調理師

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調理師(ちょうりし)または、料理人(りょうりにん)、シェフテンプレート:Lang-fr-short)とは、専門家として、食材を調理し人々に振舞う職業である。

概要

調理師(ちょうりし)は、食品の調理技術の合理的な発達を図り、もって国民の食生活の向上に資することを目的とするための日本独自の国家資格であり、名称独占資格(有資格者以外はその名称を名乗れない資格)である。

シェフ (テンプレート:Lang-fr-short) やコック (テンプレート:Lang-da-short) とも呼ばれる。特にシェフは、厨房での他の料理人を統括する、一人しかいない最上位の料理人を示す。

名称について

「シェフ」(ラテン語のcaput より)という言葉は、厨房の「チーフ」または「リーダー」を意味するフランス語の「chef de cuisine」(料理の頭)を省略したものである。料理人におけるシェフという肩書きは、19世紀の高級料理の源流から始まった。英語の「chef」は、階級に関わらず、プロの料理人すべてを意味するために使用されるようになった。

調理師(調理士)は、資格を持つ料理人を呼ぶ名称である。

日本料理においては、料理人は特に板前、その最上位は花板と呼ばれる。

日本の宮内庁管理部大膳課の料理人の場合、主厨、厨司、厨司補、厨丁といった役職が置かれている[1]。また、かつての日本海軍では、時代によって様々であるが、調理担当の下士(官)の官名として、主厨、主帳、厨宰及び主計兵曹といったものが、また調理担当の卒・准卒の職名として、厨宰、厨宰介、割烹手、厨夫、主厨及び主計兵などといったものが用いられていた(詳細は日本軍の階級参照。)。

シェフの様々な役職

テンプレート:Main 厨房で働く料理人の様々な役職を以下に示す。これらは、シェフの種類と考えることもできる。レストランはそれぞれ独自の組織方針を持つため、全ての役職が使われないことがある。専門シェフおよび階層的役職は、高級レストランにのみ見られる。ダイナーのようなカジュアルレストランの厨房の従業員は「コック」と呼ばれる[2]

シェフ・ド・キュイジーヌ

シェフ・ド・キュイジーヌは、総料理長の役職を示す名称である。これは英語の「シェフ」が由来する伝統的なフランスの名称であり、古典的なフランス料理の役職システムを使用するヨーロッパの厨房およびアメリカ州の厨房で一般的である。この役職は、いくつかのレストランでは、店舗の料理長(コック長)を示す。複数店舗を営業する法人には、総料理長の役職がある[3]

スー・シェフ

スー・シェフは、総料理長を直接補佐する2番目の管理者である。スケジュールで総料理長が不在のときに、代替する責任をもつ。スー・シェフはまた必要な場合、シェフ・ド・パルティ(部門シェフ)を代替または支援する。小規模のレストランはスー・シェフを持たず、大規模店舗は複数人はいることもある[3]

エクスペダイター(アボイエ)

エクスペダイターは、客席から注文を受けて、厨房に受け渡す。また、客席に供する前の料理に最後の仕上げをすることもある。いくつかのレストランではこの業務を総料理長またはスー・シェフが行うことがある。[4]

シェフ・ド・パルティ

シェフ・ド・パルティは「部門シェフ」とも呼ばれ、特定の料理部門を担当する。大きな厨房では、各部門に数名のコックと助手がいる。しかしながら、多くの厨房では部門シェフは店舗で1名である。部門シェフは更に、必要に応じて、「第1コック」「第2コック」のような独自の階層を持つ。

