ララァ・スン

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テンプレート:Pathnav ララァ・スンLalah SuneU.C.0062年? - 0079年12月28日)は、アニメ機動戦士ガンダム』に登場する架空の人物。

担当声優潘恵子。『ガンダムさん』では潘めぐみ

初登場時のエンディング・クレジットの表記は「ララ」。

第34話・35話・37話〜41話に登場(43話にもアムロのイメージ内に登場)。

略歴

『機動戦士ガンダム』

宇宙世紀0079年の一年戦争中に、シャア・アズナブルによって見出され、フラナガン機関で育てられたニュータイプの少女。ジオン軍少尉。

彼女のニュータイプ能力は非常に高く、サイコミュシステムを搭載したモビルアーマーエルメス」によるオールレンジ攻撃により、宇宙要塞ソロモン攻略戦の後に集結していた地球連邦軍の艦船やモビルスーツを次々と撃破し、ソロモンの亡霊と恐れられた。

インド系で肌は浅黒い。額にはヒンドゥー教の女性がしているビンディが見られる。出撃時以外は裾の広がった黄色のワンピースドレスを着用。そのため、キシリアに見咎められたこともある。なお、劇場版ではキシリア謁見時は軍服を着用している。

その後ガンダムとの戦いで、ニュータイプとして目覚めていたアムロ・レイと意識を共鳴させるも、割って入ったシャアをかばい、ガンダムのビームサーベルによりコクピットを焼かれ戦死する。その生と死の狭間のほんの一瞬、アムロとララァは意識を共振させ未来のビジョンを見る。それはアムロにとって希望でもあったと同時に悲劇でもあり、シャアはその意識の共有の外にあったまま、自分の行動が引き金になりララァを失うこととなる。こうして、ララァは、アムロとシャア、2人の男の間に無二の女性として存在し続け、時に彼らを苦しめる「永遠の女性」となる。

シャアと出会う以前の彼女の経歴は劇中では語られていないが、台詞からは荒んだ環境に置かれていたことが窺われる。彼女は、こうした境遇から自分を救い出してくれた(自分の価値を認めてくれた)シャアに対して恋愛感情を抱いており、アムロが評するように本来「戦いをする人ではない」彼女が戦場に臨んだのも、シャアの期待に応えるためであった。シャアも彼女の感情に応えていたようである。シャアはララァに対し「その能力だけを愛している」といい、ララァもそれを承知していた。

一年戦争後から『機動戦士Ζガンダム』まで

一年戦争が終結した後も、シャアとアムロは何らかの形でララァの存在を感じながら、もしくは引きずりながら生きていく。アムロの政府監視下での軟禁生活は、一見したところ豪邸での快適な生活だが、その中でララァへの悔恨を引きずりながら生活し、カミーユカツベルトーチカといった自分に火をつける存在が現れるまで、その心身を鈍らせていったといえる。

シャアは逃亡生活中にハマーンと出会い恋人同士となるが、その中でララァのことを、どの程度思い続けていたかは定かではない。シャアはアムロとは対照的に次なる戦いの準備を水面下で進め、クワトロ・バジーナとして地球圏に舞い戻るが、その中で、後にアーガマのクルーとなるシンタとクムを引き取ったのは「ララァが頼んだ」からである。また、潜入したグリーンノアでカミーユ・ビダンの存在を感じた時、その印象にアムロやララァと同じものを感じていた。

その後シャアは地球に降下した際、戦意を喪失してしまって宇宙に上がろうとしないアムロ・レイに対して、「ララァに会うのが怖いのか」と問いかけている。

『機動戦士ガンダムΖΖ』

ジュドー・アーシタとハマーン・カーンの最終決戦において、ΖΖガンダムのコア・ファイターの状態で晒され、窮地に陥ったジュドーを救うために、カミーユらと共に多くの人達の意識体が現れ、ハマーンの前に立ちはだかり、ジュドーとΖΖに力を与える場面がある。その中の1人にララァが登場する。

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』

彼女の死が遺恨となり、卓越した2人のニュータイプであるシャアとアムロは、同じ理想を持ちながらも、その14年後の第二次ネオ・ジオン抗争(または「シャアの反乱」)に至るまで、結局のところは相容れることができなかった。2人にとって大切な女性を殺された、または殺してしまったという遺恨は、それほどに深いものであった。この作品でシャアは、彼女を指して「私の母親になってくれたかもしれない女性(ひと)」と語っている。

また、アムロは夢の中で彼女の意識体と思しき存在と会話している。アムロはその夢を久しく見ていなかったらしいが、シャアとの決戦が迫る中、再び夢の中にララァが現れ、今でも自分の意識はアムロとシャアの間で存在し続けていると告げる。その言葉を聞いたアムロは、自分とシャアを一緒くたに手にしようとするなとララァに反発する。また「シャアは否定しろ」と嫉妬とも取れることをアムロは言い、その後「シャアは純粋な人」と言うララァの言葉に反論する声を上げながらアムロは目を醒ます。本物のララァがアムロの前に現れ、会話を交わしたのかどうかは定かではない。

