MiRNA

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マイクロRNAは生物自身のDNAもしくはイントロンから合成される。

テンプレート:小文字 miRNA(micro-RNA)とは、細胞内に存在する長さ20から25塩基ほどのRNAをいい、他の遺伝子の発現を調節する機能を有すると考えられているncRNA(ノンコーディングRNA:タンパク質への翻訳はされない)の一種である。

miRNAの生成機構

miRNAの元になるDNA配列はmiRNAより長く、miRNAの配列と、それにほぼ相補的な逆向きの配列とを含む。このDNA配列が1本鎖RNAに転写されると、miRNA配列とその逆相補配列は相補的に結合して2本鎖になり、全体としてはヘアピンループ構造(tRNAに似た形)をとる。これをprimary miRNA(pri-miRNA)という。通常、ヘアピンループ構造をとる部分以外にもミスマッチが含まれており、スターフォームとよばれる。内にあるDroshaと呼ばれる酵素がこのpri-miRNA分子の一部を切断してpre-miRNA( miRNAの直接の前駆体)を作る。次いでpre-miRNA分子はExportin-5と呼ばれるキャリアタンパク質によって核外に輸送され、これからダイサー(Dicer:RNAiを参照)により20-25塩基の成熟miRNA(mature-miRNA)が切り出される(植物ではpri-miRNAが直接ダイサーによって処理される)。 そのmature-miRNA発現量の解析手法に関して、ノーザンハイブリダイゼーション、マイクロアレイおよびRT-qPCRなどのプロファイリングの方法が存在している。

miRNAの機能は遺伝子発現の抑制にあると思われる。miRNA は一部のmRNA(大抵は3'側非翻訳領域)に相補的な配列を有する。このmRNAとmiRNAとの結合により、翻訳が阻害される場合(下述のstRNA)、またRNAiのようにmRNAの分解を引き起こす場合があると考えられている。

miRNAの発見

このmiRNAの効果は1993年にR.C.LeeらによってC.elegansで初めて発見された(これはsmall temporal RNA=stRNAと呼ばれた )。その後miRNAはいろいろな植物シロイヌナズナなど)や動物C.elegansヒトなど)で確認されている(Baulcombe 2002)。細菌にも、mRNAに結合してmRNA量や翻訳を調節する似たような遺伝子が発見されているが、ダイサーは関与しないので、一般にはmiRNAとは考えられていない。

miRNAの語はサイエンスの 3 報の論文(2001年10月26日[1])で提唱された。

miRNAとsiRNAの違い

植物では類似のRNAであるshort-interfering RNA(siRNA)がウイルスRNAの転写を阻止する機能を有し、また一部は細胞自身の遺伝子の調節にも関わっている。siRNAは2本鎖であるが、ヘアピンループ構造を有し、作用機構はmiRNAに近いと思われる。siRNAとmiRNAの違いについて、siRNAは外因性の核酸分子であり、標的mRNA配列に完全相補的に結合し、そのmRNAを分解に導くことで遺伝子発現を強力に阻害する。一方、miRNAは内因性の核酸分子であり、1つ以上の複数のmRNA配列に部分相補的に結合し、それらmRNAの機能にフタをすることで、複数の異なるmRNAの遺伝子発現量を同時に抑制する。

細胞内でのmiRNAの機能

哺乳類において、miRNAは細胞の発生、分化、増殖、がん化およびアポトーシスなどの細胞機能の根幹に関わっていることが知られている。このmiRNAは約1,000種類以上存在しており、様々な遺伝子発現様式を介して最終的に細胞機能の発現に関わっていると考えられている。

miRNAをターゲットとした核酸分子

miRNAの機能を明らかにする手段のひとつに、アンチセンス核酸分子を用いたアンチセンス法がある。アンチセンス法とは、ターゲットの核酸分子と対になるような塩基配列を有する核酸分子を特異的に結合させることで、ターゲットの核酸分子の機能を阻害する手法である。つまり、ターゲットのmiRNAの機能のみを強力に阻害することで、そのmiRNAの細胞内での役割を明らかにすることができると考えられている。実際、miRNAの機能を強力に阻害することを主な目的として、非天然型の人工合成核酸で配列選択的に修飾されたアンチセンス核酸分子の設計・開発の研究が盛んに行われている。このようなアンチセンス核酸分子は一般的に、miRNAの機能を阻害するアンチセンス核酸分子という意味でAMO (anti-miRNA oligonucleotide) と呼ばれている。

miRNAとがん

miRNAは、がん、感染症、生活習慣病および難聴などの様々な疾患や病気に関わっていることが知られている。その中でもmiRNAは、細胞のがん化に深く関与していることが多くの研究者らによって指摘されている。がんに関わるmiRNAには、正の制御をするもののと負の制御をするものの2種類が存在している。正の制御をするmiRNAはoncogenic miRNA (onco miRNA) と呼ばれている。一方、負の制御をするmiRNAはTumor Suppressor miRNAと呼ばれている。特にonco miRNAに関して、その発現量の亢進が細胞のがん化を誘発していることが明らかにされている。2010年、米国の研究グループは初期のリンパ腫を人為に発症させた人工マウスを作製した。そのマウスにおいて、onco miRNAのひとつであるmiRNA-21というmiRNAの発現量を抑制した場合、プレB細胞由来のリンパ腫の消滅が観察された。したがって、onco miRNAの発現量を低下させ、がん細胞を消滅させるという方法は、がんの新たな治療薬の開発手法のひとつとして期待される。

参考文献

  • miRNAの命名・分類についての指針: Victor Ambros, Bonnie Bartel, David P. Bartel, Christopher B. Burge, James C. Carrington, Xuemei Chenand, Gideon Dreyfuss, Sean R. Eddy, Sam Griffiths-Jones, Mhairi Marshall, Marjori Matzke, Gary Ruvkun and Thomas Tuschl (2003) "A uniform system for microRNA annotation", RNA, 9: 277-279. [2]
  • miRNAとsiRNAが関与する過程の報告(サイエンスの同号の他2論文とともに): DavidBaulcombe(2002)"AnRNAMicrocosm",Science,297:2002-2003.[3]
  • miRNAとして初めて発見されたlin-4 の報告: Lee, R.C., Feinbaum, R.L. and Ambros, V. (1993) "The C. elegans heterochronic gene lin-4 encodes small RNAs with antisense complementarity to lin-14", Cell, 75: 843–854. [4] 。なおヴィクター・アンブロス研究室からのmiRNAに関する論文は[5]を見よ。
  • miRNAの機能を阻害するAMOについて: J Weiler, J Hunziker and J Hall Gene Therapy (2006) 13, 496–502 "Anti-miRNA oligonucleotides (AMOs): ammunition to target miRNAs implicated in human disease?。
  • miRNAの発現量異常と細胞のがん化について: Pedro P. Medina, Mona Nolde & Frank J. Slack Nature 467, 86–90 (2010) "OncomiR addiction in an in vivo model of microRNA-21-induced pre-B-cell lymphoma。

外部リンク

  • miRNAデータベース: miRBase

テンプレート:核酸