安倍貞任

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
2014年7月24日 (木) 16:43時点におけるTourisu-garin (トーク)による版 (重複する記述を削除)
(差分) ← 古い版 | 最新版 (差分) | 新しい版 → (差分)
移動先: 案内検索

テンプレート:基礎情報 武士

安倍 貞任 (あべ の さだとう)は、平安時代中期の武将。安倍氏の棟梁・奥六郡俘囚の豪族安倍頼時の第2子。厨川柵主として、安倍厨川次郎貞任とも。妹聟に藤原経清(奥州藤原氏初代藤原清衡の父)がいる。

経歴

永承6年(1051年)に、安倍氏京都の朝廷から派遣されていた陸奥守藤原登任との争い[1]に端を発して、以降12年間にわたって続いた前九年合戦において、東北各地に善戦する。登任の後任として源頼義が翌永承7年(1052年)に赴任すると、後冷泉天皇祖母・上東門院(藤原彰子)の病気快癒祈願のために大赦が行われ、安倍氏も朝廷に逆らった罪を赦されることとなったが、天喜4年(1056年)に、阿久利川において藤原光貞の営舎が襲撃される阿久利川事件が起こると、頼義は事件の張本人と断定された貞任の身柄を要求し、父の頼時がこれを拒絶して再び開戦となる。天喜5年(1057年)、安倍頼時が戦死したため貞任が跡を継ぎ、弟の宗任とともに一族を率いて戦いを続けた[2]

同年11月には河崎柵に拠って黄海(きのみ、岩手県東磐井郡藤沢町)の戦いで陸奥守・源頼義勢に大勝している。以後、衣川以南にも進出して、勢威を振るったが、康平5年(1062年)7月、国府側に清原氏が頼義側に加勢したので形勢逆転で劣勢となり、安倍氏の拠点であった小松柵、・衣川柵・島海柵が次々と落とされ、9月17日には厨川柵の戦いで貞任は敗れて討たれた。深手を負って捕らえられた貞任は、巨体を楯に乗せられ頼義の面前に引き出されたが、頼義を一瞥しただけで息を引き取ったという。その首は丸太に釘で打ち付けられ、朝廷に送られた(この故事に倣い、後年源頼朝によって藤原泰衡の首も同様の措置がされた。平泉中尊寺に現存する泰衡の首には、釘の跡が残っている)。なお、弟の宗任は投降し、、同7年3月に伊予国に配流され、さらに治暦3(1067)年太宰府に移された[3]

背丈は六尺を越え、腰回りは七尺四寸という容貌魁偉な色白の肥満体であった(『陸奥話記』による記述)。衣川柵の戦いにおいては、源義家和歌の問答歌をしたとされる逸話も知られる。 『今昔物語』には、安倍頼時(貞任の父)は陸奥国の奥に住む「夷」と同心したため源頼義に攻められ、貞任・宗任兄弟らは一族とともに「海の北」[4](北海道)に船で渡り河の上流を30日余り遡った当たりで「湖国の人」[5]の軍勢に遭遇した、と伝えられている。[6]

後裔

津軽地方の豪族・安東氏(のち秋田氏)は貞任の子、高星の後裔を称した。盛岡市出身で東京府知事の阿部浩も末裔を自認した。 第90・96代内閣総理大臣・安倍晋三氏も末裔であると日下公人氏に語ったとされ、また第23回参議院議員通常選挙に向けて北上市で遊説を行った際、「貞任の末裔が私となっている。ルーツは岩手県。その岩手県に帰ってきた」と聴衆に語りかけた。

墳墓

埋葬地

埋葬地は明らかではないが、各地に伝承として残されているものがある。

  • 貞任峠 (京都府)
  • 足手谷 (京都府)
  • 人尾峠 (京都府)
  • 下宇津八幡宮 (京都府)
  • 船井神社・腕(かいな)守 (京都府南丹市八木町)
  • 久留守神社 (京都府南丹市八木町刑部)
  • 安倍貞任の墓 (山口県山陽町)
  • 立仙墓/安倍貞任の子の墓 (福岡県久留米市)
慰霊地

厨川柵疑定地を中心に、寺社に祀られている。

  • 天昌寺 (岩手県盛岡市天昌寺町)
  • 貞任宗任神社 (岩手県盛岡市安倍館町)

関連地名など

  • 貞任橋 (岩手県盛岡市上厨川)
  • 貞任高原 (岩手県遠野市)

史料

陸奥話記

脚注

  1. 安倍氏の支配地域であった陸奥・奥六群地方(胆沢・江刺・和賀・稗貫・紫波・岩手)から衣川を超えて南進したことに始まる。(田中禎昭「安倍貞任」/ 小野一之・鈴木彰・谷口榮・樋口州男編 『人物伝小辞典 古代・中世編』 東京堂出版 2004年 8ページ)
  2. 田中禎昭「安倍貞任」/ 小野一之・鈴木彰・谷口榮・樋口州男編 『人物伝小辞典 古代・中世編』 東京堂出版 2004年 8-9ページ
  3. 田中禎昭「安倍貞任」/ 小野一之・鈴木彰・谷口榮・樋口州男編 『人物伝小辞典 古代・中世編』 東京堂出版 2004年 9ページ
  4. 当時、北海道は「衣曽別嶋」(えぞのわけしま)と呼ばれていた。
  5. 沿海州からアムール河付近に至る東北アジア騎馬遊牧民を指すという
  6. 田中禎昭「安倍貞任」/ 小野一之・鈴木彰・谷口榮・樋口州男編 『人物伝小辞典 古代・中世編』 東京堂出版 2004年 10ページ

参考文献

関連項目

映画
  • 『安倍貞任』:1915年(大正4)
TVドラマ

テンプレート:Japanese-history-stub