ドナウ川

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テンプレート:Infobox 河川 ドナウ川(ドナウがわ、ラテン語Danubiusスロヴァキア語Dunajセルボクロアチア語Dunav, ドイツ語: Donau, ハンガリー語 Duna, ブルガリア語: Дунав, ルーマニア語: Dunăre英語フランス語: Danube)は、ヴォルガ川に次いでヨーロッパで2番目に長い大河である。

概要

ドイツ南部バーデン=ヴュルテンベルク州の森林地帯「シュヴァルツヴァルト(黒い森)」に端を発し、概ね東から南東方向に流れ、東欧各国を含む10ヶ国を通って黒海に注ぐ重要な国際河川である。河口にはドナウ・デルタが広がる。全長は2,850 km。

イズマイールにおけるドナウ川の流量(m³/s)
1921年から1985年の平均データ)[1] <timeline> Colors=

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川の名

現在の名ドナウ(ドイツ語)と各国語でそれに相当する名前は、ラテン語Danubiusダーヌビウス に由来する。これはローマ神話のある河神の名である。スキタイ語、あるいはケルト語からの借用語がもとになっていると考えられている。

語頭 Danuインド・ヨーロッパ祖語で「川」を意味する「*dānu」という単語より来ている。ケルト神話のダヌ(Danu)、インド神話の水の女神ダヌ(Danu)など、印欧語族の神話にはこの語が残っている。黒海周辺にはドン川ドニエプル川ドネツ川ドニエストル川など、同様の単語から派生したと見られる川の名が多数ある。

語尾 au は古ゲルマン語で流れを意味する ouwe に由来し、ドイツ語名称に1763年以降使われている。ドイツ語では以前は Tonach, その後は Donaw の名が使われ、現在に至る。日本語表記は、ドナウ川、ダニューブ川。

下流域は古代ギリシャ語では「イストロス川」と呼ばれた。これはケルト語の ys に由来する。

地理

ドナウの源流は下記のとおり、ドイツシュヴァルツヴァルト地方にあるフルトヴァンゲンの郊外にある。ここから東進を続け、ウルムインゴルシュタットを通過し、テンプレート:仮リンクではライン・マイン・ドナウ運河と接続する。パッサウの下流でオーストリア領内に入り、リンツウィーンの街を抜けて、その下流で「ハンガリーの門」と呼ばれる狭隘部を通過する。ここまでがドナウ川の上流部とされる。

「ハンガリーの門」を抜けた後、ブラチスラヴァ上流でスロバキアハンガリーの国境をなすようになる。エステルゴムからはハンガリー領内に入るとともに、ドナウベンドと呼ばれる地域で東西から南北に流れを変え、ハンガリーの中央部を縦断する。ここではハンガリー大平原を貫流することとなり、穏やかな流れが続く。ハンガリーの首都、ブダペストはかつて西岸のブダと東岸のペシュトの二つの街だったものが合併したもので、そのためドナウ川は街の中央部を流れることとなっている。その後、クロアチアセルビアの国境をなしたのちにセルビア国内に入り、ここで流れを再び東西に変える。ベオグラードスロベニアから流れてきたサヴァ川を合わせ、やがてセルビアとルーマニアの国境となる。ここはドナウ川がカルパティア山脈を越える地点であり、その部分には急流で知られる鉄門がある。ここは長い間難所として知られてきたが、現在ではダムの建設によって水位が上がり、穏やかな流れとなっている。ここまでがドナウの中流域である。

その後は下流域となり、ワラキア平原をブルガリアとルーマニアの国境をなしながら500kmにわたって流れた後、大きく北へ流れを変えてルーマニア領内へと入る。チェルナヴォダでドナウ-黒海運河と接続する。その後再び東に向かい、ウクライナとルーマニアの国境をなす。この地域ではドナウ川は北のキリア分流、中央のスリナ分流、南の聖ゲオルゲ分流とに分かれる。キリア分流が最も水量が多く、上流の水の70%が流れ込む。スリナ分流には10%、聖ゲオルゲ分流には20%前後が流れ込む[2]。この地域はドナウ・デルタと呼ばれる広大な河口デルタ地帯となっている。そして、黒海沿岸の町スリアで黒海へと注ぎ込む。

歴史

ギリシア人は河口から鉄門までのドナウ川を知っており、イストロス川と呼んだ。ローマ帝国もほぼ同じ地域まで進出し、ヒステール川と呼んだ。 ローマ帝国時代には、ほとんど源流から河口までの全域が、蛮族に対する帝国の北方の防衛線の役割を果たした。ウィーンブダペストベオグラードソフィアといった各国の首都はこの時期の最重要基地に起源を持つ。

中世には十字軍、あるいはオスマン帝国の兵や物資を運ぶ輸送路となった。17世紀には大まかに上流・中流部がハプスブルク家のオーストリア領に、下流部がオスマン帝国領となった。19世紀には上流・中流部はオーストリア・ハンガリー二重帝国領となり産業開発が進んだ。ドナウ川は二重帝国を結びつける大動脈となり、このことからこのころのハプスブルク帝国をドナウ帝国と呼ぶこともある。この時期には民族自決の動きが盛んになる中、二重帝国制を改組し諸民族が同等の権利を持つ連邦国家、ドナウ連邦の構想がなされた。一方、下流部においてはオスマン帝国の勢力が衰える中、ルーマニアやブルガリア、セルビアといった新独立国が誕生した。

