グルジア文字

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テンプレート:Infobox WS テンプレート:特殊文字 グルジア文字(ქართული ანბანი, kartuli anbani)は、グルジアの公用語であるグルジア語を書き表すために用いられる文字である。アブハズ語オセット語の表記のために用いられていたこともある。

歴史

グルジア文字がいつどのようにして生まれたのかについて、詳しいことは明らかでない[1]11世紀に書かれたグルジアの年代記は紀元前3世紀のグルジア王パルナヴァズ がグルジア文字を創ったと伝えているが、確証はない。

グルジアでキリスト教が国教化された4世紀に聖書などをグルジア語に翻訳するために創りだされたとする説が有力である[1]。文字の順序や、本来ならばグルジア語の表記には不要な文字が含まれギリシア文字に対応するべき位置にあることなどから、ギリシア文字を参考に創られたと推定される[1]。また、円弧と直線の組み合わせという原則に忠実に創られていることから、別の文字が形を変えたものではなく、独自に創りだされたようだテンプレート:要出典

グルジア文字が記されたもので、現在知られている限り最も古い例は、パレスティナベツレヘム付近の教会で発見された、430年ごろに書かれたと推定される碑文である[1]。グルジア国内では、トビリシから南に30kmほどのところにあるボルニシ (Bolnisi) のシオニ (Sioni) 教会の碑文が最も古く、5世紀末のものと考えられている。しかし、近年になってグルジア国内で4世紀よりも前に書かれた可能性のある碑文が発見され、成立の時期についての議論が起きている[1]

グルジア文字は歴史的に2度大きく形を変えた。9世紀ごろまでに用いられていた文字は、ムルグロヴァニ(Mrgvlovani「丸文字」。Asomtavruliとも。)と呼ばれる。9世紀から11世紀にかけては、ヌスフリ(Nuskhuri「目録文字」)と呼ばれる形が用いられた。11世紀以降、ムヘドルリ(Mkhedruli「戦士文字」)と呼ばれる形が現在に至るまで使用されている[1]

字母

ファイル:Alphabet tower batumi georgia.JPG
グルジア文字 アルファベットタワー。

3種類の文字とも38文字から成るが、現在、そのうち5つは用いられていない。使用されている33文字のうち、5つが母音、28が子音を表す表音文字である。文字とグルジア語の音素が完全に対応し、きわめて整った正書法を可能にしている[1]

グルジア文字
名前 ムルグロヴァニテンプレート:Ref label ヌスフリ ムヘドルリ 音価
1 an テンプレート:IPA2
2 ban テンプレート:IPA2
3 gan テンプレート:IPA2
4 don テンプレート:IPA2
5 en テンプレート:IPA2
6 vin テンプレート:IPA2
7 zen テンプレート:IPA2
テンプレート:Ref label he テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2
8 tan テンプレート:IPA2
9 in テンプレート:IPA2
10 k'an テンプレート:IPA2
11 las テンプレート:IPA2
12 man テンプレート:IPA2
13 nar テンプレート:IPA2
テンプレート:Ref label hie テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2
14 on テンプレート:IPA2
15 p'ar テンプレート:IPA2
16 jan テンプレート:IPA2
17 rae テンプレート:IPA2
18 san テンプレート:IPA2
19 t'ar テンプレート:IPA2
テンプレート:Ref label vie テンプレート:IPA2, テンプレート:IPA2
20 un ႭჃ, Ⴓ ⴍⴣ, ⴓ テンプレート:IPA2
21 par テンプレート:IPA2
22 kar テンプレート:IPA2
23 ḡan テンプレート:IPA2
24 q'ar テンプレート:IPA2
25 šin テンプレート:IPA2
26 čin テンプレート:IPA2
27 cin テンプレート:IPA2
28 jil テンプレート:IPA2
29 c'il テンプレート:IPA2
30 č'ar テンプレート:IPA2
31 xan テンプレート:IPA2
テンプレート:Ref label qar テンプレート:IPA2
32 ǰan テンプレート:IPA2
33 hae テンプレート:IPA2
テンプレート:Ref label hoe テンプレート:IPA2
テンプレート:Ref label fi テンプレート:IPA2
テンプレート:Ref label shva テンプレート:IPA2
テンプレート:Ref label elifi テンプレート:IPA2

テンプレート:Note labelフォントによってはムルグロヴァニの代わりにムヘドルリの変種として表示される場合がある。

テンプレート:Note labelグルジア語で使われなくなった文字。

テンプレート:Note label外来語に使われていた文字。

コンピュータ

Unicode

Unicode では以下の領域に次の文字が収録されている。

U+ 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 A B C D E F
10A0
10B0
10C0
10D0
10E0
10F0

キーボード

Windowsのグルジア語キーボードの配列は以下の通り。

脚注・出典

テンプレート:Reflist

参考文献

  • 町田和彦編『図説世界の文字とことば』(ふくろうの本, 河出書房新社, 2009年12月)

関連項目

外部リンク

テンプレート:Link GA
  1. 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 1.5 1.6 町田『図説世界の文字とことば』、26-27頁