どろろ

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テンプレート:Otheruseslist テンプレート:Sidebar with collapsible listsどろろ』は、手塚治虫による日本少年漫画作品である。またそれを原作としたTVアニメ実写映画小説やそれらに出てくる登場人物の名前のこと。

戦国時代の日本を舞台に妖怪から自分の体を取り返す旅をする少年・百鬼丸と、泥棒の子供・どろろ。この2人の妖怪との戦いや、乱世の時代の人々との事件を描く。

概要

1967年より『週刊少年サンデー』(小学館)で連載が始まるが、暗く、陰惨な内容が読者に受け入れられず、1968年打ち切りとなる。テレビアニメ化に伴い1969年、『冒険王』(秋田書店)で掲載誌を替えて連載再開され一応の完結をみるが、こちらもストーリーとしては中途までとなり、きちんとした物語の完結には至らなかった。漫画以外のメディア展開は上記のテレビアニメの他、ゲームソフト実写映画も製作された(映画のノベライズ小説もあり)。 

時代劇で妖怪物、というかなり特殊なジャンルとして発表されたが、手塚治虫が雑誌で語っているとおり、その暗さから明るいものばかりの漫画の中で当時の読者に受け入れられにくく不人気であった。内容は手塚得意のバラエティ豊かなドラマ、特に戦争に対する庶民の怒りが語られ、1つの村が隣国同士の争いに巻き込まれて「ばんもん」という壁に分断されてしまう『ばんもんの章』はベルリンの壁板門店に対する強烈な風刺で描かれている。

本作は漫画としては中途半端な形で終了したが、1969年のアニメ版では漫画で描かれなかった部分も補完され、全ての魔物を倒し完結している。アニメは『どろろと百鬼丸』と、ヒーローキャラである百鬼丸をうたったタイトル変更がなされて放映された(放映開始初期は原作と同じ『どろろ』)。再放送については、全身に欠損を持つある種の障害者と盗賊の孤児が主人公ということで、障害者差別など微妙な問題が多く地上波では殆どなされていない(但し、CS放送の時代劇チャンネルでは再放送されている)。モノクロ作品である点も再放送されにくかった理由である。

こうしてかなり不遇な境遇を歩まされた作品であったが、奪われた体を取り戻すために妖怪と戦いながら冒険するという設定や、義手、義足の中に刀や爆薬等の武器を仕込んだ主人公というアイディアが一部に受け、カルト的なファンを生みもした。『新宿鮫』シリーズでしられる小説家大沢在昌も「手塚作品の中で最も好きな作品」と語っており、漫画家の小林よしのりも「ドロドロと情念が渦巻いていた感じが良かった」と述べている。

「どろろ」というタイトルは手塚治虫の友達の子供がどろぼうのことを片言で“どろろう”といったことをヒントにした(講談社刊手塚治虫漫画全集「どろろ4巻」のあとがきでは「ぼくの子どもが」と述べている[1])。

リメイク・続編作品の製作

原作は放り投げられ中断した状態で終了しているが、このことが多数のリメイクや続編製作を喚起する要因になっている。アニメ版・PS2版ではこの“欠損”に対して、百鬼丸が体を全て取り戻すという補完が行われ、近年の手塚リメイクブームも手伝って『ヤングチャンピオン』で『どろろ梵』がスタートするなど、手塚作品の中でもリメイクが果敢に挑戦されている作品のうちのひとつといえる。これらリメイク作品は冨田勲や沙村広明など、贅沢な人材を投じられることもままあり、『どろろ』という作品に対する支持の大きさを反映するものとなっているといえよう。ただ、映画版に関して言えば、主人公であるはずのどろろが、大幅に原作と違う設定で描かれていたり、架空の異世界が舞台であったりするなど、原作というより原案化している一面も見られる。