ブリゲードの一部である部門シェフの役職[5]
ソーシエ:ソテー料理の責任者である。通常、部門で最高の役職である。
ポワソニエ:魚料理を調理。魚の切り分けとソース作り全てを行うこともある。ソーシエが兼任することがある。
ロティシエール:焙りもの、または油で炒め煮込んだの調理と、ソースを準備する。
グリラーダン:直火焼き料理を調理する。この役職は ロティシエールと兼ねることがある。
フリティリエ:揚げもの料理を調理する。この役職は ロティシエールと兼ねることがある。
アントルメティエ:前菜を調理する。スープ、野菜、パスタおよびスターチを調理することもある。完全なブリゲードではポタジエがスープを、レギュミエが野菜を調理する。
トゥルナン:一箇所に留まらない渡りの料理人を呼ぶ。厨房で必要な仕事を補う。
ガルド・マンジェ:冷たい料理、サラダ、冷前菜パテおよびシャルキトリー (Charcuterie) の調理担当である。
ブーシェ:肉、家禽、および時々を切り分ける。肉や魚にパン粉をまぶす担当でもある。
パティシエ:焼き菓子、ペストリーパイタルトの総称)、デザートを調理する。大きなレストランでは、パティシエが個別の厨房または店舗のチームを監督する。

コミ

コミは、大きなレストランでシェフ・ド・パルティの下で働くアプランティであり、部門の担当と業務を学習する[4]。正式な料理修行の完了直後、または修行中の見習いである[6]

ヨーロッパ修行

修行期間は、通常4年間であり、1年コミ、2年コミと続く。給料は通常、修行の状態による。コミ・シェフは、通常厨房の各部門(例えば、アントレー部門)に配置され、シェフ・ド・パルティの指示に従い、比較的基本的な仕事が課せられる。理想的には、修行期間中、厨房の各部門で基本を学ぶための期間を過ごす。コミは、助けもなく、厨房の野菜部門で働くかもしれない[7]

料理学校では、料理人の正式な訓練期間は2年間である。夏には研修を行うことがある。いくつかの場合、これは「日解放」コースとすることがある。アプランティとして厨房で1日中働き、続くオフは料理学校に出席する。このコースは1年から3年続く。4年間の修行を完了すると、通常はデミ・シェフ・ド・パルティまたはシェフ・ド・パルティとなる[8]

厨房助手

厨房助手は、基本作業を支援する厨房の従業員であるが、料理の正式な訓練をしていない。作業は、例えばジャガイモの皮むきやサラダの水洗いである。小さな厨房では、より一般的に厨房助手には(皿洗いを含む)幅広い様々な仕事が、コストを抑えるために課せられる[4]

コミュナーは、従業員がシフトする際の食事を調理することを担当する[4]

皿洗いは、(15世紀のフランスから)皿を管理し、皿と厨房を清潔に保つ担当である。

シェフの制服(Chef's uniform

ファイル:William Orpen Le Chef de l'Hôtel Chatham, Paris.jpg
ウィリアム・オーペン、『パリ、チャタムホテルのシェフ』

シェフの標準の制服は次のとおりである[9][10]

コック帽は、頭が蒸れないように考慮して高く(高さは役職ごとに差があり、総料理長が最も高い)、頂部はメッシュで抜けており熱を外に出す。また通常汗が落ちるのを防ぐ。スカルキャップ(縁なし帽)は、シェフが代わりにかぶる帽子である。ネクタイは元来、顔の汗拭きを考慮して身につけたが、現在は健康と安全(衛生)に反するため、装飾的である[11]

上着は通常、熱を避けるために白く、火や熱湯によるやけどを避けるため、ダブル仕立てである。また、ダブルの襟は、半面が片方でボタン止めできるため、ジャケットの染みを隠すために役立つ。エプロンは膝下の長さで着て、こぼした際のやけどを防止する。この安全面は、熱湯がエプロンにこぼされた場合、それを素早く取り去ることで、やけどを最小限にとどめることである。靴は爪先に鉄のカップが入っており、物やナイフの落下による負傷を予防する。衛生規則により、結婚指輪を除き、宝石類は許されない。

日本の資格

国家資格としての調理師(ちょうりし)とは、調理師法に基づいて都道府県知事が行う調理師試験に合格し、都道府県に備え付けの調理師名簿に登録された者である。名称独占資格であり、調理師でないものが調理師と称すると罰金30万円以下の刑に処される。調理師は調理師会の正会員に入会することができる。入会するか否かは任意である。

概要

調理師試験の試験科目は食文化概論、衛生法規、栄養学、食品学、公衆衛生学、食品衛生学、調理理論の7科目。調理師試験に合格し登録されると調理師免許証が交付される。免許の効力そのものは都道府県の調理師名簿に名前が登録されることで発効する。

