REIT
テンプレート:出典の明記 REIT(Real Estate Investment Trust、リート)または不動産投資信託は、公衆から調達した資金を不動産に投資する金融商品の一種。特に、日本の国内法に則った日本版REIT(J-REIT)のことを単にREITという場合がある。
概要
不動産への投資を行い、REITを発行するビークル(Vehicle:投資組織)としては、信託が用いられる場合(いわゆる契約型)と法人が用いられる場合(いわゆる会社型)がある。いずれにせよ、そのようなビークルは、REITとして用いられることを担保するための一定の要件を充足することで、各国の税法上の特別措置として二重課税が排除される仕組みとなっているのが通常である。二重課税を回避する方式としてはペイ・スルー課税方式のほか、発生する所得をそのまま構成員に渡すことで導管をそもそも課税対象とせず構成員課税のみを行うパス・スルー課税方式がある。
REITは、米国のように当該ビークル自体が投資判断を行うものもあれば、日本(J-REIT)のように当該ビークル(投資法人)自身は投資判断を行わずに外部に委託するものもある。
REITの多くは、株式と同じように証券取引所に上場され、証券会社を通じて売買が可能である。
REITの収益源はその大半が投資先不動産の賃料による。そのため一般の株式にくらべて大幅な配当増、証券価格の乱高下は期待しにくい。一方、不動産賃貸契約は一般的に安定しておりリスクが小さいとみなされている。そのため投資家のポートフォリオのリスク分散に貢献する新たな投資先(financial vehicle)として認識されつつある。
REITについては、以下のような指標が用いられる。
- 利回り:REITの分配金の投資口価格に対する割合。REITの割安度、割高度を計る目安としても利用されている。
- NAV倍率:REITが保有する物件等の資産から負債を差し引いたものをNAV(net asset value;純資産価額)という。REITの投資口価格を1口当たりのNAVで割ったものを「NAV倍率」といい、REITの資産価値に対する投資口価格の割安度、割高度を計る目安として利用されている。事業会社における「PBR」とほぼ同様の意味を持つ。
日本
J-REITは2001年に2銘柄でスタートした。時価総額の規模で米国、豪州、フランスに次ぐ規模になっているが、対GDP比ではシンガポールや香港等よりも低い水準にある。投資物件については、当初オフィスビルが主体であったが次第に商業施設・店舗や住宅等へと多様化している。
現在課題点として挙げられているのは、運営・設立母体が不動産事業をも併せて手掛けているケースが多いため、物件取得価格が妥当でなかったり(高すぎたり)、優良物件が母体企業によって囲い込まれ、REITには優良ではない物件が組み込まれる傾向が強いという、一種の利益相反が生じる恐れがあることである。実際、既に行政処分が下されたケースもある。主要なJ-REITは下記の通り母体企業からの物件取得が中心となっており、資産内容の第三者によるチェック機能の充実が急務と考えられている。また、REIT導入の目的を果たせていないなどの問題点も挙げられている(好況時ほど高値づかみをし不動産バブルを加速させ、不況時ほど物件取得を行わず底支えに貢献しない等)。
2008年10月には、「ニューシティ・レジデンス投資法人」がJ-REIT初の破綻となった。 以降、日本レジデンシャル投資法人とアドバンス・レジデンス投資法人の合併、東京グロースリート投資法人とエルシーピー投資法人の合併など、合併再編が活発化している。
なお、日本においてはJ-REITと同じ投信法に基く、非上場のREIT(非上場私募REIT)も存在する。
法的側面
J-REITは、投資信託及び投資法人に関する法律(以下「投信法」という)に基づいて組成される。J-REITの形態としては、法的には投資信託 (法律)(いわゆる契約型)と投資法人(いわゆる会社型)の2つがあり得るが、実務上は後者の形態が採用されている。
J-REITはいわゆるペイ・スルー課税とされている。J-REITの配当可能利益の90%超を投資家に分配することと、決算期末において3人以下の投資家の取得が発行済み投資口の50%未満にとどまることを条件に、その分配に充てる所得の損金算入を認めるというものである(租税特別措置法67条の15)。
主として関連する法令は以下のとおり。
J-REIT(不動産投資信託)銘柄一覧
- 日本ビルファンド投資法人(8951)
- ジャパンリアルエステイト投資法人(8952)
- 日本リテールファンド投資法人(8953)- 2010年3月1日、ラサール ジャパン投資法人と合併[1]
- オリックス不動産投資法人(8954)