漫画版

あらすじ

室町時代末期、武士の醍醐景光は、ある寺のお堂で魔物に通じる48体の魔像に天下取りを願い出て、その代償として魔物の要求の通り、間もなく生まれる自分の子を生贄として彼らに捧げることを誓う。その後誕生した赤ん坊は体の48箇所を欠損した体で生まれ、母親と引きはがし化け物としてそのまま川に流され、捨てられてしまう。医者・寿海に拾われた赤ん坊は彼の手により義手や義足を与えられた。14年後、成長した赤ん坊は百鬼丸と名乗り、不思議な声に導かれるままに自分の体を取り戻す旅に出る。旅の途中、百鬼丸は数人の大人に苛められていたどろろと出会う。百鬼丸はどろろを助けるがどろろは礼を言うどころか彼の左腕に仕込まれた刀に目を付け、しつこく百鬼丸を付け回すようになった。初めは邪険にしていた百鬼丸だが、自身の体の秘密や生い立ちを話してもびくともせず、むしろ面白がってますます自分に興味を持ってくるどろろを何処か憎めなかった。そして幾多の危機を乗り越えていくうちにいつしか2人の間には相棒とも友人とも呼べる奇妙な絆が生まれた。また旅に出る前、あの“声”が教えてくれた通り、魔物を倒す度に、奪われた48箇所の体は1つずつ復活していく。だが周囲の村人には2人とも忌み嫌われ絶えず追放される。そうして2人が更に旅を続けていくうち、遂に因果の糸車は再び回り始めた。百鬼丸は、残虐な征服戦争を始め大名となった景光と、己が父親と知らぬまま再会する。そして母親と自分が捨てられた後に生まれた弟、多宝丸とも出会う。景光が多くの人を殺し国境としたばんもんで2人は対決して多宝丸を殺す。だがその時妖怪は景光が父親であることと、多宝丸が弟だと告げる。激しい動揺の中、百鬼丸は妖怪を倒す。果たして百鬼丸とどろろの苦難の旅の先に待つものは幸か、それとも不幸か。

登場人物

主要人物

百鬼丸(ひゃっきまる)
主人公の一人。錨柄の貧相な着物を着た一本差しの少年。醍醐景光の実子であるが、生まれる前に48体の魔物への生贄として差し出される。その結果、彼は体の48箇所が欠損したヒルコのような存在として生まれ落ち、父により川に流されてしまう。 川下で医者の寿海に拾われ、欠損部分を義眼・義手・義足等で補ってもらい、成長の後に旅へ出る。義手は後に "肩の力のみで指先まで動かすことが可能" という特別製のものを譲り受ける。彼は自分の体の一部を持つ妖怪を退治する度にその部分を取り戻すことができ、それを目的とした旅を一人で行っていた。腕には仕込み刀、足には焼水(強力な)、鼻は爆薬など、体中に武器が仕込まれているほか、声帯も欠損していて、通常の会話は妖怪から声帯を取り戻すまでテレパシー読心術で行なっていた。
年齢はストーリー開始時で14歳と語っている。厳しい現世を生き抜いているせいか若い割に飄々としており、滅多なことでは心を開かない。妖怪を退治しても彼自身が異質な存在であるため助けたはずの村人などからは憎まれたり追い出されることが多いのも関係している。基本的に妖怪相手が専門だが、必要とあらば相手が人間でも斬り殺すことは容赦しない。剣の腕は独学だがかなり高く、数十人が相手でも軽く倒してしまう。
どろろ
もう一人の主人公。幼い子供の泥棒。盗賊の火袋とお自夜の間に生まれるが、父親は身分の高い奥方の護衛の侍に討たれ、母親は雪の中で衰弱死してしまう。両親を喪いながら一人こそ泥として生活しているところを百鬼丸と出会い、彼の義手に仕込まれた刀に目をつけて後を付け回す。後に、父親の遺した財宝の在り処が背中に入れ墨として隠されていることが分かる。顔立ちは母・お自夜に似ている。
幼いながら精神的にはかなり強く、どんな困難があっても強くあり続ける一方、父の遺した埋蔵金を見つけて貧民と立ち上がることを躊躇する一面もある。刀などの武器は持たないが身体能力は高く、特に石の投擲の腕はかなりのもので百鬼丸の命を救ったことも多い。体は非常にタフで、大人数人にリンチされてもケロリとしている。また、大声を出して相手を失神させる得意技を持つ。原作やアニメ作中では本来の性別が伏せられ、少年であるかのように描写されていたが、最終回で女の子であることが明かされる。(以前から女の子であることを匂わせる場面は存在する。)
醍醐 景光(だいご かげみつ)
室町時代の武士。48体の魔像に天下取りを祈願、その生贄として自分の子を差し出すことを約束する。その結果、体の48箇所が欠損して生まれた子供を川に流してしまう。そのときの魔物から契約の証として額に「×」印の傷跡がある。その後生まれた多宝丸を嫡男として育てる。生来の絵に描いたような冷血漢で、己が利の為ならどんな手段も選ばず、か弱い者すら無惨に殺す。一方で多宝丸のことは寵愛していた。加賀守護大名富樫政親の家臣。
寿海(じゅかい)
腕利きの医師。川で拾った体中が欠損した赤ん坊を不憫に思い、養育の上 欠損部分を木材と陶磁器で作製し補う。顔は『火の鳥』の猿田に似ている。
多宝丸(たほうまる)
百鬼丸の弟で醍醐景光の次男。右目を盲いている。ばんもんの巻で百鬼丸と対決し斬られる。
琵琶法師(びわほうし)
百鬼丸とどろろの前に度々現れる謎の法師。目が見えないが身のこなしはしっかりしており、刀も使い厳しい現世を生き抜いている。己に迷う百鬼丸に常に問い、道を指し示す。演者は手塚漫画スター・システムの琵琶丸。これがデビュー作となった。

