球
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球(きゅう、テンプレート:Lang-en-short)とは、
- まるい形のこと[1]。まるいもの。「たま」「まり」「ボール」とも[1]。
- 野球の略[1]。→野球
- (野球用語)投手が投げた球を数えるための語[1]。「5回なのにすでに100球投げています」など。
- (数学)3次元空間において、1つの定点から一定の距離r 以内にある点の集合[1]。
あえて体や物体としてのそれを言う時は「球体(きゅうたい、テンプレート:Lang-en-short)」と言う。
概説
球とは、まるい形、あるいはまるい形のもののことである。漢語では「球(きゅう)」と言うが、それを大和言葉では「たま」や「まり」などと言う。英語を用いてカタカナで「ボール」とも書く。
球を用いるスポーツを球技と言う。蹴球、水球、野球、排球 等々等々がある。撞球なども球を用いる。
幾何学では、球とは3次元空間において、1つの定点から一定の距離r 以内にある点の集合、と定義されている。
数学
球とは3次元空間において、1つの定点から一定の距離r 以内にある点の集合である[1]。定点を「球の中心」、一定の距離rを「球の半径」と呼ぶ。一定の距離r上の点の集合を「球面」「球の表面」などと呼ぶ。
3次元空間の球
- 球は、半円をその直径を軸として回転させることによって得られる回転体の一種である。
- 球と平面が接するとき、その交わりは平面上の1点となって現れる。この点を球と平面の「接点」、平面を球の「接平面」と呼ぶ。球の中心と接平面の距離は、球の半径に等しい。球の中心と接点を結んだ半径(接点半径)は、接平面と直交する。
- 球と平面が交わるとき、その交わりは平面上の円となって現れる。この円を球と平面の「交円」、平面を球の「割平面」と呼ぶ。球の中心と割平面の距離は、球の半径よりも短い。交円の中心から割平面に立てた垂線を「交円の軸」と呼ぶ。交円の軸は、球の中心を通る。特に、割平面が球の中心を通るとき、交円の半径は最大となり、このときの交円を「大円」と呼ぶ。大円の半径は、球の半径に等しい。球面上を通って、球面上の2点を結ぶ経路の最短は、大円の弧となる。大円以外の交円を「小円」と呼ぶ。割平面により切り取られる球面の一部を「球冠」といい、球冠と割平面によって囲まれた立体を「球欠」と呼ぶ。球欠を囲む交円を「球欠の底面」、底面を成す交円の軸から球欠が切り取る線分の長さを「球欠の高さ」と呼ぶ。割平面が球の中心を通るとき、球冠を「半球面」、球欠を「半球」と呼ぶ。
- 球の中心と小円を結ぶ円錐面によって切り取られる球の一部を「球分」と呼ぶ。また、球面上の閉じた図形の周と球の中心を結ぶ母線によって切り取られる球の一部を、広く「球分」と呼ぶことがある。
- 球と平行な2平面が交わるとき、その交わりは互いに平行な2円となって現れる。2平面にはさまれた球面の一部を「球帯」といい、球帯とこれら2平面によって囲まれた立体を「球台」と呼ぶ。球台を囲む球帯を「球台の側面」、球台を囲む2円を「球台の底面」、底面を隔てる距離を「球台の高さ」と呼ぶ。
- 3次元球の接吻数、すなわち1つの単位球に一度に接することのできる単位球の最大個数は 12 である。
- 3次元球の球面上に、複数の点を平等に配する方法は6種類しかない。すなわち、直径の両端および球に内接する正多面体(5種類)の頂点である。
- 誤って、「球欠」や「球台」のことを「球分」と邦訳した書籍があるので注意。
3次元空間の球の計量
以下、半径を r、表面積を S、体積を V、テンプレート:Π は円周率とする。
- 表面積
- <math>S=4\pi r^2</math>
- 「心 (4) 配 (テンプレート:Π) ごとがある (r) 事情(自乗)」と覚える。
- 証明例1
- 半径 r の球は半円 <math>y=\sqrt{r^2 -x^2}</math> を x 軸周りに回転体である。ある x から x + Δx にかけての微小な表面積 ΔS は
- <math>\Delta S=2\pi y\sqrt{(\Delta x)^2+(\Delta y)^2}=2\pi y\sqrt{1+\left(\frac{\Delta y}{\Delta x}\right)^2}\Delta x</math>
