ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記

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ドラえもん のび太のねじ巻き都市冒険記』(ドラえもん のびたのねじまきシティーぼうけんき)は、藤子・F・不二雄によって執筆され、『月刊コロコロコミック1996年9月号、10月号および1996年12月号から1997年2月号に掲載された大長編ドラえもんシリーズの作品。および、この作品を元に1997年3月8日に公開されたアニメーション映画。大長編ドラえもんシリーズ第17作、映画シリーズ第18作。藤子・F・不二雄は本作の執筆中に死去、この作品が遺作となった。

監督は芝山努配給収入19億5000万円、観客動員数390万人。第15回ゴールデングロス賞優秀銀賞受賞作。同時上映は『ザ☆ドラえもんズ 怪盗ドラパン謎の挑戦状!』。

解説

漫画は62ページの途中あたりで絶筆した[1]。表紙カバーと最初のカラーページ(3ページ)が藤子・F・不二雄の完成品であり、絶筆となった後の部分については下書きや原案を基に藤子プロが作成している。映画版で監督を務めた芝山努の話では、この映画だけは原作完成よりも前に話の大筋をすべて教えられていたことや、のび太に対して種まく者による「あとは君たちに任せる」というセリフがあることから、まるで遺作となることが分かっていたかのような話だと後に語っている[2]。また、原作を引き継ぎ執筆をした萩原伸一(現・むぎわらしんたろう)も、連載1回目の際に藤子からスタッフへあてたメモ書きと「のび太の部屋に体温を与える徹底研究」と書かれた、のび太の部屋の小物や本棚についてのイメージが描き込まれた原稿が回されたことにより、今までは細かい指示をしていなかった藤子が、これだけ描き込んでいた事については「ちょっとおかしいな」と思ったと話している[3]

本作は前作『のび太と銀河超特急』とリンクする部分が存在する。のび太が使い、ラストで熊虎鬼五郎と一騎打ちの末倒すことに成功した「フワフワ銃」がそれである。これはもともと『銀河超特急』の舞台ドリーマーズランドの「西部の星」で使われていた安全な拳銃で、ドラえもんは記念にもらったと言っている。その他、大長編では『のび太と雲の王国』とリンクしている場面があり、のび太のママたちが「勉強すると言って集合したけど、本当は危険な冒険に出かけたんじゃ…」と心配する。他にも故障したドラえもんが出したものが出てくる。

本作クライマックスにおける、巨大な小便小僧が放尿で村火事を鎮火するアイディアは、「ガリヴァー旅行記」のリリパット国(小人国)でガリヴァーがとった行動の翻案である。

冒頭の時点でのび太が生命のねじの存在を知っておりパカポコなどに使用している。ドラえもんが映画で核を担う道具[注 1]をのび太に説明する描写が描かれていないのは本作のみである。『のび太とブリキの迷宮』以来、4年ぶりにドラえもんが一時的に故障する場面があるが、直後に別行動を取っていたのび太がスペアポケットに入った際の振動で復活するため、『のび太と雲の王国』や『のび太とブリキの迷宮』ほど危機的な状況ではなく、一瞬気絶した程度であった。

主題歌は矢沢永吉が手がけた。武田鉄矢が関わらなくなった今作以降、映画ドラえもんの主題歌は、他のアニメ映画と同様にタイアップ要素が濃くなっている。また武田の勇退と同時に、本作をもって菊池俊輔は劇場映画においての音楽担当を長編作品のみ降板し、以後「帰ってきたドラえもん」などの短編作品、およびテレビシリーズのみを担当している。なお武田は後の2010年公開作品『のび太の人魚大海戦』にて再び挿入歌を担当することになる。

映画も大体のコンセプトは同じだが、登場人物や鬼五郎の設定などに違いが見られる。予告映像にて存在していた動物の村などは本編には登場しない。また予告映像では小便小僧が森を鎮火し「まさかこれで終わりってことは…」とのび太が言い、結末を飾る内容に種まく者が出現する。しかし本編では大幅に変更され、結局最後はのび太が皮肉を言った小便小僧の鎮火、そして鬼五郎が改心して締めくくった。大長編に登場するマクドナルドは映画では登場しない。なお映画予告編では、一部にフランス語と英語が用いられていた。

