日産・ティーダラティオ

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ラティオLATIO )は、日産自動車2004年10月から生産・販売しているセダン乗用車である。

概要

2004年10月30日に同社のハッチバックモデル、ティーダの派生車として「ティーダラティオ」(TIIDA LATIO)の名で発売された。同時に同社のコンパクトセダンであるサニーはモデル廃止となったが、あくまでも上質なまったく新しいセダンをコンセプトとして開発され、これまでのサニー購入層をカバーするという意味ではサニー後継車ともいえるが、サニーの後継車として開発されたわけではない[1]。 当初はハッチバックモデルのティーダと別デザインのフロントグリルを装着することにより差別化が図られていたが、後にマイナーチェンジにより共通デザインとなった。また、インテリアデザインはティーダと共通だが、ティーダがメタル調であるのに対し、ティーダラティオには木目調のフィニッシャーが採用された。

2006年6月から北米市場でも「ヴァーサセダン」として販売開始。この最安価モデルはアメリカにおいて販売される新車のうち、4ドアセダンとしては最も安価なモデルである($9,990)[2]

2008年1月には2009年からのクライスラーへの南米市場向けOEM供給が合意されており[3]、後に同車をベースとする「ダッジ・トラーゾ」が2008年のサンパウロモーターショーに出品されていたが、景気悪化を理由に、2009年8月、OEM契約が解消された[4]

2012年10月に日本国内向けのフルモデルチェンジを行った際、ティーダが2代目ノートに吸収される形で日本国内向けの販売を終了していたことから、「ラティオ」に改名された。これにより、日本での「ティーダ」ブランドは事実上廃止となった。

日本国内向け車両について初代は追浜工場で生産されていたが、2代目からはタイ日産で生産され、日本に輸入するという形をとっている(2014年現在、新車で購入可能な日本メーカー製のセダンとしては唯一の逆輸入車扱いとなる)。さらに品質などの再確認を行うため、追浜工場で最終検査も受ける。タイでの生産は2004年から立ち上がっており、同国向けと2007年1月から(2006年販売分は日本製)のオーストラリア向けもタイ日産の生産車両が販売されている。中国向けモデルは東風汽車花都乗用車工場で、台湾向けは裕隆日産汽車三義工場で、アメリカ各国向けはメキシコ日産自動車アグアスカリエンテス工場で製造される。

初代(SC11型・2004年-2012年[5]

テンプレート:Infobox 自動車のスペック表

メカニズム

エンジンは、1.5LのHR15DEエンジンと後に追加された1.8LのMR18DEエンジンの2種類で、トランスミッションはエクストロニックCVT、フルレンジ電子制御4速AT、6速MTが用意され、4速ATについては最下級グレードの「15S」とe-4WD車に標準設定され、「15B」にも設定される。なお、6速MTについては後期型「18G」に設定される。また、2008年9月から設定される教習車には1.6LのHR16DEエンジンに5速MTを組み合わせたモデルも存在する。

プラットフォームにはティーダ同様、アライアンス関係を結んでいるルノーと共同開発したBプラットフォームのロングホイールベース版を使用している。そして、クラスを超える質感と、5ナンバーサイズのコンパクトボディを堅持しながらシーマ以上の有効室内長を確保した[6]。また、ティーダと同様にフロントシートについてもティアナと同等のサイズのものが採用された[7]。ティーダとは異なり、後席スライド機構は設定されず、ティーダのスライド機構を最後部にスライドされた状態で後席が固定されている。さらに、ティーダとはリアシートの設計が変更されており、ヒップポイントを数mm後退させたことにより、ティーダよりも若干広くなっている[8]

ラインアップ

日本仕様車には、ティーダ同様下から「15S」、「15M」、「15G」、「18G」の4グレードが展開され、15Sと15Mにはe-4WDを採用する四輪駆動車「15S FOUR」および「15M FOUR」が用意される。S、M、Gにはそれぞれ別のシート地が採用されるほか、一般カタログにはラインアップされていないが、法人専用グレード「15B」も存在し、これにはその3グレードとは別のシート地が採用されていたが後に15Sと共通化されている。また、この15Bにはノートと共通デザインのウレタンステアリングが採用され、アウトサイドドアハンドルが無塗装になるなど差別化されている。

2008年9月には15Bをベースとした教習車オーテックジャパンより発売された。これは2007年7月にクルー教習車が販売中止になって以来1年2か月ぶりの日産の教習車となる。5速MTと4速ATの2モデルが存在し、4速ATモデルはエンジンもベースの15Bと共通だが、5速MTモデルは新たにHR16DEエンジンを搭載している。

2009年9月1日には、先に生産中止されたハイヤー・タクシー専用車種のクルーの後継車種として、販売会社の鹿児島日産自動車が独自に企画・開発したティーダラティオタクシー仕様(ガソリン車のみ)が発売され、LPG車の設定は無いが、鹿児島日産自動車では「クルーと比較してラティオの方が車両価格が約40万円程安く、実際の燃費もLPG車よりもガソリン車の方が優れているのでトータルでランニングコストを抑えることができる」と提案している。