その他の登場人物

火袋(ひぶくろ)
どろろの父。盗賊だが貧しい村人たちの為に宝を貯えていた義賊である。元は農民だったが侍に家族や家を追われたために侍を憎んでいる。後に代官と組んだイタチ一派に裏切られて役人に突き出され、脱獄するも足に矢を受けて盗賊家業を続けられなくなる。演者は手塚漫画のスター・システムでの丸首ブーン。
お自夜(おじや)
どろろの母。彼女も元は農民であり、夫と同じく侍を激しく憎んでいる。夫・火袋を殺した野盗から逃げる最中、幼いどろろを残して雪の中で死んでしまう。炊き出しのかゆを飢えたどろろに与えるため、自らの両手を器とするくだりは衝撃的である。宝の在り処を知られないようにどろろの背に入れ墨の形で地図を記した。
縫の方
醍醐 景光の妻で百鬼丸・多宝丸の母。景光の命で泣く泣く赤ん坊の百鬼丸を川に流して捨てた。しかし16年経っても彼への愛情を失くしてはいなかった。
みお
百鬼丸の初恋の少女。百鬼丸には見えていなかったが、心優しい美少女。戦で焼け出された子供たちを荒れた御堂で世話していた。兵士たちのところへ食べ物を乞いに行くのが日課で、その度に酷く玩ばれていたため「あたしはいやらしい女よ」と、自らを卑下していた。
しかし御堂を明け渡せと命令されたのには納得できず、これを拒んだため、兵士たちに子供たち諸共殺されてしまう。
万代(ばんだい)
ある村で百鬼丸とどろろが出会った女性。貧しい村人たちに物を恵んだり、村道を拓いたりと表向きは慈悲深い性格だが、その正体は妖怪であり、肉体はすでに人面瘡に支配されていた。
村人を生かさず殺さずの状態で奴隷にしていたが、妖怪が倒されると安らかな顔で天へと旅立っていった。
金小僧(かねこぞう)
万代に奪われ、隠匿された金の精霊。早く地上に出るために、百鬼丸の枕元で「やろうかぁ」と告げ、自らの居場所を教えた。
田之介(たのすけ)
妖刀『似蛭』に取り憑かれた男。以前は心優しい武士だったが、かつて仕えた冷酷な城の主に罪も無き人々の処刑を強いられたことで精神が崩壊。『似蛭』は、その際に与えられた褒美である。
妖刀が血を欲する毎に三月に一度辻斬りをして刃に血を吸わせていた。しかし百鬼丸に敗れ、最後の餌とばかりに似蛭を腹に突き立てて自刃する。
お須志(おすし)
田之介の妹。兄思いの少女で百鬼丸に“兄を殺さないでほしい”と懇願するが、最終的に田之介が死んだ為に百鬼丸を逆恨みする。
鯖目(さばめ)
三本杉の郷士。一見、紳士的な人格者だが、「死んだ魚のような目」と評されている。美しい女性(実は妖怪マイマイオンバ)を妻にしている。
精神的に病んでいたとはいえマイマイオンバとは相思相愛だったが、最終的には正気を取り戻し、マイマイオンバのことも断ち切った。以降は頭を丸めて出家し焼けた寺の再建を決意。
助六(すけろく)
ばんもんの巻に登場した浮浪児。どろろを助けてくれた。両親は健在だが国境の壁『ばんもん』に阻まれて会えないでいた。無断で国境を越えようとした咎で多宝丸の手により処刑されてしまう。
ミドロ号
景光と敵対する武士・木曽路が飼っていた名馬。牝。しかし小間使いに「今の木曽路様があるのもミドロ号のおかげ」と陰口されていたことを知り、プライドの高い主人が逆上。それからは酷い扱われ方を受ける。その上大切な仔馬と引き離され、遂には怨みから木曽路を踏み殺すが、その怨みの心を妖怪に付け入られて妖馬と化す。
PS2版では元は景光の愛馬という設定だった。
賽の目の三郎太(さいのめのさぶろうた)
妖怪が取り憑いた馬『ミドロ号』に操られていた無頼の槍遣い。ミドロ号を倒された後、醍醐景光に仕官するために再度百鬼丸と対決する。「唯我独尊」と字の入った着物を着ている。
イタチ
火袋の手下だった男だが、貪欲な気性の為に火袋からは信用されていなかった。後に火袋を裏切り、野盗として再起不能にする。どろろの背の入れ墨の秘密を知っており、宝目当てでどろろに接近する。最後は改心しどろろを守るため侍衆と戦い命を落とす。作中では珍しく火縄銃を使っている。作中、どろろが少女であることに気づいた人物の一人。演者は手塚作品スター・システムのハム・エッグ。
不知火(しらぬい)
白骨岬に棲んでいる若者。鮫になりたいという願望を抱いており、幼少の頃から育ててきた二郎丸・三郎丸の2匹の鮫(三郎丸は不明だが、二郎丸は妖怪)を操る。
岬に近づく者に船頭として近づいては鮫の餌にしていた。
どんぶり長者
大食いの亀の妖怪に取り憑かれた長者。その為に常に腹が空いているようになってしまった。
お米(およね)
どんぶり長者の一人娘。美しい娘だが、少し知恵遅れ。ある秘密を持つどんぶり長者の命を受け、妖怪の振りをして家の肥溜めの側に人を近付けないようにしていた。自分を「ばかにしなかった」百鬼丸に好意を持つが、景光の命を受けた三郎太から百鬼丸をかばい斬殺される。

