ジャック・バウアー

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ジャック・バウアーJack Bauer)はアメリカFOXが制作・放映していたテレビドラマシリーズ「24 -TWENTY FOUR-」でキーファー・サザーランド(Kiefer Sutherland) によって演じられている架空の人物である。全シーズンを通じて、CTUという架空の米国政府機関に勤務、もしくは協力している。シーズン7では、FBIワシントン支部に協力している。日本での吹き替え声優小山力也

「24」の話中では、バウアーはCTUにおける有能な人材として、組織の中枢を担っている。仕事は、米国に対するテロ攻撃を防ぐことが中心で、一市民の命から政府機関まで対象は様々である。多くの場面で自らを危険にさらしており、自身がテロリストに狙われることもあれば、自身の家族や友人が標的になることもある。有能な捜査官と評される一方、バウアーが情報を得るために犯罪者に対しよく行う拷問は、ドラマの視聴者や有識者の間で論議を呼んでいる。

キーファー・サザーランドは、「24」のドラマ本編以外にも、他のテレビ番組やテレビゲームでジャック・バウアーを演じている[1]。ジャック・バウアーは、米国版週刊TVガイドの『テレビに登場するヒーローランキング・ベスト50 (TV's Top 50 Heroes)』では49位、英国テレビ局のSky1の『テレビに登場するタフ男ランキング (TV's toughest men)』では1位を獲得している。米国タイム社が発行する『エンターテインメント・ウィークリー』の『ポップカルチャー界で常にカッコいいヒーロー20人 (The 20 All Time Coolest Heroes in Pop Culture) 』の1人にも選ばれ[2]、2010年6月には同誌の『過去20年間で最も偉大なキャラクター100人 (100 Greatest Characters of the Last 20 Years) 』にも選ばれた[3]

人物

捜査方針・性格
正義感と忠誠心に厚い、アメリカ合衆国の真の愛国者。どのような過酷な任務でも最終的には達成することから、パーマー大統領などからは絶大な信頼を寄せられている。徹底した現場主義であり、任務遂行のためならルールを破ることもいとわないため、たびたびCTUの上級スタッフと問題になることが多い。問題行動が多いものの結果的には、現場において最も的確な判断を下しており事件解決に結びついていると、同僚スタッフからは高く評価されている。
捜査においては、容赦なく敵を射殺したり、証言を得るためなら脅迫拷問に等しい取調べを行うなど、冷徹な一面も持つ。パーマー殺害犯に対しては、重傷を負った犯人をためらうことなく射殺している。取調べの際には、激昂して怒鳴り散らすため、見た目には冷静さを失っているように見えるが、本人曰く「犯人を追い詰めるために、わざとやっている」とのこと。
ファイナルシーズンでは恋愛関係にあったルネと警護対象であったハッサン大統領の暗殺にロシア政府が関わっていると知り、報復のため政府関係者を殺害するなどこれまでにない残忍さをみせている。
捜査技能
CTUの現場捜査官の中でも、彼のもっている能力は極めて幅広く、高度で応用力があるといえる。
  • 射撃センスは非常に高く、敵の攻撃をうけて被弾することもほとんどない。
  • コンピューターについての高度な知識もあり、技術スタッフとのコミュニケーションもこなす。
  • 自動車でのカーチェイスはもちろんのこと、飛行機・ヘリの操縦までこなす。
  • 爆弾の解体についても、基本的な知識・経験があるようである。
  • 軍隊格闘術体術もマスターしており、1対1での敵との格闘にも遅れを取ることはない。
  • 心臓停止しても蘇生措置により何度も蘇るなど、体力的にも優れている。
  • 精神力も桁外れであり、数年にも及んだ中国政府の拷問にも耐え切った。
  • デルタフォース出身のため、語学にも堪能。シーズン6でのロシア大使館潜入時での一幕では「ロシア語」、ファイナル・シーズンでのウラジミールとの接触時には「ドイツ語」を話している。又、デルタフォースで鍛えたテロ対策の専門家としての技術はCTU戦術チームの中でもトップクラス。
ジャックのバッグ
ジャックが愛用するバッグ。シーズン5で登場。ROTHCO(ロスコ)製のメッセンジャーバッグ(縛着のためのクロスストラップがないので実は唯のショルダーバッグ。襷掛けにしているだけ)を使用しており、実際に販売されている。捜査に必要な情報機器や、USPコンパクトなどの拳銃や、ナイフ・スモークグレネードなどの武器・弾薬のほか、防弾チョッキ応急処置用品・携帯食・小型ライト・覆面などが入れられている。任務によっては、時限式爆薬なども携帯している。

