ラジアン
ラジアン(radian, 単位記号: [rad])は、国際単位系 (SI) における角度(平面角)の単位である。円周上でその円の半径と同じ長さの弧を切り取る2本の半径が成す角の値と定義される。極限 <math>\lim_{h\to 0}\frac{\sin h}{h}=1</math> が成り立つことが、角度としてラジアンを用いる本質的理由である。
概要
日本の計量法体系では、ラジアンは「円の半径に等しい長さの弧の中心に対する角度」と定義されている[1]。1ラジアンは度数法では約57.295 78° (180°/π) に相当する。
弧度(こど)とも言い、平面角の大きさをラジアンで測ることを弧度法と呼ぶ。あるいはラジアンで測った平面角を弧度法の角という呼び方をすることもある。ラジアンは、立体角のステラジアンに対応するものである。180° は弧度法においては π rad、360° は 2π rad となる。
ラジアンは本質的に、「弧と半径の長さの比」としての無次元数であり、その意味でしばしば単位 rad は省略されて書かれる。また、circular の略で c という記号が用いられることもあるが、度の記号である「°」と見誤り易い。SI及び計量法 では、ラジアンの記号は rad のみを認めている[2][3]。
定義から、扇形の中心角の大きさを θ ラジアン、半径を r とすると、その扇形の弧の長さ l と面積 S は
- l = rθ
- <math>S=\frac{1}{2} r^2 \theta =\frac{1}{2} rl</math>
となる。
かつてはステラジアンとともに SI の補助単位の一つとされていた。1995年に補助単位は廃止され、ラジアンは次元1(= m·m−1)、すなわち無次元の組立単位として分類されている。
一般的な用途に使われる表計算ソフトなどでも、組み込み関数は度数法ではなく弧度法で定義されている場合が多くなってきている。
ラジアンを用いる理由
数学で三角関数を扱う時は、角度にラジアンを用いるのが普通である。それは、次の極限が本質的であるからである。h をラジアン単位に取ると、
- <math>\lim_{h\to 0}\frac{\sin h}{h}=1</math>
上記の性質のゆえに、例えば、次の結果が得られる。
- <math>\frac{d}{dx} \sin x = \cos x</math>
- <math>\frac{d^2}{dx^2} \sin x = -\sin x.</math>
- <math>\sin x = x - \frac{x^3}{3!} + \frac{x^5}{5!} - \frac{x^7}{7!} + \cdots .</math>
ここで度数法を用いると微分をする度に定数倍のズレが生じる。そこでラジアンを角度の単位に用いると、その定数が1になるため、上に示したように種々の計算が単純になる[4]。
派生単位
ラジアンの整数乗倍
ミル (角度)は、ミリラジアンから派生した単位である。ミルの定義はさまざまであり、NATOの定義では1ミルは(360/6400) = (正確に)0.056 25度であり、ミリラジアンとは異なる単位である。
- マイクロラジアン(μrad)= ラジアンの100万分の1 = 約 0.206 2648 秒
ラジアン毎秒
ラジアン毎秒(ラジアンまいびょう、記号: rad/s)は、国際単位系における角速度の単位である。
ラジアン毎秒は、1秒間に1ラジアンの角速度と定義される。ラジアンの定義から、毎秒1回転は 2π ラジアン毎秒となる。
- 1度毎秒 = π/180ラジアン毎秒 = 約0.017 453ラジアン毎秒
- 1ラジアン毎秒 = 180/π 度毎秒 = 約57.295 78度毎秒
- 1回転毎秒 = 2π ラジアン毎秒 = 約6.2832ラジアン毎秒
- 1ラジアン毎秒 = 1/2π 回転毎秒 = 約0.159 15回転毎秒
- 1回転毎分 = π/30 ラジアン毎秒 = 約0.104 72ラジアン毎秒
- 1ラジアン毎秒 = 30/π 回転毎分 = 約9.5493回転毎分
ラジアン毎秒毎秒
ラジアン毎秒毎秒(ラジアンまいびょうまいびょう、記号: rad/s²)は、国際単位系における角加速度の単位である。
ラジアン毎秒毎秒は、1秒間に1ラジアン毎秒の角加速度と定義される。
脚注
- ↑ [1] 計量単位令 別表第1 項番8 角度 ラジアン
- ↑ [2] Table 3. Coherent derived units in the SI with special names and symbols 日本語では、 「国際文書第8版(2006) 国際単位系(SI)日本語版」[[3]]p.29
- ↑ [4] 計量単位規則 別表第2 「角度」の欄
- ↑ たとえばCalculus: The Original Edition of a First Course in Calculus (Serge Lang)のIV、§4にあるRemark(75ページ)を見よ。