米国聖公会
米国聖公会(べいこくせいこうかい Episcopal Church in the United States of America)は、キリスト教の一派のアングリカン・コミュニオンのひとつ。アメリカ合衆国、バージン諸島、ハイチ、台湾、コロンビア、ドミニカ国、エクアドル、ホンジュラスに主教区を持つほか、プエルトリコおよびベネズエラの主教区と地域を越えた関係にある。しばしばEpiscopal Church in the USA、略称ECUSAと言及される。
米国聖公会の団体としての正式名称は "The Domestic and Foreign Missionary Society of the Protestant Episcopal Church in the United States of America"であるが、この名称が教会としての米国聖公会に言及されるときに使われることはない。
歴史
18世紀にアメリカ合衆国がイギリスから独立すると創設された。アメリカ独立戦争以前はイングランド国教会の一部であり、聖職者は就任にあたりイギリス国王の承認を得る必要があった。コネチカット州の聖職者がサミュエル・シーバリーを主教に選出したとき、シーバリーはイングランドで主教按手を求めたが、それはイギリス国王との関係から困難であることが判明した。そこでスコットランドへ行き、当時国家から迫害されていたスコットランドの主教たちによりアバディーンで主教に任ぜられた。これは1784年11月14日のことで、このとき初めてイギリス諸島以外に任命された聖公会主教が誕生した。
米国聖公会の初代主教はスコットランド聖公会により主教に任命された。このため米国聖公会は、スコットランド聖公会を通じた使徒継承を主張している。スコットランドとの関係を示すため、米国聖公会の紋章にはスコットランドのセント・アンドルー・クロスをかたどった意匠が使われている。
アメリカ福音ルター派教会と完全相互陪餐の関係にある。
特徴
米国における教会員はおよそ300万人である。富裕層や社会上層部に信者が多く、歴代のアメリカ合衆国大統領の1/4、アメリカ合衆国最高裁判所長官の1/4は米国聖公会の信者である。またアメリカ合衆国議会と合衆国最高裁判所判事の約半分が信者である。ただし、近年では社会的影響力を付けてきたヒスパニック移民の信者も増加傾向にある。
強いリベラル寄りの姿勢
また、カトリック系をも含めた全てのキリスト教諸教派の中で最もリベラル寄りだとする評価もあり、実際、アメリカにおけるキリスト教系団体としては珍しく、中絶と同性愛を公認している。また、2007年現在における首座主教が女性(キャサリン・ジェファーツショーリ)である点も極めて異色であり、他の保守的なキリスト教団からは批判を受けることもある。
教団勢力の基盤がリベラル寄りの住民が多いアメリカ北東部に置かれていることの影響も大きい。
米国聖公会は1976年に同性愛者が、教会に受け入れられる「神の子供」であると宣言した。また同性愛者が世俗の法律によっても守られるように訴えた。これは1982年にも確認された。1994年には教会籍が、結婚の状態、セックス、性的指向に左右されないと決定した。また同性愛者を異性愛者に治すための治療にも反対する。なお米国聖公会でも同性愛結婚聖別式を行う教会と行わない教会がある。1989年に公然男性同性愛者の司祭ロバート・ウィリアムズはジョン・シェルビー・スポング主教により聖職者按手を受けた。教会は1996年にゲイあるいはレズビアンに聖職者按手を禁止する理由はないと述べた。2003年6月7日、公然同性愛者のジーン・ロビンソンが主教に選ばれた。ロビンソンは2003年12月2日に主教として叙任された。アングリカン・コミュニオンのウィンザー報告書は、2度の離婚歴を持つ公然同性愛者ロビンソンの叙任は画期的な出来事だと述べた。
また、一部が霊魂消滅説を唱えることでも知られる。
使用する聖書について
米国聖公会では独自に公式祈祷書 (Book of Common Prayer, BCP) を発行しており、最近の改定は1979年になされた。 BCP はパブリック・ドメインであるが、その改訂版は公式会議の承認を得るまで著作権保護下におかれる。
米国聖公会は12の英語訳聖書を公式の礼拝で使われる聖書として公認している。
- 欽定訳聖書
- w:Revised Version
- アメリカ標準訳聖書(ASV)
- 改訂標準訳聖書(RSV) 1952年版および1973年の Common Bible
- エルサレム訳聖書
- 新英訳聖書(New English Bible)
- Good News Bible
- 新アメリカ聖書(New American Bible)
- 新国際訳聖書(NIV)
- 新エルサレム聖書(NJB)
- 改訂英訳聖書(Revised English Bible)
- 新改訂標準訳聖書(NRSV)
米国聖公会は3年ごとにThe General Conventionを開いている。最近のものは2009年に開催された。
9つの管区
米国聖公会は9つの管区(Province)を擁している。第8管区(Province 8:カリフォルニア教区、オレゴン教区、アラスカ教区、ハワイ教区など)には、台湾教区(Episcopal Diocese of Taiwan、別名:台湾聖公会、Taiwan Episcopal Church)も属している。
外部リンク
- The Episcopal Church 米国聖公会公式サイト
- Executive Offices of the General Convention 公式会議事務局
- 1979 Book of Common Prayer 1979年版祈祷書