H&K USP

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テンプレート:Infobox H&K USPテンプレート:Lang-de-shortテンプレート:Lang-en-short)は、ドイツ銃器メーカーであるH&K社が開発した自動拳銃である。

9x19mmパラベラム弾仕様は、P8の名称で現在のドイツ連邦軍の制式拳銃になっている。他のバリエーションを含めると、多数の軍、警察、国家機関などに採用されている。


概要

1993年に開発されたUSPは、.40S&W弾の使用を前提として作られ、9mmパラベラム弾と.40S&W弾では、弾倉銃身組み込み済みのスライドなどの部品を交換することで使用弾薬を変更できる。また、アメリカへの進出を睨み、これらよりも少し大きいサイズで.45ACP弾モデルも発売されている。

同社にはH&K P7という拳銃がすでに存在したが、これはスクイズコッカーなどの特殊な機構を持ち、製品としての評判が芳しくなかったこと、.40S&W弾以上の弾薬を使用するには設計上無理があったことなどから、拳銃の商品展開に穴があった。USPは革新的機構や独特の機構を採用してきた同社が、あえて現状の技術のみを使い開発している。

口径は9mm(9x19mmパラベラム弾)、.40S&W弾、.45ACP弾を使うバージョンが存在する。ダブルカラムマガジン(複列弾倉)を採用し、装弾数は9mm弾モデルが15+1発、.40S&W弾モデルが13+1発、.45ACP弾モデルが12+1発となる。 テンプレート:-

歴史

ファイル:German Bundeswehr in a house.JPEG
室内戦闘訓練でP8を使用するドイツ連邦軍兵士

H&K社は、1970年H&K VP70という世界初のポリマーフレームの拳銃を発表したが、これは商業的には失敗に終わった。それから約10年後、グロック社の開発したポリマーフレーム拳銃グロック17が好調な売れ行きを示すと、時代はポリマーフレームにあると見たH&K社は、アメリカを市場としても通用するポリマーフレーム製拳銃の開発をスタートした。

1993年に発表されたUSPは、文字通りH&K社の販売戦略上の基幹拳銃となり、さまざまなバリエーションが発売される。その中で、US SOCOM(米国軍特殊部隊司令部)の制式採用トライアルを勝ち抜いた、H&K MARK 23(SOCOM PISTOL)のベースにもなっている。

P8の名称でドイツ連邦軍の制式拳銃に採用されている。日本警察特殊部隊(SAT)陸上自衛隊特殊作戦群韓国海洋警察特別攻撃隊も装備している。

派生型であるUSP COMPACT(9mmPara)はP10の名称で、ドイツ警察及び法執行機関に制式採用されている。一般的なUSP COMPACTの撃鉄は、シアーハンマーを装備している。また、P2000(DAO&9mmPara)はドイツ警察に制式採用された。

特徴

ファイル:Km2000.jpg
ドイツ連邦軍のP8とKM2000ナイフ
ファイル:USP Full Size 45 caliber.jpg
ホールドオープンしたUSP45

ライバルであるグロックと異なり、ポリマーフレームながら旧来的なマニュアルセフティや外装式の撃鉄(ハンマー)を備えている。 現代のダブルアクション拳銃としては珍しく、撃鉄を起こした状態でセフティを掛けて携行するコック&ロックも可能なのが特徴。

また、USPの名称通り軍・警察用から護身用、スポーツ射撃まで幅広く用いられるようにさまざまなバリエーションを展開している。 上記のコック&ロック機能が不要な場合はデコッキング機能のみのモデルやダブルアクションオンリーのシンプルなモデルも選択できる。

操作性はアメリカ市場を睨んでコルト・ガバメントと同様の形式をとり、さらに左利きでも問題ないようマガジンキャッチをレバー式にし、付け替えなしで左右両用とできるようにした。また、コントロールレバーというコック&ロックとデコッキングの双方が可能なセーフティを備える。コントロールレバーおよびトリガーメカニズムの組み合わせにより9種類のバリエーションが存在するため、自分の利き手や使用目的に応じて最適な物を選択することが可能である。グリップは人間工学を生かした形状になっている。最初期のチェッカリングは細い縦の溝のみだったが、後に、手袋を装着していても滑らないよう、小さな四角錐を無数に配置したものに変更された。同様に、トリガーガードもグローブを着けての射撃がしやすいように大きめに設計されている。

スライドリリース・コントロールレバーは片手親指のみで操作できるように設計されており、近年盛んになっているコンバット・シューティングの分野でも通用するようにできている。

