柴田元幸

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柴田 元幸(しばた もとゆき、1954年7月11日- )は、アメリカ文学研究者、翻訳家、エッセイスト、小説家。前東京大学教授東京都大田区出身。

業績

ポール・オースターチャールズ・ブコウスキースティーヴ・エリクソンスティーヴン・ミルハウザーリチャード・パワーズなど現代アメリカ文学、特にポストモダン文学の翻訳を数多く行っている。彼の翻訳した本は注目を集めるため、レベッカ・ブラウンなどは本国アメリカよりも日本での方が人気が高い。

自身も文学や翻訳を題材にしたエッセイを執筆しており、『生半可な学者』では講談社エッセイ賞を受賞。

小説家の村上春樹が1986年にジョン・アーヴィングの『熊を放つ』を翻訳する際、柴田、畑中佳樹上岡伸雄斎藤英治武藤康史の5人でチームを組んでバックアップをした[1]。これがきっかけで村上との親交が生まれた。1987年7月刊行のポール・セローの『ワールズ・エンド(世界の果て)』からは、村上の訳文をひとりでチェックするようになった[2]

村上との共著に『翻訳夜話』、『翻訳夜話2 サリンジャー戦記』がある。また、CDブック村上春樹ハイブ・リット』(2008年11月、アルク)の総合監修を務めた。

雑誌の『鳩よ!』(2001年8月号)、『Coyote』(No.26)、『文藝』(2009年春季号)が柴田元幸の特集を組んだこともある。歌手の小沢健二は柴田ゼミ出身。弟子として早大准教授の翻訳家・都甲幸治がいる。

2005年、『アメリカン・ナルシス』(東京大学出版会)で、サントリー学芸賞を受賞。2006年、初の小説集『バレンタイン』を新書館より発行。2007年には現代文芸論研究室を沼野充義とともに創設。2010年、『メイスン&ディクスン』(上・下)で第47回日本翻訳文化賞を受賞。

自身の責任編集による文芸雑誌『モンキービジネス』(ヴィレッジブックス2008年 - 2011年)、『MONKEY』(スイッチ・パブリッシング2013年 - )を創刊し、現代アメリカ文学の紹介に務めている。

略歴

大田区立仲六郷小学校卒業[3]大田区立志茂田中学校卒業[3]東京都立日比谷高等学校卒業。1979年東京大学文学部英文科卒業、84年同大学院人文科学研究科博士課程単位取得満期退学。1985年イェール大学大学院修士課程修了。1984年東京学芸大学教育学部専任講師、87年助教授、1988年東京大学教養学部助教授、1997年東京大学大学院総合文化研究科助教授、1999年東京大学人文社会系研究科英語英米文学専攻助教授、2004年同教授。2007年現代文芸論研究室に異動。2014年同大学退任。