魔物

人面瘡
万代の肉体をコントロールし、村で殺戮と強奪を働いていた張本人。百鬼丸から右腕を奪った。
人面瘡の部分が万代本人の体を完全に吸収し、彼女の腰のあたりからトカゲに似た怪物の姿として生えていた(百鬼丸曰く「あんな醜い妖怪は見たことねえ」「ガマクジラ」。小説版ではどろろから「世界一美しい万代から世界一醜い魔物が生えている」「ガマナメクジ」などと言われていた)。この形態では、舌で舐めた人間を笑い死にさせることができる。どろろに正体をバラされた後に、万代を鬼女に変えて百鬼丸を始末するために戦いを挑むが、村人と百鬼丸により倒され、焼水をかけられて完全に死亡した。
似蛭(にひる)
手にした人間の思考を乗っ取り殺人鬼に変える妖刀。百鬼丸から左目を奪った。
田之助が死んだ後に百鬼丸に叩き折られ、ボロボロに風化して消滅した。
野ギツネ
朝倉領と冨樫領の境界付近に生息していた妖狐達。
群れで行動し、妖術を使う。兵隊の骨(死体)を餌としているため、口からが燃えている。
九尾の狐
九本の尾を持つ、野ギツネの総大将。百鬼丸から鼻を奪った。
仲間の食料としての死体を大量生産させるためにわざと戦争を長引かせていた。不気味な幻術を使い百鬼丸たちを惑わせ、百鬼丸を苦しめるために「醍醐景光は貴様の父親だ。そして目の前で戦っている多宝丸は弟なのだ」と真実を知らせるが、激昂した百鬼丸に爆薬を口の中に投げ込まれ爆死した。その死体は戦場の境界線である『ばんもん』に晒され、『ばんもん』を崩壊させる原因となった。
白面不動
滝壺で修験者を凍死させ、その顔を奪い自らの者にしていた不動明王像。百鬼丸から右耳を奪った。
滝周辺の気候を操り、手に持った紐を毒蛇に変えて相手を襲う。部下の女妖怪にどろろを誘拐させて自らの顔にしようともくろんだが、親子の情が移った彼女にどろろを解放され激昂。女妖怪を溺殺させるも百鬼丸により首を刎ね飛ばされて死亡した。その正体は、岩にとりついたカビの妖怪だった。
の魔物
正式名称不明。肉体を持たない精神体の魔物で、燃え盛る炎のような毛並みを持った馬の姿をしている。矢傷を受け死にかけていた軍馬・ミドロ号に「憎い人間に復讐するための力を貸す」と進言し、憑依する。
更に賽の目の三郎太を妖気で操って蹄鉄を作らせ、恨みのままに近隣の村人を踏み殺していくが、百鬼丸により全ての脚を切断され、焼水をかけられてミドロ号諸共消滅した。
マイマイオンバ
の妖怪で鯖目の妻。百鬼丸から右脚を奪った。自ら「遠い世界からやってきた」と語っており、後に裏山で見つかったUFOのような巣の形状から、宇宙から来た可能性を匂わせている。
付近の寺に住む慈照尼(じしょうに)が己の正体を知った為に口封じに殺し、ついでに寺に油を撒き、火をつけて養われていた孤児を皆殺しにする。鯖目に恋をして結婚するが彼女には連れ子があり、その子も妖怪。養う為に孤児たちを引き取っては彼らを自身の子供の餌にしていた。蛾の特性故に闇の中では火に集まる特性があり、そこを突かれて百鬼丸に敗北、鯖目の前で醜い骸を晒しながら水中に沈んだ。更に卵も全て処分された。
