モヤシ
テンプレート:栄養価 モヤシ(もやし、糵、萌やし)とは、主に穀類、豆類の種子を人為的に発芽させた新芽である。
豆類のモヤシを特に豆もやし(ビーンズスプラウト、ビーンスプラウト、Bean sprout)という。豆もやしは、豆自体または、発芽した芽と茎を食用とする。
呼称は「萌やす」(発芽させる意)の連用形であり、本来は穀類の新芽作物一般を指す語である。しかし、近世に緑豆モヤシが大いに普及したため、単にモヤシと言った場合、緑豆モヤシを指すことが多い。ワラビ、タケノコ、カイワレ大根、ブロッコリーなどの新芽作物もモヤシの一種ということになる。これらのいわゆる新芽作物(スプラウト、テンプレート:Lang-en-short)一般についても本項目で解説する。
種類
豆もやし
ブラックマッペ(ケツルアズキ)は、戦後にタイ、ミャンマーからの輸入が始まり、中華料理の普及と共に1965年(昭和40年)頃から消費量が増加した。以後、1985年(昭和60年)頃になるとスーパーマーケットに定着し、ラーメンや鉄板焼き(ジンギスカン鍋)の需要から人気は急激に高まった。手軽に購入でき多様に調理が出来るブラックマッペもやしの普及にしたがい、生産コストの高い大豆もやしは衰退した。現在の「豆もやし」の代表「緑豆もやし」は食味と食感が好まれて、1990年以降、急激に普及した[1]。
関東では緑豆・大豆を使った、色が白く太めでシャキシャキ感のあるものが好まれる。関西ではブラックマッペを原料とし、どちらかといえば細くて長く、もやし特有の風味があるものが好まれるようである。 青森県には大鰐温泉もやしという長さ30cm程度の大豆もやしが存在する。 テンプレート:See also
中華料理での炒め物に多用されるが、これらで使われるのは大豆による「大豆もやし」が一般的である。沖縄ではマーミナー(豆菜)と呼ばれ、チャンプルー(炒め物)によく使われる。また「浜松餃子」は、茹でたもやしが添えられているのが特徴である。
緑豆もやしは店頭に並べられてから傷みが早く、水分が出てくるので2〜3日以内に消費することが望ましい。手間と時間がかかるが、根と豆部分を取り除くと食感が良くなり、雑味がなくなるなど大きな差が出る。 そのほか、ムラサキウマゴヤシ(アルファルファ)のもやし(糸もやし)やソバのもやし(そばもやし)もあり、サラダなどに使われている。
中国ではエンドウをモヤシにした豆苗が栽培されており、欧米ではフェヌグリークやアルファルファなどの豆類ももやしとして栽培されている。
新芽野菜としてのもやし
豆苗、カイワレ大根、ブロッコリー、赤キャベツも発芽した状態と考えれば、もやしの一種である。このような新芽野菜はスプラウトとも呼ばれる。
豆もやしの栽培
原料の豆の種類はブラックマッペ、緑豆、大豆の三種がある。豆を流水で10分ほど洗い、豆の量の3倍の水に一晩漬けておき、湯に15分ほど浸漬し真菌などを殺菌し、通気性のよい薄暗い部屋(軟白栽培)で水を取り替えながら置くと7日~10日程度で発芽する。モヤシの根を太く育成するために、しばしば雰囲気中にエチレンを添加するための工夫がされている[2]。 成長が早いうえ、通年で栽培できるため安価な値段で取引される。
第二次大戦中、光のない環境で容易に栽培でき、ビタミンが豊富なことから潜水艦内でも栽培された。
安全性
豆もやしは日光による殺菌作用のない暗所で栽培されるという性質上、大腸菌をはじめとする細菌が増殖しやすい食品であり、消費者が購入する時点で平均して1gあたり100万~1000万の細菌があるといわれている。サルモネラ、カンピロバクターなどの食中毒菌についても栽培前に種子の殺菌が行われるのが常であるものの、何らかの理由でひとたび種子に食中毒菌が付着していた場合、増殖しやすい食品であるといえる。2010年にはイギリスで発生したサルモネラ食中毒事件を受けて、英国食品基準庁が豆もやしを完全に加熱して調理するよう勧告を出している[1]。
主要な栄養成分
豆もやし100g当り。
- エネルギー:14 kcal
- 水分:94.4 g
- 蛋白質:1.7 g
- 炭水化物(糖質):2.6 g
このほか、2-sec-ブチル-3-メトキシピラジンが微量含まれ、モヤシの香りを表現する香料としても用いられる[3]。
ブラックマッペやリョクトウには、血糖値を抑制する効果のあるα-グルコシダーゼ阻害作用がある[4]。テンプレート:Main
豆もやしを使った料理
モヤシっ子
痩せて高身長、体力のないひ弱な色白の子供のことを「モヤシっ子」と例えられる。これは、モヤシの色白で、ひょろひょろと長い芽が出芽していることから、転じて、痩せて高身長、体力のないひ弱な色白の子供を「モヤシっ子」というようになった。
脚注
- ↑ 「原料高騰 モヤシに荒波」『朝日新聞』2010.2.26 (31)
- ↑ 渡辺篤二監修 『豆の事典 :その加工と利用』 幸書房、2000年 pp.94-95
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ 豆類ポリフェノールの抗酸化活性ならびにα-アミラーゼおよびα-グルコシダーゼ阻害活性、齋藤優介ほか、日本食品科学工学会誌、Vol.54 (2007) No.12 P563-567