第一次世界大戦によって二重帝国は崩壊した後は不安定な国際情勢が続き、結局第二次世界大戦後には上流域の一部を除くほとんどが共産主義化し、ソヴィエト連邦の影響下におかれた。このころには西側に属したウィーンと東側に属したその下流域との交流もほとんどなくなっていた。冷戦終結後、東欧革命によって政治的障害がなくなると、ドナウ川流域の交流は再び盛んとなった。

1992年ライン川に繋がるライン・マイン・ドナウ運河が完成し、北海から黒海までの水運が可能になった。

開発

1977年チェコスロバキア政府とハンガリー政府はドナウ川の開発条約を締結し、ハンガリーのドナウベントのすぐ上流にあるナジマロシュと、ハンガリーとチェコスロバキアの国境上にあるガブチコヴォの2か所にダムを建設し、水力発電や水量調整による洪水防止および安定航行の実現をめざした。1981年にはハンガリーが財政上の理由で4年間延期を申し入れたため、着工は1985年となった。しかしこのころからハンガリーでは環境や沿岸部の水没を理由としてダム建設反対運動がおこり、1989年には東欧革命によって民主化したハンガリー新政府が計画を中止した。これに対し、すでにガブチコヴォダムを90%完成させていたチェコスロバキア側は反発した。対立はさらに激化し、1992年にはハンガリーは条約自体を破棄。チェコスロバキアから権利を継承したスロバキアはこれを非難し、両国の対立は頂点に達した。欧州共同体の仲裁によってこの問題はハーグにある国際司法裁判所へと提訴され、1997年、裁判所は条約を一方的に破棄したハンガリーとダム建設を強行し自然環境を破壊したスロバキア双方に問題があるとして両国に罰金を命じた[3]。この判決は、国際司法裁判所が国際河川の紛争に対して判決を下したはじめてのケースであった[4]

源泉と分水嶺

ファイル:Donaueschingen Donauquelle.jpg
ドナウの泉(ドナウエッシンゲン)

ドナウ川の名称は、シュヴァルツヴァルト地方の町ドナウエッシンゲンで源流河川のブレク川とブリガッハ川が合流する地点において、初めてその名が生まれる。

このドナウエッシンゲンの町を治めたフュルステンベルク公の城館の庭に、「ドナウの泉」と呼ばれる源泉があり、ここがドナウ川の源泉だと言われている。彫刻などで飾られ観光名所ともなっているが、しかし実際はブリガッハ川に注ぐ支流であり、ここが地理学上の源泉とはみなされない。またドナウエッシンゲンにはもう一つの支流としてウニペルスの泉と呼ばれる泉もあるが、こちらは現在では近郊住宅地の中にある。この泉は無人地帯の国道の脇を細い流れで下った後、フュルステンベルク公城館の池や水流を経由し、ドナウの泉が注がれるのとは反対の南側からブリガッハ川へ合流する。

ブリガッハ川の源泉は、ドナウエッシンゲンより鉄道で2駅ほどのザンクトゲオルゲンという町の郊外にある。

地理学上のドナウの源泉は本流であるブレク川の源泉であり、これはフルトヴァンゲンという町の郊外にある。この「ブレクの泉」にはドナウ川の真の源泉である旨の説明版がある。ブレクの泉より100mほどの場所にあるエルツ川の源泉はライン川に合流する。ライン川は北海に注ぎ、ドナウ川は黒海に注ぐので、この2つの泉の水が出会うことはない。同じく近辺にはいくつかの小さな支流の川が流れ、その源泉が湧き出ているが、一方はライン川に注ぎ、一方はドナウ川に注ぐ。これらの境界はヨーロッパの分水嶺と呼ばれている。フルトヴァンゲンには鉄道駅はないが、ドナウエッシンゲンおよび近隣の町トリベルク(ドイツ最大の滝で有名な町。この滝はライン川に注ぐ)などからバスが出ている。

流域国

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王宮からドナウ川を望む(ブダペスト)
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マルギット橋(ブダペスト)

流域の主な都市

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テンプレート:Flagicon ハンガリー

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主な支流

ドナウ川を題材にした作品

音楽

文学

劇画

関連項目

脚注

  1. - Station: Ceatal Izmail
  2. 「ドナウ河紀行」p204 加藤雅彦 1991年10月21日 岩波新書
  3. 「地球の水が危ない」pp90-94 高橋裕 岩波書店 2003年2月20日第1刷
  4. http://www.geog.or.jp/journal/back/pdf116-1/p043-051.pdf#search='%E3%83%8A%E3%82%B8%E3%83%9E%E3%83%AD%E3%82%B7%E3%83%A5' 国際流域での水の分配をめぐる係争と協調 - 中山幹康 東京地学協会 2012年12月31日閲覧

外部リンク

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