あらすじ

ある日の夜、空き地でドラえもんのひみつ道具「生命のねじ(いのちのねじ)」で命を得たウマのぬいぐるみ「パカポコ」がのび太と一緒に走りの練習をしていた。しかし空き地は手狭であり、またのび太はジャイアンやスネ夫に「牧場を持っている」と嘘をついてしまったため、何とかならないかと考えていると、ドラえもんが未来から福引の小惑星引換券のはずれ券を持ってくる。そこに牧場や町を作ろうと思ったのび太は早速、小惑星を調べてみる。ところがいろいろ調べても、地球とはまったく違っていて小さくて穴だらけ。しかし最後の1枚を調べるとなんとそこは、大自然の広がる美しい星であった。

のび太とドラえもん、そしてしずか、ジャイアン、スネ夫のいつものメンバーで、この星におもちゃの町を作ろうと考えた。のび太がその町を「ねじ巻き都市(ねじまきシティ)」と名づけた。のび太たちと、ドラえもんが誕生させたぬいぐるみたちによって住みやすい所になりつつあるが、不審なことにどこからともなく「出ていけ」との声が聞こえるようになる。

そんなある日のこと、1人の脱獄囚がねじ巻きシティに忍び込む。熊虎鬼五郎という前科百犯の犯罪者である。この星を自分のものにしようとした熊虎は偶然落ちていた「タマゴコピーミラー」を使い、たくさんの自らのクローンを誕生させる。

ドラえもんたちは熊虎が忍び込んだのも知らず、雷のショックで生まれたピーブたちとともにさらなる町づくりをする。ねじ巻きシティを舞台に、ドラえもんたちと熊虎の戦いが始まろうとしていた。

舞台

宇宙(ねじ巻き都市)
のび太が福引券を読み間違えて当てた、火星木星の間の小惑星帯にある小惑星[注 2]。この星では植物が進化しており、意識を持っている。

ゲストキャラクター

ピーブ
- 佐々木望
落雷の影響により生まれた知能の高いぬいぐるみのブタ。ねじ巻き都市の市長に選出された。
プピー
声 - 白川澄子
ぬいぐるみのブタでピーブの妹分。ドラえもんが起こした人工落雷で知能を持った。多少呂律が回らない口調で話す。
パカポコ
のび太が生命のネジで命を吹き込んだウマのぬいぐるみ。のび太の愛馬となる。
アイン・モタイン
声 - 菅原正志
ぬいぐるみのウシ。落雷の影響により、アルバート・アインシュタイン並の知能を持った。空気清浄機やセラミックスなどを発明した。
レオナルド・ダ・ヒンチ(漫画)
ぬいぐるみのウマ。落雷の影響により、レオナルド・ダ・ヴィンチ並の知能を持った。スネ夫はアイン・モタインともども「何か偉そうな感じ」と称し、快く思っていない。漫画のみ登場。
トーマス・メーエジソン(映画)
声 - 塩沢兼人
ぬいぐるみの羊。落雷の影響でトーマス・エジソン並の知能を持った。映画のみ登場。
ウッキー
声 - よこざわけい子
生命のねじを使って命を吹き込んだしずかのぬいぐるみのサル。いたずら好きで生命のネジを使ってパンダの乗り物(大長編ではカーネル・サンダースに似た人形「ザンダースおじさん」)、骨格模型、小便小僧(これらに加え、大長編では「○野□三」という人物の選挙ポスター)に生命を吹き込んでしまう。
パンダ
声 - 青木和代
ウッキーにより命を吹き込まれたパンダの乗り物。ラストの鬼五郎との対決では一人で敵を撃破する活躍を見せた。
ゴジちゃん(漫画)、ティラ(映画)
声 - 茶風林
ジャイアンにより命を吹き込まれた恐竜のぬいぐるみ。外見とは裏腹に内気な性格(ジャイアン曰く「俺に似て」)。ジャイアンはこのぬいぐるみを大切に思っており、「弟よ」とまで言い出す。甘党で大福もちが好物。漫画版と映画版では名前が異なる。
種まく者
声 - 伊倉一恵(少年の姿)、渡部猛(魔人の姿)
地球や火星、ねじ巻き都市の星などの全生物を生み出すきっかけを作った造物主。金色に輝いている。不定形で武者の姿をした魔人や巨大なカブトムシ、戦車など、どのような形にも姿を変えられる。36億年前、地球と火星にアミノ酸やタンパク質などの有機物質(通称「生物の種」)を散布し、生物を誕生させた。ピーブたちに知性を与えた落雷も彼が起こしたもの。
熊虎 鬼五郎(くまとら おにごろう)
声 - 内海賢二
前科百犯の凶悪な脱獄囚。逃亡中にのび太の家に侵入し、どこでもドアを通ってねじ巻き都市の星へ迷い込んだ。ひみつ道具タマゴコピーミラー」で増殖した自分のクローンたち(声 - 広瀬正志石田弘志秋元羊介中村大樹)と共にねじ巻き都市をと乗っ取り、森の木を売る、ホテルカジノを建てようと画策する。映画ではクローンたちには自分を「社長」と呼ばせ、クローンとの区別のために帽子をかぶっている。また、ドラえもん映画の中で『ドラえもん のび太と雲の王国』続いて(のび太たちの住む時代)の地球からの悪役でもあり、名前がある悪役では初である。とても順応性が高く、クローンがタマゴコピーミラーから生まれたことを簡単に説明されただけで理解したり、ねじ巻き都市がある場所が地球外であることも理解している。ジャイアン(映画ではドラえもん)に熊五郎と名前を間違えられた。次回作である『ドラえもん のび太の南海大冒険』の漫画版では顔の似た海賊が登場している。漫画ではSIG P228を使用する。
ホクロ
声 - 松尾銀三
熊虎鬼五郎のクローンの1人だが彼だけ上唇にホクロがある。気が弱く優しい性格でいわば熊虎の良心。ホクロという特徴がありクローンの中では目立ったため、鬼五郎本人からハシゴの運搬や見張りなど面倒な仕事を押し付けられていた。泳ぐのが苦手であり、これはオリジナルの鬼五郎の特徴を受け継いだものである。(劇中で「俺は社長のコピーですよ、泳げないの知ってるでしょう!」と言っていた)。熊虎鬼五郎の中では1番優しく、ドラえもんたちに協力していた。大長編のみ歌には自信があるといっているが、実際はジャイアンよりはましだが相当な音痴。鬼五郎とクローン達を元の1人に統合した際に彼がオリジナルの鬼五郎として生まれ変わり、警察へ自首する事を告げ地球へ帰って行った。
なお、コロコロコミックに掲載された大長編の連載前の予告では、ラストの敵が「鉱石人間」とされていたが本編では登場しなかった。

