開始してEX178を撃沈し、その罪をヤマトに擦り付けた上でヤマトの撃沈を狙う。しかし直後に次元断層の揺れ戻しに艦隊が巻き込まれ、僚艦がことごとく次元断層に吸い込まれていき、自艦である「ゲルガメッシュ」も吸い込まれそうになったため、ゲールは撤退指令も出さずに自艦だけワープして逃げ延びた(ただし仮に出したとしても他の艦はゲールの艦より次元層に近かったため逃げられたかどうかは微妙である)。

その後、上級大将に昇進したドメルが銀河方面軍作戦司令長官に就任したのに伴い、副司令に降格される。ドメル幕僚団からはあからさまに小バカにするような態度をとられ、職場でかなり浮いている。行く行くは銀河方面の植民星の既得権益を手に入れようと企んでいた矢先の降格処分だったため、ドメルのことは快く思っていない。バラン鎮守府を訪れたガミラスの宣伝情報相ミーゼラ・セレステラの行動に対し、「結局何しに来たのでしょう?」と疑問を浮かべた際、ドメルから「魔女のすることだ、「凡人」には分かるまいな」と返されややムッとしていた[7]

カレル163での戦闘後、ドメルが総統暗殺の容疑で出頭したため、暫定的に再び銀河方面軍の指揮を執ることになる。バラン星で執り行われた観艦式において、ゼーリックを恭しく出迎え、ひたすら媚びへつらって接していたが、ヤマトを攻撃する際にいかなる犠牲も厭わず、「歴史とは犠牲の上に成り立つもの」とまで言い切るその言動に辟易し始める。ゼーリックによる総統暗殺の陰謀については全く知らされていなかったらしく、総統の死を知らされたときは驚いており、その後総統の健在を知った時にはこの上ない喜びを見せた。一方でゼーリックがデスラー暗殺計画の首謀者であることを知ったのと、ゼーリックへの不信感からゼーリックを「逆賊」と見做して、背後から射殺した。これはゼーリックへの信頼よりデスラーへの忠誠心の方が高かった行為とも捉えられる。ゼーリックの死後、バランに沈んだと思われたヤマトが浮上して来た際、ゼーリックの艦「ゼルグートII世」から臨時に艦隊指揮を執るが、ヤマトの波動砲によってバラン星のコアとバラン鎮守府を破壊され、その余波にガミラス全土から集結した艦隊も巻き込まれそうになる。ゲールはまたしても真っ先に逃げ出したが、今度は一応撤退命令を出したため、艦隊は全滅だけは免れる。しかし、それでも逃げ切れなかった艦隊は大損害を受け、さらに亜空間ゲートが破壊されたことでヤマトを追撃することもできなくなり、仕方なく残存艦艇3000隻を率いて通常のゲシュ=タム航法でバレラスへと向かうが、到着には3ヵ月はかかる見通しとなり、本人の意気とは裏腹に何の役にも立たなかった。

ヤマトのガミラス本星戦後、ガミラスの実権を握ったディッツの召還命令を無視し、艦隊30余隻を率いて離反(この際はゼルグートII世ではなくゲルガメッシュに乗艦している)。宇宙を放浪中、ガミラスから逃走してきたデウスーラII世に出会い、再びデスラーの下につく。その後、亜空間回廊内で待ち伏せするデウスーラII世にヤマトを接触させるため、バラン星の銀河方面側の亜空間ゲートのシステム衛星に麾下の艦隊をエネルギー源として作動維持を図り、ヤマトをデスラーが待つ亜空間ゲート内へ追い込む作戦を実行。しかし、その最中にディッツの意向により派遣されたフラーケンのUX-01と交戦。無様にわめき散らしながらUX-01が放った魚雷の直撃を受け、乗艦は爆沈した(劇場公開版と最初のテレビ放映版では、本人の最期が不明瞭だったが、その後の版では戦死したとわかる描写が追加された)。

