R.E.M.
R.E.M.(アール・イー・エム)は、アメリカ合衆国のオルタナティヴ・ロックバンド。オルタナティヴ・ロック黎明期における代表的なバンドのひとつである。
歌詞やバンドの姿勢にこめられた文学的・政治的なメッセージや、楽曲の高いア-ト性から、1980年代におけるUSカレッジ・チャートの雄としてアンダーグラウンドシーンに君臨。世界で最も重要なロックバンドと称されることもある[1]。
「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100組のアーティスト」において第97位。
バンド名はレム睡眠(Rapid Eye Movement)に由来すると言われているが、本人らは明言しておらず諸説ある。なお、メンバーのマイク・ミルズはCDジャーナル2011年3月号のインタビューでRemember Every Momentという解釈に言及している。
2011年9月21日、公式ホームページにて「生涯の友人、及び共謀者たちへ」と題し、「今日をバンドとして最後の一日にすることを決めた」と活動31年目で突如解散を発表した。
目次
メンバー
- マイケル・スタイプ Michael Stipe - ボーカル
- ピーター・バック Peter Buck - ギター
- 2011年、「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のギタリスト」において第94位。
- マイク・ミルズ Mike Mills - ベース
- ビル・ベリー Bill Berry - ドラム(1997年脱退)
来歴
1980年にジョージア州アセンズにて、マイケル・スタイプ(ボーカル)、ピーター・バック(ギター)、マイク・ミルズ(ベース)、ビル・ベリー(ドラム)の4人で結成された。
米国のインディーレーベル"Hib-Tone"よりシングル「レディオ・フリー・ヨーロッパ(Radio Free Europe)」で1981年にデビュー。翌年にA&M傘下のインディーレーベルI.R.S.に移籍。5枚のアルバムをリリースした後、6枚目のアルバム『グリーン』よりワーナーへと移籍。
1997年にドラムのビル・ベリーが健康上の理由により脱退。以後は3人で活動。
2007年に、ロックの殿堂入りを果たした。授賞式でのプレゼンターは、パール・ジャムのエディ・ヴェダー。
2011年に解散。
ディスコグラフィー
オリジナルアルバム
- 1983年『マーマー』Murmur - 36位、ゴールド (US)
- 1984年『夢の肖像』Reckoning - 27位、ゴールド (US)
- 1985年『玉手箱』Fables Of The Reconstruction - 28位、ゴールド (US)
- 1986年『ライフズ・リッチ・ページェント』Lifes Rich Pageant - 21位、ゴールド (US)
- 1987年『ドキュメント』Document - 10位、プラチナ (US)
- 1988年『グリーン』Green - 12位、2xプラチナ (US)
- 1991年『アウト・オブ・タイム』Out Of Time - 1位、4xプラチナ (US)
- 1992年『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』Automatic For The People - 2位、4xプラチナ (US) 1位 (UK)
- 1994年『モンスター』Monster - 1位、4xプラチナ (US) 1位 (UK)
- 1996年『ニュー・アドベンチャーズ・イン・ハイ・ファイ』New Adventures In Hi-Fi - 2位、プラチナ (US) 1位 (UK)
- 1998年『アップ』Up - 3位、ゴールド (US) 1位 (UK)
- 2001年『リヴィール』Reveal - 6位、ゴールド (US) 1位 (UK)
- 2004年『アラウンド・ザ・サン』Around The Sun - 13位 (US) 1位 (UK) 1位 (WorldWide)
- 2008年『アクセラレイト』Accelerate - 2位 (US) 1位 (UK) 1位 (WorldWide)
- 2011年『コラプス・イントゥ・ナウ』Collapse Into Now
ライヴアルバム
ベストアルバム
- 1990年『エポニマス』Eponymous
- 1991年『The Best Of R.E.M.』
- 2003年『イン・タイム:ザ・ベスト・オブ・R.E.M. 1988-2003』In Time - The Best of R.E.M. 1988-2003
- 2006年『And I Feel Fine - The Best of I.R.S. Years 1982-1987』
- 2011年『Part Lies, Part Heart, Part Truth, Part Garbage: 1982-2011』
音楽性
インディーズ時代
アルペジオを多用したギターサウンドと、メロディアスなベースラインが特徴である。
この時期の作品には歌詞が一切掲載されておらず、スタイプの歌唱も聞き取りづらかった為に、「アメリカ人でも殆ど何を歌っているのかわからない」と言われたほど。
そんなミステリアスな雰囲気を秘めた、ややニュー・ウェーブ調で、パンク・ロック、サイケデリック・ロック、カントリーを彼らなりに消化した作風は早い時期から注目され、デビューアルバム『マーマー』はローリング・ストーンの1983年ベストアルバムに選出された。