二郎丸
しらぬいの飼育していた、巨大な双子の兄。百鬼丸から声帯を奪った。
しらぬいが人間の死体を食わせたせいで人の味を覚え、次々に人間を食い殺していた。
三郎丸の死に激怒したしらぬいと共に、敵を討つためにどろろ達を襲うも、百鬼丸に腹ビレと右目を潰されて逃走する。その後宝の島に向かった野盗達を襲って皆殺しにするが、目に刺さった刀に目がくらんだどろろに陸上に引きずり上げられる。その状態でも強いアルコールガスを吹き付けて百鬼丸を苦しめるが、どろろのアドバイスにより弱点を突かれ、腹を切り裂かれ殺害された。
三郎丸
二郎丸の弟鮫。姿形は二郎丸にそっくりで、獰猛な性格なのも同じだが、妖怪ではなく普通の生物(死後も百鬼丸の体の部分が戻らなかった)。どろろとイタチ一派によってありったけの刀を腹に突き刺され、死亡した。
の魔物
正式名称不明。沼に潜んでいた、ほどの巨体の大亀。百鬼丸から右目を奪った。
あまりに体が大きくなりすぎたがために餌を食うことが困難になり、醜悪な顔をした僧侶の姿の精神体を飛ばして村の長者のから体内に侵入し、養分を吸収していた。
自らの精神体を追って本体にたどり着いた百鬼丸を始末するために、甲羅から剛毛を生やし百鬼丸を絞め殺そうとするも、どろろと村人達により沼から引きずり出される。その後、百鬼丸により体内に焼水を流し込まれ、内臓を焼き尽くされて死亡した。
四化入道(しけにゅうどう)
元はとある山寺の住職で、人格者として知られた人物だった。だが、を壊してを造ろうとする景光の計画に反対し、生き埋めにされてしまう。しかし、死後も砦建設を阻止しようとする執念から、妖怪となって復活。それだけなら良かったのだが、土中の小動物(モグラカエルカワウソ野鼠)の精気を取り込んだことと、おそらくは景光に対する怨念ゆえに、自分では気づかぬまま、心まで妖怪になり果ててしまった。
外見は鉄鼠に似ており、妖怪となった後はふもとの古寺に棲み付いていた。手塚の長男である手塚眞によると、この妖怪は眞が子どもの頃に考えた自作の「妖怪図鑑」に出てくる「死毛」という一匹(モグラがモチーフ)を、手塚がアレンジして作ったものだという[2]
最期は住処の穴の中に煙を送り込まれ、地上に出てきた瞬間に百鬼丸に眉間に刀を突き立てられて絶命した。
原作の最後に出てきた巨大な妖怪。これまで倒されていない魔物達の集合体。30匹一気に出てきたと、手塚治虫大全集他にはっきりと記されているが、実際には28(27)匹なので、実際のところは分からない。伝説の妖怪をモチーフに作られていて、百鬼丸が集まった中の少なくとも5、6匹は倒したと言っている。