マガジンをポリマー製にすることで、金属製マガジンの弱点であった「マガジンリップの変形による作動不良」を防ぐことができる。軽量なマガジンが自重で落ちてこなかった時のために、グリップ下部に窪みをつけ、マガジンを引き出しやすくしている。

フレームの先端には、ライトなどのアタッチメントを付けられるタクティカルマウントが世界で初めて標準装備され、ITI社製、M2という専用フラッシュライトも用意されている。USP以降に発表された銃では、これが標準的な装備となるまでに浸透した。銃身内部の腔線は、断面が六角形になるポリゴナルライフリングと呼ばれる構造で、耐久性の増加につながるといわれている。

9mmパラベラム.40S&W弾を使用するバージョンはフレームなどが共通で、マガジンと銃身組み込み済みのスライドの交換で口径の変更が可能。また、アメリカ市場を睨んだ.45ACPモデルでは、先の2バージョンよりサイズが少し大きいものの、12発という装弾数を実現している。

コントロールレバー

USPのコントロールレバーには、位置や機能、シングルアクションの有無、コントロールレバー自体の有無によって9のバリエーションがある。

  • ヴァリアント1
シングル/ダブルアクション。後方から見て左側にコントロールレバーがあり、セフティ、デコッキング両方の機能を持つ。
  • ヴァリアント2
ヴァリアント1のコントロールレバーを後方から見て右側としたもの。
  • ヴァリアント3
シングル/ダブルアクション。後方から見て左側にコントロールレバーがあり、デコッキングのみの機能を持つ。
  • ヴァリアント4
ヴァリアント3のコントロールレバーを後方から見て右側としたもの。
  • ヴァリアント5
ダブルアクションのみ。後方から見て左側にコントロールレバーがあり、セフティの機能を持つ。
  • ヴァリアント6
ヴァリアント5のコントロールレバーを後方から見て右側としたもの。
  • ヴァリアント7
ダブルアクションのみ。コントロールレバーが無い。
  • ヴァリアント9
シングル/ダブルアクション。後方から見て左側にコントロールレバーがあり、セフティのみの機能を持つ。
  • ヴァリアント10
ヴァリアント9のコントロールレバーを後方から見て右側としたもの。

バリエーション

ファイル:HK USP Tactical 9mmSD RMP PGK.jpg
マレーシア警察のUSP TACTICAL
USP TACTICAL 
口径バリエーションは9x19mmと.45AUTOのみで、.40S&Wが存在しない。
通常モデルとの主な違いは、サプレッサー装着を前提とした装備がなされていることである。サプレッサー装着可能なネジ切り済み延長バレル、ハイ・ターゲティングサイトである。
これらの上に、マッチ仕様のトリガー、アジャスタブル・リアサイト、エクステンディッド・マガジンプレート、ローデッド・インジケーターなどを備え、射撃時における能力向上に努めている。
H&K社は、USP TACTICALを「Mk.23よりコンパクトな高性能銃を必要としている人へ」と紹介しており、肥大化してしまったMk.23の代替銃として位置づけている。
USP COMPACT
9x19mm弾は13+1発、.40S&W弾と.357SIG弾では12+1発、.45AUTO弾では8+1発と、小型化しながらも多弾装を実現。携帯性に優れているため、法執行機関を中心に採用されている。
USP EXPERT
9x19mm、.40S&W、.45AUTO弾のバリエーションがある。それぞれ、18+1発、16+1発、12+1発の多弾数である。競技仕様のUSPで、新しいデザインのスライドを装備、銃身長を伸ばしている他は、USP TACTICALの装備とほぼ同等。
USP MATCH
9x19mm、.40S&W、.45AUTO弾のバリエーションがあり、装弾数はUSP EXPERTと同じである。競技用に特化したため、銃身前部の大きなコンペンセイターがある。コンペンセイター以外、USP TACTICALの装備とほぼ同等。
P8
ドイツ連邦軍に制式配備されているUSPの名称。9x19mm弾を使用。ヴァリアント1に相当するが、コントロールレバーの操作が若干異なり、P8では水平状態で発射可能、下げてセイフティオン、さらに下げてデコッキングされ、同時にセイフティオンに戻るという、先代制式拳銃であるワルサーP1に近いものとなっている。
P10
USP COMPACTのドイツ連邦軍制式採用版の名称。小型化された以外にはP8と変わらないが、グリップ下部がCOMPACTと比べ若干斜めに突き出ている。ドイツ警察にも配備され、後に後継のP2000が登場した。
P12
USP TACTICALの.45AUTO弾仕様のドイツ連邦軍制式採用版の名称。特殊部隊向けとされる。

登場作品

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関連項目

外部リンク

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