ワーナー時代
移籍後のアルバム『グリーン』にて、マンドリンやアコーディオン等のトラディショナルな楽器を積極的に取り入れ、後の「ルージング・マイ・レリジョン(Losing My Religion)」の大ヒットへと繋がる。
ストリングスを大々的に取り入れた『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』、ノイジーなロックアルバム『モンスター』、各地でのライブ演奏やサウンドチェックを8トラックに録音した『ニュー・アドベンチャーズ・イン・ハイ・ファイ』、と作風の異なるアルバムを次々と発表した。
歌詞やスタイプの歌唱は明瞭になり、ステージでは政治的なメッセージを声高にオーディエンスに働きかける事も。その姿勢自体がオルタナティヴ・ロックの潮流の代表・先駆となっていった。
商業成績
全米各地のカレッジ・ラジオのサポートにより徐々に人気を広げていった。
初のヒット・シングルとなった1987年の「ザ・ワン・アイ・ラブ(The One I Love)」はアメリカ、イギリス、カナダにてTop 20入り。アルバム『ドキュメント』は初のミリオンヒットとなった。
代表作は1991年の『アウト・オブ・タイム』でグラミー賞7部門にノミネートされた。収録曲「ルージング・マイ・レリジョン(Losing My Religion)」は全米4位を記録。Best Short Form Music VideoとBest Pop Performance by a Duo or Group with Vocalを受賞。
『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』は、死をテーマにしているとされ、内省的な作風ながら、全世界で1,500万枚以上売れた[2]。
関連バンド・ミュージシャン
- トム・ヨーク(レディオヘッド)、クリス・マーティン(コールドプレイ)、ソニック・ユース、パール・ジャム、スティーヴン・マルクマス(ペイヴメント)、デーモン・アルバーン(ブラー、ゴリラズ)といった、各々の時代の寵児とされるバンド・ミュージシャンからのリスペクトを一身に受けている。
- ニルヴァーナのカート・コバーンもR.E.M.への共感を表明していた一人。『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』はカートが自殺する直前に聞いていたとされるレコードとしても知られる[3]。
- R.E.M.のメンバーが影響を受けたバンドとしては、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、パティ・スミス、テレヴィジョン 等があげられる。パティ・スミスは『ニュー・アドベンチャーズ・イン・ハイ・ファイ』収録曲「E-Bow the Letter」に参加している。
- ピーター・バックのギターサウンドは、デビュー当時ザ・バーズとよく比較された。
- 同郷のB-52'sのケイト・ピアソンは『アウト・オブ・タイム』の数曲でボーカルとして参加している。
- ジョン・ポール・ジョーンズは『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』でストリングスのアレンジを担当している。
- 俳優ジョニー・デップは、ギビー・ハインズ(バットホール・サーファーズ)らと組んだバンド、Pで、楽曲「マイケル・スタイプ」も制作している。
日本公演
- 1984年 早稲田大学、横浜国立大学など
- 1989年 1月28日・29日 MZA有明
- 1995年 2月1日・2日 日本武道館
- 2005年 3月16日 日本武道館、17日 愛知県芸術劇場大ホール、18日 グランキューブ大阪メインホール
エピソード
- スタイプとバックは、当時バックが働いていたレコード店で出会い意気投合。スタイプが購入するレコードはどれもバックが自分用に確保しておいた品物だったという。
- ミルズとベリーは高校以来の音楽仲間で、二人はジョージア大学に通っていた。
- R.E.M.という名前に決定する前に候補として挙げられていたバンド名は、Cans of Piss(小便缶)、Slug Bank(ナメクジ銀行)、Twisted Kites(からまった凧)、Negro Wives(黒人の妻達)。
- 1984年の来日時には爆風スランプが前座を務めた。
- 1995年、菓子メーカー、ハーシーフーズ社が米国でチョコレート菓子「キットカット」でR.E.M.のコンサートチケットが当たる懸賞をアーティスト側に無断で発表し、R.E.M.は提訴した。のちに和解し、提訴は取り下げた。
脚注
- ↑ 「アメリカ最高のロック・アンド・ロール・バンド」「世界で最も重要なロックバンド」として音楽専門誌「ローリング・ストーン」の表紙を飾っている。
- ↑ 収録曲の「マン・オン・ザ・ムーン(Man On The Moon)」は、実在した鬼才コメディアンアンディ・カウフマンをモチーフにしており、後に製作された彼の伝記映画のタイトルにもなった。R.E.M.は、この映画の音楽も担当した。
- ↑ http://www.blender.com/guide/67796/33-things-you-should-know-about-nirvana.html