調理師試験の合格者以外にも、学校教育法第57条に規定する者で、厚生労働大臣が指定した調理師養成施設を卒業した者には、無試験で調理師免許が与えられる。これは試験の合格によらず、名簿に登録される資格を有するということだが、登録申請は養成施設の修了時に一括して行うことが多い。ただし申請するか否かは修了生次第である。

調理師の「上位の資格」として社団法人調理技術技能センターの実施する調理技術技能評価試験(調理に係る技術審査試験及び技能検定試験)合格者に対する専門調理師・調理技能士厚生労働省認定)がある。

調理師またはこれ以上の資格(栄養士管理栄養士等)があれば、都道府県の条例により養成講習を受けることなく食品衛生責任者となることができる。

地方自治体の食品営業許可を取得している飲食店には、食品衛生責任者が必ずひとりは必要である。もしその飲食店が食中毒患者を出した場合、保健所長により飲食店は営業停止処分を命ぜられる。またその際に都道府県知事により食品衛生責任者たる調理師の免許を取り消される場合がある。調理師免許の取り消しを受けると、確定の日から1年間は欠格期間となり、その間、免許を受けることができない(調理師法第4条、第6条第2号)。この場合、免許(登録)が取り消されるだけであり、試験の合格まで消される訳ではない。よって再度調理師試験を受ける必要はなく、期間満了後、再免許を申請すればよい。

調理師は名称独占資格であり、調理師にのみ可能な業務というのは存在しない。飲食店を開業する際に必要なのは食品衛生責任者資格である。病院など一定以上の規模を持つ給食施設で設置を推奨されているのは栄養士あるいは管理栄養士で、実際は栄養士あるいは管理栄養士がいなくても献立を毎月医師に提出してチェックしてもらうだけでよい。調理師は栄養士の必要がない規模の給食施設、飲食店において「設置するよう努めなくてはならない」という努力義務規定が存在するだけなので、調理師にのみ許された権利「調理師」を名乗ることのみとなる。

なお、フグを調理する場合にはふぐ調理師免許が、船舶の食堂施設においては船舶料理士免許が必要であり、これらの資格は調理師免許とは区別されているので注意が必要である。

類似の資格としてパン菓子などを作る製菓衛生師免許がある。

調理師試験の受験資格

基礎資格のいずれか一つを有し、以下に定める調理業務経験を有する者

  • 基礎資格
    • 中学校卒業者
    • 小学校卒業者で5年以上の調理業務経験者(※下記2年を含め通算5年以上)
    • 旧制国民学校高等科修了者、旧制中学校2年課程修了者
    • 厚生労働大臣が認定した者
      • 在日外国人学校のうち日本の中学校に相当する課程の修了者であって厚生労働大臣が認定した者
  • 調理業務経験
    • 学校病院などの給食施設(1日20食以上を継続し、又は50食以上調理することが1日でもある施設)、飲食店(旅館簡易宿泊所を含む)、惣菜製造業、魚介類販売業で2年以上の調理業務経験者。

試験

原則として年1回、各都道府県ごとに行われる。しかし調理師の資質向上、機会公平の観点から、試験日程・試験問題の統一が議論されるようになり、下記の府県については試験実施機関に委託、あるいは広域連合にて実施されるようになった。近い将来、全国統一日程、同一問題となる見込み。

 (青森県宮城県山形県茨城県埼玉県東京都富山県香川県高知県福岡県)

 (滋賀県京都府大阪府兵庫県和歌山県徳島県)

脚注

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文献

関連項目

テンプレート:Sister

資格関連

外部リンク

  • テンプレート:Cite book
  • Dellanno
  • 3.0 3.1 McBride, 8.
  • 4.0 4.1 4.2 4.3 McBride, 9.
  • McBride, 8-9
  • [1]bbc.co.uk/food
  • [2]learndirect.co.uk - chef training options
  • [3]info on kitchen hierarchy
  • [4]content4reprint.com - importance of uniform cleanliness
  • [5]sunculinary.com - chef jackets designs and colours
  • [6]chefolio.com