著書

翻訳

  • オリンピックと近代 /ジョン・J.マカルーン(菅原克也共訳)平凡社 1988
  • デカルトからベイトソンへ / モリス・バーマン 国文社 1989
  • 幽霊たち / ポール・オースター 新潮社 1989 のち文庫
  • エンペラー・オブ・ジ・エア / イーサン・ケイニン 文藝春秋 1989
  • 鍵のかかった部屋 / ポール・オースター 白水社 1989 のち白水Uブックス
  • イン・ザ・ペニー・アーケード / スティーヴン・ミルハウザー 白水社 1990
  • ダブル/ダブル / マイケル・リチャードソン(菅原克也共訳)白水社 1990 のちUブックス
  • 黒い時計の旅 / スティーヴ・エリクソン 福武書店 1990 のち文庫、白水Uブックス
  • バーナム博物館 / スティーヴン・ミルハウザー 福武書店 1991 のち文庫、白水Uブックス
  • 孤独の発明 / ポール・オースター 新潮社 1991 のち文庫
  • 超哲学者マンソンジュ氏 / マルカム・ブラドベリ 平凡社 1991 のちライブラリー
  • シカゴ育ち / スチュアート・ダイベック 白水社 1992 のちUブックス
  • 父の遺産 /フィリップ・ロス 集英社 1993 のち文庫 
  • ムーン・パレス / ポール・オースター 新潮社 1994 のち文庫
  • Sudden fiction 2 超短編小説・世界篇 2/ R.シャパード,J.トーマス編、文春文庫 1994
  • 最後の物たちの国で / ポール・オースター 白水社 1994 のちUブックス
  • スモーク&ブルー・イン・ザ・フェイス / ポール・オースター 新潮文庫 1995
  • パルプ / チャールズ・ブコウスキー 学習研究社 1995 のち新潮文庫
  • イギリス新鋭作家短篇選 新潮社 1995
  • Xのアーチ / スティーヴ・エリクソン 集英社 1996
  • 一人の男が飛行機から飛び降りる / バリー・ユアグロー 新潮社 1996 のち文庫
  • 小説の技巧 / デイヴィッド・ロッジ(斎藤兆史共訳)白水社 1997
  • 宮殿泥棒 / イーサン・ケイニン 文藝春秋 1997 のち文庫
  • わが青春わが読書 / コリン・ウィルソン 学習研究社 1997 「超読書体験」文庫
  • 夜の姉妹団(編訳アンソロジー)朝日新聞社 1998 のち文庫
  • いまどきの老人 (監訳、畔柳和代訳)朝日新聞社 1998
  • 三つの小さな王国 / スティーブン・ミルハウザー 白水社 1998 のちUブックス
  • 偶然の音楽 / ポール・オースター 新潮社 1998 のち文庫
  • むずかしい愛 編訳、畔柳和代共訳 朝日新聞社 1999
  • リヴァイアサン / ポール・オースター 新潮社 1999 のち文庫
  • 僕の恋、僕の傘 編訳 角川書店 1999
  • 舞踏会へ向かう三人の農夫 / リチャード・パワーズ みすず書房 2000
  • ギャシュリークラムのちびっ子たちまたは遠出のあとで / エドワード・ゴーリー 河出書房新社 2000
  • 英語クリーシェ辞典 / ベティ・カークパトリック 研究社出版 2000
  • 空腹の技法 / ポール・オースター(畔柳和代共訳)新潮社 2000 のち文庫
  • うろんな客 / エドワード・ゴーリー 河出書房新社 2000
  • 優雅に叱責する自転車 / エドワード・ゴーリー 河出書房新社 2000
  • セックスの哀しみ / バリー・ユアグロー 白水社 2000 のちUブックス
  • パワーズ・ブック みすず書房 2000
  • 不幸な子供 / エドワード・ゴーリー 他 河出書房新社 2001
  • ボルヘスの北アメリカ文学講義 国書刊行会 2001
  • 蒼い時 / エドワード・ゴーリー 河出書房新社 2001
  • 華々しき鼻血 / エドワード・ゴーリー 河出書房新社 2001
  • ミスター・ヴァーティゴ / ポール・オースター 新潮社 2001 のち文庫
  • 体の贈り物 / レベッカ・ブラウン マガジンハウス 2001 のち新潮文庫
  • 家庭の医学 / レベッカ・ブラウン 朝日新聞社 2002 のち文庫
  • マーティン・ドレスラーの夢 / スティーヴン・ミルハウザー 白水社 2002 のちUブックス
  • 私たちがやったこと / レベッカ・ブラウン マガジンハウス 2002 のち新潮文庫
  • 敬虔な幼子 / エドワード・ゴーリー 河出書房新社 2002
  • 世界は終わらない / チャールズ・シミック 新書館 2002
  • 雑多なアルファベット / エドワード・ゴーリー 河出書房新社 2003
  • サロン・ドット・コム現代英語作家ガイド / ローラ・ミラー,アダム・ベグリー 編訳 研究社 2003
  • バクスター危機いっぱつ / グレン・バクスター 新書館 2003
  • 弦のないハープ / エドワード・ゴーリー 河出書房新社 2003
  • 甘美なる来世へ / T.R.ピアソン みすず書房 2003
  • コーネルの箱 / チャールズ・シミック 文藝春秋 2003
  • トゥルー・ストーリーズ / ポール・オースター 新潮社 2004 のち文庫
  • 憑かれた旅人 / バリー・ユアグロー 新潮社 2004
  • バクスターの必殺横目づかい / グレン・バクスター 新書館 2004