周囲との関係

家族との関係
愛妻テリーや愛娘キムに対しては、自分の命さえもなげうつほどの愛情を持っており、涙もろい一面も併せ持つ。キムとは微妙な親子関係であり、テリーの死など過酷な任務が災いし、近づいたり離れたりを繰り返している。
女性との関係
事件を通じて妙齢の美女とめぐり合うことが多いが、多くは不幸な結末を迎えている。
シーズン1以前のある時期には妻テリーと別居状態にあり、部下であるニーナと一時的に付き合っていたがすぐ別れた。シーズン1では、妻とよりを戻し妊娠を知るが、直後に殺害されてしまう。
最愛の妻を亡くし失意の中、シーズン2の事件で出会ったケイト・ワーナーと、事件後に付き合う。しかし自然消滅に近い形で別れている。
シーズン3以前、サラザール一味に潜入中にクラウディアと親密となる。(潜入捜査のため真意は不明)
シーズン4以前より、国防総省における同僚のオードリー・レインズと付き合っていたが、シーズン4の事件で捜査のためオードリーの夫を見殺しにした事により、破局寸前になりかける。しかし、オードリーとはその後も付き合っていた模様。その後中国政府に引き渡されたジャック救出のため中国に向かったオードリーが、逆に中国政府に拉致されその後死亡したとされたため、父親のヘラーCIA長官から断交を申し渡される。その後生存が確認されたが、拷問により廃人同様になっていたため、関係はそのまま消滅。
シーズン6ではマリリン・バウアー(ジャックの弟グラハムの妻)と過去に関係があった雰囲気も漂わせていた。
シーズン7で行動をともにした元FBI捜査官ルネ・ウォーカーと、エピソード終了後関係を持ったことが匂わされているが、その後別れている。その後ファイナルシーズンでは、再び行動を共にするうちに愛が芽生え、結婚を誓い合うが直後に彼女を殺されてしまう。
一方で、シーズン3以降、任務面において違法行為も辞さずにジャックを支えるクロエ・オブライエンとは、恋愛関係めいた話は一切ない。
同僚との関係
あまりにルールを無視した独断捜査のために、上級スタッフからは反発されたり煙たがられることが少なくないが、己を捨てるほどの愛国精神と任務の達成能力から、クロエなどの同僚のスタッフからの信頼は厚い。当初ジャックを煙たがっていた上級スタッフも、彼の実力を知り認めていくことになるが、途中で任務をはずされたり、殺害されたり、死亡するエピソードが多い。シャペルCTUロス地域本部長などは、テロリストの脅迫により、バウアー自身によって射殺された。

履歴

バウアーはカリフォルニア州サンタモニカ1966年2月18日に生まれた。バウアーはUCLAより英文学学士号、またUCバークレー校より犯罪学及び法学修士号を獲得。

大学卒業後、彼はロサンゼルス市警察SWATチームの一員、およびアメリカ陸軍の第一特殊作戦部隊デルタ分遣隊、通称デルタフォースに所属し、後述するナイトフォール作戦などの任務を行った。テロ対策ユニットに転属する前には、CIAで現地作業も行っていた。その後、クリストファー・ヘンダーソンによって引き抜かれて、CTUに所属することになる。後に、ジャックはヘンダーソンを、機密情報を防衛関係企業に売った容疑で告発し、CTUから解雇する結果となった(合計3人の同僚の不正を暴き、一部の同僚からは反発されている)。

