さざなみ (列車)
テンプレート:列車名 さざなみとは、東日本旅客鉄道(JR東日本)が東京駅 - 君津駅・館山駅間を京葉線・内房線経由で運行している特急列車である。
また、かつては東急東横線にも「さざなみ号」という海水浴臨時急行が運転されていたことがあった。
本項では、房総西線→内房線で運転されていた優等列車の沿革についても記述する。
目次
概要
特急「さざなみ」は、1972年7月15日に運転を開始し、当初は、新宿駅・東京駅 - 館山駅・千倉駅間を中央本線(新宿駅始発・終着列車のみ)・総武本線・外房線・内房線経由で運転され、同年10月のダイヤ改正でエル特急に指定された。房総半島方面への特急列車は、同日から「わかしお」も運転され、「わかしお」は外房線経由で運転された。
1982年11月15日に房総地区の急行列車を全廃して「さざなみ」が増発された。1991年3月19日に特急「成田エクスプレス」の運転開始により、東京駅 - 蘇我駅間は3月16日から京葉線経由に変更された。
このうち、「ビューさざなみ」「ホームタウンさざなみ」「おはようさざなみ」などが運転されたが、2005年12月10日に列車愛称は「さざなみ」に統一された。
「さざなみ」の列車名の由来
沿線である東京湾内湾の小さく立つ波を表す「漣」「小波」「細波」(いずれも読みは「さざなみ」)が由来となっている。1959年の夏季臨時列車では「さざ波」のテールマークを掲出して運転したこともある。
運行概況
基本的に東京駅 - 館山駅間で上下ともに朝および夕方 - 夜間に、定期列車は1日上下6往復運転されている(ただし、毎日運転は2往復のみで、4往復は土休日運休)。2005年のダイヤ改正以降本数が大幅に削減され、現在日中帯の列車は臨時列車に変更されている。下り列車の東京駅の発車時刻は毎時30分である。また、上り1本(8号)のみであるが、館山駅 - 君津駅間で普通列車として運転されている列車がある。
停車駅
※定期列車の停車駅。「新宿さざなみ」は後述。一部区間普通列車となる列車の普通列車区間だけが停車する駅は除く。
東京駅 - (海浜幕張駅) - 蘇我駅 - 五井駅 - (姉ケ崎駅) - 木更津駅 - 君津駅 - (青堀駅) - (大貫駅) - (上総湊駅) - (浜金谷駅) - (保田駅) - (安房勝山駅) - (岩井駅) - 富浦駅 - 館山駅
- ( )は一部の列車のみ停車。
- 青堀駅・保田駅は定期列車の館山駅発着便は全て停車するが、臨時列車の一部に通過の列車が存在する。
一時期、お台場や東京ディズニーリゾート方面への旅客に配慮して、一部の列車が新木場駅・舞浜駅に臨時停車していた。また、2008年から2010年には通勤客の利用を見込んで「さざなみ」21号(当時)が新木場駅に臨時停車したことがある[1]。
使用車両・編成
さざなみ |
テンプレート:TrainDirection |
テンプレート:JRE E257 500 1Unit Limited |
テンプレート:JRE 255 Limited |
|
E257系500番台の5両編成および、255系の9両編成で運転されている。また、普通列車として運転する区間では全車自由席となる。
運転開始当初は、183系が使用されていた。
担当車掌の所属区所
臨時列車
土曜・休日に「新宿さざなみ」として、新宿駅 - 館山駅間で中央本線・総武本線・外房線・内房線を経由して1 - 2往復運転されている。臨時列車扱いではあるもののほぼ恒常的に運転されている。なお、菜の花が見頃の時期や駅からハイキング実施時などには、千倉駅まで延長運転されることがある。2013年には中央本線高尾駅まで延長運転された。
- 停車駅
- 新宿駅 - 秋葉原駅 - 錦糸町駅 - 船橋駅 - 津田沼駅 - 千葉駅 - 蘇我駅 - 五井駅 - 木更津駅 - 君津駅 - 佐貫町駅 - 浜金谷駅 - 保田駅 - 岩井駅 - 富浦駅 - 館山駅
このほか、土曜・休日を中心に日中帯に東京発着の臨時列車が運行されるほか、幕張メッセ来場客向けに、東京駅 - 海浜幕張駅間運転の臨時「さざなみ」が運転されることがある。以前は「わかしお」として運転されていたが、2009年10月26日に東京駅 - 海浜幕張駅間の臨時列車(東京モーターショー来場者向け)が初めて「さざなみ」として運転された。その後、2010年6月9日 - 11日のInterop Tokyo来場客向け、同年10月5日 - 8日のCEATEC JAPAN来場客向け臨時列車も「さざなみ」として運転された。