単行本

アニメ

パイロットフィルム

1968年1月12日、『どろろ』のタイトルで、虫プロダクションによりカラーパイロットフィルムが製作された。絵のタッチが原作に近い。

声の出演

スタッフ

テレビアニメ

タイトルは1話 - 13話が『どろろ』、14話 - 26話が『どろろと百鬼丸』。モノクロ作品。すでに大半のテレビアニメがカラーで制作されていた時代にモノクロとなったのは、カラーのパイロットフィルムを見たスポンサーから「血が生々しすぎる」というクレームがついたためである[3]

1969年4月6日から9月28日までフジテレビ系列にて毎週日曜日19時30分から20時に放送された。

提供スポンサーはカルピス一社。そのため『カルピスまんが劇場』という冠が付いているが、名作アニメでない事から、『世界名作劇場』には含まれていない。

なお『どろろと百鬼丸』時代の後期のタイトルクレジットシーンには、水中に出された『カルピスまんが劇場』というタイトルが反転して、『どろろと百鬼丸』というタイトルになるという演出が有ったが、それ以前に『カルピスまんが劇場』というタイトルが出たかは不明。

声の出演

スタッフ(テレビアニメ)

  • 総監督 - 杉井ギサブロー
  • 設定 - 勝井千賀雄、鈴木良武
  • 作画監督 - 北野英明、上口照人
  • 作画 - 進藤満尾
  • 美術監督 - 槻間八郎
  • 背景 - 明石貞一
  • トレス - 北岡光代
  • 彩色 - 高橋富子
  • 撮影監督 - 熊谷幌史
  • 撮影 - 森昭彦
  • 音響 - 田代敦巳
  • 録音 - 東京スタジオセンター(渡辺進)
  • 効果 - 柏原満
  • 現像 - 育英社
  • 編集 - 松浦典良
  • 音楽 - 冨田勲
  • 演奏 - フールサンズセレナーダス(中村英夫)
  • 製作 - 柴山達雄
  • 製作助手 - 金沢秀一
  • フジテレビ担当 - 八百板勉
  • 制作 - 虫プロダクション、フジテレビ

主題歌

『どろろ』
「どろろの歌」
作詞 - 鈴木良武 / 作曲 - 冨田勲 / 歌 - 藤田淑子
『どろろと百鬼丸』
「どろろの唄」(※「どろろの歌」と同じ)
作詞 - 鈴木良武 / 作曲 - 冨田勲 / 歌 - 藤田淑子
オープニングアニメーションも変更され、どろろと百鬼丸が前期より多く登場した。