- 日本プライムリアルティ投資法人(8955)
- プレミア投資法人(8956)
- 東急リアル・エステート投資法人(8957)
- グローバル・ワン不動産投資法人(8958)
- 野村不動産オフィスファンド投資法人(8959)
- ユナイテッド・アーバン投資法人(8960)- 2010年12月1日、日本コマーシャル投資法人と合併[2]
- 森トラスト総合リート投資法人(8961)
- 日本レジデンシャル投資法人(8962)- 2010年2月24日、上場廃止、同年3月2日、新設合併によりアドバンス・レジデンス投資法人(3269)として上場[3]
- 東京グロースリート投資法人(8963)- 2010年1月27日上場廃止、同年2月1日、エルシーピー投資法人と合併し、インヴィンシブル投資法人(8963)へ商号変更[4]
- フロンティア不動産投資法人(8964)
- ニューシティ・レジデンス投資法人(8965)- 2008年11月10日上場廃止、2010年4月1日、ビ・ライフ投資法人(8984)と合併[5]。2011年12月1日、大和ハウス・レジデンシャル投資法人(8984)に商号変更[6]
- クレッシェンド投資法人(8966) - 2010年9月28日上場廃止、同年10月1日、ジャパン・シングルレジデンス投資法人と合併、平和不動産投資法人(8966)へ商号変更[7]
- 日本ロジスティクスファンド投資法人(8967)
- 福岡リート投資法人(8968)
- プロスペクト・レジデンシャル投資法人(8969)- 2010年6月28日上場廃止、同年7月1日、旧リプラス・レジデンシャル投資法人の日本賃貸住宅投資法人(8986)と合併[8]
- ジャパン・シングルレジデンス投資法人(8970)- 2010年9月28日上場廃止、同年10月1日、クレッシェンド投資法人と合併、平和不動産投資法人(8966)へ商号変更[9]
- ケネディクス・オフィス投資法人(8972)- 2014年2月3日、ケネディクス不動産投資法人から現商号へ変更
- ジョイント・リート投資法人(8973)- スポンサー変更により2010年6月30日、積水ハウス・SI 投資法人へ商号変更[10] [11]
- ラサール ジャパン投資法人(8974)- 2010年2月24日上場廃止、同年3月1日、日本リテールファンド投資法人(8953)と合併[12]
- いちご不動産投資法人(8975)- 2011年11月1日、旧FCレジデンシャル投資法人(8975)と旧いちご不動産投資法人(8983)はFCレジデンシャル投資法人を存続投資法人として合併し、いちご不動産投資法人(8975)へ商号変更[13]
- DAオフィス投資法人(8976)- 2010年9月1日、大和証券オフィス投資法人に商号変更[14]
- 阪急リート投資法人(8977)
- アドバンス・レジデンス投資法人(8978)- 2010年2月24日上場廃止、同年3月2日、日本レジデンシャル投資法人と新設合併により(新)アドバンス・レジデンス投資法人(3269)として上場[15]
- エルシーピー投資法人(8980)- 2010年1月27日上場廃止、同年2月1日、東京グロースリート投資法人と合併し、インヴィンシブル投資法人(8963)へ商号変更[16]
- ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人(8981)- 2012年3月28日上場廃止、同年4月1日に日本ホテルファンド投資法人と合併。合併後の投資法人名は、ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)[17]
- トップリート投資法人(8982)
- ビ・ライフ投資法人(8984)- 2010年4月1日、ニューシティ・レジデンス投資法人と合併[18]。2011年12月1日、大和ハウス・レジデンシャル投資法人(8984)に商号変更[19]
- 日本ホテルファンド投資法人(8985)2012年4月1日にジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人と合併。合併後の投資法人名は、ジャパン・ホテル・リート投資法人(8985)[20]
- リプラス・レジデンシャル投資法人(8986)- 2009年1月21日、日本賃貸住宅投資法人(8986)に商号変更、2010年7月1日、プロスペクト・レジデンシャル投資法人と合併[21]
- ジャパンエクセレント投資法人(8987)
- 日本アコモデーションファンド投資法人(3226)
- MIDリート投資法人(3227)
- 日本コマーシャル投資法人(3229)- 2010年11月26日上場廃止、同年12月1日、ユナイテッド・アーバン投資法人(8960)と合併[22]