  • 若かった日々 / レベッカ・ブラウン マガジンハウス 2004 のち新潮文庫 
  • ウェイクフィールド / ナサニエル・ホーソーン 新潮社 2004
  • 題のない本 / エドワード・ゴーリー 河出書房新社 2004
  • まったき動物園 / エドワード・ゴーリー 河出書房新社 2004
  • 五行でわかる日本文学 / ロジャー・パルバース 研究社 2004
  • おぞましい二人 / エドワード・ゴーリー 河出書房新社 2004
  • ケータイ・ストーリーズ / バリー・ユアグロー 新潮社 2005
  • ふつうに学校にいくふつうの日 / コリン・マクノートン 小峰書店 2005 (世界の絵本コレクション)
  • ナショナル・ストーリー・プロジェクト / ポール・オースター 新潮社 2005
  • アムニジアスコープ / スティーヴ・エリクソン 集英社 2005
  • 三つの金の鍵 / ピーター・シス BL出版 2005
  • わがタイプライターの物語 / ポール・オースター 新潮社 2006
  • 僕はマゼランと旅をした / スチュアート・ダイベック 白水社 2006
  • インディアナ、インディアナ / レアード・ハント 朝日新聞社 2006
  • どこにもない国 編訳 松柏社 2006
  • ティンブクトゥ / ポール・オースター 新潮社 2006 のち文庫 
  • 紙の空から 編訳 晶文社 2006
  • マジック・フォー・ビギナーズ / ケリー・リンク 早川書房 2007
  • たちの悪い話 / バリー・ユアグロー 新潮社 2007
  • 囚人のジレンマ / リチャード・パワーズ 前山佳朱彦共訳 みすず書房 2007
  • ジャンブリーズ / エドワード・リア 河出書房新社 2007
  • 新バイブル・ストーリーズ / ロジャー・パルバース 集英社 2007
  • 輝ける鼻のどんぐ / エドワード・リア 河出書房新社 2007
  • ナイフ投げ師 / スティーヴン・ミルハウザー 白水社 2008
  • 血液と石鹸 / リン・ディン 早川書房 2008 (ハヤカワepiブック・プラネット)
  • それ自身のインクで書かれた街 / スチュアート・ダイベック 白水社 2008
  • 幻影の書 / ポール・オースター 新潮社 2008
  • 火を熾す / ジャック・ロンドン スイッチ・パブリッシング 2008
  • 柴田元幸ハイブ・リット 名翻訳家がひらく英語と文学へのゲートウェイ / バリー・ユアグロー,レベッカ・ブラウン,ケリー・リンク,スチュアート・ダイベック,スティーヴン・ミルハウザー,ポール・オースター アルク 2008.11
  • ナイン・ストーリーズ / J・D・サリンジャー ヴィレッジブックス 2009
  • ナショナル・ストーリー・プロジェクト 1-2 / ポール・オースター他 共訳 新潮文庫 2009.1
  • 雪男たちの国 ジョージ・ベルデンの日誌より / ノーマン・ロック 河出書房新社 2009.1
  • ジーザス・サン / デニス・ジョンソン 白水社 2009.3
  • 昨日のように遠い日 少女少年小説選(編訳)文藝春秋 2009.3
  • 犬たち / レベッカ・ブラウン マガジンハウス 2009.4
  • いずれは死ぬ身(編訳)河出書房新社 2009.6
  • ガラスの街 / ポール・オースター 新潮社、2009 
  • 燃える天使(編訳)角川文庫、2009 
  • 喋る馬 / バーナード・マラマッド スイッチパブリッシング、2009
  • メイスン&ディクスン / トマス・ピンチョン 新潮社 2010.6
  • オラクル・ナイト / ポール・オースター 新潮社 2010.9
  • in our time / アーネスト・ヘミングウェイ ヴィレッジブックス 2010.5
  • ロード・ジム / ジョゼフ・コンラッド(世界文学全集)河出書房新社、2011.3

エッセイ等

  • 生半可な学者 白水社 1992 のちUブックス
  • 愛の見切り発車 新潮社 1997 のち文庫
  • 死んでいるかしら 新書館 1997
  • 舶来文学柴田商店 新書館 1997
  • 生半可版英米小説演習 研究社出版 1998
  • アメリカ文学のレッスン 講談社現代新書 2000
  • 猿を探しに 新書館 2000
  • アメリカン・ナルシス メルヴィルからミルハウザーまで 東京大学出版会 2005
  • 翻訳教室 新書館 2006
  • つまみぐい文学食堂 角川書店 2006 のち文庫 
  • それは私です 新書館 2008
  • 代表質問 16のインタビュー 新書館 2009 

共著等

脚注

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  1. ジョン・アーヴィング『熊を放つ』中央公論社、1986年5月、訳者あとがき。
  2. 三浦雅士『村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ』新書館、2003年7月、160頁。
  3. 3.0 3.1 三浦雅士『村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ』新書館、2003年7月、128頁。