シーズン1 (35歳)
アメリカ合衆国大統領候補デイビッド・パーマー上院議員の暗殺未遂事件時の、CTUロサンゼルス支局チーフ。その時、妻のテリー及び娘のキンバリー(キム)が、彼が2年前(当時)のコソボナイトフォール作戦と呼ばれた極秘任務遂行中に殺害したはずの(実際には失敗) ビクター・ドレーゼンの息子達によって誘拐された。激しい攻防の末に妻子を救出する。
しかし最終話で妻・テリーを殺されてしまい、またCTUの厳しい職務の遂行に限界を感じて、事件から半年後休職する事となる。
シーズン2 (37歳)
1年半後、妻が殺害されたショックから未だ立ち直れずにいたが、ロサンゼルス核爆弾を爆発させようと目論むSecond Wave(第二の波)と呼ばれるテロリストグループを阻止するため、新たに大統領となったデイビッド・パーマーに懇願されてCTUに復帰。終盤に拷問され、心臓に深いダメージを受けるも無事事態を収拾する。
シーズン3 (40歳)
心臓の治療後、CTUに正式に復職し、工作部門のチーフとなる。シーズン3の数ヶ月前、長期の潜入捜査で麻薬カルテルへ潜り込んだ際、メキシコの麻薬王ラモン・サラザールを逮捕するもその代償にヘロイン中毒となる。
シーズン3では、ウクライナの科学者が売りに出したウィルスを押収するため、逮捕したサラザールを脱獄させウィルスを買わせようとするも、売り手の裏切りで失敗。その直後に起きたウィルス散布で、コソボでヴィクター・ドレーゼン暗殺作戦で一緒だったスティーブン・サンダースが首謀者であることを知り衝撃を受けるも、ウィルスをすべて確保する。
シーズン3から3ヵ月後、新支局長エリン・ドリスコルによってヘロイン中毒となっていることを咎められ、CTUを解雇される。
シーズン4 (41歳)
国防長官ジェームズ・ヘラーの特別補佐官として雇用され、国防総省に勤務。同時期、長官の娘であり、長官の秘書を務めるオードリー・レインズと深い関係を持つ事となるが、長官親子の誘拐事件に端を発した複合テロによりオードリーとの間に溝ができ、また当時別居していた彼女の夫ポールを死なせることになり関係は破綻した。
また、テロ容疑者確保のため中国の駐ロサンゼルス総領事館を襲撃した際、総領事を巻き添え死させてしまった事により、中国政府に身柄の引渡しを求められ、また中国への情報流出を恐れたローガン政権に命を狙われる事になり、その事を知りジャックの身を案じたパーマー元大統領からの警告を受け、死を偽装して姿を消す。
シーズン5 (43歳)
モハーヴェ砂漠の原油採掘場で「フランク・フリン」を名乗り、日雇い労働者として生活をしていたが、元部下のクロエ・オブライエンからのSOS電話を受け再び現場復帰。
また、偶然CTUを訪れていたオードリーと再会。再度よりを戻すが中国政府のチェン・ズィーに拉致され中国へ連れ去られる。
シーズン6 (45歳)
アメリカ国内で自爆テロ頻発。テロリストの要求はジャックとテロ首謀者との交換であった。新大統領ウェイン・パーマー(元大統領デイビッド・パーマーの弟)は中国政府との交渉によりジャックをアメリカへ帰国させた。しかし、交換に応じたテロの首謀者は偽者と知ったジャックは脱出。
パーマー大統領の懇願で不本意ながら現場復帰するも、その過程で仲間の射殺、目の前で起きた核爆弾テロ、実の父親と弟がテロへの関与・デイビッド・パーマー暗殺の首謀者と知り心身ともに傷ついていく。また、自分を救出しようとしていたオードリーが中国国内で事故死していたと知り愕然とする。
終盤、中国で自分を拷問にかけていたチェン・ズィーが事故死と見せかけオードリーを拘束しテロに使用された核爆弾の回路基板との引き換えを要求。命令違反を覚悟でオードリーを救出するも、彼女は中国での薬物その他の拷問を受けていたため精神に異常をきたしておりジャックに大きなショックを与え、これが原因で彼女の父親のジェームズ・ヘラーとの関係は険悪となる。
リデンプション (47歳)
アメリカに自分の居場所がないと悟ったジャックは、世界中を放浪した後、昔の特殊部隊時代の親友:カール・ベントンがいるアフリカの一国、サンガラ(架空の国)で彼の所に身を寄せていた。カールは孤児のためのオカバンゴ児童保護施設の運営を行っており、ジャックもその運営の手伝いをしていたが、過去の違法な拷問の責任追及のためアメリカ司法省から身柄を要求されていた。ちょうどそのころ軍事クーデターの発生の危機により子供たちは国外脱出を余儀なくされる。クーデター首謀者の一味に狙われながらも孤児の子供たちとアメリカ大使館に着いたジャックは、大使館職員に、子供たちと国外へ避難するなら身柄拘束に応じるよう迫られる。子供たちのために背に腹は代えられなかったジャックは交渉に応じ、二度と帰るまいと思っていたアメリカに戻ることになる。
シーズン7 (47歳)
公聴会で責任追及を受けていたジャックの元に、FBIのルネ・ウォーカーから緊急の捜査協力依頼をされる。拘束の身である自分がなぜ捜査に協力しなければならないのか疑問だったジャックはある監視カメラ画像の写真を見て全てを悟った。監視カメラに映っていたテロリストの顔は過去に死んだはずのCTUの元同僚、トニー・アルメイダだったのだ。
終盤、ジャックは生物兵器を浴びて感染し、時間の経過とともに病状が悪化して苦しめられることになる。最終話では昏睡状態に陥るが、その中でキムが幹細胞治療のドナーになると申し出る。
シーズン7ではジャックの生死を明らかにしなかったが、ファイナルシーズンでは無事生存している。
ファイナルシーズン (49歳)
CTUがニューヨークに再建されたが、ジャックは引退し、ロサンゼルスのキム夫婦と同居することを決意する。荷造りに追われる中、かつて使っていた情報屋が和平交渉で訪米中のカミスタン(架空の国)大統領ハッサンの暗殺計画の情報をもたらす。情報屋は殺害され、ジャックは新CTUに在職中のクロエを通じて一時協力する形で復帰することになる。
暗殺計画と同時に発生した核汚染爆弾テロの影に、カミスタンのテロ組織とロシアンマフィアの存在を知ったジャックは、かつて、ロシアンマフィアに潜入捜査したことのある、元恋人ルネ・ウォーカーの召還を要請する。前シーズンで重要参考人を強引な手段で尋問しようとした彼女は、すでにFBIを解雇されていた。再会し、捜査をともにする中で、再び愛し合うようになり新生活を始めることを約束する2人だったが、その矢先、何者かに襲撃され、ルネは死亡する。
その後、復讐心から襲撃に関わった者を殺害する事に走り、捜査中止の説得に応じるよう直接現場に訪れた大統領にも背く。事件を暴く過程ではロシア工作員デイナ、狙撃犯トカレフを殺害。元大統領ローガンを拉致、その秘書ピラーを脅迫する。ロシアの政府関係者を殺害した後スワロフ大統領も殺害しようとするも、クロエからの説得に応じ断念。また証拠となる音声データを消すように大統領命令を受けたローガンの手により、抹殺工作を仕掛けられる。
最終的には、欺瞞の和平交渉を思いとどまり、ジャック殺害の必要性が無くなったテイラー大統領自身の命令により、間一髪命を取り留めるが、アメリカ政府・ロシア政府両方から襲撃を受ける恐れがあるとのことで、逃亡する。

