食変光星
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食変光星(しょくへんこうせい)とは、共通重心の周りを回る2つの星が互いの光を覆い隠し合うことによって、みかけの明るさ(2星の合成光度)が変わるタイプの変光星である。そのため、食変光星は必ず連星系を形成している。また、地球から見てこの連星系が食変光星に見えるためには、2つの星の軌道面が、地球と連星系とを結んだ直線を含む平面の近くに存在する必要がある。一般的に、恒星自身の明るさは変わらず、規則的に変光するのが特徴である(ただし、後述するカシオペヤ座RZ星のように、連星系の一方が脈動変光星の場合はこの限りではない)。なお、「食変光星」は変光星としての分類であり、連星の分類として食連星(しょくれんせい)と呼ばれることもある。
目次
食変光星の分類
1981年までに変光星総合カタログ (GCVS) に登録された2万8435個の変光星のうち、食変光星は5022個 (18%) を占めていた[1]。食変光星内部での分類には、
- 光度曲線による分類
- ロシュ・ローブと星の相対的な大きさによるコパールの分類
- 連星系を構成する星の特徴による分類
の3つの方法を多元的に組み合わせたものが使われている[1]。
光度曲線による分類
アルゴル型、こと座β型、おおぐま座W型の3つに分類される。
- アルゴル型 (EA)
- 食のとき以外は大きな光度変化が起こらない型で、平常光度ははっきりしているのが特徴。この型の連星系は、星同士が比較的離れている。
- こと座β型 (EB)
- 星の表面の明るさが一定ではなく、アルゴル型のような平常光度は存在しない。連星がかなり接近しているため潮汐力によって星の形が楕円になっていることや、片方の星がもう片方の星を照らす反射効果が起こることがその理由である。このタイプの変光星を Lyrid ともいう。
- おおぐま座W型 (EW)
- 同じくらいの大きさの星による接触した連星系で、星は完全に楕円形になっていて共通の大気を持っている。主極小と副極小の差が小さく、滑らかに光度変化をし、食と食外の区別がはっきりしない。また、短周期(1日以下)の星が多い型である。
ロシュ・ローブと星の相対的な大きさによるコパールの分類
分離型(D)、半分離型(SD)、接触型(K)の3つに分類される。
- 分離型 (D)
- 連星を構成する2つの恒星が、いずれもロシュ・ローブの内側に存在する。
- 半分離型 (SD)
- 連星を構成する恒星の片方がロシュ・ローブを満たしており、もう一方は満たしていない。
- 接触型 (K)
- 連星を構成する恒星が双方ともロシュ・ローブを満たしている。
連星系を構成する星の特徴による分類
特徴的な5つの組み合わせのみが型として設定されている。いずれにも属さない食変光星は「光度曲線による分類」及び「ロシュ・ローブと星の相対的な大きさによるコパールの分類」の2つの分類法によって分類する。
- GS
- 1つまたは両方の成分星が巨星・輝巨星または超巨星の型。
- PN
- 成分星に惑星状星雲の中心星を含む型。
- RS
- 回転変光星のRS型のうち食変光が見られる型。食外で正弦曲線のような光度変化があり、その原因が成分星の黒点活動によるものである。
- WD
- 成分星に白色矮星を含む型。
- WR
- 成分星にウォルフ・ライエ星を含む型。
主な食変光星
- アルゴル(ペルセウス座β星) -- 2.867日の周期で2.12等~3.39等の範囲を変光する。
- こと座β星 -- 12.9075日の周期で3.4~4.6等の範囲を変光する。
- カシオペヤ座RZ星 -- 1.195日の周期で6.18等~7.72等の範囲を変光する。主星は脈動変光星でもある。
- ぎょしゃ座ε星 -- 約9,892日(27.1年)の周期で3.0等~3.8等の範囲を変光する。