重金属
重金属(じゅうきんぞく、英語:heavy metals)とは、比重が4~5以上の金属元素のことである。一般的には鉄以上の比重を持つ金属の総称。対語は軽金属。基本的には、アルカリ金属とアルカリ土類金属を除くほとんどの金属が重金属に該当する。銅や鉛のような製錬が技術的に容易な金属が重金属であったため、人類の歴史上、比較的早くから用いられた。
重金属という分類は比重のみによる分類のため、非常に雑多な化学的性質・物理的性質を持った金属の寄せ集めである。このため、工業的に大量生産・消費される金属や、レアメタルなど産業上重要な価値を持つ金属、生物に必須の金属や逆に毒性の強い金属など、その内容は非常に多様である。
重金属と公害
20世紀にはいり、各種の鉱工業がさかんになると、鉱山や工場などからの廃液により人体に重金属が蓄積されて重度の障害をひきおこす公害病が多発した。産業廃棄物などから排出される重金属もまた、しばしば水源や土壌などの環境中に濃集して公害の原因となっている。代表的なものに、足尾銅山の鉱毒による被害、メチル水銀が引き起こした水俣病、カドミウムによるイタイイタイ病がある。
農業においても、第二次世界大戦後に有機水銀化合物が殺虫剤として大量に使用されたが、今日では環境への悪影響が指摘され、使用禁止となっている。
これらの諸問題より、ある一定量を超えた重金属は、一般に、生物に対し毒性をもつという考えが浸透した。ただし、毒性の強い重金属であっても、微量では生体必須元素として機能するものがある。また、人類は体内に取り込んでしまった重金属を、毛髪に蓄積して排出するシステムを備えていることが確認されている。
代表的な重金属
鉄、鉛、金、白金、銀、銅、クロム、カドミウム、水銀、亜鉛、ヒ素、マンガン、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、錫、ビスマス、ウラン、プルトニウムなどが挙げられる。
ただし、金、銀、白金族元素などは重金属というよりも貴金属として別枠で扱う傾向にある。これは他の重金属と比較して単位あたりの価格が非常に高いこと、またイオンとして溶け出すことが少ないためである。また、ウランやプルトニウム等の放射性元素も貴金属同様重金属とは別枠で扱う傾向にある。これは化学的毒性より放射能による毒性の方がより問題になることと、原子力関連以外の用途があまりないためである。