マイナーチェンジ

2008年1月にティーダと同時にマイナーチェンジが行われた。なお、中国国内においては、2007年11月にマイナーチェンジモデルが先行発売された。

これまでハッチバックモデルとは別デザインだったフロントグリルはティーダと共通の新デザインのものに変更された。他にも、ティーダ同様メーター類のデザインの変更を受け、「18G」には6速MT車が追加設定された。なお、これは北米仕様のヴァーサに設定されているものと基本的には同じメカニズムである。

このマイナーチェンジでオーテックジャパン扱いのドレスアップモデル「AXIS」は廃止され(ティーダは継続設定)、リアスポイラーを除いた各種エアロパーツが消滅した。

年表

2004年10月30日
9月にデビューしたティーダのセダンモデルとしてひと月遅れて登場。当初のエンジンラインアップは1.5LのHR15DEエンジンのみ。2008年1月のマイナーチェンジまではフロントグリルにはメッキが施されたティーダとは別意匠のものが採用されていた。
2005年1月11日
新開発のMR18DE型 直列4気筒 1.8L DOHC16バルブエンジン搭載モデルの「18G」を追加。
2005年4月
中国向け「ティーダ セダン」(中国名:頣達)を発売。同月開催された「オート上海 2005」に出展。日本向けには設定のないHR16DE型直列4気筒1.6Lエンジンに4速ATを組み合わせる。生産は日産自動車と東風汽車との合弁会社である東風汽車有限公司 花都工場にて行われる。
2005年12月21日
一部改良。最上級グレードの「G」に木目調・本革巻コンビ3本スポークステアリングが採用された。
2006年2月
オーストラリアでの販売を開始。エンジンは1.8LのMR18DEのみで、6MTと4ATが選択可能。
2006年6月
台湾タイ王国で相次いで発売開始。
2006年12月25日
HR15DEエンジンとCVTの改良により、燃費向上[9]。また、ビジネスグレード15BにエクストロニックCVTが選択可能となる。
同時にリモコンキーの意匠変更など、一部改良も行われた。
2007年1月
オーストラリア仕様車が日本製からタイ製に変更。
2007年11月
日本仕様車に先立ち、中国仕様車がマイナーチェンジ。
2008年1月28日
ティーダと同時にマイナーチェンジを実施。
2008年9月10日
オーテックジャパンから教習車を発売。
2008年10月1日
仕様向上。1.8L車には15インチアルミホイールが、中間グレードの「15M」にはインテリジェントキーが、それぞれ標準装備となった。
2008年12月17日
2009年3月末までの期間限定車「Plus Navi HDD Safety」を発売。
2009年5月19日
燃費性能を向上し、HR15DEエンジン+CVT車(15M・15G)は「平成22年度燃費基準+25%」を達成。また、ボディカラーの変更、一部グレードにカーウイングスナビゲーションシステムやディスプレイ付CD一体AM/FM電子チューナーラジオ+バックビューモニターをオプションで設定する仕様変更を行った。
2009年9月1日
鹿児島日産自動車・法人部より、クルー・タクシー仕様の後継車種として、独自に企画・開発した、ティーダラティオ・タクシー仕様(ガソリン)が発売[10]
2009年9月15日
北米仕様車のヴァーサセダンがマイナーチェンジを行い2010年モデルに移行。変更は1.6L車を除いてセダンに準じ、フロントグリル、アルミホイール、ホイールカバーのデザインなどが変更された。
2010年8月6日
一部仕様変更(8月16日販売開始)。2WD車には新たにスイッチ一つでエンジンとエクストロニックCVTを協調制御し、発進・加速時にエコドライブのサポートを行う「ECOモード機能」を搭載。また、「15S」のトランスミッションをエクストロニックCVTに変更し、燃費を向上。「平成22年度燃費基準+25%」を達成した為、新たに環境対応車普及促進税制に適合した。インテリジェントエアコンシステムには高濃度プラズマクラスターイオン発生器を新たに搭載した。グレード体系の見直しを行い、1.8L車の「18G」廃止し、ビジネスグレードの「15B」はCVT車のみとなる。オーテックジャパン扱いの教習車はシートクロスを変更し、電動格納式リモコンドアミラーを採用した(エンジン・トランスミッションは従来どおりで、ECOモード機能は非搭載となる)。
2012年6月
教習車を除き全て生産終了。在庫販売のみとなった。
時期不明
教習車も生産終了。これにより日産は再び教習車から撤退。

2代目(N17型・2012年-/中国仕様・北米仕様:2011年-)

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メカニズム

プラットフォームは、先代のBプラットフォームに代わり、4代目マーチから採用された新開発のVプラットフォームを使用。搭載されるエンジンは仕向地によって異なり、タイ及び日本向けがHR12DE 1.2L 直3、中国や東南アジア(タイは除く)及びオセアニアなどではHR15DE 1.5L 直4、アメリカ大陸向けにはHR16DE 1.6L 直4が搭載される。

