漢籍
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漢籍(かんせき)とは、和書に対応する用語であり、漢文で書かれた中国の書籍を指す言葉である。通常、仏典の類は含まず、儒教関連の図書を中心とした書物に限定して用いられる。
概要
一般的には、近代になって出版された新しい学問体系に従って書かれたものは含まれない。主として袋とじを糸で綴じた線装本(各国で糸の綴じ方が違い、日本のものを和装本と言う)であることが多い。中国人の著作であるが、場合によっては、日本人の書いたものも含め、漢文で書かれたもので、訓点を施されていないものは、漢籍と総称される場合がある。
漢籍の中でも、中国で出版されたものは、特に「唐本」と呼んでおり、それを輸入して日本で復刻や翻刻したものは「和刻本」と呼ばれる。また朝鮮半島で出版されたものは「韓本(朝鮮本・高麗本)」という。
また、和書と漢籍をあわせた総称として、和漢書という用語もある。
漢籍の分類
漢籍は通常、中国の伝統的な図書分類法である経・史・子・集という四部分類で分類される。その模範となる『四庫全書総目提要』の分類に従いつつ、その不備を補うかたちで各所蔵機関で独自の分類がとられている。なお漢訳仏典については子部・釈家類に入れられることもあるが、漢籍から独立させられ、仏典独自の分類がされることが多い。
出版事項
漢籍は印刷方法により、次のような種類に分けられる。
- 刊本 - 木版印刷によるもの。多くの漢籍がこれに属する。刻本・版本とも言う。
- 鈔本(抄本) - 手書きによって書き写された本。写本。
- 活字印本 - 古活字によって印刷されたもの。古活字には泥活字・錫活字・木活字・銅活字・磁活字がある。
- 石印本 - 薬品入りの墨で紙に手書きし、それを石版に転写して印刷した本。
- 排印本 - 近代活字によって印刷されたもの。装幀は線装も洋装も、どちらも存在する。特に鉛活字のものを鉛印本と呼ぶ。
いったん出版された本を複製する場合には次のような用語が使われる。
- 景刊(えいかん) - 底本を版木にかぶせ彫りして印刷したもの。原寸大で字体・字数など全く同じもの。
- 景照(えいしょう) - 底本を写真撮影し、それをとじ合わせ本にしたもの。学術利用が主である。
- 景印(えいいん) - 底本を写真撮影してオフセット版などを作り、それを大量印刷したもの。縮小・拡大印刷することができ、洋装本のかたちで出版されることが多い。影印とも書く。
装幀による分類
漢籍は装幀法により、次のような種類に分けられる。
参考文献
- 京都大学人文科学研究所附属漢字情報研究センター編『漢籍はおもしろい』(京大人文研漢籍セミナー 1 研文出版、2008年) ISBN 978-4-87636-280-6