超臨界流体

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代表的な相図。臨界点は図中のcritical pointにあたる。緑と青の線に挟まれたliquid phaseは液相、赤と青の線より下のgaseous phaseは気相、右上のsupercritical fluid超臨界流体を表す。

超臨界流体(ちょうりんかいりゅうたい、英語:supercritical fluid)とは、臨界点以上の温度圧力下においた物質の状態のこと。気体液体の区別がつかない状態といわれ、気体の拡散性と、液体の溶解性を持つ。

なお、原子力工学で扱う「臨界状態」は、全く意味を異にするので注意が必要である。

溶媒の臨界
溶媒 分子量 臨界温度 臨界圧力 密度
g/mol K MPa (atm) g/cm3
二酸化炭素 44.01 304.1 7.38 (72.8) 0.469
18.02 647.3 22.12 (218.3) 0.348
メタン 16.04 190.4 4.60 (45.4) 0.162
エタン 30.07 305.3 4.87 (48.1) 0.203
プロパン 44.09 369.8 4.25 (41.9) 0.217
エチレン 28.05 282.4 5.04 (49.7) 0.215
プロピレン 42.08 364.9 4.60 (45.4) 0.232
メタノール 32.04 512.6 8.09 (79.8) 0.272
エタノール 46.07 513.9 6.14 (60.6) 0.276
アセトン 58.08 508.1 4.70 (46.4) 0.278

用途

超臨界流体としてよく使用される物質は、二酸化炭素である。

超臨界流体のは酸化力がきわめて高いため、腐食しにくいといわれているハステロイ白金イリジウム合金、さらにタンタルまでもが腐食する。安定な物質であるセルロースダイオキシンPCB超臨界水中では分解するといわれている。酸化力が極めて高いがゆえに使いづらいケースも多く、その場合は亜臨界水を用いる。

また、超臨界流体の二酸化炭素は、様々な物質をよく溶解する。目的物を溶解した超臨界二酸化炭素を臨界点以下にすると、二酸化炭素は気化するので、後には溶質のみが残る。気化した二酸化炭素は回収して再利用が可能である。このプロセスは実際にコーヒー脱カフェインなどに使用されている。

以上のように、超臨界流体を使用したプロセスは従来の重金属強酸などの触媒を使ったプロセスや可燃性毒性のある溶媒をこのプロセスに置き換えることで、環境に対する影響を低減させる特徴を持つ。また、ダイオキシンに代表される有害物質の分解にも使用可能である。そのため、グリーンサスティナブルケミストリーの視点から注目を集めている。ただし、高温高圧の条件が必須であるため、装置は高圧ガス保安法の適用を受ける場合が多い。また、溶解性や反応性が高いため、容器やシールの材質にも配慮が必要である。以上の理由から、超臨界流体関係装置の容積は必ずしも大きくない。

火力発電では、作動流体である水蒸気の圧力及び温度は、高ければ高いほど発電所一基当たりの熱効率が高くなる。このため、ボイラーに貫流ボイラーを使用し、発生する蒸気の圧力・温度を水の臨界圧以上に高めた超臨界流体が使われている。そのような発電技術を超臨界圧(Super Critical: SC)、又は超超臨界圧(Ultra Super Critical: USC)と呼び、2013年における最新式の石炭火力発電プラントで実用化されている。

関連項目

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