CTU でのミッション

  • ロサンゼルス・ホテル襲撃事件リーダー(1998年)
  • プロテウス作戦チームリーダー(2000年)
  • ナイトフォール作戦(2002年)
  • 東京でのミッション(カロリーメイトとのコラボレーションCM

個人情報

  • 父:フィリップ・バウアー(シーズン6で死亡)
  • 母: 本名不明
    • 妹:キャロル・バウアー
    • 弟:グラハム・バウアー(シーズン6で死亡)
    • 義妹:マリリン・バウアー
      • 甥:ジョシュ・バウアー
    • 妻:テリー・バウアー(シーズン1で死亡)
      • 娘:キンバリー(キム)・バウアー
      • 娘婿:スティーブ
        • 孫娘:テリー

ジャック・バウアーが生まれるまで

「24」の共同制作者であるジョエル・サーノウは「元々どんな人物かなんてわからなかった。何人もの役者をキャスティングしていった中で、キーファー・サザーランドの名を聞いたとき、まさにジャック・バウアーだと思ったんだ。」と語っており、制作当初は具体的な人物像が浮かんでいなかったことを言及している[4]

2000年、当時「劇中の出来事がリアルタイムで進行する」という手法をドラマのパイロット版制作で試していた、ディレクターのスティーブン・ホプキンスは、友人であったキーファー・サザーランドに連絡を取り、協力を依頼した[5]。これがきっかけで、キーファー・サザーランドはバウアー役を得ることになるのだが、サザーランドは「都合の良すぎる話だから、上手く行く訳ないと思ってたんだ。むしろ金を積んで、自分がダメだったら非公開にさせるぐらいの気負いだったしね。」と後のインタビューで語っている[6]

「24」では毎シーズン約24時間分の映像を製作しなければならない。それについてキーファー・サザーランドは、「12本の映画を制作しているようなものだから、当然その過程でNGも出るだろう。だがそれ以上にこのペースで制作することによる利点の大きさにとても驚いたよ。」と語っている[6]

2006年、キーファー・サザーランドは「24:シーズン5」以降3シーズンにバウアーとして出演する契約を交わした。この契約は報道によると、4千万ドル(約40億円)にも相当するとされる[4]。キーファー・サザーランドはバウアーとして「24」に出演すると同時に、「24」シリーズのエグゼクティブ・プロデューサーも努めるようになった[7]

参考文献

  1. Ken Tucker, “24: Mondays, 9 p.m., premiering Sunday, Jan. 11, at 8 p.m.,” Entertainment Weekly 1o30 (January 16, 2009): 56.
  2. テンプレート:Cite web
  3. テンプレート:Cite web
  4. 4.0 4.1 テンプレート:Cite web
  5. テンプレート:Cite web
  6. 6.0 6.1 テンプレート:Cite web
  7. テンプレート:Cite web

外部リンク


テンプレート:24 -TWENTY FOUR-