- 森ヒルズリート投資法人(3234)
- 野村不動産レジデンシャル投資法人(3240)
- スターツプロシード投資法人(8979)
- 産業ファンド投資法人(3249)
- ケネディクス・レジデンシャル投資法人(3278)
- アクティビア・プロパティーズ投資法人(3279)
- 大和ハウスリート投資法人(3263)
- GLP投資法人(3281)
- コンフォリア・レジデンシャル投資法人(3282)
- 日本プロロジスリート投資法人(3283)
- 野村不動産マスターファンド投資法人(3285)
- 星野リゾート・リート投資法人(3287)
- SIA不動産投資法人(3290)
- イオンリート投資法人(3292)
- ヒューリックリート投資法人(3295)
- 日本リート投資法人(3296)
- インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人(3298)
※ 2014年6月5日現在
米国
REITは1960年にアメリカ合衆国で導入された。信託を導管(SPVと呼ばれる)として二重課税を回避する商品となっている。形式には契約型と会社型の2つがありうるが、多くは会社型で上場されている。株式会社の株式に相当する投資口を時価で市場で購入することができる。このほか社債の発行を行うこともある。このほか銀行など金融機関から融資を受けることもある。このようにして証券市場を通じて投資家から集めた資金と銀行など金融機関から借り入れた資金をオフィスビルを始めとする不動産などに投資し、売買益や賃借料などの収益を投資口を購入した投資家に分配する形態をとる。投資物件はオフィスビル、小売店舗がそれぞれ4分の1程度を占めるほか医療施設・病院やリゾート施設等もそれぞれ5%程度を占めるなど多様である。REITの対象不動産に関する収益の確保、運営、管理、改修・模様替工事等の統括的なマネジメントを具体的に行っているのがビルマネジメント(ビルマネ)事業、またはプロパティマネジメント(PM)事業であり、REITの将来的な価値を評価する上で重要である。
米国では内国歳入法典856条以下の規定により課税所得の90%以上を投資家に分配する等の適格要件を満たせばREIT段階での連邦法人税が課せられず、投資家段階のみの課税で済む(法人としての利益課税と利益の配当を受け取った者に対する課税との二重課税が避けられる)とされている。あたかも投資家が直接に投資額に応じて投資対象物件を保有したのと同一の経済的なメリットが受けられるとされている。
脚注
関連事項
- RIC
- FASIT
- REMIC
- 不動産証券化
- ビルマネジメント
- プロパティマネジメント
- アセットマネジメント
- ファシリティマネジメント
- 日本リテールファンド投資法人
- イオングループ
- 森トラスト
- TSK・CCCターミナルビル
外部リンク
- 社団法人不動産証券化協会 -ARES-
- 不動産投資信託銘柄(野村證券)
- 日本アコモデーションファンド投資法人
- MIDリート投資法人
- 森ヒルズリート投資法人
- 野村不動産レジデンシャル投資法人
- 産業ファンド投資法人
- 大和ハウスリート投資法人
- アドバンス・レジデンス投資法人
- ケネディクス・レジデンシャル投資法人
- アクティビア・プロパティーズ投資法人
- GLP投資法人
- コンフォリア・レジデンシャル投資法人
- 日本プロロジスリート投資法人
- 野村不動産マスターファンド投資法人
- 星野リゾート・リート投資法人
- SIA不動産投資法人
- イオンリート投資法人
- ヒューリックリート投資法人
- 日本リート投資法人
- インベスコ・オフィス・ジェイリート投資法人
- 日本ビルファンド投資法人
- ジャパンリアルエステイト投資法人
- 日本リテールファンド投資法人
- オリックス不動産投資法人
- 日本プライムリアルティ投資法人
- プレミア投資法人
- 東急リアル・エステート投資法人
- グローバル・ワン不動産投資法人
- 野村不動産オフィスファンド投資法人
- ユナイテッド・アーバン投資法人
- 森トラスト総合リート投資法人
- インヴィンシブル投資法人
- フロンティア不動産投資法人
- 平和不動産リート投資法人
- 日本ロジスティクスファンド投資法人
- 福岡リート投資法人
- ケネディクス・オフィス投資法人
- 積水ハウス・SI 投資法人
- いちご不動産投資法人
- 大和証券オフィス投資法人
- 阪急リート投資法人
- スターツプロシード投資法人
- トップリート投資法人
- 大和ハウス・レジデンシャル投資法人
- ジャパン・ホテル・リート投資法人
- 日本賃貸住宅投資法人
- ジャパンエクセレント投資法人