登場するひみつ道具

スタッフ

原画
飯山嘉昌 斎藤文康 大武正枝 小野隆哉 寺田千久沙 鈴木満
茶谷与志雄 並木正人 柳野龍男 今川よしみ 高橋博行 武本康弘
藤森雅也
協力
オーディオ・プランニング・ユー アトリエ・ローク 旭プロダクション
岡安プロモーション トミ・プロダクション 京都アニメーション
夢弦館 プロダクション・アイジー 亜細亜堂
マキプロダクション NHKエンタープライズ21 CGルーム ナック
日本アイテック プロジェクトチーム・サラ じゃんぐるじむ
あにまる屋 虫プロダクション 金星スタジオ
エムアイ 動画工房 スタジオ・ヴィクトリー
ベガエンタテイメント

主題歌

オープニングテーマ - 「ドラえもんのうた
作詞 - 楠部工 / 編曲·作曲 - 菊池俊輔 / 唄 - 山野さと子コロムビアレコード
エンディングテーマ - 「Love is you」
作曲 - 矢沢永吉 / 編曲·作詞 - 高橋研 / 唄 - 矢沢永吉
本来CD化の予定はなかった[4]ものの、後に彼のベスト盤『E.Y 90's』と、映画シリーズのベストCD『DORA THE BEST』に収録された。
映画公開の翌年、テレビ東京系列「愛の貧乏脱出大作戦」の主題歌に採用された。

脚注

注釈

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出典

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外部リンク

テンプレート:ドラえもん映画作品

テンプレート:芝山努監督作品
  1. ドラえもん(18) のび太のねじ巻き都市冒険記 (1997) | 感動銀行
  2. 『Quick Japan vol.64』太田出版、2006年2月20日第1刷発行。ISBN 4-7783-1003-9
  3. 2012年1月15日放送の特別番組『ドラえもん傑作選スペシャル』より。
  4. 矢沢永吉が「ドラえもん」歌と作曲 来月公開「のび太のねじ巻き都市冒険記」 読売新聞1997年2月17日夕刊7面


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