また、日本仕様はマーチ、ノートおよびタイ向けアルメーラにて採用済みのアイドリングストップ(タイ向けMT車は非装着)や副変速機構付CVTを搭載。徹底的な軽量化を図った事により、先代ティーダラティオに比べて70kgの軽量化を実現し、Cd値・0.31と空力性能に優れたボディ形状としたことで22.6km/L(JC08モード)の低燃費を実現し、「平成27年度燃費基準+10%」を達成した。

ラインナップ

先行で展開されている日本国外においては、中華人民共和国インドなどではサニー、東南アジア及びオセアニアなどではアルメーラ、アメリカ大陸では2代目ヴァーサセダンとして販売される。インドで販売されている2代目ルノー・スカラは当該モデルをベースに開発された車種である。

日本国内では、先代のティーダラティオの後期型をほぼ踏襲するラインナップとなっており、アナログメーター[11]、液晶オド・ツイントリップメーター(燃費表示機能・デジタル時計・航続可能距離)を装備した普及グレードの「S」、ファインビジョンメーター、マップランプ、トランクオープナーレバー、トランクルームランプなどを追加装備した標準グレードの「X」、プッシュエンジンスターター、運転席バニティミラー、オゾンセーフフルオートエアコン、VDC、エンジンイモビライザーなどを追加装備した上級グレードの「G」、そして、「S」からトランクリッドトリム、ドアサッシュブラックアウトを省き、フロントグリルとドアハンドルをブラックに変更したビジネス向けグレード「B」の4グレードを設定する。また、エンジン進化型エコカー「PURE DRIVE(ピュアドライブ)」の車種に仲間入りしたため、リア右下に「PURE DRIVE」エンブレムが装着される。

年表

2010年12月
広州モーターショーにて、中国版ティーダラティオとなる「サニー」のフルモデルチェンジを発表。新開発となるVプラットフォームを採用し、エンジンはHR15DEを搭載。インテリアではジュークとほぼ同一デザインとなるメーターパネルを採用。2011年より販売を開始した。
2011年4月
ニューヨークモーターショーにて、北米版ティーダラティオとなる「ヴァーサセダン」のフルモデルチェンジを発表。中国版サニーとエクステリアデザイン、およびインテリアデザインを共用する。新開発となるVプラットフォームを採用し、先代と比べて全長・全高がやや小さくなった。エンジンはHR16DEを搭載。
なお、「SL」「SV(カナダ向け以外ではメーカーオプション)」においては、先代ヴァーサ同様他国向け同型車では設定のないリア6:4分割可倒式シートが装備される。
(他国向け左ハンドル仕様車においても標準もしくはオプションで装備されている場合はあるが、右ハンドル仕様車は設計上ボディ剛性が不足する事からV字型の補強バーが通されているため選択できない)
2012年8月
オーストラリアでN17「アルメーラ」として発売開始。エンジンはHR15DEのみ。トランスミッションは5MTと4ATが選択可能。VDC全車標準装備。
2012年10月5日
日本で新型「ラティオ」として発売開始[12]。日本仕様車はマーチに続いてタイ王国で生産される。先代の(ティーダ)ラティオと異なり、e-4WD仕様、および直4エンジン搭載仕様は当初から設定されていない。同社では法人顧客、もしくはリアノッチ(いわゆるトランク)の付かない2ボックス車(ハッチバック)やステーションワゴンミニバンなどをまったく好まない一部の70代前後の個人の高年齢層を中心に月販1,200台の目標を目指すとしている[13]。なお、全車に3気筒エンジンを搭載した日本国内向けの小型3ボックスセダンとしては1965年に発売され、1969年に販売を終了したスズキ・フロンテ800以来43年ぶりとなる[14]

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車名の由来

  • 「TIIDA」は英語で「自然の調和・潮流」を意味する「tide」からの造語。「ティーダ」の発音は沖縄語太陽を意味する「てぃーだ」から来ている。
  • 「LATIO」は英語「Latitude(行動の自由(裁量))」からの造語。

脚注

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関連項目

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外部リンク

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テンプレート:自動車
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  10. 小型ガソリン車のタクシー仕様を独自開発 鹿児島日産 南日本新聞
  11. メーターパネルのデザインは「G」および「X」がE12型ノート用、「S」および「B」が前期型K13型マーチの「12G」用と共通。いずれもタコメーターが標準で装備されている。
  12. テンプレート:Cite web
  13. トップ > インプレッション >日産ラティオ G(FF/CVT)【短評】 (2012.11.7)「なんとかならんもんかねえ。日産ラティオ G(FF/CVT)……174万6150円」 - webCG 2013年9月13日閲覧。
  14. 厳密にいえばフロンテ800は全車に2サイクルの3気筒エンジンを搭載した2ドアセダンである。4ドアセダンで全車に4サイクルでなおかつ3気筒エンジンを搭載した車種としては2代目ラティオが初となる。ちなみに2代目ラティオが登場する前はトヨタ・ベルタにも1.0Lモデル全車に4サイクルの3気筒エンジンが搭載されていた(ただし1.3Lモデルは全車4サイクルの4気筒エンジンが搭載)という前例がある。