澤柳政太郎

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澤柳政太郎
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澤柳政太郎

澤柳 政太郎（さわやなぎ まさたろう、1865年5月17日（慶応元年4月23日） - 1927年（昭和2年）12月24日）は、近代日本の文部官僚、教育者、貴族院勅選議員。大正自由主義教育運動の中で中心的な役割を果たす。長野県松本市生まれ。子の一人に、美術史学者となった澤柳大五郎がいる。

生涯

信濃国松本城下に松本藩士・澤柳信任の長男として生まれる。1875年（明治8年）に長野県開智学校下等小学校から東京師範学校附属下等小学校（現・筑波大附属小）へ転校。その後、東京府第一中学変則科（のちの府立第一中学校、現・都立日比谷高校）に入学。同級には親友の狩野亨吉、上田萬年、幸田露伴、尾崎紅葉などがいた。のち、教育令改正のため、第一中学から新制 大学予備門（のちの一高、現・東大教養学部）に繰上げ入学をした。のち、帝国大学（のちの東京帝国大学）文科大学哲学科を卒業。同郷の辻新次の誘いにて文部省に入る。

文部官僚時代、小学校令を改正して、4年から現在の6年の課程にし、また、旧制高等学校を増設し、旧来の藩閥の弊から脱却、全国から人材を登用する扉を開いたとされる。1906年（明治39年）から2年間文部次官。高等商業学校校長（校長事務取扱 1898年11月24日 - 1899年3月25日）を経て、1911年（明治44年）3月24日[1]に東北帝国大学初代総長、1913年（大正2年）5月9日[2]に京都帝国大学総長(第5代)を歴任。

京都帝国大学では、大学の刷新のため7人の教授を総長の権限で解任しようとして、これがスキャンダルとなる。その7人の教授（医科大学1名、理工科大学5名、文科大学1名）の中に、大学(分科大学ごと)の自治(人事を含む)をとなえる教育学者の谷本富もいた。1914年（大正3年）春、法科大学(現在は法学部)教授会の抵抗にあい、逆に自身が京都大学を追われることになる。「沢柳事件」と呼ばれるものである。

その後、陸軍士官学校の予備校として名高かった成城学校の校長に就任。当初、在官中の澤柳は官公立学校至上で私学の排斥を行っていたが、野に下ってからは積極的に私学も奨励した。同校内に新教育の実験校として、1917年（大正6年）4月4日、成城小学校を創立した（成城学園の起源）。ここに広島から、長田新の推薦により小原國芳を訓導として招聘し、以来、成城学校は大正自由主義教育運動の震源地となる。沢柳も1898年（明治31年）にドゥ・ガンの『ペスタロッチー伝』を訳したり、1909年（明治42年）には『実際的教育学』を書くなど、新教育の指導者としての役割を担った。1916年（大正5年）以降は、帝国教育学会の会長、大正大学の初代学長にも就任している。

松方幸次郎、木下正雄と共に尽力して、1922年（大正11年）、ロンドン大学講師のハロルド・E・パーマーを日本に招いた。翌年、パーマーが文部省内に設立した英語教授研究所（現在の語学教育研究所）の理事長となった。

1909年12月21日、貴族院議員に勅選され[3]、茶話会に属し死去するまで在任した。

モットーは「随時随所無不楽」(随時随所楽しまざる無し)。いつどんなときでも楽しみを見いだすことはできるの意。

著作

単著

  • 沢柳政太郎著『公私学校比較論』哲学書院、1890年4月
  • 沢柳政太郎述『仏教道徳 十善大意』哲学書院、1890年11月
  • 沢柳政太郎著『教育者の精神』冨山房書店、1895年3月
    • 多田房之輔、山下半治、沢柳政太郎著『小学教師及校長 小学校教師論 教育者の精神』ゆまに書房〈明治・大正教師論文献集成〉、1990年7月、ISBN 4896682904
  • 沢柳政太郎著『教師論』同文館、1905年10月
  • 沢柳政太郎著『時代と教育』同文館、1905年11月
  • 沢柳政太郎著『教師及校長論』同文館、1908年11月
    • 沢柳政太郎著『教師及校長論』ゆまに書房〈明治・大正教師論文献集成〉、1990年9月、 ISBN 4896683056
  • 沢柳政太郎著『学修法』同文館、1908年12月
  • 沢柳政太郎著『実際的教育学』同文館、1909年2月
    • 沢柳政太郎著『実際的教育学』明治図書出版〈世界教育学選集〉、1962年6月
    • 篠原助市、沢柳政太郎著『批判的教育学の問題 実際的教育学』明治図書出版〈世界教育学名著選〉、1973年9月
    • 大泉溥監修『文献選集教育と保護の心理学 明治大正期第4巻』クレス出版、1996年9月
  • 沢柳政太郎著『退耕録』丙午出版社、1909年4月
  • 沢柳政太郎著『中学修身書備考』同文館、1909年12月
  • 沢柳政太郎著『我が国の教育』同文館、1910年1月
  • 沢柳政太郎著『孝道』冨山房、1910年11月上巻・下巻
  • 沢柳政太郎著『女子修身訓備考』同文館、1911年2月
  • 沢柳政太郎著『実業修身訓備考』同文館、1911年3月
  • 沢柳政太郎述『学生訓』二松堂書店、1912年11月
  • 沢柳政太郎著『随感随想』冨山房、1915年5月
  • 沢柳政太郎著『野心論』実業之日本社、1915年9月
  • 沢柳政太郎著『前途の望』広文堂書店、1916年3月
  • 沢柳政太郎著『実用 法制経済教科書』大日本図書、1916年10月
  • 沢柳政太郎著『亜細亜主義』大鐙閣〈国民思想涵養叢書〉、1919年9月
  • 沢柳政太郎著『禁酒読本』丙午出版社、1928年4月