また、かつて夏季に運転されていた「ビーチインBOSOさざなみ」は、蘇我駅 - 浜金谷駅間無停車だった。木更津駅・君津駅の両駅を通過する列車は大変珍しかったため、参考に停車駅を記す。
- 「ビーチインBOSOさざなみ」停車駅
- 新宿駅 - 秋葉原駅 - 錦糸町駅 - 千葉駅 - 蘇我駅 - (この間途中無停車) - 浜金谷駅 - 保田駅 - 安房勝山駅 - 岩井駅 - 富浦駅 - 館山駅
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189系「新宿さざなみ」
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秋葉原駅に停車中のE257系「新宿さざなみ」
利用状況と競合交通機関
1997年12月の東京湾アクアライン開通後、「さざなみ」は距離的に遠回りで所要時間で劣るようになり、同ルートによる乗用車や、「房総なのはな号」などの高速バスへの乗客の転移が著しい。そのため、近年は列車本数の削減が目立つ一方(房総夏ダイヤも1998年を最後に設定されていない)、通勤時間帯に増結を行うなど、乗用車に転移しにくい朝夕の通勤客の比重が増している。
内房線優等列車沿革
内房線(旧・房総西線)に有料の優等列車が初めて設定されたのは戦後の1958年(昭和33年)であるが、戦前の1935年(昭和10年)から1940年(昭和15年)の間、海水浴客などの利用を見込んで、臨時の快速列車(旧称:準急列車)には「漣」(さざなみ)などの列車愛称が付与されていたことがあった。
戦後優等列車の運行開始
- 1950年(昭和25年)7月16日 - 8月20日:土・日曜日運転の臨時快速「汐風」を両国駅 - 館山駅間で運転開始。1951年(昭和26年)夏にも運転された。
- 1952年 (昭和27年) - 1953年(昭和28年)夏:「汐風」の運転区間を新宿駅まで延長のうえ「夕凪」(土曜日運転)、「汐風」(日曜日運転)、両国発「さざなみ」(毎日運転)とする。
- 1955年(昭和30年)11月15日:気動車を使った同線区初の定期快速列車を設定。平日は千葉駅始発、休日は新宿駅始発で、朝に新宿駅 → 千葉駅 → 木更津駅 → 館山駅 → 安房鴨川駅 → 大網駅 → 千葉駅と走った後、午後に千葉駅から逆経路でまわる循環列車となっていた。
- 1955年(昭和30年)4月17日以降:休日運転の臨時快速「房総の休日号」(新宿駅 - 成田駅 - 佐原駅 - 外川駅間)を新宿駅 - 千葉駅間で併結。
- 1958年 (昭和33年)
- 1959年(昭和34年)7月1日:それまでの「房総」を「京葉」に改称(括弧付けは継続)。総武本線・房総東線・房総西線の臨時準急列車を2往復増発し、新たに「房総」とする。新設された「房総」は新宿駅 - 銚子駅・(房総東線・房総西線経由)新宿駅・(房総西線・房総東線経由)新宿駅間の準急列車(3層建て列車かつ循環列車)で使用。系統別の括弧書きも踏襲する。
- その運行系統は、2本とも新宿駅を9両編成で発車し、千葉駅で3方向へ向かう列車に分割し、房総東線 → 房総西線経由の「房総(外房)」と房総東線 → 房総西線経由の「房総(内房)」それぞれが房総半島を一周(途中ですれ違う)した後、千葉駅で再び銚子駅からきた上りの「房総(犬吠)」ともに3列車を併結して新宿駅へ戻るものであった。
- 1960年(昭和35年)4月25日:「房総」定期列車に変更。
- 1960年(昭和35年)11月21日:「京葉」を1往復増発するが、増発分は括弧付けをせずに3方面いずれも下りが「京葉1号」、上りが「京葉2号」とされた。
- 1961年(昭和36年)
- この年より「房総夏ダイヤ」開始。臨時準急「浜風」を増発(1往復)。翌年2往復となる。
- 10月1日:「京葉」の括弧付け愛称を廃止し、上下ともに発車順に「京葉1号」・「京葉2号」とする。
- 1962年(昭和37年):房総夏ダイヤで臨時快速「しらすな」を両国駅 - 浜金谷駅間で運転。借入試作機関車のDF93形が牽引。