過去を描いた派生作品

富野喜幸名義で書かれた小説『機動戦士ガンダム』では、サイド5(ルウム)出身の戦災孤児であり、流れ着いたサイド6で荒みきった生活に陥っていたのをシャアから救い出された、という設定である。その後、フラナガン機関での訓練を経てエルメスのパイロットとなって以降は、TV版とほぼ同じ経緯を辿る。

また、同作者によるアムロとララァ、そしてシャアとの関係のみに絞った小説『密会〜アムロとララァ』においても、シャアに拾われる前のララァを書いている。そこではインドのガンジス川畔にある高級士官のための売春宿に生きるために売られてきたとある。月に3、4人の相手をすれば苦もなく食べていけるその生活は、戦時中のインドにおいてはむしろ恵まれていたともいえる場所だったようである。そんな生活を送りつつも、ララァは発作的に脱走を試みたこともあった。そんな中ガルマ・ザビ戦死の責任を問われ、左遷され東南アジアを彷徨っていたシャアがこの売春宿に接待で連れて来られる。何かを感じていたシャアは、通された部屋でララァと遭いその才能を確信する。そしてシャアは金塊をつんでララァを(一方的に)身請けし、テキサスコロニーに位置するニュータイプ研究所フラナガン機関での実験を経て宇宙に上がることになった。

ララァが身を落としていた事は前述の小説版『機動戦士ガンダム』でも語られており、アニメ本編でも頻繁に「私の様な女」などと自身を卑下した発言が目立つことから、富野の中では同様の設定であったと推察される。ただし、その小説版では、フラナガン機関に預けられた処女のララァがその後にシャアと関係を持った事で非処女になったという台詞があり、時期によって富野の中で設定が変動していることが窺える。なお、シャアを演じた池田秀一がララァとシャアの関係について尋ねた際には「男女関係にあると思っていい」と発言したと池田自身が語っている。こうした背景を汲んでか、パロディ作『魔法の少尉ブラスターマリ』でも両者はベッドを共にする間柄として描かれている。

一方、キャラクターデザイナー安彦良和も、漫画『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』にてララァの過去を描いている。こちらでは一年戦争以前、ジャブロー建設現場に潜入していたシャアが、インド系のカジノ荒らしにその能力を利用されていたララァと出会い、その内紛から助け出したという設定になっている。ここではララァの出身はムンバイで、故郷に残した家族への送金のためカジノ荒らしに加担させられていたとされる。その後、シャアは助けたララァをサイド3のフラナガン機関に預けたようである。なお、ララァはフラナガン機関では「MAN-08(エルメスの機体番号ではなく)」のコードネームで呼ばれている。「開戦編」では、故郷に残した家族を心配するなど人間らしい一面を見せていたが、「ララァ編」の頃になると人間味の欠けた浮ついた印象を受けるようになり、テキサスコロニーの遺跡内でシャアに「故郷を思い出すのか」という質問に対し「大佐が忘れさせてくれた」と意味深な発言をしている。

搭乗機

補足

  • 富野は当初白人女性をイメージしていたが、脚本家サイドから「ニュータイプが出てくるとしたらこういう人たちの中から」との意見を受け、実際の作品のような人種になった(『逆襲のシャア』の中でも、クェス・パラヤはインドでクリスチーナという人物のもとで、ニュータイプの修行をしていた、という設定がある)。しかし実質上のララァのラフデザインを行なったのは、異様に大きなサイコミュ対応型ヘルメットつきのノーマルスーツを含めて富野自身である(私服姿のクリンナップは安彦良和、ノーマルスーツは作画スタッフ)。
  • TV版を病気で降板せざるを得なかったキャラクターデザイナーの安彦良和は、ララァが登場するこの時期作品に深く関われなかったため、彼女に対しては違和感が残ったと放送終了後に語っている(劇場版のララァは大半が安彦による新規作画である)。
  • ララァは死後もシャアの前に思念体として現れたようで、『機動戦士ガンダム C.D.A. 若き彗星の肖像』では、若いハマーン・カーンの能力が誰かに利用される恐れがある事を忠告し、『機動戦士Ζガンダム デイアフタートゥモロー ―カイ・シデンのレポートより―』では、ブレックス・フォーラ暗殺に巻き込まれ孤児となったシンタとクムを引き取るよう促している。
  • ララァとアムロが出会う場面で、傷ついた白鳥を見たララァが「美しいものが嫌いな人がいて?」とアムロに問いかけるセリフがある。これ以降、白鳥はララァを想起させる存在として度々ガンダムシリーズの中に登場する。その一つとして、『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』の後日談に当たる「ラスト・リゾート」の中で、白鳥を見たミケルが「美しいもの…嫌いだなぁ」という趣旨の台詞をつぶやく場面がある。
  • 機動戦士ガンダムの公式パロディアニメ『ガンダムさん』では、声優がオリジナルキャストの潘恵子ではなく、その娘の潘めぐみとなり、親子二世代で同じキャラクターを演じている。なお、潘恵子もナレーションの一人で出演し、親子共演作ともなっている。

関連項目

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