詞
詞(し)は、中国における韻文形式の一つ、あるいは歌謡文芸の一つ。
宋代に隆盛したので宋詞(そうし)ともいう。唐・五代では曲・雑曲・曲子詞(きょくしし)とも呼ばれた。また詩に対して詩余(しよ)とも言われ、長短不揃いの句で構成されることから長短句(ちょうたんく)ともいう。曲に合わせて詞が書かれたので、詞を埋めるという意味で填詞(てんし)、音楽に合わせるという意味で倚声(いせい)とも言われる。日本語では詩(し)と同音であるため、区別しやすく中国語音からツーと呼ばれることがある。
後代には音楽に合わせて作られるのではなく、前人の作品の平仄に合わせて作られるようになったため、詩と同様、朗読される詩歌の一種となった。
詞調に合わせて詞が作られるが、詞調ごとに形式が決められており、例えば「憶江南」では、句の字数が3・5・7・7・5、押韻が2・4・5句目と決められている。
題名
詞調には特定の名称が決められており、これを詞牌(しはい)という。詞の題名には詞牌が使われており、詩のように内容による題はつけられない。その代わり、詞牌の下に詞題が添えられたり、小序が作られた。ただし、後代には内容による詞題が設けられることもあった。
詞牌の数
詞牌の数は、清の康熙帝勅撰の『詞譜』によると、826調、同一詞牌で形式の異なる「同調異体」を数えると2306体に登る。このうち詞牌は100調くらいであったという。最も短いのは「竹枝」の14字、長いのは「鶯啼序」の240字である。
歴史的背景
唐代、西域から新しい音楽(胡楽)が流入すると、従来の音楽体系が大きく変化した。このようにしてできた音楽に合わせて作られた歌詞が詞の由来である。その来源には宮中の燕楽や民間の通俗音楽にいたるいくつかがあると考えられる。
後代、曲や楽譜の伝承が途絶えると、その平仄や句式を基準にして作られた。
詞の分類
詞の分類方法にはいくつかがある。字数による分類によると、
- 小令 - 60字ぐらいまでの短編
- 慢詞 - それ以上の長編
宋初までは小令がほとんどであった。後代、
- 小令 - 58字以内
- 中調 - 59字から90字
- 長調 - 91字以上
という分類がされたが、何か根拠となるようなものがあるわけではなく、単なる分類の目安である。
また段落の数により、
- 単調 - 分段されない小令。「漁歌子」「搗練子」「調笑令」「如夢令」など。
- 双調 - 上下2闋(ケツ、詞の段落)。小令・中調・長調いずれもある。「菩薩蛮」「西江月」「満江紅」「蝶恋花」など。
- 三畳 - 3闋。「蘭陵王」など。
- 四畳 - 4闋。「鶯啼序」。