ジャミラ (ウルトラ怪獣)
テンプレート:Pathnav ジャミラは、特撮テレビ番組『ウルトラマン』を始めとする「ウルトラシリーズ」に登場する架空の怪獣。別名「棲星怪獣」。
目次
『ウルトラマン』に登場するジャミラ
『ウルトラマン』第23話「故郷は地球」に登場。
元々は、宇宙開発競争の時代に某国が打ち上げた人間衛星に乗っていた宇宙飛行士「ジャミラ」[2]であり、正真正銘の地球人であった。事故によって水のない惑星に不時着し、救助を待つ間にその惑星の環境に適応して体が変異し、怪獣の姿になった。母国が国際批判を恐れて事実を隠蔽し、救助を出さなかったために見捨てられたことを恨み、最終的には自らの手で宇宙船を修理・改造して、復讐のために地球に帰ってきた。自由に姿を消す宇宙船を操縦し、要人を乗せた旅客機を次々と墜落させるが、科学特捜隊に宇宙船の位置を見破られて撃墜され、その姿を現す。最大の武器は、口から吐く100万度の高熱火炎。
皮膚が粘土質に変化しており、そのため火には強いが、皮肉にもずっと欲していた水が最大の弱点となっている。「ジャミラが元は人間だったという事実を公表せず、あくまでも『怪獣』として葬り去れ」というパリ本部からの命令を受けた科学特捜隊による人工降雨弾攻撃には苦しみながらも耐えるが、ウルトラマンのウルトラ水流には耐えられず、這いつくばって国際会議場の万国旗を潰し、赤ん坊の泣き声に似た断末魔の叫びを発して絶命する。
死体は科学特捜隊が埋葬し墓標を建てるが、イデ隊員はこの墓標を犠牲者(ジャミラ)に対する人間のエゴにすぎないと吐露している。
- 名はアルジェリアの独立運動家ジャミラ・ブーパシャからとったもの。また、本編中でジャミラの正体を知っていた人物は科学特捜隊のパリ本部の隊員・アランで、ジャミラの墓碑銘の記載の文字はフランス語で綴られている。
- 断末魔の悲鳴は、人間の赤ん坊の泣き声を加工したもの。
- 番組終盤に一瞬写る墓碑銘の記載によれば、ジャミラの生没年は1960年 – 1993年(32歳か33歳)とされている。
- 当該エピソードは映画『実相寺昭雄監督作品ウルトラマン』に組み込まれ、映画公開されている。予告でのクレジットは「せい星怪獣 ジャミラ」。
- 特徴的な外見は、衣服の丸首の部分を頭まで被る事によって子供に真似される事がある[3]。
- 悲劇的なシナリオで知られる怪獣である反面、要人とは関係のない一般人もろとも旅客機を墜落させる、一般人の民家を焼き払う、国際会議場を破壊しようとするなど、彼を見捨てた「某国」とは関係のない人々に対しても無差別の殺戮や破壊活動を行うことも事実であり、その点からジャミラを一方的に被害者扱いする事に対して否定的な見解が語られることもある[4]。劇中でも、ジャミラの理不尽な破壊活動に憤ったイデの叫びに、ジャミラが一瞬だけ我に返ったかのように破壊を止めて立ち止まるシーンが入っており、復讐によって被害者が加害者に転じる不条理をも描いている。
資料での記述
幻冬舎の書籍『21世紀ウルトラマン宣言』では、ジャミラの身体の変貌理由について仮説が詳述されている。顔と肩と首が一体化したのは、肩に作った脂肪の瘤(こぶ)でラクダのように水分と脂肪を蓄えるため[5]ではないかとされ、眼球の窪みは日差しや砂漠の砂から目を護るためではないかとされている。
『ウルトラマンメビウス』における資料の一部では、GUYSの保有するアーカイブドキュメント「ドキュメントSSSP」のジャミラに関する記録が大幅に削除されていることが示唆されている[6]。また、朱川湊人の小説『ウルトラマンメビウス アンデレスホリゾント』では、ジャミラの死後にアラン(本作でのフルネームはアラン・ビロッツとされている)が科学特捜隊を辞めてジャーナリストとなり、ジャミラ事件の告発書籍『故郷は地球』を出版するも、「某国」やフランス当局から起訴や冤罪などの妨害を受けて絶版へ追い込まれたことが語られている。
『ウルトラマン THE FIRST』に登場するジャミラ
漫画『ウルトラマン THE FIRST』に登場。