各話リスト

話数 放送日 サブタイトル 脚本 演出
1 1969年
4月6日
百鬼丸の巻 その一 出崎統
2 4月13日 百鬼丸の巻 その二 遠藤政治
3 4月20日 万代(ばんだい)の巻 その一 富野喜幸
4 4月27日 万代の巻 その二
5 5月4日 無残帖(むざんちょう)の巻 その一 高橋良輔
6 5月11日 無残帖の巻 その二 出崎統
7 5月18日 妖刀似蛭(にひる)の巻 その一 勝井千賀雄
8 5月25日 妖刀似蛭の巻 その二
9 6月1日 ばんもんの巻 その一 西牧秀夫
10 6月8日 ばんもんの巻 その二 南川博
11 6月15日 ばんもんの巻 その三 出崎統
12 6月22日 白面(はくめん)不動の巻 その一 彦根範夫
13 6月29日 白面不動の巻 その二 高橋良輔
14 7月6日 妖怪かじりんこん 鈴木良武 奥田誠治
15 7月13日 いないいない村 高橋良輔
勝井千賀雄
16 7月20日 妖馬みどろ さわきとおる 富野喜幸
17 7月27日 妖怪どんぶりばら 鈴木良武 高橋良輔
18 8月3日 海獣ビラビラ さわきとおる 北野英明
19 8月10日 雷火犬(らいかけん) 鈴木良武 石黒昇
20 8月17日 おんぶら鬼 高橋良輔
21 8月24日 まいまいおんば 虫プロ文芸部 南川博
22 8月31日 妖怪もんもん 鈴木良武 岡崎邦彦
高橋良輔
23 9月7日 人食い大木 平見修二 奥田誠治
24 9月14日 四化(しけ)入道 杉山卓
25 9月21日 妖怪土坊主 鈴木良武 杉山卓
26 9月28日 最後の妖怪 北野英明

映像ソフト化

  • 2002年11月21日に全話収録のDVD-BOXが発売(パイロットフィルムも収録)。
  • 単品のDVDは2012年現在未発売。

アニメと原作のラストの違い

原作
百鬼丸は魔物をすべて倒す前に、どろろと別れいずこかへ去ってしまう。その後、百鬼丸の行方は誰も知らず、そしてその50年後に、48体の魔物の像が奉ってあった地獄堂が戦火で消失したこと(48の魔物を百鬼丸が全て倒したことの示唆)がナレーションで語られ、ラストとなる。
アニメ
どろろを村へ残し、百鬼丸は独りで魔物を倒す旅へ出る。戦い続けた百鬼丸は47体目の魔物を仕留め、失っていた片腕を取り戻す。後一体倒せば人並みの体へ戻ることができると勇む百鬼丸であったが、最後の魔物の一体とは醍醐景光であると知る。百鬼丸は仕官を装い景光に近づくが、企みを看破され責めを受ける。しかし、その様に耐えられず縫の方が百鬼丸を庇い、逆に今までの景光の行いを責める。妻から責められた景光は激憤し、縫の方や部下を殺害して地獄堂へと向かう。景光は再度力を求めて自らの体を差し出そうとするが、既にその体は人で無くなっていると魔物に嘲笑われ発狂する景光。そこへ後を追ってきた百鬼丸と対峙、実の親を斬るのかといきり立つが、魔物に心を奪われたあんたは親でないと斬り捨てられ、景光は地獄堂と共に焼け落ちる。最後の魔物を倒した百鬼丸は失われた体の部位をすべて取り戻すが、もう誰とも会いたくないとどろろとも再会する事もなく姿を消す。どろろが景光の圧政から解放された村人達とともに新たな人生に走り出すところでラストとなる。

小説

1969年朝日ソノラマから出版された児童向け小説。作者は辻真先で、挿絵は北野英明が担当している。ジャンルは「戦乱妖怪ヤング」。長らく絶版になっていたが、2007年の映画公開に際し同社から復刻された。