- 1962年(昭和37年)10月1日:準急は房総東・西線系統と総武本線系統の千葉駅以西での併結運転を中止。「房総」「京葉」の名称を、房総東線系統列車は「外房」(がいぼう)、房総西線系統列車は「内房」(ないぼう)と改める。「内房」は4往復となった。
- 「房総」の流れを引き継ぐ循環列車系統に関しては、両線の境となる安房鴨川駅で「内房」と「外房」の愛称を切り替えていた。
- 1963年(昭和38年)
- 1964年(昭和39年):房総夏ダイヤの臨時準急の名称を「白浜」とする(4往復運転)。下り2号/上り1号は80系電車6両によって、前年同様の運転とした。臨時快速は「さざなみ」から「かもめ」に改称。
- 1965年(昭和40年)
- 房総夏ダイヤの臨時準急の名称を「汐風」に戻す。1往復増発。
- 10月1日:「さざなみ」に自由席車両を連結し、「内房」に統合する。この時「内房」の読みも「うちぼう」へ改められる。
- 1966年(昭和41年)3月5日:運行距離が100kmを越す準急列車を全て急行列車に格上げすることになり、「内房」は急行列車となる。
- 1967年(昭和42年)
- 房総夏ダイヤの臨時急行を「うちうみ」に改称(6往復運転)。
- 10月1日:「内房」の内循環運転を行うものを、「うちうみ」と改称(5本運転。うち2本は館山→安房鴨川間を普通列車とした)。
- 1968年(昭和43年)7月1日:「内房」「うちうみ」を「うち房」に統合。
- 1969年(昭和44年)7月11日:木更津駅 - 千倉駅間の電化により「うち房」が電車化され、新宿駅・両国駅 - 館山駅・千倉駅間(季節列車のうち1往復は八王子駅発着、新宿駅 - 館山駅間の1往復は113系により運転)で運転される。これにより「そと房」との千葉駅以西での併結運転と循環運転は廃止。
- 1970年(昭和45年):房総夏ダイヤでは臨時「うち房」のうち1往復を高尾駅発着で運転。臨時快速「さざなみ」を中野駅・両国駅・津田沼駅 - 館山駅・千倉駅間で運転。
- 1971年(昭和46年)7月1日:千倉駅 - 安房鴨川駅間の電化により、「うち房」の下り7本/上り8本が安房鴨川駅まで延長。うち下り1本/上り2本は館山駅 - 安房鴨川駅間を普通列車とした。
エル特急「さざなみ」設定後
- 1972年(昭和47年)
- 7月15日:総武本線東京駅乗り入れ(総武快速線開業)により、次のように変更。
- 183系を導入し、特急「さざなみ」を運転開始(定期列車3往復・季節列車5往復)。
- 外房線の蘇我駅 - 安房鴨川駅間の電化により、存続した急行列車4往復による循環運転を再開。先に内房線を走行し外房線に入るもの(左回り)を「なぎさ」、先に外房線を走行し内房線に入るもの(右回り)を「みさき」とする(館山駅 - 安房鴨川駅間は普通列車)。これによって「うち房」が廃止。なお、これに先立つ5月27日に外房線大網駅のスイッチバックが解消されていたため、電化前とは違い循環運転後は前後が入れ替わることになった。また、定期急行は車両が東京駅 - 錦糸町駅間で採用しているATC-5型非対応のため新規開業した東京駅に乗り入れできず、新宿駅もしくは両国駅発着となった。
- この年の房総夏ダイヤでは臨時特急「さざなみ」(下り1本/上り2本)、113系による臨時急行「みさき」「なぎさ」・101系などによる快速「青い海」(前年までの「さざなみ」を改称。下り15本/上り12本)[3]を運転。
- 7月15日:総武本線東京駅乗り入れ(総武快速線開業)により、次のように変更。
- 1973年(昭和48年):房総夏ダイヤでは臨時急行「みさき」「なぎさ」を冷房搭載の113系1000番台とし、この年落成したサロ113形を組み込んで運転[4]。
- 1975年(昭和50年)3月10日:循環運転を再び廃止し、内房線を走行する急行列車3往復は「内房」と改称。
- 1982年(昭和57年)11月15日:急行「内房」など房総地区の急行列車全廃。代替として、「さざなみ」に両国駅発着列車を設定。
- 1985年(昭和60年)3月14日:「さざなみ」の新宿駅・両国駅発着定期列車を全廃。
- 1987年(昭和62年):房総夏ダイヤでは「あずさ」(千葉駅 - 松本駅間・1往復)を千倉駅まで延長。この延長運転は1992年(平成2年)夏ダイヤまで実施された。
- 1991年(平成3年)3月16日:「成田エクスプレス」の運転開始により、東京駅 - 蘇我駅間を京葉線経由に変更。