テレビ版『ウルトラマン』とは異なり、怪獣墓場を探索していた国際宇宙開発ステーションのクルー・ジャミラがバルタン星人に改造された設定になっている。バルタン配下のブルトンに拉致され、改造後に地球に送りつけられた。原作とは異なる経緯ゆえに地球人に手を出すことはないが、ウルトラマンにバルタン星人と「黒い恐怖」であるゼットンの脅威を伝えた直後、事情を知らなかったイデのマルス133による攻撃で致命傷を受けて死亡。死後、彼の正体は科特隊を除いて隠蔽され「怪獣ジャミラ」として処理されることになる。
『ウルトラマンパワード』に登場するジャミラ
『ウルトラマンパワード』第6話「宇宙からの帰還」(米国版サブタイトル:A FATHER'S LOVE「父の愛」)に登場。玩具などではパワードジャミラの名称が用いられている。
- 身長:1.8 - 60メートル
- 体重:80キログラム - 1万8千トン
木星探査船「ジュピターIV」の宇宙飛行士でW.I.N.R.隊員ジュリー・ヤングの姉婿でもある、ジャミラ・ミラー空軍少佐(演 - フィリップ・スチュアート/声 - 辻親八)が宇宙で青い光に接触し怪獣化したもの。宇宙服と融合したような姿を持ち、『ウルトラマン』に出てきたジャミラとはかけ離れたイメージをしているが、肩と頭部が一体化し頸のない体形などは忠実に再現している。
「人間の心を失ってしまう前に娘のカレンに生きて再会したい」という強い思いで地球に帰還。人間の心が残っている間は人間の姿を保っていられたが、段々と青い光に心と身体を乗っ取られていき、怪獣へと変貌してゆく。そして、最終的には自分を軍事利用しようと目論みカレンを捕獲した国家保安局への憎悪と怒りから完全に怪獣と化し、保安局のエセックス大佐(演 - ジョン・マッカーン/声 - 有本欽隆)とその部下ダン(演 - スティーブン・クレーマー/声 - 水野龍司)ともう1人の部下(演 - ジェシー・コインズ/声 - 荒川太郎)が乗る車を踏み潰し、殺害するが、カレンの必死の訴えで人間の心を取り戻す。
しかし、このまま怪獣として生きることに耐えられなくなったジャミラはパワードに自分を殺すよう頼み、メガ・スペシウム光線を自ら浴びて死亡。ジャミラの死に際を見たカレンは、彼の怪獣化の原因を調査してこのようなことを繰り返さないようにするため、将来宇宙飛行士になることを決意する。
青い玉の詳細は大量のチタンを含む事以外は不明だが、テレサは「ウルトラマンと同じタイプの生物かもしれない」という仮説を立てる。また、彼女は「家に帰ってもいい」とジャミラに語りかけていたらしい。
- テンプレート:要出典範囲
- デザインは前田真宏[7]。自らを改造したというイメージで、H・R・ギーガーを意識している[7]。顔を廃し、スリットの間から目を見せることで悲しみの表情の演出を意図している[7]。デザイン画では初代と同様に体表にひびが入っていた[7]。前田は初代を監督した実相寺昭雄がこのデザインに対して怒っていたということを樋口真嗣を通して伝え聞いている[7]。
- 『テレビマガジン』に掲載された『ウルトラマンパワード』の漫画版では、殺されることなくパワードに宇宙に運ばれるというラストを迎える。
その他の作品に登場するジャミラ
- 『ウルトラファイト』第22話では、「故郷は地球」の映像を再編集する形で登場。なお、同作では「宇宙怪人 ジャミラ」と呼ばれる。
- 『ウルトラマンタロウ』第25話では、かつてエンペラ星人に率いられて光の国を襲撃した怪獣軍団の一体として姿が確認できる。
- ゲーム作品『PDウルトラマンバトルコレクション64』では、フィールド上の雑魚敵及びプレイヤーキャラクターとして登場。原作同様の火炎放射の他に、毒ガス攻撃なども可能。また、ジャミラと同系統のオリジナル怪獣「ゴルミラ」も登場する。こちらはジャミラとは異なり、水が弱点ではない。
- 漫画『かがやけ ウルトラの星』では怪獣軍団の一員として登場。メトロン星人に率いられて九州地方に出現し、ゾフィーと戦う。後に他の怪獣と合流してウルトラ兄弟と戦うが、新ウルトラマンのウルトラダブルを受けて倒される。
- 漫画『ウルトラ忍法帖』には、アラビアの「ガラダマ王国」の国王・「ガラモン三世」の使い(デザインは『ウルトラマン』準拠)として登場する。後に『ウルトラマンパワード』デザインのジャミラも異世界の侵略者集団「虓魔衆」の「雷鬼ジャミラ」として登場する。
