防火帯
テンプレート:出典の明記 防火帯(ぼうかたい、英語:firebreak)とは、防災上設けられる、可燃物が無い、延焼被害を食い止めるための帯状の地域である。
この場合の可燃物とは、森林なら樹木、住宅市街地なら家屋等の建造物であり、化学プラントにおいてはパイプラインや原料タンク等が相当する。
主な防火帯の例
- 大規模な森林火災の際は、火勢が強過ぎて消火活動が追い付かない場合も多いため、あらかじめ防火活動の一環として延焼が予想される地域の樹木を伐採する。公益的に見て必要な場合は、森林法で定められている防火保安林として管理されることがある。こうした場所では、必要に応じて帯状に散水して延焼を防止することもある。
- 日本の江戸時代において、喧嘩と並んで華とされた江戸の火事では、当時の消防隊である火消しが行った消火活動は、まだ無傷の家屋の屋根に上って火の粉を払って延焼を食い止めるか、延焼中の家屋を引き倒して防火帯とし、隣家への延焼被害を食い止めると云う物が主であった。
- 化学プラント等の防火帯においてはスプリンクラー設備などの防火・冷却設備等を備えた側溝が設計工事段階から設けられ、火災発生時には延焼を防ぐと共に、原料などが加熱して爆発したり有毒ガスが発生しないよう、設備を冷却するという、文字通り「火を防ぐ」積極的な機能を持っている物もある。
- 太平洋戦争期の日本の大都市では空襲による火災が市街地全体へ延焼することを防ぐため建物疎開と言う名目で防火帯が整備された。実際の空襲では防火帯をまたいで焼夷弾が降り注ぐため効果が薄かったが、戦後は防火帯として整備された用地を活用して広島市の平和大通り、京都市の御池通、五条通及び堀川通などの広幅員道路が整備された。。
防災計画と防火帯
都市計画においては、災害時には広域避難所を兼ねた、平時には公園として利用される敷地を配して、この防火帯とする事もある。 このような公園兼用の防火帯には防災倉庫など救援物資が備蓄された倉庫などが設置されており、一部では災害時の住民防災活動や炊き出しなどの活動が行なえるよう配慮されている。
また化学プラントのように、安全上の基準から防災設備の一つとして、設計・施行段階から用意されることもあり、これらの多くは能動的な延焼防止の工夫が施され、被害の拡大を最小限に食い止める機能を持っている。
防火建築帯
街の防火を目的に、1952年(昭和27年)、耐火建築促進法が法律第160号で施行され、この法に基づく防火建築帯造成事業が開始される。都市の中心部に地上3階以上、 高さ11メートル以上の耐火建築物が帯状に建設された防火帯を作ろうという目的で、防火建築帯は長屋形式の共同商店建築を成していた。都市の不燃化のみならず、共同化による都市の高度利用をも目的とし、日本の市街地改造の系譜の中で初期の試みという位置づけがなされている。鳥取大火の復興に初めて適用され、3327m の防火建築帯が造成された。防火建築帯造成事業は制定後各地の大火復興で用いられ、1953年の大火の復興にあたって893mの防火建築帯を造成した大館市では、1956年の大火でその効果を発揮した。大阪などでは大阪における集合住宅形成史005にあるとおり、中高層建築物融資と併存住宅について 耐火建築・都市の不燃化を促進をすすめた。
耐火建築促進法による防火建築帯はその後、1957年(昭和32年)に制度化された住宅金融公庫の中高層耐火建築物に対する融資とともに吸収発展し、1961年(昭和36年)防災建築街区造成法に引き継がれ、これに基づく防災建築街区造成事業が開始される。ここからこうした事業は帯状の線的な開発から面的な開発へ移行し、市街地改造法とともにその後法整備が行われ、1969年にはこれらが統合されるかたちで都市再開発法(法定再開発)が施行され、現在に至っている。
参考文献
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- 大阪市防火建築帯図 建築と社会 33(12), 1952年12月号
- 村井 進 防火建築帯造成の計画まで 新都市 6(5), 14-17, 1952年5月号
- 東京都防火建築帯指定図 (1953年) 東京都建築局 東京復興土地住宅協会
(各地のおもな防災不燃化事業)
- 和歌山都市計画事業、復興土地区画整理事業 準防火地域 - 和歌山市
- 柏駅駅前商店街耐火建築商店街(昭和31年~36年) - 柏市
- 末広町防火建築帯(昭和30年~32年) - 高岡市
- 魚津火災復興土地区画整理事業(昭和32年) - 魚津市
- 防火建築帯造成事業(昭和35年) - 射水市
- 防火建築帯造成事業(昭和35年度完了) - 浜松市
- 防火建築帯造成事業(昭和36年度完了) - 磐田市
- 高岡駅南ビル防火建築帯(昭和36年) - 高岡市
- 耐火建築促進事業(昭和38年度完了)、防災建築街区造成事業A(昭和46年度完了年) - 静岡市
- 水戸駅前第一防災街区造成事業(昭和44年度完了年) - 水戸市
- 氷見市中央町防災建築街区造成事業(昭和47年) - 氷見市
- 下町火災復興土地区画整理事業(昭和48年) - 黒部市
- 中央通り防災建築街区造成事業 - 小矢部市
- 上市町西中町第1種市街地再開発事業 - 上市町
- 高岡駅南土地区画整理事業(昭和50年) - 高岡市
- 本町防災建築街区造成事業(昭和50年度完了年) - 和歌山市
- 防火建築街区造成事業(昭和54年度完了年) - 伊東市
- 防災建築街区造成事業(昭和51年)出町地区土地区画整理事業 - 砺波市
- 和歌山都市計画新南第二地区区画整理事業 - 和歌山市
- 仙台市清水小路多賀城線新寺小路地区都市防災不燃化促進事業(平成3年度完了)
- 鹿島神宮駅周辺北、東山地区(平成8年) - 鹿嶋市
- JR潮来駅東側あやめ東地区(平成8年) - 潮来市
- 高岡駅前ビル建設事業(平成13年) - 高岡市
- 仙台市国道45号小田原地区都市防災不燃化促進事業(平成9~平成25年度事業中)
- 牛久駅西口地区第一種市街地再開発事業・牛久駅東・牛久北部 - 牛久市
- 伊奈・谷和原丘陵部一体型特定土地区画整理事業 - つくばみらい市・水海道都市計画事業分、伊奈都市計画事業分
- 守谷駅周辺一体型土地区画整理事業 - 守谷市
- 条例立案の資料送付等について 東京都
- 都市再開発史 - “不燃化運動”といわれる時代の防火帯建築は全国83都市、延べ間口長さ約40キロメートル に
- 横浜B級観光ガイド 横浜戦後復興の残照 防火建築帯 寿町 真金町 遊郭
- 事務所見学と関内外再考 - 横浜国立大学建築学教室
- 横浜都心戦災復興まちづくりをどう評価するか - まちもり通信G版 -
- 関内再生デザイン研究会(第一回) 一般社団法人住まい・まちづくり担い手支援機構 - 街なか居住のモデルとなる「まちづくり市民事業」による防火建築帯の再生
- 40年目の立売堀-防火建築帯は健在(建築家の先輩への手紙)
- 防災建築街区再生支援制度の研究-富山県氷見市中央町を例として
- 平成19年度都市再生研究助成事業に係る研究報告