- 1993年(平成5年)7月2日:千倉駅発着列車の一部を255系による「ビューさざなみ」とする。同時に「ホームタウンさざなみ」「おはようさざなみ」として、君津駅発着の列車が運転開始。
- 1994年(平成6年)12月3日:「ビューさざなみ」での運転を千倉駅発着の全列車および館山駅発着列車の一部に拡大。
- 1996年(平成8年):251系電車による臨時列車「デラックスビュー南房総」を新宿駅 - 千倉駅間で運転。
- 1998年(平成10年):「さざなみ」の一部列車が、君津駅 - 館山駅間を普通列車として運転。なお、当初は上り、下りともに数本設定されていた。この年の夏をもって「房総夏ダイヤ」を終了。
- 2000年(平成12年)12月2日:「ビューさざなみ」の館山駅 - 千倉駅間を臨時列車に格下げ。一部の「さざなみ」が海浜幕張駅に停車するようになる[5]。
- 2002年(平成14年)12月1日:エル特急の呼称を廃止。
- 2004年(平成16年)10月16日:E257系を「さざなみ」に導入、183系の定期列車としての運行を終了。また「ホームタウンさざなみ」「おはようさざなみ」を廃止し、E257系による列車を「さざなみ」、255系による列車を「ビューさざなみ」に統一。
- 2005年(平成17年)12月10日:列車名を「さざなみ」に統一し、「ビューさざなみ」を廃止。君津駅発着列車の4本を館山駅まで延長し、10両編成列車を大幅増加。その一方で、日中の列車は臨時列車化される。房総方面のすべての特急列車を全車禁煙化。
- 2010年(平成22年)3月13日:「新宿さざなみ」を1往復増発。「さざなみ」は館山駅発着の1号と10号を廃止、1往復が君津駅発着に短縮されるほか、夜間の君津駅発着の1往復(うち下り1本は館山行きを短縮したもの)を土曜・休日運休とする。そのほか、一部臨時列車の設定廃止や停車駅の変更が行われる。
- 2010年(平成22年)12月4日:3号と14号を臨時化、3往復を土曜・休日運休とし平日6往復、休日2往復の運転となる。これにより午前の下りは1号、午後の上りは12号と君津駅始発の16号のみとなる。
- 2012年(平成24年)3月17日:下りの1・3・5号と上りの10・14号、「新宿さざなみ」の下りの1号と上りの4号に設定されていた館山駅 - 千倉駅間の臨時列車を廃止。
- 2013年(平成25年)1月19日-2月11日:「新宿さざなみ」1・4号を中央線・高尾駅まで延長。
- 2014年(平成26年)3月15日:車内販売を廃止。
列車名の由来
房総各線を走行する列車名には元々の地域性や、海水浴客に対する宣伝の意味も込めたのか海に関するものが多い。
(五十音順)
- 「青い海」(あおいうみ):海、特に外洋を形容。
- 「うちうみ」:房総半島の東京湾側、すなわち「内海」を走行することから。また、外房線(旧、房総東線)を走行する「そとうみ」と対にするため。
- 「内房」・「うち房」(ないぼう・うちぼう):房総半島の東京湾側を「安房の内側」で「内房」ということから。また、外房線を走行する「外房」・「そと房」と対にするため。
- 「おはようさざなみ」:朝の通勤時間帯を走行する「さざなみ」であるから。
- 「かもめ」:海鳥の「カモメ」から。特急の愛称としては戦前からの長い歴史を持つ。
- 「京葉」(けいよう):東京と千葉県各地を結ぶことから。
- 「汐風」(しおかぜ):海から吹く塩気を含んだ風から。平仮名書きの「しおかぜ」は1965年 - 1968年・山陽本線の特急、1972年からは予讃線の特急として運転されている。
- 「しらすな」:日本の美しい海岸の形容「白砂青松」から。
- 「白浜」(しらはま):房総半島最南端の白浜町(現在の南房総市の一部)から。
- 「なぎさ」:波打ち際を表す言葉の「渚」から。
- 「ビューさざなみ」:使用する255系の車両愛称が「Boso View Express」(房総ビューエクスプレス)であるから。
- 「富津岬」(ふっつみさき):富津市にある東京湾口の岬から。
- 「房総」(ぼうそう):房総半島各地へ向かう列車であるから。
- 「ホームタウンさざなみ」:夕方の帰宅時間帯を走行する「さざなみ」であるから。
- 「みさき」:房総半島には多くの「岬」があり、ペアを組む「なぎさ」と見合うことから。
- 「夕凪」(ゆうなぎ):海辺の地域で、無風の状態(凪)のうち夕方に起こるものを指す。