- 映画『新世紀2003ウルトラマン伝説 THE KING'S JUBILEE』ではウルトラマンキングの誕生日を怪獣たちと共に祝福する。
- 映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』では、百体怪獣ベリュドラの首を構成する怪獣の一体として姿が確認できる。
- 「ぱちんこウルトラマン」のCMでは、バルタン星人をはじめとする宇宙人に操られ町を破壊する。
- 2009年のHONDA「ステップワゴン スパーダ」のCMでは、スパーダを恐れて他の怪獣と共に道を空ける役で出演している。
- 『ウルトラゾーン』#14の怪獣漫才のコーナーでは、キリエロイドIIと「ジェネレーションギャップス」という漫才コンビを組んで登場する。また、#5のアイキャッチにも、波打ち際で女性と戯れるジャミラの姿が描かれている。
- 『おとなりのかいじゅう』シリーズでは、宮川アジュがデザインし直したジャミラがラインナップに加わっており、好きな場所は自宅、趣味は天体観測・PC・デジカメ、好きな食べ物はスルメとカロリーメイト、好きな言葉はフルハイビジョンという設定になっている。フィギュアなどの商品が各種販売されている他、公式サイトなどで公開されているミニムービーにも登場している。
その他の補足
- 着ぐるみは『タケちゃんマン・ふぞろいの怪獣たち』ではタケちゃんマン扮する「タケちゃんマンギドラ」に流用された(対するアミダばばあはクレッセントを流用した「あみだ怪獣アミダゴン」となった)。
- 映画『真夜中のカーボーイ』でテレビ画面に映るシーンがある[8]。
- 『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』並びに続編『NEO』でレイ役を担当した南翔太はジャミラの不運な最後を哀れみ、もしまた『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』の続編があるなら、「ジャミラをパートナー怪獣にし更生させたい」と推薦している[9]。なおこの希望は『ファミリー劇場presents クリスマスパーティー2010』のステージ中で、カオスダークネスに操られウルトラマンゼロを襲ったジャミラをレイが助け、ネオバトルナイザーの中で体の傷も癒すというシナリオで実現されている。
- 2009年11月5日放送の『スッキリ!!』では「ジャミラが何で倒されたか」という問題が出題され、加藤浩次はウルトラマンのウルトラ水流で倒されたことについて詳しく解説している。
- 山本弘のSF小説『トワイライト・テールズ』には、ジャミラへのオマージュである怪獣ヤミールが登場する。
- 神奈川県川崎市で2014年3月14日からー年間限定で営業している居酒屋「怪獣酒場」には、来店者が地球防衛隊員やヒーローに変身する能力があるかを確かめる「ジャミラの真実の口」がある。
脚注
関連項目
テンプレート:ウルトラ怪獣- ↑ 『キャラクター大全ウルトラマン全調査報告』(講談社、2012年、ISBN 978-4-06-218128-0)
- ↑ 墓碑には「A JAMILA」と彫られている。
- ↑ 例を挙げると、東野圭吾によるエッセイ『あの頃ぼくらはアホでした』における一節「『ペギラごっこ』と『ジャミラやぞー』」など。
- ↑ 例を挙げると、盛田栄一の『空想法律読本』における「ジャミラ放水殺人事件」など。
- ↑ 実際のラクダが瘤に蓄えているのは脂肪だけである。詳細は当該項目を参照。
- ↑ 『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟 MOVIE GUIDE BOOK』Newtype THE LIVE 10月号増刊、角川書店、2006年10月、p.21
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 テンプレート:Cite book
- ↑ テンプレート:Cite book
- ↑ 『宇宙船』2009年4月号におけるインタビューより。