JR貨物コキ200形貨車
JR貨物コキ200形貨車(JRかもつコキ200がたかしゃ)とは、日本貨物鉄道(JR貨物)が各種海上コンテナ輸送用として2000年(平成12年)度から製作する貨車(コンテナ車)である。
同形車として鹿島臨海鉄道に車籍を有するコキ2000形についてもここで解説する。
概要
濃硫酸・カセイソーダ液などの化成品関連品目は、それぞれ専用のタンク車によって輸送されてきた。車両の構造上最高速度が 75 km/h にとどまり列車の速度向上に支障があること、車両自体の経年も取替えを検討する時期に達したものが増加したことから、JR貨物はこれらの貨車を順次ISO規格 20ft コンテナで置き換える方式を荷主に提案・推進することとし、1996年(平成8年)より ISO 規格タンクコンテナが順次投入された。
ISO 規格 20 ft タンクコンテナの総重量は 24 t に達し、構造上これを1個しか積載できない従来のコンテナ車では積載効率に難があった。当初、ISO 20 ft (24 t) で高さ 9 ft 6 in のハイキューブ(背高)コンテナ2個を積載し、JR線全線で輸送可能とした低床式汎用コンテナ車コキ72形を1996年(平成8年)に試作したが、小径車輪・空気バネ台車など低床式ゆえの特殊構造が導入初期コストに加重することから、量産化は断念された。
低床貨車に頼らないハイキューブコンテナの輸送可能性を確認するため建築限界の調査を実施した結果、主要幹線の多くの区間で物理的にも輸送が可能と判明した。これを受け、コキ100系コンテナ車 と共通の床面高さ 1,000 mm で ISO 20 ft (24 t) コンテナ2個を積載可能として開発された車両がコキ200形である。タンク車をタンクコンテナ輸送に直接置き換えるための私有貨車として計画された同形車コキ2000形とともに2000年(平成12年)に試作された。コキ200形は翌2001年(平成13年)から2005年(平成17年)まで量産され、車扱が主体であった化成品貨物輸送のコンテナ化が進展している。
構造
台枠は従来のコンテナ車と同様な魚腹形側梁で、床面高さはコキ100系と同一の 1,000 mm である。車体の一端に手すりとデッキ、昇降用ステップを有する。「突放禁止」扱いとされ、手ブレーキは留置専用であるが、コキ100系と異なり操作ハンドルはデッキ手すりにある。外部塗色は赤、台車は灰色である。
軽量化のため、車体長は 20 ft コンテナ2個が積載可能な極限まで短縮され、連結面間隔は 15 m 級、自重は 16.9 t に抑えている。荷重は 48.0 t で、ISO 20 ft (24 t) コンテナ2個が積載可能である。ほか、ISO 20 ft (30.48 t) および ISO 40 ft (30.48 t) は1個積載可能である。12 ft コンテナは緊締装置がないため積載できない。高さ 8 ft 6 in までのコンテナは全域で積載ができ、高さ 9 ft 6 in までの背高コンテナも一部区間に限定して積載可能である。
台車は新形の FT3 形で、コキ106形の FT2 形台車を基本に軸距を拡大し、軸受を重荷重対応の大型のものに変更した。コイルバネ2組の枕バネは FT2 と同様であるが、FT3 では軸ゴムとシェブロンゴムの軸箱支持装置にバネ定数切り替え構造を採用している。空車時は軸ゴムと台車枠は接触せず、シェブロンゴムのみが荷重負担して柔軟な軸バネとして機能し、輪重抜けを回避する。大荷重時はシェブロンゴムの変形により軸ゴムと台車枠が接触して、FT2 と同様の機能となる。台枠強度を確保しつつ床面を下げるため、車輪径は 810 mm に小型化された。
ブレーキ装置は CLE 方式(応荷重式電磁自動空気ブレーキ)で、荷重を感知する測重機構は従来の油圧式から空気式に変更された。基礎ブレーキ装置はユニットブレーキとされた。これは1991年(平成3年)製作のデュアルモードトレーラー (DMT) 試作車ワ100形 で採用されたもので、日本国内で実用された貨車では初の採用である。最高速度は 110 km/h である。
形式別概要
- コキ200形
- 2000年(平成12年)から2005年(平成17年)までに153両 (1 - 154) が製作された。コキ200-1は量産先行車で、側梁の形状が異なる。
- 2001年(平成13年)以降製 (45 - ) は、留置ブレーキ動作時に車側に表示板が突き出す手ブレーキ緊解表示装置が設置されている。
- コキ2000形
- 2001年(平成13年)に2両が製作された。車籍は鹿島臨海鉄道にあり、JR貨物以外の鉄道事業者に籍を置く唯一のコンテナ車である。JR線への乗り入れ承認[1]を受け、JR線への直通運用が可能である。
- コキ200形と基本仕様・積載設備は同仕様である。側梁の形状は2両とも異なり、1は量産先行車と同一、2は製造会社が異なるためさらに構造が異なる。
- 2004年に除籍されている。
脚注
参考文献
- 電気車研究会 『鉄道ピクトリアル』 2000年1月号 No.680 特集:貨物輸送
- 交友社 『鉄道ファン』 2002年7月号 No.495 特集:コンテナ特急
- 鉄道ジャーナル社 『鉄道ジャーナル』 2005年5月号 No.463 特集:鉄道貨物輸送の現状
関連項目
テンプレート:JR貨物の車両リスト- ↑ いわゆる「社車」と呼称されるもので、JR移行後では平成初期までJR線に乗り入れていた東武鉄道トキ1形の事例があった。