- となる。したがって表面積 S は
- <math>S=2\pi \int_{-r}^r y\sqrt{1+\left( \frac{dy}{dx} \right)^2} \, dx=2\pi \int_{-r}^r \sqrt{r^2-x^2} \sqrt{1+\frac{x^2}{r^2 -x^2}} \, dx=2\pi r\int_{-r}^{r}dx=4\pi r\int_{0}^{r}dx =4\pi r^2</math>
- 証明例2
- カヴァリエリの原理を用いて、球の表面積は、その球が内接する円柱の側面の面積と等しいというものがある。
- 円柱の中心と鉛直に、極限まで薄く断面のスライスをとったとき、スライスの位置を θ(ラジアン)、幅を dθ(ラジアン)、球および円柱の半径を r とすると、球の表面のスライスの面積は rdθ × 2テンプレート:Π(rcos θ)となる。円柱側面のスライスは rdθcos θ × 2テンプレート:Πr となり、これらは等しい。すなわち内接する円柱の側面積に等しい。よって 2r × 2テンプレート:Πr = 4テンプレート:Πr2
- 証明例3
- またこの幅 rdθ のスライスを回転させたものは、円周 2テンプレート:Π(rcos θ) であり、面積は
- <math>2\pi r\cos \theta \cdot rd\theta</math>
- である。これを積分すると
- <math>S=\int_{-\frac{\pi}2}^{\frac{\pi}2} 2\pi (r\cos \theta )\cdot rd\theta
=2\pi r^2 \{ \sin \frac{\pi}2 -\sin (-\frac{\pi}2 )\} =4\pi r^2</math>
- 体積
- <math> V = \frac{4}{3} \pi r^3 </math>
- 「身 (3) の上に (/) 心 (4) 配 (テンプレート:Π) ある (r) 参上(3乗)」と覚える。
- 証明例
- 半球の底面を z = 0 とすると、z 軸と直交する球内の平面の面積 S(z) は半径 <math>\sqrt{r^2-z^2}</math> の円の面積に等しい。したがって S(z) = テンプレート:Π(r2 − z2) であり、半球の体積は
- <math>\frac{V}{2}=\int_{z=0}^{z=r}S(z)dz=\pi\int_0^r(r^2-z^2)dz=\pi\left[r^2z-\frac{z^3}{3}\right]_{0}^{r}=\pi\left(r^3-\frac{r^3}{3}\right)=\frac{2}{3}\pi r^3</math>
- 球の体積は半球の体積の2倍なので
- <math>V=2\times \frac{2}{3}\pi r^3=\frac{4}{3}\pi r^3</math>
- その他の性質
- 球の体積を r で微分すると球の表面積が、逆に球の表面積を積分定数を 0 として r で積分すると球の体積が得られる。
- 球面を微少な面積 δ に分割し、その面積 δ を囲む図形の周と球の中心を結んた球分の体積を、底辺 δ,高さ r の錐で近似すると テンプレート:Sfracδr、それらの総和として V = テンプレート:SfracSr を導くことができる。
n 次元空間の球
- 表面積
- <math>S_n =\frac{2\pi^{n/2}}{\Gamma (n/2)} r^{n-1}</math>
- 体積
- <math>V_n =\frac{\pi^{n/2}}{\Gamma((n/2)+1)} r^n</math>
0次元球は点、1次元球は長さ 2r の線分、2次元球は半径 r の円になる。
2次元球(円)や3次元球(球)と同様、体積を r で微分すれば表面積が、逆に表面積を積分定数を 0 として r で積分すれば体積が得られる。
n 次元単位球の体積は n = 5 のとき、表面積は n = 7 のときにそれぞれ最大値をとり、それ以降は n の増加に伴いどちらも急激に減少して 0 に収束する。