油屋 (千と千尋の神隠し)

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テンプレート:Pathnav 油屋(あぶらや)は、アニメ映画千と千尋の神隠し』に登場する、本アニメの舞台となった湯屋

劇中の設定

この湯屋には八百万の神様達が日頃の疲れを癒しに全国各地から訪れる。経営者は湯婆婆で、従業員の多くはカエルやナメクジの化身である。ただ、千尋の世話役を任されたリンは白狐の化身との噂もあるが、元々人間だったとの説もあり詳細は不明である。建物の構造は多層に渡り、最下層には従業員の部屋とボイラー室が、中層には多数の湯船と湯釜、宴会場などのお客様を迎える為の施設が、最上層には湯婆婆の居住する住まいがある。また地底の奈落は異形の者の住処となっており、任務を遂行して衰弱したハクを始末しようとした湯婆婆がハクを奈落へ落とすよう頭達に命じていた。

モデルとされる場所

油屋のデザインは「色々な温泉が入っていて特定のモデルはない」[1]とされるが、「江戸東京たてもの園の子宝湯」、「道後温泉本館」は参考になった場所であると公式に明言されている[2]。「山形の銀山温泉」「宮城の鎌崎温泉」「群馬の四万温泉」「長野の渋温泉」「鳥取の羽合温泉」については、スタジオジブリは「これらの温泉地に監督が訪れたことがあるのか否かについては、残念ながらわかりませんが、監督が特定のモデルはないという以上、正解ではないようです。」としている[1]。神奈川県秦野市の鶴巻温泉の陣屋に関しては、女将が宮崎駿の実家の親戚筋で、旅館内の庭園にはトトロのモデルなった大楠を有する為、モデルのひとつではないかとする説がある。油屋内部の宴会場は目黒雅叙園を参考に描かれており、釜爺の仕事場にあった薬草箱は江戸東京たてもの園の武居三省堂内部の引出しがモデルになっている[3]

油屋の名前にまつわる背景

「油屋」や周辺の「不思議の町」の劇中設定のいくつかには、明治から昭和初期の別府温泉で活躍し、由布院を開発した油屋熊八周辺との共通点が指摘され、民放ローカル局の番組や地方夕刊紙で話題となったその説では「不思議の町」は歓楽的な温泉都市別府、「沼の底」は田園的な温泉保養地由布院としている。また、公式に参考にしたとされる道後温泉開湯伝説には、別府の湯を大国主命を用いて道後に導き少彦名命の病を癒したとされる逸話が存在し「油屋」の役割や給湯方式を連想させるとしている。熊八の盟友吉田初三郎が作成した1927年発行の観光ガイド[4]の鳥瞰図には、「油屋」のような高い煙突のある別府亀の井ホテルが中央に大きく誇張されて描かれ、別府港には多くの湯治舟大阪商船の汽船くれなゐ丸、海岸線を走る大分交通別大線の電車、そして鉄道で結ばれた山間の温泉地由布院には湖畔の亀の井別荘も描かれるなど、劇中設定に通ずるものが多く見られる。

脚注

  1. 1.0 1.1 いつものジブリ日誌 2003年1月9日
  2. ロマンアルバム 『千と千尋の神隠し-Spirited away』 徳間書店2001年
  3. 『ロマンアルバム 千と千尋の神隠し』130 - 131頁
  4. 別府温泉御遊覧の志おり「日本第一の温泉別府亀の井ホテル御案内」