共編著

  • 沢柳政太郎、本田信教同纂『心理学』文学社、1890年9月
  • 沢柳政太郎和訳『仏遺教経』哲学書院、1891年2月
  • 沢柳政太郎、本田信教同纂『倫理書』文学社、1891年8月
  • 沢柳政太郎編述『読書法』哲学書院、1892年5月
    • 沢柳政太郎著『読書法』宝永館書店、1900年10月訂正第五版
    • 出口一雄監修『近代「読書論」名著選集 第1巻』ゆまに書房、1994年4月、ISBN 4896687833
  • 沢柳政太郎、立花銑三郎合訳『格氏 普通教育学』冨山房書店、1892年12月
    • 仲新ほか編『近代日本教科書教授法資料集成 第3巻』東京書籍、1982年9月
  • 沢柳政太郎、立花銑三郎合訳『格氏 特殊教育学』冨山房書店、1893年9月
  • 沢柳政太郎、三石賤夫合著『普通心理学』冨山房書店、1894年12月
  • 沢柳政太郎、広沢定中共編『ペスタロッチ』金港堂書籍、1897年1月
  • 沢柳政太郎訳述『政治道徳学』東京専門学校出版部〈早稲田叢書〉、1902年5月上巻・下巻
  • 沢柳政太郎、田中末広、長田新共著『児童語彙の研究』同文館〈成城学校研究叢書〉、1919年5月
    • 井上敏夫ほか編『近代国語教育論大系 別巻2』光村図書出版、1987年12月
    • 大泉溥監修『文献選集教育と保護の心理学 明治大正期第8巻』クレス出版、1997年2月
  • 沢柳政太郎編『太平洋の諸問題』太平洋問題調査会、1926年7月
  • 沢柳政太郎編『現代教育の警鐘』民友社、1927年6月

関連文献

  • 大日本学術協会編修『日本現代教育学大系 第十巻 沢柳政太郎氏教育学 森岡常蔵氏教育学 倉橋惣三氏教育学 千葉命吉氏教育学』モナス、1928年2月
    • 大日本学術協会編修『日本現代教育学大系 第10巻 沢柳政太郎・森岡常蔵・倉橋惣三・千葉命吉篇』日本図書センター、1989年11月、ISBN 482058474X
  • 三浦藤作編著『教育界人物管見』秀山堂文庫、1926年12月
    • 三浦藤作編著『教育史料雑考』柏葉社、1932年5月合本綴／大空社〈日本教育史基本文献・史料叢書〉、1994年6月、 ISBN 487236628X
  • 『帝国教育』第546号、帝国教育会、1928年2月
    • 三浦藤作著『沢柳先生のこと』秀山堂文庫、1928年3月
    • 前掲、三浦藤作編著『教育史料雑考』
  • 沢柳礼次郎著『吾父沢柳政太郎』冨山房、1937年10月
    • 沢柳礼次郎著『吾父沢柳政太郎』大空社〈伝記叢書〉、1987年9月
  • 小原国芳、小林健三共著『沢柳教育 : その生涯と思想』玉川大学出版部、1961年12月初版／1963年4月改訂二版
  • 新田貴代著『沢柳政太郎 : その生涯と業績』成城学園沢柳研究会〈沢柳研究双書〉、1971年6月
  • 『沢柳研究』創刊号～第19号、成城学園沢柳研究会、1971年6月～1973年8月／『沢柳政太郎研究』第20号～第38号、成城学園沢柳研究会、1973年8月～1978年3月
    • 成城学園沢柳政太郎全集刊行会編『沢柳政太郎全集 別巻 沢柳政太郎研究』国土社、1979年5月
  • 鈴木美南子編著『沢柳政太郎の仏教・宗教論』成城学園沢柳研究会〈沢柳研究双書〉、1974年3月
  • 庄司和晃著『沢柳政太郎と成城教育』成城学園沢柳研究会〈沢柳研究双書〉、1974年8月
  • 北村和夫著『大正期成城小学校における学校改造の理念と実践』成城学園沢柳研究会〈沢柳研究双書〉、1977年11月
  • 衆議院、参議院編『議会制度百年史 : 貴族院・参議院議員名鑑』大蔵省印刷局、1990年11月、ISBN 4171648114
  • 成城学園教育研究所編『成城学園教育研究所研究年報 別巻 沢柳政太郎私家文書目録』成城学園教育研究所、2002年3月
  • 新田義之著『沢柳政太郎 : 随時随所楽シマザルナシ』ミネルヴァ書房、2006年7月、ISBN 4623046591
  • 今田述著『ダルトンの谺 : 近代教育の先覚・沢柳政太郎の生涯』文芸社、2012年11月、ISBN 9784286129068

脚注

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関連項目

外部リンク

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  1. ↑ 『官報』第8324号、明治44年3月25日。
  2. ↑ 『官報』第232号、大正2年5月10日。
  3. ↑ 『官報』第7950号、明治42年12月22日。
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