しかし、フラーケンがデスラーの存在を知らなかったためか、自身を囮としてヤマトの亜空間ゲート突入を援護したため、結果的にヤマトを亜空間ゲート内に追い込むという作戦は成功を収めた(もっともこの作戦は、結果としてヤマトの地球帰還を手助けした事になる)。

上記のように亜空間ゲートが破壊されてバラン星の宙域に取り残された為、旧作と異なり七色星団の会戦には参戦しておらず、ドメルと運命を共にはしていない。初登場時期の早さもあり、劇中での出番が旧作に比べ最も増えた人物となっている。

ゲーム版

PS用ゲーム『遥かなる星イスカンダル』『イスカンダルへの追憶』ではドメルの死刑判決を嘲笑うように眺めていたが、デスラーにより死刑判決が覆された際、ヒスからバラン星陥落の共同責任者としてドメルと共に最前線へ向かう事を命令される。

ドメルからドリルミサイル瞬間物質移送機の説明を聞くのはゲールではなく一兵士であり、ドリルミサイルによるヤマト破壊が失敗した直後に特攻作戦を暗喩された後の出番は無いが、テレビ版同様に脱出の描写が無いため、ドメルと共に自爆としたと思われる。

なお、アニメ版では上官のドメルに対し一応は敬語を使って接していたが、ゲーム版では上官に対するものとは思えぬほどの粗野な口調に変更されており、ゲールの狭量さとドメルへの反感が強調されている。また総統への密告に関しても、基地が破壊された際、アニメ版では呆然としているのに対し、ゲーム版ではドメルの作戦失敗を嘲笑っており、基地を安否を懸念したというより[8]も単にドメルの妨害のためということが主な理由となっている。

その他

当初の設定では「ゲーリング」や「ゲル」という名前になっていた。名前と言動の元ネタはナチス・ドイツの空軍総司令官ヘルマン・ゲーリング

当初はヒス副総統と共にデスラー総統暗殺未遂事件を起こし、逆にデスラーに粛清される予定であった。この設定はひおあきらの漫画版で描かれている[9]。漫画版での名前は「ゲル」であり、髪型はオールバックで髭は無く、容姿がかなり異なる。

松本零士の漫画版ではガミラス本星での戦いの後、脱出したデスラーに付き添っていたのはタランではなくゲールとなっている。

「宇宙戦艦ヤマト 遥かなるイスカンダル(コミックアンソロジー)」では、七色星団の戦いにおいて、最終的にドメルに着き従って死んでいく好人物として描かれている。

脚注

テンプレート:Reflist

テンプレート:宇宙戦艦ヤマトシリーズの登場人物
  1. 劇中では「太陽系方面軍」とも表現されていた。
  2. 円道祥之著の「発信後30年!『宇宙戦艦ヤマト』健在ナリ」では移住の下準備という目的に対して地球人の発想では合理的で正しい意見であるが、待ち伏せ作戦を多用するガミラス人の常識では変人として評価を下げる原因になったのではないか、と総括している。
  3. バラン星基地は、ガミラスにとって銀河系への足がかりとなる最重要施設であり、到底一司令官の独断で犠牲に出来るものではなく、ゲールの上層部への報告は常人ならば至極当然と言える。
  4. ガミラスに征服された植民惑星の住人で、肌の色が純血ガミラス人と異なる。リメイクするに当たり再構築された設定。
  5. 当のゼーリックはその進言を却下し、ひたすら数でごり押す戦術を取っており、艦隊運用能力に限定すればゲールの方がゼーリックより明らかに上となっている。
  6. 相手の戦力を過小評価して、結果的に近い形になることはある。
  7. この「凡人」がゲール個人を指していたのか、ドメル本人を含めた人間全てを指していたのかは不明であるが、ゲールは明らかに自分への侮辱と取っていた。
  8. そもそもゲーム版での作戦ではバラン基地はただの囮で、必ずしも基地が巻き添えになるというわけではない。
  9. デスラー総統暗殺未遂事件のエピソードは元々52話予定だったアニメ版の後半に登場する予定だったが26話に短縮されたため、ハーロック(古代守)登場シーンと同じく漫画版でのみである。