無整流子電動機
無整流子電動機(むせいりゅうしでんどうき、テンプレート:Lang-en)は、整流子の代わりに制御・駆動用の電源回路が組み込まれた、永久磁石同期電動機と同じ構造をもつ直流電動機である。ブラシレス直流電動機、ブラシレスDCモータ、BLDCモータとも言う。
ブラシ付の直流電動機は効率が高く可変速運転ができ、さらに小型化が可能で比較的安価であるため広く使用されているが、ブラシは接触摺動しているため摩耗による寿命がある。このため、大型モータではブラシの点検や交換といった保守が必要であり、小型でブラシ交換が出来ない場合は、ブラシ寿命がモータの寿命となる[1]。この欠点を解消するため、ブラシの役割を電子回路に置き換えたものが無整流子電動機(ブラシレスDCモータ)である。
目次
特徴
長所
短所
特性
電流とトルクや、電圧と回転数が比例関係である点など直流電動機と同じ特性を持っている。また、起動トルクが高く、速度制御も電圧変更で容易に行うことが出来る。電子回路を使用しているため、プラスとマイナスを逆に接続しても逆回転しない。マイクロコントローラーと組み合わせることにより意図的に低速域でのトルクを高めたり、用途に応じて出力特性を一定の範囲内で任意に設定する事もできる。
ブラシ付モータとの比較
一般的にブラシ付の直流モーターでは、固定子側が磁石であり、回転子に巻線回路が存在するため、回転子に電気を供給するためにはブラシをコミュテータ(整流子)と呼ばれる接点と接触させる必要がある(コミュテータは回転することにより電流を転流させる装置)。これに対してブラシレスDCモータでは、回転子側は磁石であり、電気を供給する必要がない。巻線回路は固定子側にあり、転流は電子回路によって行われる。転流には回転子の磁極にあわせたタイミング検出転流が必要であり、回転角度の検出はホール素子などにより磁極の角度を検出している。転流回路のスイッチングの素子には、トランジスタ、FET、IGBTが使用される。
用途
小型で大きな出力を得られ、保守部品がないため、幅広い用途で使用されている。コンピュータ関係では冷却ファンやフロッピーディスク、HDD、CD-ROM装置などのモータとして、家電関係では扇風機やビデオテープレコーダのヘッド用として使用されている。大型のものでは、ダイレクトドライブタイプの洗濯機や、トヨタ・プリウス、ホンダ・インサイトなどのハイブリッドカー用モーターに使用されている。
分類
構造による分類
回転子の形状により、以下のように分類される。
- インナーローター
- 内側にローターがあるタイプ。イナーシャが小さいため、回転速度を変化させる用途に適する。
- アウターローター
- 外側にローターがあるタイプ。イナーシャが大きいため、一定速度で回転させる用途に適する。
- アキシャルギャップ
- ギャップを軸方向に持つタイプ。
駆動電流による分類
- 矩形波駆動方式
- 矩形波交流駆動に最適化された電機子巻線を使用したものである。制御回路が単純で、回転子(ロータ)回転角度の検出も磁極切り替え部の検出のみである。
- 正弦波駆動方式
- ロータの回転に合わせて適切な正弦波波形をモータ部に供給する回路を備えたもの。矩形波駆動よりも高効率にすることが可能であるが、より細かい回転角度検出が必要となる。
相数による分類
正逆回転を行う場合は、基本的に三相[2]駆動が必要となる。正逆転回転が必要でない用途では、単相または二相での駆動が可能である。半波駆動の場合は、回路を単純にできるが、モータの効率が低下する。
- 単相全波
- 二相半波/全波
- 三相半波/全波
磁極検出による分類
ローターの角度に合わせてスイッチングを行うため、ローターの回転角度を検出する装置が必要となる。
歴史
整流子の代わりに電子回路を使用するという研究は、1930年代からサイラトロンを使用して始められていた[3]。1960年代にはサイリスタやトランジスタを使用した実用的な無整流子電動機が販売されるようになった。