原作の「無情岬の巻」までをノベライズしているが、肉体を取り戻す順序は大きく異なり、最終的に百鬼丸は両腕を奪還している。細かい差異を上げていくと「ばんもんの巻」にて多宝丸が死なない、みおが「妖刀の巻」の登場人物になっている、妖刀の名称が「蛭川」になっている、しらぬいが登場しない、オリジナルの「やろか水」「山爺」という魔神が登場する、など。

また、地の文にてどろろが男性であると断言されている。

ゲーム

PC-8801mkIISR以降

1989年1月10日にクエーザーソフトより発売のアドベンチャーゲーム。未完に終わった漫画版の続編(完結編)になっており、手塚治虫の絵柄に極力似せて作られている。

PlayStation 2

2004年9月9日セガより発売(CEROレーティング15歳以上対象)。ジャンルはアクションアドベンチャーゲーム。制作はセガ。企画・シナリオ・設定はレッド・エンタテインメント。原作をなぞりつつも、原作・アニメでは「魔物」だったが「魔神」となっている(ただし漫画では魔人、妖怪などと一定しない)。漫画版に登場しなかった魔神も含めて48体の魔神全てと戦えるようになっており、最後はゲームオリジナルの結末を迎える。年齢制限にかかる重い設定は極力排除し、現代的にリメイクしている。特に百鬼丸の体のギミックは大幅に変更され、マシンガンや大砲が義手・義足に仕込まれ、原作にあった鼻の爆弾などはなくなっている。48箇所の部位を取り戻す、という原作の設定を上手くゲームデザインに取り込んでおり、魔人を倒すたび百鬼丸に何らかの変化がある。目が戻り視界が白黒からカラーになる、触感が戻りコントローラが震えるようになる、腕が戻り二刀流になる、足が戻りダッシュが可能になるといった様々な変化が待っており、プレイヤーを飽きさせることはない。キャラクターデザインは漫画家の沙村広明、魔神・妖怪デザインはアニメーターの前田真宏、タイトル題字・美術設定をデザイナーの雨宮慶太が担当している。

声の出演

映画

テンプレート:Main

舞台

『新浄瑠璃 百鬼丸』劇団扉座(2004年6月16日 - 23日)紀伊國屋ホール

『新浄瑠璃 百鬼丸』劇団扉座(2009年7月8日 - 12日)紀伊國屋サザンシアター

参考文献

  • 武村知子「どろろ草紙縁起絵巻」、フィルムアート社、1996年、ISBN 484599657X
  • 手塚治虫「どろろ4巻」、講談社、1998年、あとがき

関連項目

  • 魍魎戦記MADARA
  • ベルリンの壁 - 作中の「ばんもんの章」は、これによる悲劇が下敷きになっている。
  • 板門店- 作中の「ばんもんの章」は、「板門」の音読みから取られている(「板門店」は朝鮮戦争の停戦後に南北の朝鮮を分離するために設定された軍事境界線上にある実在の村の名前)。
  • ドロロンえん魔くん -永井豪&ダイナミックプロのマンガ作品。2012年、週刊漫画ゴラク日本文芸社刊)にて、若者に成長したどろろがえん魔と出会うコラボ読み切り作品『どろろとえん魔くん』が掲載された[4]。(作画は全て永井サイドで行われ、手塚側はどろろのキャラ使用許諾を行ったのみ)

脚注

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外部リンク

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zh:多羅羅
  1. 手塚の長男である手塚眞は著書で、自分が泥棒を「どろろお」と言っていたのをヒントにしたという説を紹介した上で、「(自分はそう言っていたことを)まったく覚えていません」と記している(手塚眞『父・手塚治虫の素顔』新潮文庫、2012年、p98)。
  2. 『父・手塚治虫の素顔』pp.97 - 99。同書には眞が当時描いた元絵も掲載されている。
  3. 杉井ギサブロー『アニメと声明と放浪と』ワニブックスPLUS新書、2012年、p98
  4. テンプレート:Cite web