特定農薬
特定農薬(とくていのうやく)とは、2002年(平成14年)12月に改正された農薬取締法に設けられた制度で、有機栽培で用いる農薬の代替資材の法律上の名称である。通称、特定防除資材。法律上の定義は、農薬取締法第2条第1項「その原材料に照らし農作物等、人畜及び水産動植物に害を及ぼすおそれがないことが明らかなものとして農林水産大臣及び環境大臣が指定する農薬」である。
2004年現在、指定された特定農薬は3種類のみである。重曹、食酢、「地場の天敵」の3種を除いて、指定が保留されている。 2013年3月28日に改正され、エチレン、次亜塩素酸水(塩酸又は塩化カリウム水溶液を電気分解して得られたものに限る。)が新たに指定された。
概要
2002年12月の農薬取締法の改正に伴い無登録の農薬の製造や使用が禁止された。この改正に伴って、農作物の防除を目的として使う薬剤や天敵などのうち、安全性が明らかなものにまで農薬登録を義務付ける過剰規制とならないように、特定農薬指定制度を新設した。後に農薬という言葉のイメージが悪いということで特定防除資材という通称が認められることとなった。
化学合成農薬以外の農薬の代替資材には、天敵、食品、植物抽出液、微生物などがある。
農林水産省の消費・安全局農産安全管理課農薬対策室の提案に対して農業資材審議会農薬分科会及び中央環境審議会土壌農薬部会農薬専門委員会での討議の後指定が行われる。農薬取締法改正時には多くの候補資材について検討が行われた。
農林水産省は、雑草を食べることで除草効果を期待するアイガモ、アヒル、牛、コイ等は雑草も作物も食べるという理由でこれらの生物が行っているのは防除ではないとして特定農薬の検討からはずした。
また、雑草抑制シートは元々農薬ではないことから外され、木酢液は現在検討中である。
牛乳、コーラ、ビール等の食品や植物成分,天敵生物等が指定の対象になり得るとして農水省は多くの資材を専門委員会に諮問したが、効力や安全性に関しての判断に疑念が残るということで特定農薬への指定は保留された。
アイガモなど、安全性について一般的に危険ではないという認識があるものを農薬に分類することを討議した場合に、アイガモが農薬に分類されるのは理解しがたいというような世論の批判が起こることが予想される[1]。農林水産省は、こうした批判をかわす為に判断を放棄したのではないかという批判も起こった。
脚注
- ↑ 「農薬の定義で珍論争 アイガモやアヒル、牛乳も?」(毎日新聞、2003年1月30日、夕刊1面)